2010年06月10日

[意匠]意匠制度はどの方向に進むべきか:韓国を参考とする道も考えられる

松尾和子「意匠制度の将来」早稲田大学知的財産法制研究センター第31回研究会(2010年6月4日、東京開催)聴講メモ

本講義では活気のない意匠登録制度に刺激を与えるためにはどうすれば良いか?を考察したもの。大変広い視野で制度の在り方を俯瞰されており、多いに勉強になった。松尾先生のおっしゃっていたメッセージのいくつかをまとめるとともに、先生の講義を拝聴して考え、まとめた私見(拙いものであるが…)を述べたい。

本概要は筆者の責任でまとめたものであり、講義の正しい記録ではなく、講義を聞いて筆者の言葉で整理したものとご理解いただきたい。内容に含まれる誤りは全て筆者に帰する。正式な講義記録は年末に早稲田大学知的財産法制研究センターを通じて発表されるものと考えられる。引用される際は本記事ではなくそちらを参照していただきたい。

このような有益な示唆を得られる場を提供していただいた早稲田大学知的財産法制研究センターには改めて感謝したい。


■講義メモ
□世界の意匠制度の動き

世界の意匠制度を見ると以下のような動きがある。それぞれの国であるべき制度が探求されている。
・韓国では2010年1月から無審査・組物意匠の対象が拡大した(新たに無審査となったものは、靴、事務用品)。また、図面の要件も簡素化した。さらに2010年4月2012年からのヘーグ協定加盟に伴い備えて、同一の製品区分であれば100個の意匠を同時に出願可能となる(多意匠一出願)。(2011/1/1修正)

□制度改革・改善の方向性
問題意識の根底にある思想は以下のとおり。
・審査主義に凝り固まっていないか。
・企業側も審査された権利に依存しすぎていないか。
・デザイン創作活動の全体(マーケティング→デザイン開発(模倣対策を含む)→意匠権獲得)を意匠権がきちんと捉えているか。
ここから具体的に以下の3つの問題を考察する。
1)保護対象をどう考えるか
2)意匠権の形成手続きをどう改善するのが適当か
3)審査主義を修正する余地はないか

□保護対象をどう考えるか
古くから意匠と物品を不可分一体と見るかについては分かれていた。この背景には、意匠法は何を守っているか、という根幹に対する理解の違いから生まれたもの。しかし、意匠と物品の可分性については政策上合目的的に考えてよいのではないか。
欧州、米国では保護の範囲が有体性に関わらず法目的から決定されている(例えば、米国では動画の意匠も登録可能である(登録例として、USD577035、USD602498))。
実際、日本でも平成9年改正で部分意匠を加え、平成18年改正で画面デザインを追加しており、物品概念に操作を加えていると言える。
今後登場する新たな形態のインダストリアル・デザインがあるであろうことを考えると、有体の物品にこだわる必要はない。市場における取引の対象となるかで判断すればよい(もちろん、他の知的財産法との棲み分けを考慮する必要はあるが)。

□意匠権の形成手続きをどう改善するのが適当か
(1)多意匠一出願を容れる
一意匠一出願では意匠法施行規則別表が定める2,400の区分から「物品の区分」を選ばなければならず、また、「意匠ごと」に登録をしなければならない。
しかし、「区分」という言葉を用いていることから抽象的・概念的な物品が想定されていると解釈でき、一意匠を一の物品に罹る一の形態と狭く解釈すべき根拠はどこにもない(峯唯夫「意匠法第7条についての考察」『牛木理一先生古稀記念 意匠法及び周辺法の現代的課題』(2005年)249頁)。バリエーションを一出願の中に含むことができる余地は現行の意匠法にあるように思われる。

(2)図面の簡素化
日本では原則として6面図が要求される。非常に細かいため、気を使う(たとえば、しわがある場合、これが6面図の中で一致していないと、異なる意匠と判断されかねない)。しかし、欧州や韓国の運用(2010年1月から)は簡素な図面でよいとしている。
図面に対するコストが出願人の負担になっている現状がある。図面の簡素化を日本でも採ることが望ましい。ただし、峯弁理士の主張されるように、図面を補完するものとして意匠創作の思想、意図を述べたものを求めるようにすることが適切である。

(3)組物意匠の制度改善
日本では組物に関する詳細な物品表が設けられているが、これだと自由度に乏しい。また、同じ組物(またはその類似のもの)にしか権利が及ばないため、権利の実効性に乏しいとの指摘が実務上あがっている。間接侵害規定を充実させるべきである。

□審査主義を修正する余地はないか
ライフサイクルが短い製品、多品種小生産量の製品、デザイナー自身がデザインしたもの(デザイナーの立場が弱いためにデザイナーは資力がない)については、審査主義の下では意匠登録に向かわない。無審査主義を併存させる選択肢がありうるのではないか。
たとえば創作非容易性(意匠法3条2項)の審査を行わないとの考え方も採りうる。この考え方は侵害訴訟の場面で当事者の主張に基づき裁判所に判断させるというものである。この際、創作のポイントを出願段階で書かせることが併せて求められる〔筆者注:ただし、聴衆からは特徴記載との差異についてコメントがあった。〕。
また、公序良俗違反、混同を生じさせる意匠、機能のみの意匠を非登録とする実体審査(意匠法5条)も行わないとの考え方も採りうる。不正競争防止に基づく考え方であるが、これらの判断は当事者に委ねても良いのではないか。
さらに、一部物品に限って無審査主義とすることも考えられる。
これに加えて、デザイナーを保護するためにデザイン創作権という新たな権利を創設することも選択肢である。

■私見
□政策検討の材料として比較法研究の対象として韓国法をターゲットにすることも考えられる

松尾先生の提案されているところをまとめると、韓国の意匠制度(2010年改正も含む)に近いところがある。韓国に揃えるべきという価値判断から出発されたのでなく、デザイン活動を守るという視点から出発されての結論であることを考えると、面白い。
韓国はインダストリアルデザインの振興に努めており、意匠制度の磨き上げに対して力を入れている可能性がある。意匠制度の在り方を政策的に検討するあたっては、比較してよい材料なのかもしれない。
しかし、管見の限り日本で韓国のデザイン政策、意匠保護政策の立案プロセスを詳細に説明した資料は少ない。韓国法研究者からこれらの情報発信がなされるとありがたい。

なお、欧州の意匠制度との比較も参考になることは間違いないが、物品性概念がないために、例えば、新規性、捜索費容易性の判断は全物品を対象として行われると理解されている(注1)。制度設計の在り方について欧州の制度と韓国の制度を比較することも面白い。

□デザインの創作活動保護法としての再検討の必要性
意匠法制定時(明治32年に起源をもち、昭和34年に現行法体系が完成)や意匠法の学説が固まったとき(高田教授ら)には現状の不正競争防止法の体系はなく、両者の棲み分けは明確でなかった。今一度、デザインの創作活動の保護としての法制度の在り方を検討しても良いのかもしれない。
もっとも、その際に事業者を保護の程度と、デザイナーの保護の程度のバランスを図らなければならない。
例えば、無審査制度とすると小規模な事業者の権利取得には有効であるが、例えば税関で模倣物品を迅速に排除するためには不利に働くことが考えられる。無審査制度を容れるとしても松尾先生の提案のように部分的なものとするべきだろう。

□デザインの創作活動保護法としての再検討から浮かび上がる著作権制度への疑問
さて、ここで一つの疑問がわく。デザイン活動の保護、という観点で、なぜ著作権法によるダブルトラックでの保護(いわゆる応用美術も著作権で完全に保護すること)の提案がわいてこないのだろうか。フランスでは重複保護を行っており、二重保護は必ずしも法制度として違和感のあるものではない。

これを合理的に説明するには2つの可能性がある。
1)デザイナーの立場があまりに弱いか、デザイン活動が日本の経済活動の中で軽視されていて政策議論の対象となっていない
2)著作権法の枠組みがデザイン活動の保護に適切でないとデザイナー側が理解している

1)である可能性も乏しくないが、あわせて、2)の状況がある可能性はないだろうか。

たとえば、翻案権に加えて譲渡不可能な同一性保持権は、流行、製造コストなどによって表現の範囲に制約のあるインダストリアル・デザインにとっては、望ましくない権利であるかもしれない。また、10年〜20年でデザインサイクルがあると言われている中、死後数十年に及ぶ超長期の権利は障害以外の何者でもないのかもしれない。

著作権制度は古典的著作物(例えば、美術作品など有体物と一体として取り扱われることが前提であるもの)の創作活動を守ることには最適化しているが、それ以外に最適であるかどうか疑問がある。
そうはいってもビジネスは現状のルールを前提に動いてきている。現在の権利者の方の多く(つまり現状のルールにきちんと対応し勝ち残れた方々)はその制度について根底から覆す動機付けは持たない。
だからこそ、「権利者」以外で創作活動を行っている人の意見も聞いた方がいいように思うのだが…。

(注1)英国高等法院判決([2008] EWCA Civ. 3)により明確にされた。y.aizawaさんのブログ記事(2008年5月28日)「イギリス:共同体意匠権の有効性と保護範囲に新たな判断」『Aizawa's v66v 海外IP News&Tips』が大変参考になる。
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2010年04月13日

[意匠]意匠法24条2項の導入が禁反言法理に影響を与えるものでないことを明示した事例

〔ウェッジソール事件〕大阪地判平成21年11月5日 平成21年(ワ)第2726号(最高裁判所Weサイト 知的財産判例集掲載)
大阪地裁第21民事部
キーワード:意匠法24条2項、意匠の類否判断手法、禁反言

■事案
ウェッジソールに係る意匠の意匠権(意匠登録第1339016号、平成19年9月4日出願、平成20年8月1日登録。以下、原告意匠権といい、意匠権に係る意匠を原告意匠という)を保有する原告(X)が、被告ら(Y1、Y2)の輸入・販売するイ号物件がXの意匠権を侵害するとして輸入等の差止を求めた事案。
なお、原告意匠は筒部が5段になっているが、被告イ号物件は筒部が3段になっていた。
また、原告意匠に係る出願に対して公知であることを理由とする拒絶理由通知が下された際に、被引用意匠の筒部が3段であったが原告意匠は筒部が5段であることを強調し両者が類似しないことを強調していた。
さらに原告は原告意匠と同日に出願し、原告意匠の関連意匠としなかった意匠において筒部を3段とする意匠を採用していた。(下図参照)
100410IpGhost.jpg
図 原告意匠および原告出願意匠(参考)(出典:特許電子図書館 意匠公報)


■争点
以下の2点である。

(1)イ号物件は原告意匠に類似するか
なお、被告は複数の公知意匠が筒部が3段構造となっている点を指摘し、要部を筒部の段構造にあると主張している。他方、原告は段数の違いは共通点が与える美観を凌駕するものでもなく、また、意匠法24条2項制定(平成19年4月1日施行)後、物品の特定の部分をもって意匠の要部であるとする考え方は採用できないと主張した。

(2)原告の主張はいわゆる包袋禁反言にあたるか
前述の通り、原告は原告意匠に係る出願に対して公知であることを理由とする拒絶理由通知が下された際に、被引用意匠の筒部が3段であったが原告意匠は筒部が5段であることを強調し両者が類似しないことを強調していた経緯があり、イ号物件と原告意匠の類否の場面で段構造の違いの影響が小さいとすることは包袋禁反言にあたると被告は主張した。

(3)原告意匠権は無効事由を含むか
仮にイ号物件と原告意匠の類否の場面で段構造の違いの影響が小さいならば、そもそも原告意匠は公知であったと被告は主張した。

■判旨
結論として原告の請求を棄却した。

□(1)類否について
意匠の類否を判断するにあたっては、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して、意匠に係る物品について需要者の注意を惹きつける部分を意匠の要部として把握し、両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察 して、両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきものである。
原告は、意匠法24条2項制定後は物品の特定の部分をもって意匠の要部であるとする考え方は採用されないなどと主張する。意匠法24条2項は、意匠の類否判断が「需要者の視覚を通じて起こさせる美感」の類否に基づいて行われる旨を定めているところ、この観点でされる美感の類否判断の手法として、需要者の視覚を通じて起こさせる美感の観点から上記事項を参酌して本件意匠の要部を把握し、被告意匠がその要部における構成態様と共通するか否かを判断することは、むしろ同条項の趣旨に沿うものであり、かかる判断手法が同条項により排斥されたものとする根拠はない。
以上のように述べ、筒部の段構造が要部であるとしたうえで、要部が共通していないことを理由にイ号物件は原告意匠権を侵害していないと判断した。

□(2)禁反言について
傍論ではあるが、以下のように説示した。
原告は、本件意匠の出願経過において、本件意匠が 乙2意匠に類似し、意匠法3条1項3号に該当するとした拒絶理由通知に対し、本件意匠は乙2意匠に類似しないとする意見書を提出したものであるところ、原告は、同意見書の中で、…(中略)…筒部の絞りの段数の相違を強調して乙2意匠とは類似しないと主張していたのに、本件訴訟において、胴部の絞りの段数が乙2意匠と同じ3段である被告意匠との類否判断に当たり、段数の相違は需要者に与える美感に影響を及ぼさず、被告意匠は本件意匠に類似するなどと主張することは、出願経過における上記主張と相反するものというほかない。侵害訴訟である本件訴訟において原告が上記主張をすることは、禁反言の法理ないし信義則(民法1条2項、民訴法2条)に違反し、許されないものというべきである。そして、このように解することは、意匠法24条2項とは無関係に導き出されるものであり、同条項が制定されたからといって、かかる主張が許容されるものでないことは明らかである。

■コメント
□24条2項の制定が類否判断の手法に与える影響について

判決によると原告は以下の主張をしていたとまとめられている。
意匠法24条2項制定後は、物品の特定の部分をもって意匠の要部であるとする考え方は採用されない。すなわち、本件意匠は、意匠法24条2項によって、需要者の立場からこれを把握すべきである。

これまで物品の特定部分を要部とし、要部間の相違を比較する手法がとられてきた(注1)。上記「意匠法24条2項制定後は、物品の特定の部分をもって意匠の要部であるとする考え方は採用されない」との主張だけを一般化すると、従来にない考え方であると言えるが、このような見解(学説等)や裁判例は管見の限り見られず、一見すると不可解さが残る。

判決文ではこの記述の後に「古い時代の公知論を前提とする議論である」との記述があることから、おそらく原告側は、被告が公知である部分を除外し本件意匠の要部を把握するとの考えに基づいて主張したことが、従来のいわゆる創作説の立場に立った上で公知意匠との関係での要部の把握の仕方(公知意匠は要部認定において必ず除外する立場:公知意匠除外説)を採っていると評価した上で、創作説は24条2項制定後はとることができないのであるから、公知意匠除外説をとることは間違いであると批判しているものと思われる。その上で、混同説(注2)の立場に立った上で公知意匠との関係での要部の把握の仕方(公知意匠だからといって要部認定において必ずしも除外しない立場:公知意匠参酌説)を主張されたのではないか(注3)。

しかし、従来から公知意匠参酌説であっても公知意匠に関する部分は著しく低い評価が与えられていたことが指摘(注4)されており、本件の具体的判断において大きな影響を与えるものではないと推測される。

□禁反言について
類否判断の判断主体が需要者となったことで、あくまで需要者の目において類似していれば禁反言は問題にならない、との解釈は採ることができないと明示したものと考えられる。
そもそも意匠権者が権利範囲の外としたのであるし、意匠を創作する者の予測可能性を担保する点でも適切な説示といえる。

ところで、余談ではあるが、本件は禁反言との関係では興味深い可能性を示唆したように思う。
当事者の主張になかったようなので、仮定の話になるが、このような例も考えられる。
公知意匠と出願意匠の類否が問題となった場面で、ある構成要素の差異が出願時の需要者にとっては両意匠が類似していないとの評価を生み出す、との主張を意匠権者が出願経過においいてしていた。しかし、その後、権利行使の場面で、権利行使段階での需要者においては当該構成要素の差異があっても類似していると意匠権者は主張した。
意匠権者が以前の主張を翻しているものと評価すれば禁反言とすることは妥当であるが、単に出願時点での客観的現状を述べたものと評価すれば、これを禁反言とすることが躊躇われる余地もあるように思われる。需要者の視点は時の経過とともに変わる点が問題点を投げかけているように思う。

(注1)小谷悦司「登録意匠の要部認定と類否判断について」『牛木理一先生古稀記念 意匠法及び周辺法の現代的課題』(2004年、発明協会)240頁。
(注2)ただし、意匠法24条2項はあくまで判断主体を需要者とすると定めたのみであり、他の条文との関係を考えると混同説を採ったものとは評価することはできないとの指摘がある(小谷悦司「改正意匠法24条2項について」パテント60巻3号(2007年)6頁-16頁)。筆者もその理解をしている。
(注3)なお、両者の整理について意匠法24条2項制定前の文献ではあるが、加藤恒久「類否判断における意匠の要部」『判例意匠法』(1998年、発明協会)59頁参照。
(注4)加藤・前掲注3。
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2010年03月29日

[意匠]シンポジウム『デザインの本質と法的保護の未来を探る』を聞いて

早稲田大学知的財産拠点創成研究所『文と理の狭間からの飛翔 デザインの本質と法的保護の未来を探る』(2010年3月28日、東京開催)聴講メモ

デザイナーの目から見た意匠制度と、法学者が解釈により対応すべき点について議論を行う貴重な機会があった。なお、本メモは筆者の責任でまとめたものであり、シンポジウムにおいてパネリストが発言したと記述している部分についても、筆者の誤解によって誤りが含まれる可能性があることをご留意いただきたい。

■シンポジウムでの学び
シンポジウムの中で興味深かった点は以下の3点である。また、これに加えて、フリーランスのデザイナーが多数活動する中、デザインを実施する企業との関係ではフリーランスデザイナーの立場は弱いことから、安価・簡易な権利保護の必要性が五味弁理士、峯弁理士から指摘された。

(1)意匠法の目的=デザイン開発力の増強という観点への合意
デザインは需要を喚起させるためだけの「付加」価値ではなく「全体価値」との指摘が川崎教授からなされたように、時代の変化の中で「デザイン」の役割は単なる装飾を超えたものとなっていることが認識された。
その上で、意匠法を単に装飾が模倣されることへの対策と捉えることは目的の解釈として狭すぎ、産業の振興という観点に立ち返ると、デザイン開発力の増強と捉えることが意匠法の目的として適切であるということについて、パネリストの間で共通の方向性が確認できた。

(2)意匠法の類比判断基準
田村教授は意匠法24条2項も最高裁判例も一般需要者における美観を問題にしており、混同を要件とした訳ではないことを指摘された上で、同じような需要を喚起する意匠には権利を及ぼさないとの政策判断がありうるとかつて指摘された(加藤恒久『意匠法要説』(1981年、ぎょうせい))上で、田村教授は創作された意匠の要部について需要者の目から見て新たな需要(ただし、これは市場での利益にとどまらず、生活の豊かさなど広い解釈をとっている)な喚起するかを基準とすべきと述べられた。

(3)内部の構造の保護
意匠法上内部の構造が保護されないことは周知のとおりであるが、同じ立場を不正競争防止法がとっていることの問題点が田村教授から指摘された。
不正競争防止法2条1項3号条にいう模倣を誰の目で見るか(需要者の目で見るか、創作者の目で見るか)という点は法では定められていない。この点が争点となり得た事件として〔ベルーナ・RyuRyu事件〕(東京地判平成14年11月27日 判時1822号138頁)、〔同2審〕(東京高判平成15年5月28日 平成14(ネ)6392号)がある。需要者から見れば大きな違いであるが、創作者からすると同一ともいえるものであったが、裁判所は判断基準について詳細を述べることはせず同一性を肯定している。
フリーライドの防止によるファーストランナーの投資の保護、という観点からは判断基準は創作者になる。ただし、特許庁と裁判所の役割分担や、アイデア保護の否定という観点から考えると、広範な保護が行われるべきでなく、改変が容易であることが明白な場合に限るべきである。その観点からは前述の〔ベルーナ・RyuRyu事件〕の判断は穏当である。
第2に、内部の構造の保護である。不正競争防止法においても内部構造は裁判例で保護されないとの判断がなされてきた。これは意匠法上であれば、需要を喚起しないことから、保護しないとの解釈を採ることは適切であるが、市場先行の利益を保護する不正競争防止法2条1項3号では適切でない。にも関わらず2005年改正で内部構造が保護されないことが明文化されてしまったことは問題である、と田村教授は述べている。

(4)market-testingの許容
以下の点が五味弁理士から指摘され、非登録の制度併設の必要性が示唆された。
欧州ではライフサイクルの短いデザイン保護のためと、market-testingの機会保証のため(欧州での登録制度では1年間のグレースピリオドを有していることの不都合を埋めるため)、無登録の保護制度を無審査の登録制度に併設する形としている。
他方、日本では新規性喪失の例外規定(4条)の理由は、market-testingの保証にあるとされているが、実際はその間の模倣(デッドコピーを除く)の対策ができないことや手続き上煩雑であることにより活用されていない。
もっとも、この点については不正競争防止法2条1項3号によりすでにカバーされている領域があり、また、2条1項3号の解釈論で対処可能な領域もあるため、非登録の制度創設にあたっては不正競争防止法との関係について十分な考慮が必要であることが田村教授から指摘された。

(5)視覚性要件・物品性要件
解釈論としては視覚に限定せざるを得ないが、立法論としては触覚も含めてよいのではないかとの指摘が五味弁理士からなされた。峯弁理士からは形状を保護対象とすることさえ残していれば、視覚要件や美観要件は取り除いても良いのではないかとの意見が示された。他方、田村教授からはあえて視覚要件を突破する必要性はないとの指摘がなされた。
不動産を除くとして理由はかつて混同説があったためであり、これを除く理由は全くないとの指摘が田村教授から示された。ただし、物品性要件を取り除くことについては著作権法との切り分けから躊躇を覚えるとの意見も述べられていた。

■私見
□フリーランスデザイナーを考慮した制度設計について

フリーランスのデザイナーの活動へのincentive付与という観点で、現状の意匠制度では権利化の判断が困難であることや、コストがかかりすぎるとの指摘がなされていたが、これがあるからといってより安価で簡易な制度を設計する必要性について、政策上、決定的な理由にならないと私は考える。たとえば、意匠出願の仕方をデザイナーに十分教育する機会を設けた上で、出願料減免措置をとればよい。デザイナーの側も部分意匠の戦略的な出願という形でコストを抑える方策を採ることができる。現状の意匠制度で対応可能なのではないか。
しかも田村教授も指摘されていたように、不正競争防止法2条1項3号による保護の可能性もある。もちろん、デザイナー自身は請求権者になることができないこと(注1)は課題ではあるが、デザインの委譲にあたって相手方との契約で対処が可能なのではないかと思う。
むしろ、シンポジウムでは十分に指摘されていなかったと思うが、フリーランスのデザイナーを巡る問題は、提案したデザインを実施品にするにあたってデザイン上の変更がありうる(通常は行われる)という点が主なのではないか。もっともこれも現行の制度上致命的なものとは考えられず、関連意匠の更なる後出し(あるいは審査の繰り延べ)ができれば対応が可能である。
投資の回収という観点も指摘されていたが、あまり簡便な制度でかつ広範な制度にしすぎると、権利の薮が生じ、かえって投資回収の阻害要因になるところは悩ましい。とくに非登録の制度とし、かつ、広範な制度とした瞬間に、業界以外から権利主張をする者が現れかねないように思うのだが・・・。

(注1)なお、不正競争防止法2条1項3号で「営業上の利益」と言った際に最終商品を作らないデザイナーの利益は、同条が商品を問題としていることからこの中に含めることは難しいとの指摘が田村教授からなされた。
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2010年01月25日

[意匠]IP5での画面デザインの意匠制度による保護状況の整理

日本ではまだあまり使われていない(年間150件程度)画面デザインに関する意匠登録であるが、たとえば欧州ではOSメーカなどが積極的に画面デザインについて意匠登録を行っているようである。
覚え書きとして、主要国(いわゆるIP5)での保護状況とその根拠について、特許庁の資料(注1)をもとにまとめてみた。

□米国:画面デザインの保護=運用により○
根拠:審査指針1540.01(a)(注2)
保護の要件:物品(画面)に応用または具現化されてること

□欧州:画面デザインの保護=○
根拠:EU意匠規則1条(物品性を求めておらず、また、製品にグラフィックシンボルが含まれること明示している)

□中国:画面デザインの保護=運用により×
根拠:2006年に改正された審査指針で明示的に保護しないことが書かれている(注3)

□韓国:画面デザインの保護=運用により○
根拠:2004年に改正された意匠審査基準で保護することが明示されている
保護の要件:物品に一時的に具現化されること

(注1)産業構造審議会 知的財産政策部会「意匠制度の在り方について」(2006年)35頁を参考にした。
(注2)USPTO, MPEP:1504.01(a) Computer-Generated Icons
(注3)呂媛媛「中国における商品携帯の保護の現状―2008年改正専利法の特徴を中心に」Design Protect 83号(2009年)6頁。
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2009年07月17日

[意匠]スペアパーツに対する意匠権の制限

今村哲也「スペアパーツの意匠保護に対する権利制限の可能性とその妥当性」〔RCLIP第28回研究会(2009年7月17日開催)〕聴講メモ
(2009年9月13日追記)


※本聴講メモは筆者の責任で作成したものであり、それに誤りが含まれている可能性があります。また、本メモは、講義を受けて筆者が感じたことをまとめることが主眼であることをどうぞご容赦ください。
※※佐藤恵太・毛利峰子「スペアパーツ意匠保護に関する除外条項の適否」〔日本工業所有権法学会 平成21年度研究会(2009年9月12日開催)〕の聴講で得た知見も、重なるところがあるため追記しました。なお、報告概要のうち、佐藤・毛利発表による知見を含む箇所は「*」印を付しています。

■報告概要
1.背景

・1998年頃、欧州で議論が持ち上がった。その10年前に、独立部品メーカーが相次いで自動車部品の意匠権を巡り敗れる事案が続いていた(なお、そのうち1件では、独立部品メーカー側は意匠権者である自動車会社の支配的地位の濫用を問題としたが、その主張は受け入れられなかった)(注1)。*
・欧州・米国でも自動車のスペアパーツに限らないが、主たる議論は自動車が対象。性格には、欧州では「複合製品の構成部品で外から見えるもの」が対象。
・意匠権者、独立系部品メーカー、損害保険事業者、消費者がステークホルダー。

2.動向
(1)世界全体の現状

・国により制度が異なり、マレーシアでは意匠法による保護を認めず、デンマーク、フィンランドでは保護期間を限定している。英国、イタリアは特定の権利行使を制限し、ギリシアは一定期間経過後に報償金スキームを採用している。
・ドイツ、フランスは修理条項を有していない。
(2)欧州の動向
・2007年12月欧州議会は、(紆余曲折を経て)部品市場の自由化を目的とする場合のみ構成部品の意匠権の制限を認める(ただし、修理製品の出所を消費者が十分に通知されることを求めている*)法改正を加盟国に許容する欧州意匠指令改正案を可決。現在、閣僚理事会で審議中。
(3)米国の動向
・1989年クライスラー社のトラックのフェンダーに係る意匠権を、機能的な形状であることを理由に意匠権による保護を連邦裁判所が否定。この直前にデザイン権法立法の動きがあったことから、スペアパーツを巡りロビイング団体が芽生え始めたと考えられる。
・2007年台湾から輸入したスペアパーツをFord社がITCに意匠特許権侵害に基づき提訴したことを契機に、利害関係人がロビイング。議員立法(H.R.5632)提出がなされた。
・知的財産権利者団体は特許取得のインセンティブを減少させること、特許と意匠特許で保護の程度が異なってしまうこと、を理由に反対を表明し、弁護士団体のAIPLA(米国知的財産権法協会)は立法の必要性が無いことを理由に反対を表明している。
・他方、独立系部品メーカーは、(i)消費者の利益、(ii)スペアパーツに関する意匠登録件数の劇的な増加(注2)、かつ意匠審査自体の質が低いことによる市場の破壊、の2点を主張し賛成の意見表明をしている。保険業界は、競争的な部品が存在することで大幅に部品価格が低下すると述べ、賛成の意見表明をしている。

3.TRIPs協定との関係
・TRIPs協定25条、26条に抵触するとの見解がACEA(欧州自動車工業会)や、Joseph Strauss(注3)から出されている(StraussはWTOでのジェネリック薬品に関する特許パネルの判断基準を用いている)が、抵触しないとする見解もJosef Drexl(注4)らから提示されている。なお、TRIPs25条、26条では意匠の保護について著作権類似の相対権での保護や不正競争行為禁止規定での保護を許容するものとなっている。
・今村講師はTRIPs協定における意匠の保護に対する加盟国の裁量の広さに鑑みて、TRIPs協定で他の産業財産権の制限に対してこれまで示されてきた基準は適用されない、と考えている。(すなわち、Straussの見解には反対)

4.今村講師の見解
・TRIPs協定との関係では疑義は乏しい(理由は上記)。
・欧州では、域内市場の自由化という理由があったために正当化する要因があった。このような要因の無い日本ではこのような規程は難しい。また、意匠法改正の審議会が権利者により構成されていることに鑑みるとそのような改正は政治過程としても困難である。

5.高林教授の見解
・構成部品に限定して権利を制限することは少なくとも日本の意匠法体系上難しい。

6.その他
・イギリスのMust Matchでは、自動車部品が登録できなかった。これが欧州指令により改正され、登録できるようになったことは利点(会場からの指摘)。なお、意匠法による保護を認めないマレーシアは法改正を予定。
・欧州では市場でのデザインの価値の保護が意匠法の目的と共通して捉えられだしているようである。

■私見
1.制度の目的の解釈について(欧州の場合)

「外から見えるもの」に限定されている点が興味深い。これは、欧州意匠規則上、複合部品に組み込まれる部品については、外から見えるものに保護が限定されているためであると、五味弁理士から指摘があり、大変参考になった。
他方そのような背景の無い、米国でも同様に扱われた法案が提出されたのかは不明である。欧州で「外観の回復」が議論の出発点にあるためだろうが、なぜ外観の回復が特別に扱いうるのかは合理的に説明できないだろう(おそらく、議員立法であるので、十分に検討していなかっただけだろう…)。
このような限定は差別的と考えられる余地がある。(ただし、差別的な取扱いがTRIPs協定25条、26条に反するかは今後の課題)。
理由はいずれにせよ外から見えるものに限定していることは、制度目的の解釈に当たって大きく影響するように思う。例えば、サードパーティによる部品流通の促進(ひいては消費者の利益)という政策的理由からは整合的な説明は出来ない。ならならば、部品は外観から見えるものに限られない(例えば、エンジン部品など)からである。

2.TRIPs25、26条との関係
TRIPsとの関係について、著作権パネルや特許パネルでの判断基準は参考となりえないとの今村講師の指摘は鋭いものがある。他方で、たとえば「権利者の正当な利益を害さない」という要件に関し、最初の販売での投資回収で正当な利益は保証されていると述べるDrexlらの見解には、「部品」としての意匠が取得されている以上、本体製品に付随した販売だけを市場として想定していると考えることは疑問である。(なお今村講師はDrexlの意見に賛同されるかは明示していないことには注意)。TRIPs26条にいう「意匠の権利者の正当な利益を害さない」の詳細な解釈が必要であろう。直感的には抵触していると考えられる余地が少なくないように思う。
なお、仮に「第三者の利益」との比較衡量が可能なのであれば抵触しないと読むことも比較的容易に出来るだろうが、そもそも、26条は第三者の利益がある場合に、権利者の利益を害さないことを条件として制限を許容している文言となっているために難しいように思われる。

■参考資料
社団法人日本国際知的財産保護協会『特許庁委託 平成20年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業 各国における意匠保護の及ばない範囲の実態調査研究報告書』(2009年)

(注1)1988年に、独立部品メーカーが自動車部品の意匠権に関して裁判が2件登場。CICRA v. Renault[1988] E.C.R.6039では、意匠権で保護されたスペアパーツの保護が支配的地位の濫用にあたるとして、独立部品メーカーが提訴したが、敗訴した。Volvo v. Veng[1988] E.C.R.6211では、意匠権で保護された自動車部品を独立部品メーカーが無断で販売していたところ、意匠権者からは販売差止を求め、独立部品メーカーはライセンスを求めたが、独立部品メーカーが敗訴した。*
(注2)少なくとも日本の企業については中国での偽RV問題に対応するため、構成要素を各国で出願したために、出願が増加しただけであるとの重要な指摘が、会場の自動車業の知的財産担当者からなされた。
(注3)Joseph Strauss, "Design Protection for Spare Parts Gone in Europe?",27(11) European Intellectual Property Review (2005), pp.391-404
(注4)Josef Drexl, Reto M. Hilly, Anisette Kur, "Design Protection for Spare Parts and the Commission's Proposals for Repairs Caluse, 36 IIC (2005), pp.448-457, p.456
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2009年06月12日

[意匠]中国意匠権の権利範囲

初歩的なことを知らなかったので、備忘がてら。

中国特許法では、意匠権のみ「使用」が権利範囲に含まれていない。
専利権(特許権)や、日本の意匠権とは異なる。
また、特許権の使用についても日本と異なり「生産経営目的」であることが求められている。そうすると流通してしまった侵害物品は排除できないのだろうか…?
[中国専利法]
第12条
第1項
発明及び実用新案の専利権が付与された後、本法に別途規定がある場合を除き、如何なる単位又は個人でも専利権者の許諾を受けずに、その専利を実施すること、即ち、生産経営の目的で、その専利製品を製造、使用、販売の申出、販売、輸入すること、その専利方法を使用すること、及び当該専利方法により直接獲得した製品を使用、販売の申出、販売、輸入することをしてはならない。
第2項
意匠権が付与された後、本法に別途規定がある場合を除き、如何なる単位又は個人でも専利権者の許諾を受けずに、その専利を実施すること、即ち生産経営の目的で、その意匠製品を製造、販売の申出、販売、輸入することをしてはならない。
(出所:ジェトロ北京による訳)
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2009年05月07日

[意匠権]意匠権の通常実施権の登録事項のうち開示範囲制限

知的財産政策部会で、意匠・商標権の通常実施権について、特許権同様、登録事項の開示範囲を限定することが検討されている。事務局側の案では「通常実施権者の氏名等」および「通常実施権の範囲」の開示範囲を限定することは、実施または使用は公にされるものであり、制限する必要性に乏しいとして措置しないこととなっている(注1)。

しかし、意匠権の通常実施権の登録事項のうち、「通常実施権者の氏名等」および「通常実施権の範囲」の開示範囲限定は必要がないのだろうか。

たとえば部分意匠は、必ずしも一見して実施が明らかではなく、しかも、差別化の重要な要素としてその実施の事実を秘匿したいというニーズがあるかもしれない。

もちろん、ブラックボックス化して見えないような部分の意匠については、そもそも侵害判断の場面で評価されない(権利侵害とならない)と考えられるため(注2)、ライセンスを受けて実施していることを秘匿する必要は特許権に比べると極めて限定的であることは間違いない。

ただし、この議論にあたってはそもそもの問題として意匠権のライセンスがきわめて稀であることには注意しなければならない。ライセンス金額ベースでみると、特許権の約1/5000である(注3)。

だが、私は上記のような部分意匠などではライセンス活動が活発になる可能性があると思っているし、知的財産活動調査が示すように、大学等からのライセンスもいくらかは活性化する可能性があるのではないかと考えている。

(注1)産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会「意匠法・商標法上の通常実施権・通常使用権等の登録制度の見直しについて」経済産業省 産業構造審議会 第12回知的財産政策部会 配布資料(2009年1月)
(注2)知財高判平成20年1月31日(平成18年(行ケ)第10388号)。茶園成樹「物品を分解しなければ見えない部位と意匠法」L&T42号(2009年)73頁は、この判断を意匠法上正当な解釈とし、取引の円滑さを損なわない点においても妥当であるとしている。
(注3)特許庁『平成20年度知的財産活動調査』(2009年)によると、特許権のライセンス支出額(国内外企業からのライセンス。グループ企業外のみ)は1500億円に迫るが、意匠権は0.3億円である。
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2008年07月04日

[意匠]米国で意匠出願が少ない理由がわからない…

米国の意匠(特許)出願件数に注目すると、GDPとの比較でも、特許出願数との比較でも、他の主要な地域(日本を含む)に比べ、出願件数が圧倒的に少ない(注1)。

その要因は何なのだろうか?考えられるのは2点である。

■産業構造上の要因か?
一つは、産業構造として、意匠の保護が必要ないという可能性が考えられる。
企業が既に合理的な知的財産戦略をとっていると仮定すると、主要な国における出願が多い製品分野の産業が米国に少ない場合、「産業構造が原因である」と言える。そこで確かめてみると、意匠出願を積極的に行っているのは、「衣服及び身の回り品」「生活用品」「住宅設備用品」「事務用品及び販売用品」「電気電子機器器具及び通信機械器具」である。
これを米国の産業構造と照らし合わせてみる(注2)。
米国では、化学、食品、組立金属製品、コンピュータ産業が強い。
前者二つは意匠出願には結びつかないのかな…と思える産業である。コンピュータ産業については電気電子機器器具分野に入るので、意匠出願にも結びつきそうなのだが…。
一定の説明はつきそうであるであるが、自信はない。

■制度上の要因か?
あるいは制度上の要因も考えられる。意匠制度が使いにくい、意匠制度以外の保護が効果である、との2通りの可能性である。

意匠制度自体をみると、日本に比べ保護期間が14年と短い、グレースピリオドがあり1年間は権利が安定しないということがネックとなっている可能性はある。特に、デザインはその寿命が長くないと言われており、意匠出願を抑制する可能性はある。実務的にはどうなのであろうか?

他方、トレードドレスの保護が意匠出願を少なくしている要因とする見解もある(注3)。トレードドレスは、出所識別性がある、または、使用により識別力を獲得したものについて、誤認混同を防ぐ制度である。機能的形状は除外されているようである(注4)。なるほど意匠出願数を減らす可能性はあるが、形状の保護という観点では日本の不正競争防止法と差はない。日本に比べ出願数が少ない理由にはならないのではないか。
もっとも、日本においては不正競争防止法による保護が重視されておらず(注5)、米国ではトレードドレスによる保護が重視されている可能性もある。これも実務的にどうか気になるところである。

(注1)特許庁「平成18年度 意匠出願動向調査報告書 マクロ調査 (要約版)-」(2007年)19頁以下
http://www.jpo.go.jp/shiryou/pdf/isyou_syouhyou-houkoku/isyou_macro_cyousa.pdf
(注2)さしあたって「産業構造変化と経済成長(総括)」『3rdworldman's Blog』(Tooru Ozawaさん)を参照。
(注3)前掲注1・20頁。
(注4)制度の概要については、アーサー・R・ミラー=マイケル・H・デービス(著)藤野仁三(訳)『アメリカ知的財産権法』(八朔社、2008年)、板垣忠文「米国における「Trade Dress」の保護について」パテント Vol.60 No.4(2007年)76頁以下参照。
(注5)もっとも、特許庁「平成18年度 意匠出願動向調査報告書 デザインの開発・管理・保護・出願戦略に関する調査(要約版)」(2007年)5頁
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/isyou_syouhyou-houkoku.htm
を見る限りでは、不正競争防止法の活用が少ないとは思えない。
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2008年01月29日

[意匠]Informed Userを判断主体として意匠の構成要素を重み付けし類比判断を行う手法

RCLIP22回に参加してきた。
五味飛鳥弁理士の類比判断基準に関する試論が展開されて非常に興味深かった。
サイバーさんとのお約束もあるので、まずは速報としてメモを…(整理に乏しくて恐縮だが)

■概要
人が「似ている」と判断する評価手法に注目したとき、同種のものとの共通点と差異点について、その物と判断主体との関係性から重み付けを行う、という前提から出発したとき、裁判例が近時一致して採用する類比判断基準(物品の使用態様等を考慮するほか、公然知られた意匠にかかるものと同一の意匠にかかる部位であるか等を考慮する基準(注1))は、似ていると判断する評価手法に親和性がある。この手法は、デザイン保護に適していると評価する(価値評価である)。
ただし、この手法(公知意匠との関係を考慮しつつ、通常の用法を考慮して要部を決する基準)の場合、双方の考慮要素に特徴がある要部の認定ができないことを問題である。
双方の考慮要素が独立してしまうのは、通常の用法を考慮する者が公知意匠を知らないという前提の場合であるから、これを回避するためには、判断主体を公知意匠についてよく知っている者(Informed User)であるとするとよい(なお、ここでOHIMの需要者の判断基準が参考になる)。

■私見
結果的には現状追認型の理論に見えるが、デザインの機能という基礎からのアプローチも試みられていらっしゃり面白い(もっとも、「似ている」と判断する評価手法はデザイン関係者の間では一般的な手法なのだろうか?私は知見が無いからわからないのだが…)。
質疑応答でも挙げられていたことではあるが、3条1項3号においても同様のことが言えるのか、理論的に詰めることができれば、すばらしい完成度になるのではないだろうか。
この試論が面白いところは、従来の創作説、需要説の枠にこだわらなかったところであるが、理論的なコアは創作説的なところにあるのかなぁといった印象であった。

(注1)典型的には〔ゴルフ用ボールマーカー事件〕知財高判平成19年3月27日をあげていらっしゃった。
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2008年01月07日

[意匠]意匠法3条にいう「公然知られた」の意味

意匠法3条1項1号、および、3条2項における「公然知られた」の意味を指摘するものとして、牛木理一「最高裁判決は絶対なのか−意匠法3条1項・2項の解釈と適用−」知財ぷりずむ2007年11月号《牛木内外特許事務所へのリンク》論稿冒頭部より21頁が勉強になった。備忘のため記事とする。

〔電子オルガン事件〕(東京高判昭和54年5月30日)において、3条1項1号に言う「公然知られた」とは、3条1項2号が「頒布された刊行物」について規定していることとの関係を鑑みれば、「字義通り現実に知られている状態にあることを要する」(判決文)と示された。

上記判決に反する上級審判決がなく、上記判決は現在においても参考なると考えられる。なお、上記判決が示された当時は、3条2項は「広く知られた」との書き振りであったが、平成10年改正で「公然知られた」と改められたため、この理解は、3条2項にも当てはまるものと言える(牛木・前掲21頁)。

ただし、牛木弁理士は、商品カタログについては、刊行物公知にとどまらず、事実上の公知性を推認してもよいのではないかと述べられている(牛木・前掲21頁)。他方、牛木弁理士は、特許公報、意匠公報は、事実上の公知性を推認することは難しいと考えられているようだ。

実際上は、商品カタログの頒布の範囲などを考慮しなければならないように思うが、デザイン関係の慣行を考慮すれば、展示会などを通じて広く流布されるものについては牛木弁理士の説く理解があてはまるだろう。

特許公報、意匠公報については、当業者に限っては先行技術調査、先行意匠調査を行っていることが多い状況さえ確認できれば、事実上の公知性が推認できるように思う。実際のところはどうなのだろうか。
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2008年01月06日

[意匠]意匠の類否判断主体を巡る見解の整理(暫定版)

意匠の登録要件としての、公知意匠との類否の判断主体については、いまだ勉強途上であるが、興味深い論稿に触れ、おおまかな整理を試みたのでここに紹介する。

本整理において大いに参考となったのは、牛木理一「最高裁判決は絶対なのか−意匠法3条1項・2項の解釈と適用−」知財ぷりずむ2007年11月号《牛木内外特許事務所へのリンク。入手しにくい(注1)論稿をウェブで公開してくださる点、牛木先生に厚く感謝申し上げます。》、および、土肥一史「同一・類似の物品の意匠と意匠法3条2項の適用」別冊ジュリスト188号『商標・意匠・不正競争判例百選』(2007年)100頁−101頁である。
前者の論稿は、昨年施行された改正24項2項への強い反発の思いが表れていらっしゃるのか、全体としては若干読みづらくも感じられたが、重要判例として取り扱われる〔可撓伸縮ホース事件最高裁判決〕(最判昭和49年3月19日民集28巻2号308頁)当時の制度背景と、それに沿った解釈論の適否を述べるものとしてはわかりやすかった。

■〔可撓伸縮ホース事件最高裁判決〕の背景を鑑みた類否判断主体に関する解釈論の適否ご存知のように、〔可撓伸縮ホース事件最高裁判決〕は、3条1項3号は同一物品の公知意匠との類否は一般需要者を判断主体とする、と示した判決である。
佐藤繁調査官により、「物品混同説と結び付けて理解する向きがあるとすれば、おそらく判決の真意ではない」(注2)との指摘が当時からなされているが、少なくともいわゆる創作説(判断主体を当業者とするもの)を否定したものとして同判決は理解されているように思われる。
しかし、牛木弁理士は以下の難点を指摘する。
・3条1項1号〜3号に対応すると読める、無効審判の除斥期間に関する規定(旧49条)のうち、3条1項3号に対応すると考えられる旧49条3号は、当業者を基準として創作性を欠く意匠と明示していることと整合性を欠く
・仮に一般需要者における「混同」を問題にしているならば、物品に関わらず他人の業務にかかる物品との混同を生ずる恐れがある意匠の登録を禁止する5条2号があることの説明がつかない
・仮に一般需要者における「混同」を問題にしているならば、それまでの意匠法の制定、改正の沿革上、商標法や不正競争防止法との保護領域の観点からの検討が加えられたことがなく、異質の考慮である(意匠法は特許法や実用新案法と同じく創作保護法であり、特許法や実用新案法と同じく当業者間における登録の適否を判断するべきである)
特に、第1の指摘は説得的である。少なくとも、上記最高裁判決が出された当時においては、3条1項3号の判断主体を当業者とする理解(いわゆる創作説)の方が文理解釈上優れていたと私は考える(注3)。

■現在の法における各理解の優れている点、難点の整理
しかし、現在、旧49条3号規定は削除されている。また、その後の研究では、単に創作説と混同説という対立ではなく、いわゆる需要説という考え方も現れている(注4)。
また、24条2項が設けられたことも当時と異なっている。

そこで、それぞれの理解の優れている点、難点を考察し、おおまかであるが整理を試みた。非常に乱暴な整理であるが、私のような初学者が議論を考えるとっかかりとなるのではないかと考えている。詳細な点を省いている点はなにとぞご海容いただきたい。理解の誤りについては、ご指摘いただければ幸いである。

【混同説】
□概要
・意匠を見る者の注意を引きやすい部分について、一般の需要者が誤認・混同をするかにより判断する。(それゆえ、公知意匠であることを参酌しない=公知意匠も要部として認定されうる)
□根拠
・取引者・需要者による混同を排除しないと意匠権を保護する実質的意義を喪失するため。
□優れている点
・平成19年に改正された24条2項と整合する(なお、同項は権利行使の場面における類否判断主体について規定したものであるが、本理解によると登録要件と権利行使の場面における類否判断基準が一致することになる)。
・意匠登録されているものであれば(理論上は)出所混同が生じないことが保障される。
□難点
・5条3号(他人の物品と誤認混同する意匠の登録の禁止)の存在意義が説明しにくい。
・法制定・改正の沿革に沿わないとの指摘がある(注5)。
・部分意匠制度の導入により物品の混同を防ぐことが意匠法の目的との説明が困難になった(注6)。
・権利行使の場面での類否判断では、公知意匠を参酌する必要があり、理論的には美しくない(注7)。
※なお、一般需要者=常にエンドユーザーと理解するのであれば、部品として用いられる意匠について説明がつかない(注8)。

【需要説】
□概要
・新しい需要を起こすことが期待される構成を背景とする美観の異同により判断する。(それゆえ、公知意匠を参酌する=公知意匠は要部として認定しない)
□根拠
・意匠法の目的は、取引者・需要者にとっての意匠の機能の保護にあるとの理解。
□優れている点
・平成19年に改正された24条2項と整合する(なお、同項は権利行使の場面における類否判断主体について規定したものであるが、本理解によると登録要件と権利行使の場面における類否判断基準が一致することになる)。
・公知意匠を参酌する現状の運用と整合する。
・立証においては需要者へのアンケートを行うことにより統計的な立証が可能。
□難点
・法制定・改正の沿革に沿わないとの指摘がある(前掲注5参照)。
・意匠法の目的の理解としては一般的でない(?)。

【創作説】
□概要
・当業者にとって創作容易か否かをもって類否を判断する。(それゆえ公知意匠を参酌する)
□根拠
・意匠法の目的は、特許法・実用新案法と同じく当業者間における創作の保護であるとの理解。
□優れている点
・公知意匠を参酌する現状の運用と整合する。
・当業者にとっては(理論上は)類否判断が容易。
・5条3号との関係が説明しやすい。
□難点
・平成10年改正により3条1項3号、3条2項ともに「公然知られた」意匠との関係が問題となることとなったため(注9)、なぜ両条文に規定を分けたか説明が難しい。
・平成19年改正の24条2項との関係では整合性の面で美しくない。
・創作保護法との理解に基づく説明は、特許・実用新案がアイディアを保護しているのに対し、意匠が「表現」も関わる点を保護していることの差異を考慮すれば、決定的な理由とならない可能性がある。(言い換えると、表現である以上、需要者もそれをもって識別することになりうる。創作する意義が、外観によるの差別化にあるとするならば、意匠の意義として識別性を考慮することが適切と考えられる余地があると考えられる。)また、不正競争防止法的な観点を欠くという説明は5条3号の存在を説明できないのではないか。

(注1)経済産業調査会編『知財ぷりずむ』は入手が難しい。
(注2)佐藤繁「同一又は類似の物品の意匠と意匠法3条2項の適用」最高裁民事判例解説昭和49年(1974年)318頁。
(注3)積極的な賛否を述べるものではないが、土肥一史「同一・類似の物品の意匠と意匠法3条2項の適用〔可撓伸縮ホース事件〕」別冊ジュリスト188号『商標・意匠・不正競争判例百選』(2007年)101頁は上記点を重視し、創作説を「当然にありえた」と評価されている。
(注4)鈴木將文「意匠の類否判断基準〔衣装ケース事件〕」別冊ジュリスト188号『商標・意匠・不正競争判例百選』(2007年)102頁の整理に従った。なお、需要説は意匠が需要喚起につながっていることを鑑みて、需要者の観点からの類否を考えるべきとする理解である(その意味で、出発点は混同説に近い)。需要説について牛木弁護士の整理の中では触れられていない。混同説の1つとして整理されている可能性があるが、判断主体が混同説と同じとはいえ、アプローチが異なっており、後述するように難点についても差異が顕著であるように思われる。
(注5)牛木弁理士の指摘されるところであるが、疑問もある。意匠法の理解が広義の競争秩序維持法としての理解に変容していった、といえるのであれば、これまでの沿革は決定的な理由ではないように思われる。なお、知的財産法を広義の競争秩序維持法として理解する方向性を示唆するものとして、白石忠志『独占禁止法』(有斐閣、2006年)334頁。
(注6)鈴木・前掲注4 103頁。
(注7)私には「美しさ」の問題であるように思うが、この点は異論があるかもしれない。今後検討したい。
(注8)牛木理一・前掲「最高裁判決は絶対なのか−意匠法3条1項・2項の解釈と適用−」知財ぷりずむ2007年11月号、論稿冒頭より24頁目の批判は、需要者の理解をエンドユーザーとのみする説明を批判されており、混同説に対する批判としてはミスリードではないかと思われる。
(注9)それまでは、3条1項3号が「公然知られた」、3条2項が「広く知られた」と書き分けていた(牛木・前掲注8の論稿の指摘である)。
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2008年01月02日

[意匠]意匠制度のハーモナイズに向けた課題:関連意匠制度をどうするか

■知的財産推進計画において意匠制度についてだけ触れられていない国際的ハーモナイズ
知的財産制度の国際的ハーモナイゼーションに対しては、産業界を中心にニーズがあるところである。
『知的財産推進計画2007』(2006にしてもそうだが)には、特許、商標の手続面での国際的ハーモナイズのみならず、実体面(権利内容面)でのハーモナイズについての議論への参加が明示されている。しかし、意匠制度の国際的ハーモナイズについては触れられていない。


■意匠制度におけるハーモナイゼーションの動き

意匠制度についてもハーモナイゼーションの動きはある。1999年に採択されたヘーグ協定ジュネーブアクトである(注1)。
2006年12月に米国が同協定批准の動きを見せているようであり(注2)、その後、米国内での議論は低調になっている感もある(注3)とはいえ、注目に値する。
同協定の内容は、大まかに言えば各国特許庁に国際出願を行うと、指定国特許庁がそれに対するリアクションを返すこととなり、リアクションがなされない場合は各国の登録意匠として登録される、というものである。

■意匠の保護に関するヘーグ協定ジュネーブアクト批准のための課題
この協定に日本は批准していない。批准にはいくつかの課題が挙げられている。最大の課題は、審査国への配慮が依然として足りていないところにあろう。実体上の制度的な差に対応する必要がある(注4)。中でも関連意匠制度の取り扱いは、ネックの一つとなっている。
この中で関連意匠制度に対する考慮が、ヘーグ協定ジュネーブアクトの中でなされなかった場合(つまり、協定の一部改正に至らなかった場合)、日本が批准するに当たっては青木弁理士が指摘(注5)するように、(a)関連意匠制度の廃止、(b)ヘーグ協定ルートでの出願を利用した場合の関連意匠制度の利用禁止、のいずれかで対処する必要がある。
しかし、現在、関連意匠制度の利用は全意匠出願の20%に至っており(注6)、この数字を見る限りでは(a)の選択肢を採ることは難しいかもしれない。

■課題のうち関連意匠制度に関する課題克服の可能性
もっとも、関連意匠制度がどのように用いられているか、その理由の分析いかんによっては、(a)の選択肢もありうるのではないか。
本来関連意匠はバリエーションを持たせた製品に対応するためである。この点のメリットは大きいが、実際、その理由でなされた出願はどの程度あるのだろうか。「とりあえず権利範囲が分からないから関連意匠として出願している」可能性もある。
また、仮にバリエーションをもたせた製品への対応を理由としていても、「要部となる点を共通としてバリエーションを持たせている場合」が多いのか、「要部となる点にバリエーションを持たせている場合」が多いのか、は興味深い点である。もし前者が圧倒的であれば、本来的には本意匠の類似の範囲となるはずであり、廃止をしてもそれほど不都合は無いのかもしれない(もっともバリエーションの類似部分は本意匠の権利範囲に含まれていないので、ユーザーにとってはつらいが)。
いずれにせよ、関連意匠制度がどのような理由で使われているかは知りたいところである。現在のところ、そのような研究は管見の限りなされていないようである。

(注1)なお、1960年に採択されたヘーグ協定ヘーグアクトも存在するが、これは実体審査国には受け入れにくい内容となっている。
(注2)澤井智毅「米国がヘーグ協定ジュネーブアクト批准手続を開始」(知財ニュース2006年11月15日)《JETROへのリンク》。
(注3)澤井智毅「上院外交委員会、知的財産関連三条約について公聴会開催」(知財ニュース2007年7月17日)《JETROへのリンク》。
(注4)「意匠に関するヘーグ新協定外交会議における日本政府の一般演説」《特許庁へのリンク》。
(注5)青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)437頁。
(注6)特許庁編『特許行政年次報告書2007年版』(2007年)12頁。

(2008年1月5日誤字修正)
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2007年11月18日

[意匠]部分意匠の類否判断基準―青木弁理士の整理に学ぶ―

1998年意匠法改正で導入された部分意匠制度は、世界的に共通の制度ではなく(注1)、制度としての使い勝手については必ずしもコンセンサスがある状況ではなさそうだ。特に登録の場面、侵害の場面それぞれでの類否判断については理論上も捉え方が分かれているようだ。
この点について、青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)283頁以下(初出「タイプ別部分意匠類否論―部分意匠の類否判断」DESIGN PROTECT 50号(2001年))が理論的な整理を加えており、参考となったので備忘のため要点をまとめた。

■部分意匠における類否判断:配設関係の創作性の考慮をするかが分かれ目
青木弁理士の整理を元に考えると、最大の分岐点は、「部分意匠の登録において、配設関係の創作性を考慮するか」が、分かれ目になるようだ。

特許庁の運用(注2)では、3条1項3号の類否判断において配設関係も含めた総合的判断を行う、としている。これに基づけば、(1)部分自体に創作的寄与がある場合、(2)配設関係に創作的寄与がある場合、それぞれ類否判断が分かれ(注3)、(1)では単純に部分のみを比較し類否を判断し(注4)、(2)では登録された部分意匠の位置態様に類似した態様で、同一または類似の意匠が引用意匠またはイ号物件に用いられているかにより類否を判断することになろう。

しかし、このような理解には異論もありうる。明細書図面で破線部で囲んだ範囲だけが権利範囲といいながら、結局配設関係を考慮していることはおかしいのではないか、というものである(注5)。これに基づけば、上記の(1)の判断基準のみということになる。

■どちらを採るべきか?
物品の需要喚起機能を果たす形態を保護することが、部分意匠の目的と考えられるが、これに基づけば、位置が需要喚起機能を持つ場合は、これを保護することが望ましいものと考えられる。

また、仮に配設関係を考慮しないとなると、部品意匠との差異がなくなってしまい、制度的意義も欠くように思われる。

以上の点を考慮すれば、配設関係を判断基準に含めることが適切と考える。

■懸念事項:利用者にとっては権利範囲が不明確になる可能性
ただし、理論的に上記のように考えても、現実の利用者には権利範囲が判りにくい可能性がある。

まず、部分自体に創作的寄与がある場合では、通常の意匠権と同様、類否判断が分かりにくく、事実上同一の範囲のみにおいて権利行使することとなる可能性がある。あるいは、逆に類似の範囲を超えた権利行使が濫発する可能性もある(注6)。(もっとも、これは意匠制度の活用がより進み、多くの実務家の間に、ある種の共通の「勘」が形成され、多少なりとも解消されることになろう)。

次に、配設関係に創作的寄与がある場合は、公知意匠との関係で配設関係がポイントであることを利用者が把握できない場合、(すなわち、部分自体に創作的寄与があるかのように映ってしまう場合)、部分自体の模倣が事実上制約される懸念がある。

前者の点については、意匠制度一般に起こっている問題であるが、後者は部分意匠独特のものである。後者についての声は私はまだ聞いたことがないが、部分意匠の行使が増えた場合に、上記の懸念が生じないか、注視したい。


■このほかの関連文献
今後の参考としたい文献は以下のとおり(注7)。

佐藤恵太「部分意匠の権利範囲に関する覚書」牧野利秋退官記念『知的財産と現代社会』(信山社、1999年)
吉原省三「部分意匠の問題点」牧野利秋退官記念『知的財産と現代社会』(信山社、1999年)
板倉集一「侵害訴訟における部分意匠の類否判断」知財管理Vol.57 No.6(2007年)941頁以下

(注1)米国、OHIM(欧州共同体意匠規則)、韓国などでは部分意匠制度を導入しているが、現在のところ、中国では導入されておらず、カナダにおいても類似の制度が無いことが推測される。なお、中国は日本側からの働きかけ(中国専利法改正調査団の訪日に伴う意見交換会・シンポジウムの結果概要《特許庁へのリンク》)を受け、2008年専利法改正案に折込み、現在審議を重ねているようだ。
(注2)特許庁「意匠審査の運用基準」。
(注3)この点が、青木弁理士の理論的貢献のポイントと言えよう。なお、同旨の見解として、松尾和子「意匠制度110周年と改正意匠法の意義」特許研究28巻(1999年)7頁。
(注4)特許庁や裁判例の傾向に従えば、公知意匠を参酌して要部を取り出し、需要者に与える美感を比較することになろう。
(注5)吉原省三「部分意匠の問題点」牧野利秋退官記念『知的財産と現代社会』(信山社、1999年)はこの趣旨をいうものと思われる。
(注6)判定制度の活用が進むとこの点は解決できるのかもしれない。
(注7)なお、私はまだ確認できていない…。
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2007年09月10日

[意匠]意匠類比判断基準へのニーズを探ってみた

9月6日の記事に引き続いて法施行の話題をもうひとつ。
この4月から、改正意匠法が施行され、侵害の場面における意匠の類比判断は需要者の視点を基準に行うこととなった。

意匠の類比判断基準については、いわゆる創作説と混同説に分かれているところであったので、そこに一定の決着を付ける決定は当然のことながら批判もでてくる。とくに判断基準を「需要者」と定めたことで、混同説に立つかのようにも読めることから、創作説に立つ論者からの批判は強い(注1)。

もっとも、直ちに混同説をとったと見るのは早計であると言う指摘が的確であると私は考えている(注2)。

これに対しては、審議会でも同様の認識が一部の委員から示されているが、いずれ市場での混同を問題とする運用に転化するのではないか、との懸念がなされている(注3)。

この懸念はある種もっともなところである。「需要者」というのはどういう者をさすのか必ずしも判然とせず、不正競争防止法に言う「需要者」概念に引きずられる運用がなされる可能性も否定できない(注4)。

■改正過程を法解釈学とは違った視点で眺めてみて浮かぶ興味深い点
創作説の批判の根底の一つには、意匠法は創作保護法だという認識が創作説の論者にあるようにも思われる。

このような考え方は審議会においても一部の委員から示されている(注5)。

これに対して審議室長は、新しいデザイン観に基づいて意匠法の性格付けがなされることに違和感は無い旨の発言をなさっている。

さて、私自身は創作説と混同説のいずれかを支持するか、不勉強ゆえ態度を決められない。そのためか、法解釈と異なる点が気になっていまった。それは、なぜここまで特許庁が強気なのだろうか、という点である(注6)。

法改正にはきちんと調査をするのが日本の中央官庁であるように思う。何らかのニーズ側の裏付けがあるのかもしれない。気になるのでちょっと調べてみた。

■意匠の類比判断基準に対するニーズ
残念ながら管見の限り直接に意匠の類比判断基準に関するニーズ調査を行った研究が見当たらなかった。そこで、意匠の出願目的から類比判断基準のニーズを推測することにする。

ところが、意匠の出願目的についての調査も詳細なものが見当たらない。やむを得ず、主として意匠の出願目的を問う調査でないもの(注7)の結果から推測することにした。

それによると、
摸倣品・類似品対策 約90%
他社の権利侵害不存在の確認・証明 約65%
自社のブランド力強化 約60%
特許権の補完 約45%
ライセンス収入 約5%
ということである。

主たる目的と思われる上位3つから、意匠の類比判断についてのニーズを解釈をしてみた。(正直言って乱暴な解釈である以上、異論もあるはず。もし抜け落ちている視点があれば指摘していただければありがたい。たぶんたくさんあると思われるが…。)

産業財産権である以上当たり前ではあるが、摸倣品・類似品対策が出願の主目的となっている。

デザインの場合、需要者が摸倣品を見て外形上似ているからと混同をし、結果として粗悪品をつかまされた!と勘違いされることがある。意匠権者がこれを嫌がっているのだとすれば、「勘違い」を問題にしてほしい、つまり、「需要者」の「混同」を問題にしてほしい、という方向につながるかもしれない。

あるいは、市場の代替を問題にしているのかもしれない。つまり、デザインが差別化の大きなポイントである場合は、需要者にとって「似ている」ものであれば市場で代替されてしまう。これを意匠権者がいやがっているのだとすれば、やはり同様に需要者を判断基準にしてほしいと言うことにつながる(ただし、「混同」までは問題にならないだろう)。

他方、マネされてオリジナリティーが損なわれて腹が立つ、というところを問題にしているのであれば、当業者からの創作性についての視点にしてほしいと言うことにつながるように思われある。

次に、他社の権利侵害不存在の確認・証明について解釈してみる。ここで問題となるのは、市場で流通する際に当該物品が侵害品である懸念を払拭するところにあろう(注8)。

そうであるならば、極力流通事業者にとってわかりやすい基準が求められよう。すると、創作的な観点と言うデザイナーサイドの視点より、「需要者」に依る基準が好まれるのではないだろうか。

最後に、自社のブランド力強化であるが、これが意味するところが、自社のオリジナリティーの確立と言うのであれば、創作上の視点へと結びつくように思われる。

他方、先に指摘したような「粗悪品をつかまされた!という勘違いが嫌」という意味の、比較的消極的な意味でのブランドの確立なら、「需要者」の「混同」が問題となろう。

本来、出願目的を精緻に問う調査ではないので正確でない可能性はあるが、これを見る限り、「需要者」サイドの視点へのニーズが強いのではないか、という推測が可能であるのではないだろうか。

(注1)創作説を提唱されている牛木理一弁理士は強い口調で批判をされている。(かなりの怒りがこもっているように読める)論稿として牛木理一「改正意匠法24条2項への疑問――DVD著作権裁判の教訓――」パテント59巻10号(2006年)35頁以下。なお、創作説からの批判で主要な点は、登録時には当業者を判断基準とする創作性の概念により、既存の登録意匠との距離が問題とされるのに対し、侵害の場面では「混同」という概念で問題となる意匠との距離が問題とされることは、スマートではないのではないか、というところにあろう。
(注2)牧野利秋「意匠法の諸問題」ジュリスト1326号(2007年)84頁以下。本ブログ「[意匠]意匠の類似についての創作説と平成18年改正」(2007/2/20記事)参照。
(注3)「産業構造審議会 知的財産政策部会 第10回意匠制度小委員会 議事録」《経済産業省へのリンク》峯唯夫委員発言。なお、(注2)に挙げた牧野先生も参加されている。
(注4)なお、審議会で田川審議室長が、需要者の意味について「ある物品にとって最も経済的な価値を評価し得る需要者というところが実際には判断の基準になってくるのではないか」という解釈を示している点は注目に値する(前掲注3参照)。
(注5)前掲注3峯委員発言参照。
(注6)なお、ある程度センシティブな問題には、審議会の委員の人選を通じ江、省庁側の意向を通すと言う手法があるらしい(著作権の法改正にまつわる話であるが、京俊介「著作権政策形成過程の分析(一) ―利益団体,審議会,官庁の行動による法改正メカニズムの説明―」阪大法学57巻2号(2007年))。今回の場合、異論を唱える委員が多い点がなお注目される。それほど特許庁はニーズを把握していると言う自信があったのかもしれない。
(注7)特許庁「デザインの開発・管理・保護・出願戦略に関する調査」『平成18年度特許出願技術動向調査・意匠・商標出願動向調査 CD‐ROM』(発明協会、2007年)。非常に目立たない調査報告書である。筆者は偶然見つけた…。
(注8)権利侵害の有無が気になる!ということで、売り上げに影響した事案として、〔ピーターラビット事件〕大阪地判平成19年1月30日平成17(ワ)12138。なお、判決のまとめは、大塚法務行政書士事務所「「ピーターラビット」マルシーマーク事件〜著作権に基づく差止請求権不存在確認請求事件判決(知的財産裁判例集)〜」《外部リンク》『駒沢公園行政書士事務所日記』(2007/2/5記事)が非常に参考になる。個人的なことだが、大塚行政書士のまとめにはいつも勉強をさせていただいている。恥ずかしいので表では言えないがこっそり感謝の意をお伝えする。

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2007年02月20日

[意匠]意匠の類似についての創作説と平成18年改正

●牧野利秋「意匠法の諸問題」ジュリスト1326号(2007年)84頁以下読書メモ

この論文は、平成18年の意匠法改正の紹介と、今後の課題の検討を行ってる。特に、新設の意匠法24条2項(「類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする」との規定)について、創作説の立場に立ち、同規定は実務に影響を与えるものでないとの解釈を示されている点は、注目に値する。

1.この論文の概要
(1)残された課題
今回の意匠法改正によりほとんどの課題は解決されたと評価できるが、1点課題は残る。それはGUIの保護に関するものである。
たしかに、本改正により、画面デザインとしては、機能発揮のためのものまで部分意匠として認められるようになり、保護は拡大している。しかも、物品に接続する外部汎用表示機器に表示される画面デザインも保護されることとなっているため、物品に関するGUIの保護は十分に行われたと評価も出来よう。
しかし、物品性の無いGUIについては未だ保護が乏しい。GUIについては、欧州、米国、韓国が物品性の枠を取り払っている(87頁)。物品性は利用者の予測可能性に資するものだが、それが知的財産保護にかなったものであるかは検討が必要である。こと、知財推進計画2006で述べられたタイプフェイスの保護を意匠権で行う場合、物品性は再考されなければならない(88頁)。場合によっては、物品性を欠くGUIについては無審査登録制度を検討するのも良いのではないか(89頁)。

(2)24条2項の意義
最高裁判例(〔十三ゴム事件〕最判昭和49年3月19日民集28巻2号308頁、最判昭和50年2月28日判タ320号160頁)において判断基準は「需要者」と示されたが、その公式の判例解説(佐藤繁〔判解〕最判解民事篇昭和49年度318頁)において、これらの判示が混同説に立つものでないことを示唆している(90頁)。
意匠法は創作を保護していること(それゆえ登録要件として創作性を求めている)から、創作説を正当とすべきである。
実際、裁判例においても混同を理由に侵害を認めた事案では、意匠的形態の共通性を観察していることから、実質的には創作を基準にしているようにも読める(92頁)。
これらの実務傾向を崩さずに本改正を理解するならば、同項に言う「需要者」とは先行意匠に知識を持つ「取引者」が意識されていると解することになる(92頁)。この解釈は欧州共同体意匠規則10条に言う"informed user"と同じように考えるものである。

2.考察
意匠の類似についての判断基準には争いのあるところであり、「創作説」(当業者が判断基準となる)と「混同説」(一般需要者が判断基準となる)に分かれている。
創作性説は、(1)意匠法が登録要件として求める創作性との整合性、(2)意匠法が創作活動の保護法として位置づけられることから、競争秩序維持法で用いられる「混同」概念を持ち出すことの不整合、を主たる問題にしているように理解できる(牛木理一「意匠の類似について――意匠権侵害論序説――(1)(2)」パテント44巻(1991年)9号37頁〜・10号30頁〜、中山信弘「〔十川ゴム事件最高裁判決〕判批」法学協会雑誌92巻10号154頁、などを参照)。
もっとも、(1)は法制度のとしての好ましさと言えばそれまでであるので、混同説を否定する決定的な理由で無いように思われる。(2)は創作保護法であることを強調するならば、著作権法で保護すればよいのではないかという疑問がわく(しかも、著作権法では意匠権の保護対象は「応用美術」として明示に保護を避けている)。むしろ、意匠法は創作奨励と競争秩序維持のバランスを図ったものと理解することが出来るのではないか。そうならば(2)もまた決定的な理由とならない。
そうならば、本改正は政策的に、意匠法の性格を決定付けたものとも理解できる。(この点について、意匠法の歴史を無視するものとして牛木先生が「改正意匠法24条2項への疑問――DVD著作権裁判の教訓――」批判をされているが、前述のように必ずしも意匠法の性格と相反するものでないように思われる。)
だが、牧野先生が指摘されるように、実務上の混乱を招く可能性や、本改正によっても明示されたわけでない「混同」概念を用いることの根拠の乏しさ、さらには、登録要件との不整合は望ましいものではない。
牧野先生の「需要者」の解釈は、この不都合を、かなりの程度解消するのではないだろうか。本改正においても「創作説」が維持できることを示したものとして、この論文は意義があると考える。

(ちょっとコメント)
このブログをまとめ出して1年半になるが、初の意匠法に関するメモとなった。意匠法はまだまだつっこみ甲斐がありそうでワクワクする。と、同時にわからないところだらけ。このメモや考えも間違っているところもあるはず。
ちなみに、牧野先生は所属していたクラブの大先輩…。わからないとこだらけ、なんて言ったら勉強が足りない!と怒られそうだ。
posted by かんぞう at 01:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆意匠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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