2006年08月07日

[知財一般]知財の外延確定とアンチコモンズに関するメモ

「アンチコモンズ」*1)といえばHellerが唱えた特許権(情報の囲い込み)に対する否定的な観点からの経済学的検討であるが、その核心は、『階層的な技術分野において』(=すなわち多くの先行研究を積み重ねて進歩する分野において)『各階層において多数の特許権が存在する』ために、その先行発明を利用することが『難しく』なり技術の進歩が阻害される、というものである*2)

要は、『階層的』技術についての論証であることは注意を要する点である。通常の先行発明探索コストは、技術発展という社会的な富の増大の前では止むを得ないものとして理解されている。

すなわち、情報の囲い込みはアンチコモンズを生じされるのでよくない、とはこの研究からは言い切れない。
しかし、技術発展という明確な富の増大が裏付けられてないものについては別異の考え方ができよう。端的に言えば、なんらかの成果につき、進歩性の判断を経ずに不法行為法の保護を受けるか否かの場面では、アンチコモンズが指摘する難点が強調されてしかるべきだと思われるのである。

*1)Michael A. Heller and Rebecca S. Eisenberg, “Can Patents Deter Innovation? The Anticommons in Biomedical Research”, 280 Science,698 (1998)
*2)中山一郎「「プロパテント」と「アンチコモンズ」 −特許とイノベーションに関する研究が示唆する「プロパテント」の意義・効果・課題−」RIETI Discussion Paper(2002年)
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2006年06月12日

[知財一般]中国知的財産事情

現在、中国では副首相の下に置かれた国家保護知識産権工作弁公室を中心に知的財産保護を進めているようである。
都市部の政府や司法機関は、保護に積極的(むしろ行き過ぎ?)で、近時は「秀水市場」という北京市内の海賊品マーケットのビルオーナーに対しても損害賠償責任を認めた事例もあるようだ。
水際での阻止も進んでいるが、中国では没収品は公益に還元することが法廷されており、商標権侵害品であればブランドマークを剥奪した上で、競売にかけられ、結果として権利者の潜在的市場を脅かすことにもつながっているとのことである。
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2006年05月08日

[知財一般]国際技術移転の観点と知財

●齋藤彰「国際ビジネスと知的財産――国際技術移転のスピルオーバー効果の視点から――」『民商法雑誌』133巻4・5号749頁〜読書メモ

1.この論文の意義
ホンダが模造品メーカーと技術協力をするにいたった事案を元に、ローレンス=レッシングの提示する哲学を交えつつ、知財法律家への批判と、発展途上国での知財法制の意義を解くものである。

2.この論文の要約
知財の法律家は侵害ばかり着目し、流通させることに目がきちんといってないように思われる、というのが齋藤先生の主張である。その上で、特異(であると従来の目には映る)なホンダのケースを、経済学的な視点で分析を加えている。
同時に、発展途上国での知財法制備は、技術移転を促し発展の糧とする基盤であることも主張する。

3.考察
競争力の源泉が「オンリーワン」であること、と捉えられていること、また、ブランドイメージもまた競争力の源泉であることを考えれば、企業が侵害訴訟に躍起になるのも無理はないのではないか…と考えている。たしかに、社会全体としては技術移転は「いいこと」なのだが、他社と提携することはなかなか難しいという実務の声も聞こえるので、どうなのかなぁといったところ。
とはいえ、発展途上国での法整備の意義を経済学の視点から明確に分析している点はすばらしい。
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2006年02月27日

[不正競争][著作権]企業の情報開示と営業秘密

企業にあってはステークホルダー(とくに株主)に情報開示を求められるが、営業上の秘密も漏れかねず、なかなか気を使うところだろう。
(…と第三者的にいえるのが学生のお気楽なところである。)
特に特定の人に開示したのに、その人が勝手にネットで公開してしまった!という場合にどう対処するか。簡単にまとめ、検討個所を挙げた。

●取締役会議事録をめぐる具体的事案
「ダスキン取締役会議事録事件」というのがある。大塚大先生(大塚大・先生である。大先生では…いや、下っ端学生から見れば大先生に変わりないか。)のブログで綺麗にまとめていらっしゃるのでそちらを参考されるべき(→駒沢公園行政書士事務所日記 2005年11月05日)であるが、簡単にまとめると、株主に取締役会議事録を見せたところ、それをウェブに載せられてしまった、というものである。
ここでは著作権侵害と不正競争防止法違反(営業秘密の不正開示)が主張された。
公開差止めを求める仮処分では著作物性が認められたが、
その後の損害賠償訴訟では、著作物性はありふれた表現であるとして否定、営業秘密の点については秘密管理が出来ていないとして否定された。
(★この点に判決文検討の余地あり!ダスキンの管理体制の問題でしかないのかもしれない)
ただし、意に反して公開されたことでいわゆるブランドが傷つけられたとして不法行為成立を認め損害賠償は認めている。(被告側の壇弁護士はそんなのねぇよと嘆いていらっしゃった。まさか、防禦がつくせないようなものだったんじゃないよな??話を伺うチャンスがあれば伺いたいものである。)

●一般論
無断の開示に対しては4つ手段が考えられる。
1.著作権侵害
2.営業秘密の不正開示
3.(虚偽の事実も足されていた場合には)営業誹謗(不正競争防止法2条1項14号)
4.(虚偽の事実も足されていた場合には)風説の流布(証券取引法)

1.について
議事録について著作物性が否定された事案が出ており、これは他の企業情報においても当てはまる可能性がある。あまり当てにはならない。
あるいは、開示情報中にあまり必要性が無くても著作物性がある情報を埋め込むのも手かもしれない。
これは★要検討。

2.について
どうしても秘密にしたいものは株主への開示の際にも逐一秘密保持契約を結んだ方がよさそうである。
そうすれば文句が無いが、絶対に開示しなくてはいけないもの、たとえば商法に定めのある営業報告書なんかは、秘密保持契約を結ばせることは出来ない。開示されてもこの点はあきらめるべきである。

3.4.について
掲載時に評価が加わる事が多いはずであるが、そこでもしウソが出ていたらここがつかえる。
ただし、批評が主でごくわずかな虚偽が混ざってしまった場合にもいえるかについては★要検討、風説の流布といえるかについても★要検討。
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2006年02月14日

[知財一般][不正競争]表示画面の法的保護のあり方(検討その2)

≪2005年12月12日[著作権]プログラムの表示画面の保護≫に続く検討を行う。

≪ITmediaニュース「ネットサービス"そっくりさん"登場のなぜ」(2006/2/13)≫が取り上げたように、現在プログラムの表示画面のみならずWebサイトの構成も「そっくり」なものがあらわれている。
もちろんここではあらゆるウェブサイトの「そっくり」を問題にするつもりは無い。前回検討したように、私的なサイトにおいては著作権違反といえるもの以外は問題ないと考えるからである。

ここで取り扱いたいのは、営業上(しかもウェブ上での営業を行っていることに絞りたい)競争関係にあるもの同士のサイトがそっくりであることについてである。(ヤフーとライブドアのポータルを想像していただければ分かりやすい。)

上に挙げたITmediaニュースでも栗原潔弁理士が指摘していたが、著作権法でも不正競争法でもなかなか捕捉しにくい。
だが、ウェブ上で営業を行っている者にとって、機能的な表示画面は自他差別化の源泉、まさに利益の源泉ではないだろうか?これは、他の有体の商品で言えば「形態」と同じ位置づけにあるのではなかろうか。放任しておけば良い表示画面を作ろうとするインセンティブが削がれるのみならず、同じようなサイトが乱立することにより、たとえばポータルサイトなどのビジネスモデル自体も弱体化してしまわないだろうか?(特に問題としたいのは、すばらしく使いやすい画面をもって参入したとしても、これが大手サイトに奪われたらその者はビジネスから撤退せざるを得なくなる点である。現状は、ヤフー、グーグルなどそれぞれのブランドが集客の中心となっているように思われるのである。)

そこで、表示画面を不正競争防止法2条1項3号のような形態模倣禁止の枠組みで保護することが適当か否か検討する

第1に法的側面から検討する。
まず目的は、表示画面の開発にかかる投資の保護ということで問題は無いだろう。
しかし問題となるのは機能的形状との区分の困難さであろう。
表示画面は自由度が高い。それゆえその形態が不可避といえる場合は少ないことが想像される。しかし、いきすぎるとかえって他社の参入を阻む要素となり得る。
バランスが難しい。

次に実質的な側面(法政策的な側面)を検討する。
明確に異なるのは違法性に対するコンセンサスであろう。
2条1項3号ですら対象はデッドコピーに限定している。有体の形態をデッドコピーする――すなわち他人の商品の型をとりそのまま使う――などということは、「やってはいけないことだ」という認識はほぼ行き渡っている。
一方で表現活動に限りなく近い表示画面作成において「模倣」は悪だという認識は必ずしも共通でない(また、一般にそのようなことを言うのはむしろ問題である。)

現状においては形態模倣で捉えること(あるいは捉える方向に向けること)は現実には難しいだろう。だが、今後検討する余地はあるものと考える。
posted by かんぞう at 13:49| Comment(2) | TrackBack(1) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月13日

[知財一般]レッシングのアプローチ

知財に対するアプローチとしてレッシングの考え方の基本の1つは興味深い。
・競合財についてはそれが過剰消費されないようコントロールされなければならない。

・非競合財は単に財が生産されることを保証するためのコントロールだけが必要。(なぜならば使い尽くされるはずがないから)

・故に競合財のコントロールシステムを非競合的に適用するのは必ずしも適切でない。

(Lawrence Lessing(著)・山形浩生(訳)『コモンズ』翔泳社(2002年)156頁)


著作権の間接侵害において物権との対比で認められうるという見解に否定的な意見であるが、それを支えうるものにはなろう。(厳密に言えば、物権的請求権のように認めることの当否を詳しく見ていく必要があるということになると思う。)
posted by かんぞう at 16:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月18日

[特許・商標・意匠]審判制度の3法比較

★まだ作りかけっ!!12月19日に修正。

審判制度の違いをまとめてみた。
弁理士試験には使えるかもしれない。

↓まずは簡易版。審判形式の違いで切り分け。
ipr_examination.jpg

↓つぎに請求主体、期間も書き足したものを。
ipr_exam.doc
posted by かんぞう at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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