東京大学Dr.コース所属の若手研究者による論稿がジュリストに掲載されていた。取り扱っている事案は著名なものであるし、ある程度議論が出ているものであるが、非常に明快に整理がなされていた。
■論文の概要
まず、不正競争防止法2条1項3号の請求主体については、資本労力を投下して商品化した者に限られるとする考え方と、他のアクターも主体になることができると言う考え方に大きく分かれる。西井さんは後者の考え方の多くの背景には公正な競争秩序の維持を目的とする「摸倣の阻止」が根拠となっていると指摘され、その上で、本判決が「公正な競争秩序」維持のためにいたずらに請求主体が増えることは望ましくないと触れていることに言及されている(181頁)。
次に、本判決が請求主体として認めた「商品形態の独占について強い利害関係を有する」者の理解として、類似する同一部の判決を手がかりに、本来的な請求者である資本労力を投下して商品化した者からの「伝来的な」者(特許権の場合における独占的通常実施権者と同じ立場)をいうのではないか、とした上で、その具体的な判断基準に2つの可能性を検討されている。
1つ目として、本判決に続く判決に言う「開発者の独占的地位に基礎を有する」地位をもつ者、という基準を検討され、その場合、なぜその者が請求主体となりうるといえるかについて積極的な理由が無いと批判される(182頁)。
2つ目として、上記のように理解せず、独立した基準として考える場合を検討され、その場合、積極的な理由付けが無いと批判される。
また、仮に「伝来的な」者であるとするならば、特許権の場合においては「伝来的な」者は差止め請求権を有しないことを指摘し、解釈論としての整合性を問題視されている。
その上で、西井さんは、平成17年改正前の3号の理解と言う限定は付した上で、3号は資本労力を投下して商品化した者の保護規定と解されることから、その趣旨にそう理解をすべきとされ(つまり、資本労力を投下して商品化した者に限られるとする考え方を支持)、そのうえで、債権者代位権の可能性を行使すべき(つまり、方向としては、井上由里子「不正競争防止法上の請求権者--成果開発と成果活用の促進の観点から」日本工業所有権法学会年報29号(2005年)141頁以下に賛同)と述べられている。
■私見
なるほど!と正直なところ感じさせられた。
請求主体の判断基準を巡っては、そもそも3号の性質論によるところが大きい。私自身は、2条1項3号の請求主体については、宮脇准教授の説明(宮脇正晴「判批」判評567号37頁以下)が説得的と考えていたが、少なくとも平成17年以前の3号解釈論として、立法者が明確に示した性質論をなぜ無視できるかが説明しにくいところではある。
ただ、17年改正で「日本で最初に販売されてから」という行が足されたことにより、「投下資本回収の危険」を保護する性質に転化したようにも思われる…と未練は示しておきたい。
ともかくも丁寧な説明と、理論的な展開に、勉強させられるところが多々有る論稿である。今後のご活躍が期待できる若手研究者のお一人であろう。


