2005年11月17日

[不正競争]デッドコピー規制

田村善之『他人の商品の模倣行為と不正競争防止法――デッド・コピー規制の具体的提案』(ジュリスト1018号、1993年)読書メモ

1.この論文の意義
平成5年の不正競争防止法改正(現2条1項3号形態模倣禁止)の下敷きとなったともいえる論文だろう。いわゆるインセンティブ論に基づいて成果冒用に対する法規制の枠組みを示すものである。

2.前提
新たな商品の開発がなぜ行われるのだろうか。1つの見方が、「他社に先駆けて市場におくことに利益があるから」というものである。要は、法的保護の有無にかかわらず、先行者は一定の期間、特定の商品を独占して供給することができるのだ。これにより先行者は独占レントを手に出来る。だからこそ、競って新商品開発が行われる。
しかしながら、技術の発達により新商品としての特徴であるデザインがデッドコピーされやすくなった。つまり、後行者が先行者の投資にフリーライドできる状況が顕在化したのである。そうであるなら、新商品開発インセンティブを法的に保護する必要があるのではないか、それがこの論文の出発点である。

3.この論文の要旨
(1)インセンティブ保護の必要性
新たな商品を他社に先駆けて市場に置くということは、市場に先行したタイムラグの期間中、新規開発部分に関して独占して販売することになり、投下資本を有利に回収できるということを意味する。商品開発には当然リスクを伴うのであり、投下資本回収が出来なければ新たな商品開発をしようとしなくなる。
デッドコピーが出来るようになった現状において、デッドコピーを禁止しなければ他者の成果にフリーライドすることでき、ひいては新商品開発のインセンティブは減少する。であるならば、一定の法的規制が必要となる。
(2)デッドコピーの禁止
もちろん知的財産権でカバーされているものもあるが、カバーされていないもの(著作物性のないもの、たとえば独自の模様の壁紙など。)やカバーされていても使い勝手が悪いもの(服のデザインが好例。商品のライフサイクルが短いので意匠権を取るメリットが少ない。)もある。そこで行為規制としてのデッドコピー規制を提唱するのである。
もちろん、模倣を禁止すべきとしながらも、そうであるならば創作性等を問題としなくてはならず不都合として、デッドコピーに限定している。
(3)具体的規制
@対象:「商品」のデザインの有形的な再製という形で第三者がデッドコピーすること。
ただし、競走上不可避な形態は除外。なぜ有形的なデザインに限られるかについては、(i)営業は模倣しても労力、費用、時間の節約になるとは思われない、(ii)コンピュータプログラムは著作権保護がある、(iii)データベースは特有の問題があるから除外すべき、との理由付けに立つ。
また第三者は、市場に具体的な競合関係にないものでも構わない。なぜらならば、ライセンスにより市場拡大するという方法が閉ざされることになるからである。しかし、コピーされる商品との間に同種性は要求させる。他の種類の商品からの利益還元は商品開発による投下資本回収の一環ではないからである。
A保護期間:投下資本の回収期間が目安。しかし、それだとあいまいであり萎縮効果をもたらすので明示が必要。なお、商品化の時点から保護が開始され、市場に出た段階で保護期間の起算を開始すべきとしている。
B請求権者:商品化を行った者。

4.私見
その後立法化されたものであり、参考にする価値は大きいように思う。
田村先生の枠組みによれば、商品形態はもちろん、無形ながらも商品形態といえるもの(情報のうち顧客吸引力をもつもの)もデッドコピーからの保護対象になりうるようである。その範囲はどこまでかは研究がいるだろう。また、データベースについては深く言及されていないが、その保護のあり方についても研究が必要だ(ってたぶん誰かすでに研究されているのだろうが…)。個人的には、デッドコピー規制でも十分ではと思っている。
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2005年11月15日

[不正競争]形態のデッドコピー規制

不正競争防止法2条1項3号導入審議経過

衆院126国会商工委員会第16号
川端達男委員の質問において、はじめてフリーライド=公正競争阻害という認識になったと評価されている。一方で、なぜ3年なのか、3年たてばフリーライドも許容されると誤解されないかと指摘した。
これに対し通商産業省産業政策局長・熊野英昭は成果へのフリーライドが不公正と考えられるべきだから先行者の投資回収期間に限られるべきとの政策的見地からの限定であると答弁している。3年という期間は各デザインのライフサイクルを元にしたとはいえ、やはり政策的見地からの決定である旨のべている。そして、3号の期間を過ぎてもなお不法行為対象となりうるとした。

なお、平成5年の審議においてはタイプフェイスも形態となりうるのではと指摘があったが、裁判例の集積にまかされることとされてしまっている。
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[不正競争][民法]競争行為と不法行為の関係

熊倉禎男『企業の競争行為と不法行為――相関関係説の影響と民法学への期待』(「法律時報65巻9号」、1993年)読書メモ

1.この論文の意義
(1)1993年の論文であることの留保
不正競争防止法改正前に書かれたものであり、細部において留意はいるが(たとえば形態模倣において不可避な形態が含まれるか否かが問題になるとの指摘があるなど現在では立法で解決されたものが含まれている)、本質的な点においては現在にも示唆はある。
(2)意義
熊倉先生は弁護士であり、不公正な競争行為に対してどのような法的アクションをとるべきかにつき実務経験を豊富に持っていらっしゃる。この論文では、不法行為としてしか請求できない場合において、違法性を相関関係で捉える説(吾妻説)の効用をご自身の経験をもとに説き、一方で不法行為での差止請求について認めるべきとの言及をされている。ただ、不法行為として請求するときの基準が細かに分析されているわけでなく、この点については研究対象になろう。

2.前提
不公正な競争行為に対しては不正競争防止法(平成6年までは不正競業法)が規制しているが、これに漏れたものであってもなお不法行為としての民事上の責任追及が可能である。では、いかなる場合に不法行為となるのであろうか?本論文は係る点が中心である。

3.論文要旨
(1)顔眞卿事件の経験
筆者が同事件の原告として理論構成をしたときの経験が語られている。博物館作品を撮影し出版することに対しては、博物館の許諾を得ることが慣行になっていたこと、欧州ではこれが「博物館の権利」として議論されている前提があった。そこで、欧州の「博物館の権利」として考えられているものを所有権の一部として構成できないか挑戦したのが当該事件である。この理論構成は裁判所の受け入れるところではなかったが、不法行為としては認められうるという見解を匂わせていた。しかし、不法行為では差止が認められないことから、原告はあくまで前記主張にこだわったとのことである。
(2)相関関係理論との関係
筆者は相関関係理論の効用として、第1に不法行為成立において「権利」のみがその対象でないとした末川理論を受け継ぐ点を評価している。(これは実際に民法改正において条文が改められたことから当たっているだろう)。第2に、予測可能性を保つための基準として被侵害利益と侵害行為様態の相関関係に定めた我妻の考え方は社会変化に柔軟に対応しつつ、高度の予測可能性を保つものができるものと評価している。ことに、競争行為が不法行為と評価されうるかにおいては基準の根幹となろう。
(3)差止請求権について
我妻の唱える本質は、被侵害利益ないし行為様態が極端な場合には差止が認められるべきものであると筆者は主張する。これによると、人格権を侵害する不法行為にのみ差止を認める現状の理解は改善されるべきということになる。
(4)不正競争独自の不法行為理論
違法性は様々な視点がありうるとし、不正競争分野での違法性判断基準が育てることを学説に期待して締めくくりとされている。

4.私見
理論的な参考とはならなかったが、方向付けにおいて大いに示唆を受けた。何らかの知的資産を法律上保護する場合、行為様態との関係において不法行為での保護がありうる場合がある。そしてその違法性基準を模索するのであれば、競争法理独自の基準も許されるのではないか、という思いを得たのである。もちろん、「独自の」とはいえそれはより細かく検証するからこそ独自性が出てくるという意味であって原則にはずれではいけない。自戒をこめておく。
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2005年11月13日

[不正競争]独禁法と不正競争防止法の位置づけ

田村善之『競争法における民事規制と行政規制』(「ジュリスト1088号」、1996年)読書メモ

1.本論文の意義
独占禁止法と不正競争防止法の差異、その規制のあり方を整理するものである。田村教授らしい視点からの整理が行われている。

2.前提
まず、独占禁止法も不正競争防止法も不正な競争行為を規制している点で共通であるという認識が前提である。その上で、独占禁止法と不正競争防止法の差異は次のとおり。
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3.本論文要旨
(1)捉え方
満田重昭先生が唱える不正競争防止法の捉えかた方との対比で自説を展開する。満田先生は、顧客獲得可能性を保護する法と捉え、市場における公正な給付に到達する機会擁護のための法と考えている。これに対し、田村教授は競争が顧客を奪うのは必然であることから、結局は競争秩序維持と発展にしか不正競争防止法の目的は認められないとするのである。そしてこの捉え方では安易な規制を招きかないという弱点があることを同時に認めている。であるからこそ、違法とすべき行為を明確にすべきとし、明確でないと生じる競争の萎縮効果を懸念している。
(2)違法とすべき行為とは
@不当需要喚起
商品・役務が無駄に供給されるためこれは規制すべきとする。
A競争減殺
必要な供給を維持するために規制されるべきとする。
B成果冒用
フリーライドを容認すると必要な成果開発のインセンティブがそがれ競争社会発展にとって望ましくないと考えられる場合にのみ規制されるべきとする。そして、これは民事的な対処で十分なものと唱えている。
(3)行政規制と民事規制の線引き
行政規制は専門家の判断が介在してから初めて規制される点がメリット。民事の制度にしてそれが濫用されるようなものは、かえって競争の萎縮を招くから制度化してはならず、そういうものが行政規制になじむとされる。

4.私見
独占禁止法との接点についてはさまざまな見解はあるものの、すんなりくるものではある。
今の興味の対象は成果冒用についてなのでこれに絞ると、インセンティブに着目する田村教授らしい見解であることが特徴だ。確かに、不正競争防止法2条3項はインセンティブ論に基づき定められたと思える法規制である。しかしながら、この考えに基づくなら、かなり広範囲の成果冒用も規制できる。どこまでが許されるのかより絞っていく必要があるのではないか。

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posted by かんぞう at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[不正競争]商品形態のデッドコピー

不正競争防止法2条3項で商品形態のデッドコピーが一定期間(条文は3年としている)規制されている。
商品形態は意匠法や商標法で保護されうるが、出願−登録という一連の手続きを経ないと保護されない。登録を基に発生する排他的独占権による保護では、商品形態としてもつ顧客吸引力の寿命が短いものに対する投資を保護されない。
そこで、EUがデザイン法11条で3年間非登録のデザイン保護を定めたのを受けて、日本でも平成5年に不正競争行為として明示されるにいたった。

ではなぜ、商品「形態」に限られたのだろうか?
顧客吸引力を持ち、かつ、他の知的財産法では保護されないものもあるのではないか?商品でない物の名前や新聞の見出しなどがあるだろうし、あるいは特定の商品をあらわす色というのも形態のように顧客を吸引していないだろうか?
これを競争関係にある者がそのままフリーライドすることは規制できそうにも思える。

まずは2条3項の法制定過程に注目する必要がありそうだ。
posted by かんぞう at 20:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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