2007年10月02日

[不正競争]ヌーブラ事件の評価

西井志織「不競法2条1項3号該当行為に対する損害賠償請求の主体――ヌーブラ第1事件――大阪地判平成16・9・13」ジュリスト1314号(2007年)読書メモ

東京大学Dr.コース所属の若手研究者による論稿がジュリストに掲載されていた。取り扱っている事案は著名なものであるし、ある程度議論が出ているものであるが、非常に明快に整理がなされていた。

■論文の概要
まず、不正競争防止法2条1項3号の請求主体については、資本労力を投下して商品化した者に限られるとする考え方と、他のアクターも主体になることができると言う考え方に大きく分かれる。西井さんは後者の考え方の多くの背景には公正な競争秩序の維持を目的とする「摸倣の阻止」が根拠となっていると指摘され、その上で、本判決が「公正な競争秩序」維持のためにいたずらに請求主体が増えることは望ましくないと触れていることに言及されている(181頁)。
次に、本判決が請求主体として認めた「商品形態の独占について強い利害関係を有する」者の理解として、類似する同一部の判決を手がかりに、本来的な請求者である資本労力を投下して商品化した者からの「伝来的な」者(特許権の場合における独占的通常実施権者と同じ立場)をいうのではないか、とした上で、その具体的な判断基準に2つの可能性を検討されている。
1つ目として、本判決に続く判決に言う「開発者の独占的地位に基礎を有する」地位をもつ者、という基準を検討され、その場合、なぜその者が請求主体となりうるといえるかについて積極的な理由が無いと批判される(182頁)。
2つ目として、上記のように理解せず、独立した基準として考える場合を検討され、その場合、積極的な理由付けが無いと批判される。
また、仮に「伝来的な」者であるとするならば、特許権の場合においては「伝来的な」者は差止め請求権を有しないことを指摘し、解釈論としての整合性を問題視されている。
その上で、西井さんは、平成17年改正前の3号の理解と言う限定は付した上で、3号は資本労力を投下して商品化した者の保護規定と解されることから、その趣旨にそう理解をすべきとされ(つまり、資本労力を投下して商品化した者に限られるとする考え方を支持)、そのうえで、債権者代位権の可能性を行使すべき(つまり、方向としては、井上由里子「不正競争防止法上の請求権者--成果開発と成果活用の促進の観点から」日本工業所有権法学会年報29号(2005年)141頁以下に賛同)と述べられている。

■私見
なるほど!と正直なところ感じさせられた。

請求主体の判断基準を巡っては、そもそも3号の性質論によるところが大きい。私自身は、2条1項3号の請求主体については、宮脇准教授の説明(宮脇正晴「判批」判評567号37頁以下)が説得的と考えていたが、少なくとも平成17年以前の3号解釈論として、立法者が明確に示した性質論をなぜ無視できるかが説明しにくいところではある。
ただ、17年改正で「日本で最初に販売されてから」という行が足されたことにより、「投下資本回収の危険」を保護する性質に転化したようにも思われる…と未練は示しておきたい。

ともかくも丁寧な説明と、理論的な展開に、勉強させられるところが多々有る論稿である。今後のご活躍が期待できる若手研究者のお一人であろう。
posted by かんぞう at 01:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月12日

[不正競争][著作権]高部判事が指摘した今後の課題を読む(その2)

■高部眞規子「知的財産訴訟 今後の課題(下)」NBL860号(2007年)41頁〜50頁読書メモ

□この論文の意義
営業秘密の保護が知的財産侵害訴訟に与えた影響をまとめ、それを具現化した制度の運用状況と課題に触れている。他方、著作権については、みなし侵害を巡る裁判例にも触れ、立法的解決の必要性を説くとともに、著作権事案に携わってきた判事としての本音を垣間見せている。
(ただし、(上)に比べると、議論の力の入れ方が若干穏やかなように感じる。私としては(上)が特に興味深かった。)

□この論文の概要

(1)営業秘密にかかる証拠の提出を巡る制度の創設と運用の実態
営業秘密にかかる証拠については、特許法等において、秘密保持命令および裁判の公開停止が可能となっている。これにより、文書提出命令と組み合わせても、秘密が損なわれることが防がれることとなる。
このような制度の組み合わせは評価しつつも、裁判の公開停止については憲法上の論点がないではないとし、検討点であることを示唆している。他方、現状では秘密保持命令および裁判の公開停止がほぼ活用されていないことを指摘し、当事者の利益にかなう場合にはこれらの制度を活用していく訴訟運営が必要であると述べられている(注1)。

(2)著作権訴訟の現状、とくに、みなし侵害(間接侵害)について
伝統的な著作物についての訴訟の一部で多大な手間がかかる訴訟があることに触れ(注2)、これらは原告の訴訟戦略に問題がある、と指摘している。
著作権のみなし侵害については、間接正犯型や著作権侵害を専らの目的とする機器・サービスについては立法的解決の必要性を説き、他方で、それ以外の関与者の責任については裁判規範による柔軟な解決をすべきと説かれている。

□この論文についての私見

(1)営業秘密の証拠利用について
営業秘密保持のための裁判の公開停止と、憲法上の問題については、面白い。憲法は全く専門外であるが考えたくなる。
(以下、素人考え。まともな法学をやっている人ごめんなさい)素人が(勢いで)思うに、裁判の公開は、民事訴訟においては当事者の公正性の担保制度としての性格が主ではないだろうか。ならば、当事者の合意がある(公正性について当事者が納得している)上に、営業秘密のとの利益衡量をすれば、憲法上の問題はないように思う。もっとも裁判の公開規定の性格を松井茂記先生のように国民の権利のような性格で構成するならば、別論となる。
(素人考え終わり)

(2)著作権のみなし侵害について
利用者と権利者のバランスに言及されているあたりが、深く知財訴訟に関わってこられ、理論的にきちんと探求された判決を書いてこられてた判事の心意気が現れている。一部の批判のように高部判事は偏った方ではない。
なお、みなし侵害訴訟で、当事者が過去の裁判例をきわめて深く研究していたことが「面白い」と評価されている。裁判官にとってもわくわくするような問題なのだろう。

(注1)もっとも、秘密保持命令については人証尋問が少ないことに鑑みると使われないのはやむを得ず、裁判の公開停止が適用されるような秘密へのアクセスは停止を求める側にも不都合があることを指摘されている。
(注2)たとえば〔法律書籍事件〕〔国語教科書準拠教材事件〕を判事は挙げている。
posted by かんぞう at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月01日

[不正競争][著作権]Copyrights表示は品質等誤認表示か

大阪地判平成19年1月30日(平成17(ワ)第12138号)は、著作権が切れたいわゆるパブリックドメインにつき、(C)opyrightsという表示をつけることが不正競争防止法2条1項13号にいう、品質等誤認表示にあたるのではないか、といことが争われた事案である。

この裁判例は「不正競争防止法2条1項13号にいう品質」「確認の利益」について学生の勉強に良い材料となるように思う。

裁判所は、著作権法上の保護が存在すること、は13号に言う品質ではないとして、原告の請求を退けているが、他方、著作権法に基づく差止請求の不存在確認は認め、原告の商品を卸売りが買うのを避ける、という自体を防ぐ結論を導いている。

前者の点については、被告の主張が的を射ているように思うので、判決文を参照していただきたい。

この事件の面白さは、問題となった(C)opyrightsという表示が、会社名を表したロゴであったという点にもある。(※ちなみにCopyrights社のロゴは次のURLを参照。URL:http://www.copyrights.co.jp/home.aspx

直感的には原告が訴えたくなるのもうべなるかな、といった感じである。

※なお、この事件を知るきっかけとなったのは、FJneo1994さんの『企業法務戦士の雑感』2007年2月15日付の記事であった。いつも良質の情報をまとめられているFJneo1994さんには学ぶところばかりである。そして、恐れ多いのでトラックバックはできない(笑)
posted by かんぞう at 13:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月02日

[不正競争]市場地位権説を読んでみた

●満田重昭「不正競争防止法による知的財産権諸法補完の根拠」鴻常夫先生古稀記念『現代企業立法の軌跡と展望』(商事法務研究会、1995年)822頁〜読書メモ

1.この論文の意義
不正競争防止法と知的財産法の関係について、概念的な点から検討している。顧客獲得可能性という市場地位という無体の財産が不正競争防止法の保護法益であるとし、無体の財産を保護するという点で知的財産との連続があり、これを補う関係があると述べられているらしい。らしい、というのも伝統的なドイツ流の議論の仕方で、ちょっと読みづらくて…。何が言いたいんだろ〜と思い悩んだのは、きっとオイラの勉強が足りないのだろう。

2.この論文の概要
(1)問題意識

知的財産法は、排他的支配権を設定するものであるが、それは行為規範の典型的なものとしての設定であり、その点で不正競争防止法と同質性がある(824頁)。権利付与かそうでないかという違いをいたずらに強調する意味は無い。では、更に進んでどういう点で連続性があるか(または無いのか)を、不正競争防止法の理論的根拠を見ることにより検討する。
(2)不正競争防止法の理論的根拠
不正競争防止法の元となった、1925年ヘーグ会議での経緯に基づけば、「営業体の有する顧客吸引力」がその根拠であるとされる。顧客吸引力に裏付けられた顧客獲得可能性は無体財産として捉えることができるが、これは競業関係の中でのみ削がれるものではない。市場地位という権利を考えることは、問題を単に競争者間に押し留めない点で有益である。また、権利として観念することで、政治的・経済的自由の保護も意識される。
(3)顧客獲得可能性の保護
顧客獲得可能性の侵害行為に対しては、不正競争防止法に一般条項が無い現状で、利益考量による違法性認定を経て一般不法行為の問題とするべきである。

3.私見
市場地位権の論拠は、結局のところ、不正競争防止法の規定の仕方からの解釈、および、「母法」での経緯にあるのでは無いか、と思われた。なぜ、「市場地位権」を観念しなくてはならないのかという必然性については疑問を感じる。
この点については、田村教授が不正競争防止法をわざわざ私法として意識するための「権利」概念であり、少なくとも立法論としては自由に考えられる、との批判をされている(『競争法の思考形式』(有斐閣、1999年)5頁)(また、2005年11月10日の記事参照)。
ただ、その有用性は2点あるのではないか。今後、検討する余地があるように思われる。
・行為規範を利益衡量によって決する立場からは有用である可能性がある。市場地位という権利をどのように根拠付けるかによるが、仮に営業の自由の表れとして理解するのであれば、利益衡量の中で劣後しやすい単なる財産権以上の考慮がなされることになるように思われる。
・少なくとも不法行為の問題場面では、不法行為理論との接合が容易であると考えられる。
posted by かんぞう at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月02日

[不正競争]形態模倣禁止についての田村教授の考え方

デッドコピー論を唱える田村教授が、不正競争防止法2条1項3号についての考えを若干ではあるが、触れている論考があったので、メモとして残す。

・2条1項3項の原則論は、模倣はいいが、デッドコピーはだめ
・営業の模倣は、先行者としての信用が蓄積されるからデッドコピーを禁じなくてもさほど害は無い。
「不正競争防止法に関する裁判例と法改正の動向」(第二東京弁護士会知的財産法研究会編『不正競争防止法の新論点』)

後者の点はホントかー?とも思う。この枠組みを不法行為の中で使っていくことは避けたほうがいいのではないか?今後研究を進めてみることとする。
posted by かんぞう at 13:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月02日

[不正競争]2条1項3号請求主体その2

事実上、営業の主体が交代し、別法人にその営業が引き継がれたばあいの請求主体の問題は考慮すべき点がある。
具体的には、一澤帆布の問題が挙げられよう。
posted by かんぞう at 14:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月14日

[不正競争]2条1項3号の保護法益

形態模倣禁止規定の保護法益については、論者により若干ニュアンスが違う。注意が必要である。

1:商品形態開発のインセンティブ
 →異論は無いと思われるが、意匠権の保護と重複する面(意匠権は創作的な形態の開発インセンティブ保護も法益としていると考えられる)があり、単独の論拠としては弱いのではないか?

2−(1):先行者の商品開発投資に基づく利益保護
 →「投資」を保護法益とすることとなる。デッドコピー規制の説明として説得性はあるが、先行者に限られるとするのはあまりに論拠1にこだわりすぎてないかというきらいがある。蓋し、バラエティー豊かな形態を開発し、他者へライセンスすることもビジネスとして成り立つモデルだからである。
 ⇒請求主体につき、先行者限定説に結びつく

2−(2):商品形態の投下資本の回収を自由競争の中で回収する利益の保護(宮脇説?)
 →「投資」を端的に保護法益とすることとなる。デッドコピーをなぜ禁止するかという点を考慮すれば、説得的な説明ということができよう。なお、宮脇説?としたのは、同号の請求主体に関する論文(宮脇正晴『判批』判例評論567号)からそう読み取れたよ、ということを意味する。
 ⇒請求主体につき、先行者限定説に結びつく

3:競争秩序(競争成果歪曲の防止)
 →渋谷先生の教科書を読むとそのようにお考えなのでは…と若造は思うのである。
posted by かんぞう at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月07日

[不正競争]2条1項1号・2号の請求主体

●中山信弘「不正競争防止法上の保護を受ける地位の譲渡可能性」小野昌延先生還暦記念論文集『判例不正競業法』41頁(発明協会、1992年)読書メモ

1.この論文の意義
バター飴缶事件(札幌高裁決定昭和56年1月31日無体集13巻1号36頁)の判例評釈を中心として、不正競争防止法2条1項1号・2号の保護法益を明らかにし、その請求主体の地位の承継は営業譲渡を伴うの場合以外には認められえないとするものである。

2.この論文の概要(2条1項1号・2号の請求主体に関するものについて)
(1)両号の保護法益
2条1項1号・2号は、商品等表示を独立した財産権のように保護するものでなく、営業と一体となったグッドウィル(顧客吸引力)するものと考えられる。それゆえ、請求主体の地位の承継が認められるか否かは、営業譲渡を伴う場合と、そうでない場合を明確に分ける必要がある。
(2)場合わけ
(i)営業譲渡を伴う場合
グッドウィルの移転があるか否かが問題となるのであり、会社法上の手続きがとられたかは問題とすべきでないとする。すなわち、営業譲渡か否かについては解釈の余地が存するのである。
その上で、営業譲渡がある場合は請求主体の承継を認めるべきであるとする。なぜならば、企業の再編によって突然保護される地位が失われるのは不当だからである。
(ii)それ以外の場合
商号や商標権については権利変動について諸々の規制をかけている。他方、商品等表示につき自由な譲渡性を認めるのであれば、バランスを欠く。また保護法益を考慮しても、請求主体の地位の譲渡性を認めるべきでない。

3.私見
説得的な見解であり、賛成する。
注意を要するのは、2条1項1号・2号の請求主体の地位の譲渡性が否定されるのは、その保護法益が営業と一体となった顧客吸引力だからであり、3号などでは同じことが言えるわけではない点である。なお、3号の請求主体については、宮脇正晴「日本国内における独占的販売権を与えられた独占的販売権者が、不競法2条1 項3号による保護の主体となるとされた事例−ヌーブラT事件」判例評論567号199頁〜が詳しい。
posted by かんぞう at 21:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月02日

[不正競争防止法]営業秘密の認定における秘密管理性基準

営業秘密性の3要件
1:有用性
2:秘密管理性
3:非公知性
のうち、通常問題となるのは2である。

裁判例を検討すると、内部者の持ち出しが問題となったケースばかりであり、外部との関係で問題となったケースは少ない。
ただし、学説においても経済産業省の営業秘密管理指針においても、内部者か外部者かで営業秘密認定の基準は異なることが示唆されている。

この考えは、裁判例にも現れている。
名古屋地裁平成11年11月17日判決は
「本件情報が、(a)秘密として管理されているといえるかであるが、本件情報に関する原告の主張は、本件情報を知ることができない外部者がそれを取得したことを理由とするものではなく、本件情報を知る者がそれを漏らしたことを理由とするものであるから、本件情報の管理状況も、単に外部の者がそれを知ることができないような措置を講じていたというのでは不十分であり、本件情報に接している者がそれを漏らしてはならない秘密であると認識できるような措置を講じていたことが必要である。」
と述べ、裏返せば、外部者がそれを取得した場合には、単に知ることができない措置を講じているだけで十分との解釈ができる。

しかし、一方、ダスキン取締役会議事録事件判決では、外部者であっても文章から秘密管理性を認識できないといけないとも取れる判決が書かれている。

この基準は、もう少し精緻にする必要があろう。
posted by かんぞう at 12:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月27日

[不正競争]賄賂は少額ならOK?

不正競争防止法18条1項はおもしろい。刑法3条の範囲内である刑罰規定だ。
いや、なにがおもしろいかというと那須野太『不正競争防止法による知財防衛戦略』(日本経済新聞社、2005年)によると、これは外国公務員贈賄防止条約に基づき少額の賄賂はオッケーなそうなのだ。いわゆる途上国でみられる公務員による賄賂の要求は条約でもとめられなかったようだ。
posted by かんぞう at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月06日

[不正競争]生命倫理に関わる治験結果と機密保持契約

2005年10月にユネスコが「生命倫理に関わる世界宣言」を採択した。ここには生命科学に関わる治験結果は人類の間で共有すべきことが原則として定められている。
もちろん、これは宣言に過ぎず、国内において法的効力を持つものではないが、公序規定を通じて関わってくる可能性もある。そうすると営業秘密との関係、機密保持契約との関係はどうなるのであろうか。以下、この点にわずかであるが検討を加えたい。
infotree.jpg

企業内での情報取り扱いを例に挙げると、大きく3分できる。1つは管理された営業秘密。2つ目は、社外秘として取り扱われている情報。3つ目は公開情報である。

1つ目の営業秘密に当てはまる場合、これを公開せよというのはTRIPsで営業秘密保護をうたった意味がなくなるし、財産権保障の点から問題がある。

しかし、2つ目の点については問題となる場面が起こりうる。機密保持契約ではこの社外秘情報を対象とすることもありうるだろうが、これが人類共通の利益という理念に勝るか否か。社会的状況や、当該情報次第では秘密保持契約を破る場面があるのではないかと思う。

一方でアメリカがFTA(貿易自由化協定)締結の際、テストデータに対し保護を与えるよう求めているとのことである。ユネスコが求める人類全体の利益との調整は課題となろう。

→今後の課題
・アメリカが求めるテストデータ保護の内容は?
posted by かんぞう at 01:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月15日

[不正競争]タイプフェイスの保護

●宮脇正晴『不法行為法によるタイプフェイスの保護―ゴナ書体事件下級審判決
の示す要件論を中心に―』L&T No.22(2004年)読書メモ

1.この論文の意義
タイプフェイスのデッドコピーは不法行為に当たるとされたゴナ書体事件1審判
決を中心に、タイプフェイスの保護について論じているものである。保護の方策
について端的に論じており、法的検討の際に参考になるものと思われる。(とく
に成果冒用類型の不正競争行為について検討するときにも参考になる。)

2.この論文の要点
ゴナ書体事件1審判決は
(a)他の書体との対比において創作性があること
(b)不正競争の意図
(c)ほぼ全体にわたってそっくり模倣して制作、販売した
という要件を挙げている。
この要件を宮脇先生を分析されており、(a)は「商品の価値を高める競争」におい
てなされた投資の保護をあらわしていると考えられているようである。(b)につい
ては実際上機能した先例はないものの、元となる書体の販売後相当期間(たとえ
ば10年以上)経てからのデッドコピーにおいては不正競争の意図なしとして処理
できるという利点を挙げている。(c)についてはデッドコピーといっても完全なも
のでなくてもよいという点を強調している。

3.私見
要件(a)についての分析について賛同するものの、最終的に市場における多様性を
重視するかのような見解には疑問である。要は顧客吸引力を生じさせる差別化の
源泉に着目すべきと考える。
posted by かんぞう at 18:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月06日

[不正競争]知的財産権の行使と営業誹謗

知的財産権の侵害だー!(あるいは不正競争だ)として警告したところ、侵害の有無を争う裁判で侵害無しと判断された場合、それが不正競争防止法2条1項14号に該当するとして争訟化することがある。
具体的には、2パターンが代表的なものである。
1.販売者への警告
侵害(と考えられる)商品を販売している者に対し警告を送った場合、侵害がなければ、当該商品製造者への営業誹謗行為となりうる。
(図)

            Z
        (当該商品製造者)=権利侵害の第一義的な主体


  X →→→→→→→ Y
(権利者)   (当該商品販売者)

2.広告
侵害品である旨を広告する行為である。この代表例としてフレッドペリー事件(東京地裁平成13年10月25日判決)。

「いつ」のタイミングで「どのように」すれば営業誹謗となるかについては争いがあるようだ。
posted by かんぞう at 21:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月17日

[不正競争]デッドコピー規制

田村善之『他人の商品の模倣行為と不正競争防止法――デッド・コピー規制の具体的提案』(ジュリスト1018号、1993年)読書メモ

1.この論文の意義
平成5年の不正競争防止法改正(現2条1項3号形態模倣禁止)の下敷きとなったともいえる論文だろう。いわゆるインセンティブ論に基づいて成果冒用に対する法規制の枠組みを示すものである。

2.前提
新たな商品の開発がなぜ行われるのだろうか。1つの見方が、「他社に先駆けて市場におくことに利益があるから」というものである。要は、法的保護の有無にかかわらず、先行者は一定の期間、特定の商品を独占して供給することができるのだ。これにより先行者は独占レントを手に出来る。だからこそ、競って新商品開発が行われる。
しかしながら、技術の発達により新商品としての特徴であるデザインがデッドコピーされやすくなった。つまり、後行者が先行者の投資にフリーライドできる状況が顕在化したのである。そうであるなら、新商品開発インセンティブを法的に保護する必要があるのではないか、それがこの論文の出発点である。

3.この論文の要旨
(1)インセンティブ保護の必要性
新たな商品を他社に先駆けて市場に置くということは、市場に先行したタイムラグの期間中、新規開発部分に関して独占して販売することになり、投下資本を有利に回収できるということを意味する。商品開発には当然リスクを伴うのであり、投下資本回収が出来なければ新たな商品開発をしようとしなくなる。
デッドコピーが出来るようになった現状において、デッドコピーを禁止しなければ他者の成果にフリーライドすることでき、ひいては新商品開発のインセンティブは減少する。であるならば、一定の法的規制が必要となる。
(2)デッドコピーの禁止
もちろん知的財産権でカバーされているものもあるが、カバーされていないもの(著作物性のないもの、たとえば独自の模様の壁紙など。)やカバーされていても使い勝手が悪いもの(服のデザインが好例。商品のライフサイクルが短いので意匠権を取るメリットが少ない。)もある。そこで行為規制としてのデッドコピー規制を提唱するのである。
もちろん、模倣を禁止すべきとしながらも、そうであるならば創作性等を問題としなくてはならず不都合として、デッドコピーに限定している。
(3)具体的規制
@対象:「商品」のデザインの有形的な再製という形で第三者がデッドコピーすること。
ただし、競走上不可避な形態は除外。なぜ有形的なデザインに限られるかについては、(i)営業は模倣しても労力、費用、時間の節約になるとは思われない、(ii)コンピュータプログラムは著作権保護がある、(iii)データベースは特有の問題があるから除外すべき、との理由付けに立つ。
また第三者は、市場に具体的な競合関係にないものでも構わない。なぜらならば、ライセンスにより市場拡大するという方法が閉ざされることになるからである。しかし、コピーされる商品との間に同種性は要求させる。他の種類の商品からの利益還元は商品開発による投下資本回収の一環ではないからである。
A保護期間:投下資本の回収期間が目安。しかし、それだとあいまいであり萎縮効果をもたらすので明示が必要。なお、商品化の時点から保護が開始され、市場に出た段階で保護期間の起算を開始すべきとしている。
B請求権者:商品化を行った者。

4.私見
その後立法化されたものであり、参考にする価値は大きいように思う。
田村先生の枠組みによれば、商品形態はもちろん、無形ながらも商品形態といえるもの(情報のうち顧客吸引力をもつもの)もデッドコピーからの保護対象になりうるようである。その範囲はどこまでかは研究がいるだろう。また、データベースについては深く言及されていないが、その保護のあり方についても研究が必要だ(ってたぶん誰かすでに研究されているのだろうが…)。個人的には、デッドコピー規制でも十分ではと思っている。
posted by かんぞう at 14:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月15日

[不正競争]形態のデッドコピー規制

不正競争防止法2条1項3号導入審議経過

衆院126国会商工委員会第16号
川端達男委員の質問において、はじめてフリーライド=公正競争阻害という認識になったと評価されている。一方で、なぜ3年なのか、3年たてばフリーライドも許容されると誤解されないかと指摘した。
これに対し通商産業省産業政策局長・熊野英昭は成果へのフリーライドが不公正と考えられるべきだから先行者の投資回収期間に限られるべきとの政策的見地からの限定であると答弁している。3年という期間は各デザインのライフサイクルを元にしたとはいえ、やはり政策的見地からの決定である旨のべている。そして、3号の期間を過ぎてもなお不法行為対象となりうるとした。

なお、平成5年の審議においてはタイプフェイスも形態となりうるのではと指摘があったが、裁判例の集積にまかされることとされてしまっている。
posted by かんぞう at 13:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[不正競争][民法]競争行為と不法行為の関係

熊倉禎男『企業の競争行為と不法行為――相関関係説の影響と民法学への期待』(「法律時報65巻9号」、1993年)読書メモ

1.この論文の意義
(1)1993年の論文であることの留保
不正競争防止法改正前に書かれたものであり、細部において留意はいるが(たとえば形態模倣において不可避な形態が含まれるか否かが問題になるとの指摘があるなど現在では立法で解決されたものが含まれている)、本質的な点においては現在にも示唆はある。
(2)意義
熊倉先生は弁護士であり、不公正な競争行為に対してどのような法的アクションをとるべきかにつき実務経験を豊富に持っていらっしゃる。この論文では、不法行為としてしか請求できない場合において、違法性を相関関係で捉える説(吾妻説)の効用をご自身の経験をもとに説き、一方で不法行為での差止請求について認めるべきとの言及をされている。ただ、不法行為として請求するときの基準が細かに分析されているわけでなく、この点については研究対象になろう。

2.前提
不公正な競争行為に対しては不正競争防止法(平成6年までは不正競業法)が規制しているが、これに漏れたものであってもなお不法行為としての民事上の責任追及が可能である。では、いかなる場合に不法行為となるのであろうか?本論文は係る点が中心である。

3.論文要旨
(1)顔眞卿事件の経験
筆者が同事件の原告として理論構成をしたときの経験が語られている。博物館作品を撮影し出版することに対しては、博物館の許諾を得ることが慣行になっていたこと、欧州ではこれが「博物館の権利」として議論されている前提があった。そこで、欧州の「博物館の権利」として考えられているものを所有権の一部として構成できないか挑戦したのが当該事件である。この理論構成は裁判所の受け入れるところではなかったが、不法行為としては認められうるという見解を匂わせていた。しかし、不法行為では差止が認められないことから、原告はあくまで前記主張にこだわったとのことである。
(2)相関関係理論との関係
筆者は相関関係理論の効用として、第1に不法行為成立において「権利」のみがその対象でないとした末川理論を受け継ぐ点を評価している。(これは実際に民法改正において条文が改められたことから当たっているだろう)。第2に、予測可能性を保つための基準として被侵害利益と侵害行為様態の相関関係に定めた我妻の考え方は社会変化に柔軟に対応しつつ、高度の予測可能性を保つものができるものと評価している。ことに、競争行為が不法行為と評価されうるかにおいては基準の根幹となろう。
(3)差止請求権について
我妻の唱える本質は、被侵害利益ないし行為様態が極端な場合には差止が認められるべきものであると筆者は主張する。これによると、人格権を侵害する不法行為にのみ差止を認める現状の理解は改善されるべきということになる。
(4)不正競争独自の不法行為理論
違法性は様々な視点がありうるとし、不正競争分野での違法性判断基準が育てることを学説に期待して締めくくりとされている。

4.私見
理論的な参考とはならなかったが、方向付けにおいて大いに示唆を受けた。何らかの知的資産を法律上保護する場合、行為様態との関係において不法行為での保護がありうる場合がある。そしてその違法性基準を模索するのであれば、競争法理独自の基準も許されるのではないか、という思いを得たのである。もちろん、「独自の」とはいえそれはより細かく検証するからこそ独自性が出てくるという意味であって原則にはずれではいけない。自戒をこめておく。
posted by かんぞう at 12:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月13日

[不正競争]独禁法と不正競争防止法の位置づけ

田村善之『競争法における民事規制と行政規制』(「ジュリスト1088号」、1996年)読書メモ

1.本論文の意義
独占禁止法と不正競争防止法の差異、その規制のあり方を整理するものである。田村教授らしい視点からの整理が行われている。

2.前提
まず、独占禁止法も不正競争防止法も不正な競争行為を規制している点で共通であるという認識が前提である。その上で、独占禁止法と不正競争防止法の差異は次のとおり。
ut_uft.png

3.本論文要旨
(1)捉え方
満田重昭先生が唱える不正競争防止法の捉えかた方との対比で自説を展開する。満田先生は、顧客獲得可能性を保護する法と捉え、市場における公正な給付に到達する機会擁護のための法と考えている。これに対し、田村教授は競争が顧客を奪うのは必然であることから、結局は競争秩序維持と発展にしか不正競争防止法の目的は認められないとするのである。そしてこの捉え方では安易な規制を招きかないという弱点があることを同時に認めている。であるからこそ、違法とすべき行為を明確にすべきとし、明確でないと生じる競争の萎縮効果を懸念している。
(2)違法とすべき行為とは
@不当需要喚起
商品・役務が無駄に供給されるためこれは規制すべきとする。
A競争減殺
必要な供給を維持するために規制されるべきとする。
B成果冒用
フリーライドを容認すると必要な成果開発のインセンティブがそがれ競争社会発展にとって望ましくないと考えられる場合にのみ規制されるべきとする。そして、これは民事的な対処で十分なものと唱えている。
(3)行政規制と民事規制の線引き
行政規制は専門家の判断が介在してから初めて規制される点がメリット。民事の制度にしてそれが濫用されるようなものは、かえって競争の萎縮を招くから制度化してはならず、そういうものが行政規制になじむとされる。

4.私見
独占禁止法との接点についてはさまざまな見解はあるものの、すんなりくるものではある。
今の興味の対象は成果冒用についてなのでこれに絞ると、インセンティブに着目する田村教授らしい見解であることが特徴だ。確かに、不正競争防止法2条3項はインセンティブ論に基づき定められたと思える法規制である。しかしながら、この考えに基づくなら、かなり広範囲の成果冒用も規制できる。どこまでが許されるのかより絞っていく必要があるのではないか。

≫続きを読む
posted by かんぞう at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする