2006年09月02日

[著作権]共同著作者の認定

ひとつの著作物(作品)を作り上げるのに、複数人が関わっている場合があるが、単に分業したのでない場合、誰が著作者と言えるのだろうか?
法律的には共同著作者をどのように認定していくか、という論点であるがこれは悩ましい問題であろう。

この点につき関与者の意思を基準にするものもあるが、私は疑問を感じる。
たとえば、アイディアを出したに過ぎない者が創作に関わっているんだ、との意思表明をしたとしよう。この説では、共同著作者となるが、アイディアを出した「だけ」の者が著作者として権利を付与されるのは、表現の保護法である著作権法の理念と相容れないのではないか。
別の例も挙げる。専門家のインタビュー記事で、口述した専門家が単に学術的な返答をしただけ(事実を述べただけ)にすぎないとする。この場合も意思次第で著作者となるのは不自然ではないか。その専門家はなんら「創作的な表現」に寄与していないのである。

私は、創作的表現作出に関与があればいいのではないかと考えるが、その立証が困難であることは否めない。今後、考えていきたい。
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2006年06月11日

[その他][民法]山本敬三の不法行為法学整理を読む

●山本敬三「不法行為法学の再検討と新たな展望――権利論の視点から――」法学論叢154巻4・5・6号 292頁〜

近時、著作権法と不法行為法の接点の議論に対し示唆の深い論文を書かれている潮見先生の学説について、不法行為法学の流れではどのように位置づけられるかを示す論文である。参考となるところがあると思われるので紹介する。なお、著作権法学会で示された「権利スキーマ」についても概要を示しており、参考となる。

1.この論文の意義
潮見佳男先生の権利論を中核とする不法行為の理解と、従来の学説の理解をわかりやすく表した論文である。不法行為法学の理解の参考となるだけでなく、潮見先生の論文の理解の一助ともなろう。
また、知的財産法がカバーしきれない法益に対して、どのような保護を与えるか否かを考えるスキームを考える手助けになるように思われる。

2.この論文の概要
起草者の構想によると、有形・無形の損害の内、一定の範囲の「権利」(これは各種の自由のほか債権も含まれる)に対して、過失主義の原則の下、賠償を命ずるシステムであった。すなわち、権利・自由の保護とその相互の調整が根底にあったと見ることが出来る。
しかし、大正期、「権利」を厳格に考える判例が登場し、その不都合を生めるために登場したのが、末川の違法性理論である。権利侵害とは法律秩序(法律全体に潜む価値理念から出発する秩序)違反であると捉えるのである。これは権利本位の法律論から社会本位の法律論への転換であった。
この違法性理論を確立させたのが我妻である。我妻は、不法行為制度が社会生活における損失の公平な分担制度へと転化したとし、その上で、権利侵害は加害行為の違法性(保護法益と行為の相関関係で把握されるもの)とするのである。
その後、平井宜雄らの通説(我妻説)への批判、沢井、錦織、四宮らからの通説の再検討を経て、こう着状態となっていた。ただ、いずれも末川が示した政策的観点から権利・自由を相対化する見解を基礎においたものと評価することが出来る。
これに、一石を投じたのが潮見の見解であった。潮見は、不法行為制度の基本は、憲法が保障する個人の権利を保障することであるとする。そして、ある権利を保証する場合に生じる他人の権利制約との調整を、(a)片方の権利を完全に犠牲にしていないか、(b)市場経済秩序の考慮、(c)福祉国家としての政策、(d)公共性の考慮、等を勘案して行うべきとする。これは危険の割当に関する価値判断であり、あくまで加害者と被害者の間の関係を問題とするものであり、共同体社会の共通価値実現という視点からの介入は認められるべきでないというのが潮見の考えである。

3.私見
不法行為論については、学部の3年生以来興味を持ってきたものであるが、正直なところ「わからないな〜」という思いを抱いてきた。その原因の一つは、書く論者がそれぞれどのような出発点から出てきているのか、が理解できていなかったからのように思う。それぞれの考えの基礎をわかっていないところで、それぞれがめいめいに批判を展開されたところで、好き嫌いでしか選べないじゃないか…という浅はかな思いだったのである。
そのような悩みが、この論文で少しは解消された思いである。かつて、潮見佳男『不法行為法』(信山社)を読み、その歯ごたえに手を焼いたが、今一度読み返してみたい。
なお、潮見の見解は知的財産法分野での議論整理に貢献する可能性を感じる。例えば成果冒用については、被害者の営業の自由と、加害者の表現の自由や営業の自由との衝突が観念できるのであり、その調整を経済秩序考慮を含めて行えばどのように整理できるだろうか。社会経済的効用を説けばいくらでも議論ができ、評価の分かれるところ、よりシャープに絞れるのではないかと思う。

※もっとも、深遠な議論の表層をさらっているだけに過ぎず、間違っている点は多いと思われる。読まれた方にはご海容を乞いたい。
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2006年05月20日

[その他]情報漏洩に対する民事的責任

コンピュータで管理された個人情報を漏洩させた事業者に対して、当該情報に記載された顧客が慰謝料請求をした事案で、これを認める判決(大阪地裁平成18年5月19日判決、判決文は本記事公開時点では未公開)が下った。

事業者に不正アクセスを防止する注意義務を認定したが、事案は、
・インターネットを通じてリモート管理が出来るようになっていた
・ID、パスワードがわかりやすいものであり、長期間変更していなかった
とのであるが、これが事実であれば防止の手立てとしてはずさんと言うことができるレベルであったといえよう。また、漏洩をさせたのも以前に当該情報の管理に当たっていた者であった。

上記の点から一般的に個人情報漏洩を引き起こした事業者に対しての損害賠償責任が認めらるとまでは言うには難しい。まだ判断がなされていない点が2点ある。

1点目は、セキュリティレベルがもう少し高ければどうであったか、という点である。例えば、パスワード管理はしっかりしていたがファイアウォールやIDSを設置していなかった、リモート管理はできないようにしていたがパスワード管理はずさんであった…等。考えようによっては、漏洩を防ぐための手段として社会で通常取られているレベルの水準を要求することもありえるだろう(個人情報保護法が注意義務を明示していると捉えるのであれば、このように考えられるのではないか。ただし、水準の具体的考慮要素、たとえば事業者の規模や業種に応じて水準が変わるかについての点は、より慎重な検討が必要である。)

2点目は、漏洩をもたらした者が部外者であったら、という点である。本件は元は内部にいた者であり、この者が退職後に情報を不正取得することが考えられたのであるから、注意義務違反を問うのは説得的である。しかし、部外者であれば、話は変わってくるだろう。

いずれにせよ、今後注目に値するテーマである。まずは判決文の公開が待たれる。
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2006年05月04日

[その他]情報セキュリティーと法 その2

●岡本友子「インターネット社会におけるプライバシー侵害と個人情報の保護―スパイウェア(spyware)問題を中心として―」民商法雑誌133号4・5巻(2006年)

1.この論文の意義
スパイウエアが引き起こすプライバシー侵害について、アメリカでの現状、さらに立法案を中心に検討した論文である。踏み込んでアドウエアについても検討している点、および、状況の整理を行った論文として意義深い。

2.この論文の要約
スパイウエアの拡大状況と、ボノ議員によるSPY ACTを紹介している。
同法は、当該ソフトウエア導入時にいかなる情報収集を行うかを明示することを強制するものであるが、ソフトウエア協会の一定の支持を受けているとのことである。

3.考察
プライバシー保護の側面からのスパイウエア、および、アドウエアの検討を今後、日本でも行う必要の可能性を示唆するものであろう。
私見としては、スパイウエアが認証情報を無断で抜き出しうる場合は、産業秩序を乱すものとして、事業者側からの制裁可能性も検討されるのではないかと考えている。
(広くは、競争秩序維持の中に消費者のプライバシー保護という利益保護をも織り込むことを企図する視点を検討しているところである。)
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2006年05月01日

[その他]情報セキュリティーと法 その1

スパイウエア型の情報漏洩に対して法規制をする場合、アドウエアの取り扱いをどうするか?

問題点
・アドウエアが通常入手する使用環境や検索語の情報はプライバシーに属するのではないか?

解決策
(a)社会通念上許容される範囲での情報取得を許容させる
(b)公衆への開示を問題視する(こちらがベターか?)

なお、岡本友子「インターネット社会におけるプライバシー侵害と個人情報の保護―スパイウェア(spyware)問題を中心として―」民商法雑誌133号4・5巻参照。
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2006年03月05日

[法律一般] 外国法令・判例の調べ方

ビジネスが国際的に行われるのが当たり前になっているためか、一ヒラ学生のところに回ってくるリサーチの仕事でも諸外国法制の調査なんてのがある。実際にやってみると苦労するのが各国によって違う法情報検索である。当然Up-To-Dateなものを求められるわけだから日本語になった論文を読んでいては間に合わない。インターネットを使う必要がある。
かなり苦労していたのだが、良い指針が見つかった。
京都大学大学院法学研究科附属国際法政文献資料センター
だ。研究に使おうという人にもオススメ。このような情報を苦労を惜しまずまとめていただいた上、惜しみなく公開されていることに深く感謝したい。
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2006年01月24日

[その他]雑感:表現の自由市場

・ある企業の知財担当の方なのだが、情報の囲い込みに対しては否定的な考えを持っていらっしゃって、やもすると抱きがちな、「企業=権利者=情報自由に対して否定的」という偏見を改めさせてくれる。もっとも業界によっては情報自由の方がありがたいという分野もあるし、そういう偏見自体が、企業というものを良く見ていない見方ではあろう。
この間ニュースサイトで大手コンピュータメーカー数社がクリエイティブコモンズ的発想に立った制度構築を目指すという記事があった。(うっかりソースを確保し忘れていた。しかも探してもない。誤報であるかもしれない。)戦略的取り組みの方向として興味深い。

・情報の囲い込みに対して特に否定的であったのは母校の憲法の教授であった。憲法の理念に表現の自由の確保を取り込むべきだとのお考えで、こと、意見の自由な流通は尊重されるべきとの考えには強く影響されている。

・知的財産を学ぶ者として、情報をどのように流通させ、社会発展につなげるかには常に留意しなくてはならないと考えている。(我が師匠はこの点にキビシイ。)とはいうものの、斬新な判例が出ればそれに流され…というのが現状である。原点を忘れないよう戒めたい。

・先日から、コメントで意見を頂いている。意見を交わすことは非常に勉強になる。わざわざ意見を寄せていただいた方への感謝の念はひとかたならぬものがある。情報の自由かつ効率的な流通のありがたみを感じる。
posted by かんぞう at 21:18| Comment(6) | TrackBack(0) | ☆その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月16日

[サイバー法]プロバイダ責任に関する覚え書き

プロバイダの責任を制限・明確化する立法が平成13年に行われている。
要点は、
(1)いかなる場合にプロバイダは責任を負うか。
 →(a)名誉毀損の場合
  (b)著作権侵害の場合
  (c)商標権侵害の場合
  (d)営業秘密の不正な開示の場合
(2)いかなる場合に、プロバイダは発信者情報の開示をしなければならないか。
の大きく2点にある。
総務省がまとめたものが以下のサイトにあるので参照。
http://www.isplaw.jp/
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2005年11月20日

[民訴][特許・商標・意匠]訴訟参加

訴訟参加についてまず民訴の原則は、参加に関して当事者は意義を述べることができる(民訴§44)。
では審判への参加はどうか?
特許法§148が認める参加(特許無効審判又は延長登録無効審判に対して、請求人に参加するもの)に対しては、当事者は意見を言えるが参加の可否を決めるのは審判長であり、審判で決まることになる(§149V)。この審判の決定に対しては不服はいえない。
と、するとがんばれば、審判遅延のための参加も不可能ではない…ということか。
実際はありえないだろうけど(^^;)
特許法§148は商標法(§56)、意匠法(§54)で準用されている。

やっぱりちゃんと手は施されてるよなー。
ところで参加人を追い出すことってできるのかな??
posted by かんぞう at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[民訴][課題]訴訟参加

知財の当事者系審判で利害関係持つ者(無効審判請求をする側に対しては誰でも)参加することは可能だ。そして参加者に生じた中断効が審判に及ぶとさだめてある。では、中断事由が生じそうな者が参加することがあれば、審判の遅延が生じることとなるが、果たしていいのか?
…その前に、
@参加は審判請求者の同意がいるのではないか?
A中断効は援用しないといけないのでは?
を調べなきゃ…。基礎なのに忘れた(-_-;)

posted by かんぞう at 00:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月02日

[独禁法]知財と独占禁止法

実務家の方から聞いた話。
知財の権利行使が独占につながる場合、最終的には独占禁止法の法理が優位に立つ。
が、どの市場を独占しているかという解釈レベルで、独占とされることが少ない。
というのも、世界規模で見たら競合者がいる場合や、そうでなくても1人で100%シェアという状況が少ないからだ。
実際は厳しい。
独禁法適用がありうるのは基本特許をパテントプールしている場合、あるいはライセンスと引き換えに不当拘束条項をつけている場合、とのことだった。
posted by かんぞう at 20:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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