2009年08月18日

[商標]米国のトレードドレスの保護の詳細

教科書に書いてあることではあるのだが、備忘のため。

ランハム法第43条(a)では、トレードドレスが保護されるが、これまでの判例の積み重ねによって包装等のトレードドレスだけでなく、製品デザインのトレードドレスも保護されるようになった。しかし、後者は識別機能を有しているとは限らないため、二次的意味(secondary meaning、日本法でいう周知性に近い概念と見て(おおざっぱには)良いように思う)の獲得が求められる(注1)。
では何が包装と製品デザインを区分するのかが問題となるが、米国連邦最高裁判所は、Wal-Mart対Samara Brothers事件判決において、包装のトレードドレスは狭義に解されるべきであると示している(注2)。
we believe that courts should err on the side of caution and classify ambiguous trade dress as product design, thereby requiring secondary meaning


(注1)なお、アーサー・R・ミラー=マイケル・H・デービス(著)、藤野仁三(訳)『アメリカ知的財産権法』(八朔社、2008年)116頁は、「保護要件として二次的意味の確立を求めない製品デザインのトレードドレスの区別をルール化した」とあるが「保護要件として二次的意味の確立を求める製品デザインのトレードドレスの区別をルール化した」の誤りであろう。
(注2)芹澤先生のWebサイトに邦訳が掲載されている。
Wal-Mart Stores, Inc. v. Samara Brothers, Inc.,529 U.S. 205(2000)
posted by かんぞう at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月26日

[商標][時事]不使用商標対策としての登録証明導入を巡る報道

先日の日経新聞の記事で、不使用商標対策に登録証明を求める方向で検討されている旨が紹介されていた。
「政府の知的財産戦略本部(本部長・麻生太郎首相)は、社名や商品名の独占的な使用を認める商標登録制度を見直す方針を固めた。」
「具体的には登録から一定期間後に実際に使われているかどうかを証明することを登録した企業に義務付ける。6月下旬にも決定する「知的財産推進計画2009」に盛り込む。」
〔日本経済新聞2009年6月22日夕刊(なお、『企業法務戦士の雑感』より再引用〕

予想していなかった方向であり、驚きをもって受け止めたものであった(注1)が、昨日決定された『知的財産推進計画2009』を見ると、どうも見当たらない。これは誤報だったようだ。
不使用商標対策を強化する
使用されていない商標権が新たな商標選択の幅を狭め、新商品・新サービスの事業展開の制約要因となっていることにかんがみ、不使用商標の削減や商標の円滑な取得のための方策について2009年度中に調査・研究を行う。
〔「知的財産推進計画2009」21頁〕
調査研究に「登録証明」の研究が含まれるかと思いきや、倒産した企業の商標により後願が排除されることがどうやら研究のテーマのようである。
あわせて、倒産して企業等が名目上の権利者となっている不使用商標により後願の商標出願が拒絶される問題について、その対応策の検討に向け、調査・研究を行う。
〔「知的財産推進計画2009」59頁〕
これなら極めて妥当であるし、よい研究を計画されていると思う。単に統計的に見るだけでなく具体的不利益の状況について、各企業の知的財産戦略もふまえて研究してほしい。

なお、「登録証明」に言及した意見が「知的財産推進計画2008」の見直しに対するパブリックコメントにはあった。
不使用登録商標を減少させるためには、(1)不使用取消審判の活性化(審判請求費用の低減、実体審理の有無に応じ審判請求費用の負担を可能とする制度の導入等)、(2)不使用商標の商標権に基づく権利行使の制限、(3)使用供述宣誓書提出の義務化(登録後5乃至6年目の段階で使用の証拠及び宣誓書の提出を権利者に義務づける制度)等の検討に取り組むべき。(日本弁理士会)
〔「「知的財産推進計画2008」の見直しに関する意見募集の結果について 結果概要」〕

さすがに弁理士会が出しているだけあって、実務の観点から詰められた意見になっている。しかし、この意見でも、登録証明は検討する選択肢の一つにすぎない(まして、登録の5年後から6年後に求めているものである)。

そうするとあの報道は一体なんだったのだろうか…(注2)。
と疑問は感じるものの、知的財産制度に関する話題を迅速に提供しているので、日経新聞には私は感謝していることを申し添えておきたい。
(注1)『企業法務戦士の雑感』のFJneo1994さんも「[企業法務][知財]「不使用商標」対策はこれでよいのか?」『企業法務戦士の雑感』2009年6月22日記事でその手段としての妥当性に疑問を示されている。私も賛同する。
(注2)一部の巻き返しを狙った方のアドバルーンなのかなぁなどと思わなくもないが可能性は低い。
posted by かんぞう at 01:45| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月26日

[商標][時事]新しいタイプの商標、導入を検討へ

■新しいタイプの商標の導入を検討
欧州の主要国や米国で採用されている、音、におい、動き(ホログラフ)などの商標(おそらく色彩も含まれるのだろう)の登録を認めるか否かに関する検討を特許庁が開始するようだ。
特許庁は音やにおい、動きなど新しいタイプの商標を導入する検討に入る。インターネットの普及などで企業が自社の製品やサービスを他社と区別する方法が多様化し、新しい権利の保護が必要になっているためだ。商標の対象を文字、図形など「目に見えるもの」に限る従来方針を転換するため、7月に研究会を発足。2年後にも商標法改正案の提出をめざす。
(日経新聞2008年6月25日)

知的財産研究所などで既に研究が行われていたものであり、また、他国の制度例が少なくないことから目新しいものではない。だが、審査用の情報システムの改変も伴うものであり、日本の中での商標の一般的な認識に影響を与えるものでもあり、興味深い検討であると感じた。

私は他国の運用例についてまだよく知らないので、大変興味深いところである。これらについて、審査がどのようになるか、類比判断はどのようになるか、検討すべき点は多い。
検討すべき点の1つである、音の商標についてすこしばかり考えてみた。

■音の商標の登録要件の運用はどのようになると考えられるか
音の商標と言った場合、社会的には2つのグループが考えられる。1つは、サウンドロゴである(「♪すみともせいめい」など)。もう1つは、テーマソングである(Sofmapのテーマソングなど)。
前者のサウンドロゴについては、短い間に表現するという性質上、表現選択の幅が限られているとも考えられる(注1)。そうであるとすると、音楽の独占を防ぐ観点から商標法3条1項3号の適用がなされるかもしれない。その場合、登録されるのは3条2項の要件を満たす場合、すなわち、立体商標と同様の運用がなされるかもしれない。
後者については、タイアップ曲のような場合に若干問題を生むように思う。他の事業者が「楽曲」として使用した際に、商標的使用にあたるか、というところの争いを生じさせるのではないか。もっともこれは法制度上の問題というより、運用上の問題に帰着するだろう。

■参考文献
○(財)知的財産研究所「新しいタイプの商標に関する調査研究 報告書」(2007年)
 なお、要約はhttp://www.iip.or.jp/summary/pdf/detail07j/19_07.pdfにて入手可能。

また、今週末の日本知財学会で青木博通弁理士が報告されるようだ。

(注1)もっとも「どこまでも行こう事件」(東京高判平成14年9月6日判時1794号3頁)で裁判所は、サウンドロゴよりは長い旋律に対して、多様な創作の余地を認定している。
posted by かんぞう at 01:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月31日

[商標]商品形状が使用により自他識別力を有するとして立体商標としての登録が認められた事例(コカコーラ事件)

普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる立体標章につき、長年の使用および大規模な広報により自他識別を有したとの判断がなされ、登録を拒絶した特許庁の審決を取り消す判断が知財高裁によって下された。立体商標についての商標法3条2項の判断が下された例は〔ひよこ立体商標事件〕(知財高判平成18年11月29日)、〔ミニマグライト事件〕(知財高判平成19年6月27日)に引き続くものである。その判断基準はこれまでと変わるところでなく、裁判所の傾向がより鮮明になったと言えるだろう。

知財高判平成20年5月29日(判例集未搭載)平成19年(行ケ)第10215号
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080529172621.pdf

■事件の概要
本件はコカ・コーラのリターナブル瓶およびワンウェイ瓶につき商標登録出願がなされたところ、特許庁は、商標法3条1項3号に該当すると判断し、その上で3条2項該当性を否定し、登録を拒絶する審決を下したことに対し、出願人から審決の取消を求めたものである。

特許庁は、以下のロジックで拒絶査定を下している。
○容器の形状に特徴的形状があるとはいえ、「予測しがたいような特異な形状や特異な印象を与える装飾的形状であるということはできない」。故に「商品,商品の包装又は役務の提供の用に供する物の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである」。
○本件標章とリターナブル瓶は口部で差異があり、リターナブル瓶としての使用実績は考慮できない。また、文字標章が強い識別力を有しており、立体的形状部分自体が自他識別力を有するとは言えない。出願人は、アンケート調査に基づき立体的形状自体の自他識別力を主張するが、調査方法が不適切(対象が20歳代〜60歳までであり需要者のすべてを対象としていない)であり採用できない。

これに対して、出願人(原告)は、新たにアンケート調査を実施し、自己の主張を補強している。

■判旨の概要
商標法3条1項3号の解釈については、〔ひよこ立体商標事件〕、〔ミニマグライト事件〕と同様の判断を下している。同号の該当性については、
コーラ飲料の容器の形状として,需要者において予測可能な範囲内のものというべき
としてこれを肯定した。
商標法3条2項の解釈については、
立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,当該商標ないし商品等の形状,使用開始時期及び使用期間,使用地域,商品の販売数量,広告宣伝のされた期間・地域及び規模,当該形状に類似した他の商品等の存否などの事情を総合考慮して判断するのが相当である
と述べ、その上で、
○長年の使用実績
○多数の販売実績
○多額の広報投資
○アンケート調査結果から明らかとなった消費者における認識
を考慮し(なお、特許庁が否定した当初のアンケート調査結果については、想定される需要者の多くを対象としているといて採用された)、文字商標を除いた独立の自他識別力を肯定した。
また、
○他社からの同様の形状を排除してきた
ことも併せ考え、商標法3条2項に該当するとした。

■解説
3条2項に関する解釈、判断基準が参考になるものと考えられる。
本件の判断は、〔ミニマグライト事件〕の判断と同様である(注1)。参考のため、同時権の判断を挙げると、
1)立体商標自体が自他識別力を獲得しなければならず、
1-a)ともに付された文字商標による識別力は割り引いて判断しなければならない
 →本件は、商品名が小さく目立たなく付されていた。
1-b)立体商標それ自体が自他識別標章として用いられてきた
 →商品名を出さず、ミニマグライト自身の形状で宣伝を行ってきた。
2)似たような形状の商品が無く、需要者において出願人の出所との認識が得られている→本件は類似の形状の商品に対し積極的に不正競争防止法2条1項1号違反であるとして排除を行ってきた。

ただし、本件はミニマグライトと異なり、「形状自体」を広報に用いていた、文字商標が目立たなかったという事情は無いため、アンケート調査により明らかになった立体的形状自体の自他識別力が大きく働いたものと思われる。

このような商品は他に滅多にあるものではなく、普通に用いられる形状が立体商標として登録される可能性が厳しいことを改めて示したものと言える。本ブログには立体商標をキーワードにいらっしゃる方が少なくないので、ここで今更であるが強調したいことは、立体商標は立体的デザインを保護する方法としては意匠権に比べるとハードルが高い方法と言える(注2)ことである。

なお、需要者の「多く」をカバーしているアンケートでその信頼性が肯定されたところは興味深い(注3)。

(注1)同じコートであるから自然なことではある。
(注2)特許庁「〜地域中小企業の取組事例が導く〜ものづくり中小企業のための意匠権活用マニュアル」(2008年)87頁。
(注3)アンケート調査を用いた立証に関しては、優れた論文が出ている。
posted by かんぞう at 13:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月23日

[商標]歴史上の著名人の氏名の顧客吸引力の独占の可否(その2)

本ブログ2008年2月18日記事「[時事]歴史上の著名人の氏名の顧客吸引力の独占の可否」で触れた、「吉田松陰」の商標登録について自治体が反発した事案について解説した記事が面白かった。

渡邉知子「歴史上の著名な人物の名前を商標登録できるか」日経デザイン2008/04号(2008年)90頁〜91頁は、歴史上の著名人の氏名は現行制度上早い者勝ちであることを説明した上で、「聖徳太子」「伊達政宗」「坂本竜馬」などの氏名がすでに登録されていることをまとめている(注1)。

しかも、制度上、現存する著名な名所についても自由に商標登録ができることを指摘されている。これも面白い。ジャンク商標をオススメしている趣旨とも読み取れかねないが、おそらく、地方自治体に注意喚起をされているのだろう。自治体にとって重要な指摘であろう。

ただし、気になる点が2点あった。

1点目は、上記の事態が生じることが使用主義が貫徹されていない弊害であると読めるかのような記述をなさっていることである(注2)。使用主義を貫徹すると、事業の準備段階で冒用されることもある。名称には意外に投資が必要なことを考えれば、使用主義の貫徹は望ましくないのではないか。また、前掲の記事で指摘したように、先使用権で不都合の解消は図られているように私は思う。

2点目は、故人とは関係の無い第3者が独占権を得ることがないよう、故人の継承者に登録を認める制度設計についての言及である。渡邉弁理士は、仮に譲渡やライセンスが可能であるような制度にすると、「人物の名声に便乗した利益取得が目的とはならないのか、との疑問が残る」と述べられている。しかし、故人の継承者に登録を認める制度としている段階で、名声から得られる財産的利益が誰かに帰属することを認めているように思う(注3)。疑問はあたらないのではないか。もし、遺族の人格的利益を尊重し、人物の名声に便乗した利益取得を否定するのであれば、遺族に固有の故人の氏名の使用の排除権を与え、故人の氏名の使用は不登録事由とすればよい。

なお、故人の継承者に商標登録を認める制度設計は面白い。著作権保護期間延長の議論を参照するならば、「遺族の利益のために」故人が自らのパブリシティを高めようと努力し、結果として各人が「頑張る」可能性が生じ、社会として望ましいと考えられるからである(注4)。

(注1)私が探せなかったものであり、これだけでも十分面白い。
(注2)アメリカの制度を引き合いに出されていた。
(注3)このような制度設計を肯定するためには、端的にはパブリシティ権を認める方法がある。
(注4)皮肉である。
posted by かんぞう at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月12日

[商標]商標の類似性の立証についての覚え書き

青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)257頁-258頁の指摘に学ばされた。

商標の類似性を立証するにあたり、需要者における混同の程度を、たとえば「両者は似ていると思いますか」などというように単純にアンケートではかれば良いじゃん、と思っていたが、類似性の判断が、「外観、観念、称呼の印象、連想等の全体的考察」+「(その商品の取引の実情を明らかにする限り)具体的な取引事情に基づく判断」(注1)という法的評価であるので、単純なアンケートでは立証できない、と青木弁理士は指摘されている。

なるほどその通りで、立証の補助資料としてアンケートを用いるとしても、観念の類似性、著名性などを逐次確認していくことが大事なのだろう。

ただ、いつでも逐次確認することが必要なのだろうか。すくなくとも、〔氷山事件〕の判断枠組みに従うと、その商品の取引の実情を明らかにする限りにおいて取引事情が考慮されるのである。これが明らかにされていない場合は、取引事情について、アンケートで明らかにしていなくとも良いのではないだろうか。
(注1)〔氷山事件〕最判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁。
posted by かんぞう at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月06日

[商標]商標的使用の判断基準を巡る覚え書き

「商標的使用についてわからない!」と感じたので、最近ささやかながら初心に返って勉強している。本ブログのコメントでサイバーさんから教えていただいたように、これまでの裁判例を見ると「混同を導き出す道具概念」であるようだ。

ではどういう基準なのか、と言うところが気になるが、これも経験則的に導くしかなさそう、ということもわかってきた。

その経験則的なまとめをされた先行研究として、榎戸道也「商標としての使用」牧野利秋=飯村敏明編『新・裁判実務体系 知的財産関係訴訟法』(青林書院、2001年)410頁がある。その中では商標的使用を否定的に判断される事情として11の事情が挙げられているが、(直観的な思いではあるが)現在においては、もう少し整理できる余地があるように感じた。

少なくとも、整理できる箇所は一点あった。

事情の一つとして商標権者の不正な意図による登録というものが挙げられていたが、これは現在では商標的使用で処理するよりはむしろ商標法39条、または権利濫用とした方が、理論的に適切ではないだろうか(注1)。

(注1)平成16年改正で特許法104条の3(いわゆるキルビー抗弁)が新設され、これを同年の改正で商標法39条が準用するようになった。榎戸裁判官がこの論稿を書かれたのが平成13年以前であるから、この点はやむを得ない。
posted by かんぞう at 01:20| Comment(10) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月24日

[商標]商標的使用とメタタグを巡る判例・学説の整理に関する覚え書き

メタタグ(中でもdescriptionタグ)で、他人の商標を使用することが商標権侵害になるか、という点についての学説・裁判例の整理にあたっては、「メタタグの視認性に対する認識」という前提条件の差の視点に留意しなくてはいけないように感じた。

例えば、結論としてメタタグにおける商標の使用を商標的使用にあたらないと述べる、青江秀史=茶園成樹「インターネットと知的財産法」高橋和之=松井茂記編『インターネットと法 第3版』(有斐閣、2004年)285頁は、メタタグが画面上に表示されないことを前提としている。

他方、結論としてメタタグにおける商標の使用を商標法上の使用と判断した〔クルマの110番事件〕大阪地判平成17年12月8日は、MSNサーチ上で検索結果としてdescriptionタグの内容が表示されることをもって視認性有りと認定し、その上で商標的使用と述べ(下線部2007/10/25追記)ているように読める。

私の判例の読み方が正しいのであれば、両者の結論の差の要因は、単に特定のサーチエンジンがメタタグ無いの記述を表示させる機能を有しているか、そうでないかを知っていたか知らなかったかの差に留まる。

これに比べ、結論としてメタタグにおける商標の使用を商標法上の使用と述べる、土肥一史「ネットワーク社会と商標」ジュリスト1227号(2002年)26頁は、視認性の捉え方が少々独自であるように読める。土肥教授によると、メタタグの場合「ソースを読めば視認できる」(keywordタグを想定されていると思うが)「検索者が入力したキーワードとの一致という形で視認できる」と述べている。いずれも商標の冒用者の積極的な行為により視認性が生じたものとは言いにくいところではないだろうか。言い換えれば、識別性が有るというにはグレーな領域では無いだろうか。

その意味で、土肥教授の2002年段階での見解は、時代を先取りした点ですばらしい功績ではあるが、商標的使用論に関するこれまでの考え方からは異質であるように思われる。

(注)なお、学説の整理にあたっては、青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)174頁を参照した。
posted by かんぞう at 01:18| Comment(11) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月19日

[商標]商標の普通名称化の防止

青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)の第1章第1節「商標の普通名称化」を読んでいて、なかなか勉強になった。備忘録として刺激を受けたポイントを。

■欧州における普通名称化防止に関する制度
標章であっても、普通名称として使われるようになると、その時点で商標出願をしても登録を受けられなくなり、同一または類似の標章に対して、侵害の主張が認められなくなる。

それを防ぐため、欧州では登録を受けた商標に関して次のような制度設計がなされている。
・商標権者の側から「辞書、百科事典、その他の同様な書籍」(注1)において商標を一般名称としての印象を与える形で用いている場合、その書籍発行者は次版において登録商標であることを明示する義務を負う(欧州共同体商標理事会規則10条(EC40/94))。
・他方、商標が普通名称化した場合登録が取り消されうる(同50条(b))。

これを受けて、青木弁理士は現行商標法に普通名称化を防ぐ手だてが無いことを問題視し、立法論として、日本においても欧州共同体商標理事会規則10条同様の規定を設けるべきと述べられている(注2)。

■欧州の制度への疑問
確かに、直感的には欧州共同体商標理事会規則10条は正当性がありそうな規定にはなっている。しかし、決定的な疑問が有る。普通名称化に貢献するのは、(少なくとも現在においては)辞書/百科事典などの「書籍」が主なのであろうか。

ガチガチの文言解釈をすれば、ここには「新聞」や「ウェブサイト」、また、「データベース」は含まれないと思われるが、反復継続的に公衆に語のイメージを与えると言う点ではこれらの媒体と、辞書/百科事典などの書籍では差がないのではないだろうか。

私はそのように思うのだが、そうすると欧州共同体商標理事会規則10条の合理的な説明がつかない。むしろ一方的に辞書/百科事典の出版社のみを制約する規定ともとられなくもない。

■妥当な解決策は?
ただ、裁判の運用上、辞書の記載が重視されてきたということである(注3)。このことに鑑みれば、上記の点が直感的な同制度の合理性を支えてきたのだろう。

しかし、運用が問題であるなら、それを改めればよい。

法的な問題はさておき、たとえば普通名称化の認定にあたっては辞書の記載を参酌するが、普通名称化の防止に尽力していれば、それをもって普通名称化に否定的な認定をする、という運用もあり得る(注4)。
(注1)訳は、特許庁のWebサイトによる。http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/ec/crct/chap3.htm#law10
(注2)青木博道『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)34頁。
(注3)日本においても同様に辞書の記載が斟酌された例として〔巨峰事件〕が有る。
(注4)法的に問題が有りそうだが、これの検討は後日…。(と言うときはたいてい忘れる)
posted by かんぞう at 00:32| Comment(6) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月17日

[商標][わからないこと]小売等役務に該当しない「小売」行為って何?

平成18年で商標法が改正され、「小売等役務」が指定役務とされたが、これに関して一点わからないところが有る。

特許庁の改正商標審査基準によると「小売等役務とは、小売または卸売の業務において行われる総合的なサービス活動(商品の品揃え、陳列、接客サービス等といった最終的に商品の販売により収益をあげるもの)をいう」と言うことだが、青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)90頁によると、商標法2条2項は小売または卸売の業務において行われる顧客に体する便益の提供のみをサービスとしているため、商品の販売行為のみは小売等役務に含まれない、とされている。

理論的にはわかるのだが、小売等役務に含まれない小売の形態と言うのは実際的にあり得るのだろうか。イメージできない…。

お読みになられている方で、お気づきに方は教えていただければ幸いである。
posted by かんぞう at 01:34| Comment(6) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月03日

[商標]小売等役務商標についてわかりやすくまとまった論文の紹介

平成18年改正で導入された小売等役務商標であるが、「小売だって役務じゃん!」とまともに物を考えない私には、なんかよくわからないところが多い、という印象であった。
その点を晴らしてくれる、良質の論文があったのでみなさまにご紹介する。

青木博道「小売等役務商標制度の守備範囲」NBL 858号(2007年)32頁〜38頁は、小売等役務商標制度導入の経緯、その守備範囲、そして、実務上の対応指針を的確にまとめている。
また、商品商標と小売等役務商標の類似関係について、どこまでの範囲を類似と見るかにつき課題があることを指摘されている(注1)。

最近、研究所を発行されたばかりで、大活躍されている印象を受ける青木弁理士だが、この論文もその活躍の一端ととらえることができる。NBLのような、企業人にとっても触れやすい雑誌に掲載されていることもありがたい。

(注1)青木弁理士はイギリスできわめて限定的な範囲に限っていることを紹介されている。
posted by かんぞう at 00:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月29日

[商標]ひよ子事件に次ぐ立体商標に関する興味深い事件―ミニマグライト事件ー

判決文をざっと眺めただけであるので、後で「ごめんなさい」という間違いがみつかるかもしれないが、速報として簡単にまとめてみた。

ひよ子立体商標事件以来となる、立体商標の登録可否に関する判決が知財高裁で下された。しかも登録肯定例である。インパクトがある。
それが、〔ミニマグライト事件〕知財高判平成19年6月27日(判例集未搭載)平成18年(行ケ)第10555号である。

判決を読む限り、3条1項3号については、若干興味深い言及があった。3条2項(使用による識別力獲得)についての基準はひよ子事件で示された基準と矛盾するものではなく、むしろ、ひよ子事件があげた基準を偶然満たした事案であるようだ。

3条1項3号(普通に用いられる形状)について
商品の機能確保のために不可欠と言えない形状は自他識別力を有し得ないとはいえないとしながら、多くの場合、形状に美感を持たせることは自他識別力をもたせることが目的でないため、3条1項3号が適用されるべきであるとし、さらに、仮にこれを商標法で保護することは特定の美観を特定人に独占させる帰結となり、公益の観点から不適切と述べている(注1)。
本件についても上記の理由から3条1項3号に該当すると判断。

3条2項(使用による自他識別力獲得)について
本判決は自他識別力を使用により獲得したと述べている。
その要素を、ひよ子の基準と対応させる形で本事件の特徴を述べる。

1)立体商標自体が自他識別力を獲得しなければならず、
1-a)ともに付された文字商標による識別力は割り引いて判断しなければならない→本件は、商品名が小さく目立たなく付されていた。
1-b)立体商標それ自体が自他識別標章として用いられてきた→商品名を出さず、ミニマグライト自身の形状で宣伝を行ってきた。

2)似たような形状の商品が無く、需要者において出願人の出所との認識が得られている→本件は類似の形状の商品に対し積極的に不正競争防止法2条1項1号違反であるとして排除を行ってきた。

という感じで、実例としておもしろいが、法的な議論点はそれほどないのかな、と思える物だった。(というときに限って、たくさん論点があったりする。所詮浅はかなエセ知財(元)学生のやる所行であるのでお許しいただきたい。また、お教えいただきたい。)


(注1)ひよ子商標事件でも似たようなことは述べられていた気がする…。


ちなみにミニマグライトはこんな形らしい。
http://www.maglite.ne.jp/lineup/top_index.html
うーん、まぁ格好いいかな。奇抜…なのかな?余談だが、かんぞうはこの手の雑貨は大好きなのでつい飛びついた次第であった。
posted by かんぞう at 01:17| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月20日

[商標]極真空手商標事件大阪地裁判決から窺える裁判所における権利濫用の捉え方

団体・組織内部での争いが生じたときに、著名な団体・組織であれば知的財産権侵害という形で積年の恨み?を果たすことがある。最近は実務的にあるいは学問的にインパクトのあるものが多く出ているように思う。天理教(不正競争防止法違反が争点)、華道専正池坊(不正競争防止法違反が争点)などは記憶に新しい。

事案としては4年前のものになるが、商標権を巡る争いに判決が下ったものがあり、分裂により分かれた団体内での商標権の行使が権利濫用とされていた。結論としては自然に思える。理論的には目新しいように感じたので、簡単に判決をまとめ、検討してみた。


極真空手商標事件大阪地裁判決(大阪地判平成15年9月30日判時1860号127頁)(注1)評釈

事実の概要

Xらは故人のAが創設した空手の流派「極真会館」(以下、B)に所属する者であり、現在はそれぞれがBの名を用いて道場を開いている。YもBに所属する者であるが、Aの死去に当たり、Aから後継者に指名する旨の遺言を受けたとし(なお、後、裁判で当該遺言書の有効性は否定された)、Bの館長となった。このとき、Bの幹部的な地位にいたXをはじめとする会員の同意を得ず、Bの名称につき商標登録出願をおこない、商標登録を受けた(Bは法人格なき社団であるため、B名義で商標登録を受けている)。その後、B内部での対立が激化し、YがXらに対しB名称の使用をやめるよう求め、タウンページへの電話番号掲載を阻止した。本件は、XがYに対しB商標使用差し止め請求権を行使することは権利濫用であるとして、B商標使用差し止め請求権不存在確認と、電話番号掲載阻止行為により門下生が減ったことにつき不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案である。


判旨の要約

前提として、YのB館長としての地位は無効となった遺言によるものであるとし、これが無効となった状況下では、YはBの承継人であるとはいえず、Bは分裂したものと評価できると判断した。そして、商標は自他識別機能を発揮するためのものであることを理由に、(a)「表示の周知性・著名性の獲得がほとんど特定のものに集中して帰属していること」、かつ、(b)「グループ内の他の者は、そのものからの使用許諾を得て初めて当該表示を使用できるという関係にあること」を満たす場合以外は、グループ内の他の者に対して商標権を行使することができない、とした。
結論として、B商標使用差し止め請求権が存在しないことを認めた。ただし、損害賠償については、損害との因果関係が証明されていないとして、弁護士費用のみの賠償を認容している。


私見

YによるB団体の承継の有効性が一義的には判断に大きく影響を与えたものと思われるが、この点については割愛し、商標権行使が権利濫用とされた点について考察を行った。

(1)商標権行使の場面における権利濫用法理のこれまでの展開

商標権行使の場面における権利濫用の適用をまとめた論考によると(注2)、無効理由の存在を理由に権利濫用とされたもの(注3)の他、他人の著名な著作物を濫用した事案(〔ポパイ事件〕最判平成2年7月20日判時1356号132頁※公的判例集未調査)、傍論ではあるが企画立案事業者がクライアントの事業名称を無断で商標登録出願し行使した事案(〔PAPiA事件〕東京地裁判決※判例集未調査)、著名標章を冒用した事案(注4)(〔ぼくは航空管制官事件〕東京地判平成14年5月31日判決)において権利濫用が認められている。〔PAPiA事件〕を除いて、無効事由を有する商標をめぐる事案と評価できるように思われる(注5)。
なお、本件のように団体内部での紛争により団体の分裂が起こった場合での事案は管見の限り発見できなかった。

(2)本事案の位置づけ

本事案について考えれば、出所がYのみではないB商標の登録が問題となった事案であり、商標法3条1項6号、あるいは、4条1項7号に該当する要素があるものと思われる。ただし、当事者からその旨の主張が無かったため、単に権利濫用と述べたようにも読める。事実、知財高判平成18年12月26日平成17(行ケ)10028〜10033では本件Yの登録は「公正な取引秩序を害し、公序良俗に反するものとして、商標法4条1項7号に違反」する、として登録無効とした審決を維持、本件で問題となった商標の登録が取り消されている(注6)。
「権利濫用」という一般法理で理由付けがされているものの、無効事由存在を理由とするものの一部として整理することが、議論を混乱させずに済むようにも思われる。

(注1)本事件に関する評釈は管見の限り見当たらない。
(注2)日本知的財産協会商標委員会「商標権における権利濫用に関する判例研究」知財管理55巻13号(2005年)1993頁以下。
(注3)平成16年改正で商標法13条の2第5項が改正され、特許法104条の3同様の規定が設けられたため、現在では当然のことである。
(注4)異議申し立てが成されているが、異議申し立てを行った者は、当該標章を用いた商品の直接の販売者でなかったためか、登録が維持されている(この点は要調査)。
(注5)ただし、明示しているわけではない。当事者からその旨の主張が無かったため、無効事由に触れず権利濫用とただ述べたのではなかろうか。
(注6)その理由は、本件Bのような規模・内部組織の団体においては、Y名義で商標登録出願をするにあたっては、組織としての合意形成につとめ、直ちに報告する等の義務があり、これに違反した出願は商標法の予定する秩序に反する、と述べている。
posted by かんぞう at 20:17| Comment(2) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月31日

[商標]アメリカ連邦商標法におけるサーティフィケーションマークについてのメモ

サーティフィケーションマークってのがあるんだ。ふーん、という思いのメモであるが、制度の違いが面白かったので、まとめてみた。

アメリカの連邦商標法(注:連邦制であるので、州法で定めることが出来る。商標に関しては、州内では州法が、州際取引では連邦法がそれぞれ守備範囲となっている。)では、商品・役務の原産地・品質表示について、商標の一類型として捉えられ、独自の規制が吹かされている(なお、サーティフィケーションマーク:Certification Markの定義は15 U.S.C.§1127)。

その独自性は、次のような使用をした場合に、登録が取り消されるところにある。
・商標権者が、他者による使用を管理・規制していないとき
・登録商標が使用される商品・役務の製造・マーケティングに携わったとき
・原産地・品質等の表示以外の目的で使用したとき
・規格を満たす商品・役務等についての使用許諾における差別的取り扱いをしたとき
・商標権者自身の商品・役務に用いたとき
(15 U.S.C. §1064、邦訳筆者。)

このことから分かるとおり、かなり消費者保護を意識したものとなっている。
このような制度は日本には無い。かなりの程度制約が大きいものであり、米国でのそのような商標登録には注意が要る、ということだろう。

ところで、日本には無いから同様の制度を容れるべきだ、という論を、比較法をやる初学者は言いがちである(という言い回しではいかにも偉そうだが、自分自身は比較法をやるド素人である)。だが、日本ではこの制度は必要ない。単に、登録商標として何らかのマークを取得し、特定の品質を保証する使い方をすればよいからである。

もちろん、品質管理に対して、「形式的には」国が関与できるという点では、サーティフィケーションマークも意味があるのかもしれないが、事後的にしか関与できない点では、あまりメリットが無い。むしろ、結果としては商標に対する信用という形で市場に任せた場合と変わらない。

昨日の森田先生の論文を読んで、安易な比較法は怖いなーと思っていたところなので、おもしろい例が目の前に現れて、嬉しくもなった。

ちなみに、アメリカ商標法についての概略の邦語文献は、創英知的財産研究所『米国商標法・その理論と実務』(経済産業調査会、2004年)がある。つかみには最適である。より理論的なもの、あるいは、実務上詳細なところを知りたい場合は、いまのところ、英語文献に当たるほかなさそうだ。
posted by かんぞう at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月23日

[商標][時事]登録拒絶理由としての公序良俗違反と政治問題

※お断り
政治問題も絡む事案です。政治的な立場からのご意見もあるでしょうが、私はあくまで法律の解釈論のお話を政治的な立場を交えずに進めています。おかしい!とお思いになるのであれば、それは法律がおかしいのかもしれません。法律がおかしい場合には、国会議員に陳情し、世論を喚起することをなさるべきであるとお断りします。


新聞報道(産経新聞2007年1月19日)によると、隠岐島での土産品として「竹島」の名称を含む饅頭菓子を販売している東京の土産菓子屋が、商品名につき商標登録出願したところ、4条1項7号違反(公序良俗違反)を理由に拒絶されたようである。その理由の詳細は、「大韓民国と我が国との間で領土問題化している島根県の『竹島』の文字を含ん」でおり、「商標として採択・使用することは、両国の関係に無用の混乱を招くおそれがあり、社会通念上穏当では」ない、という点にあるようだ。

同号は国家の一般的利益擁護を含む趣旨であると理解されており(平尾正樹『商標法』(学陽書房、2002年)142頁)、外交上の弊害を懸念して拒絶すること自体(今回の判断という意味でなく、判断の前提という意味である)は、同号の解釈としては問題の無いものと考えられる。同様の事案としては、「征露丸」(正露丸ではない)が拒絶された例(大判大正15年6月28日)があり、これは、ロシアとの外交関係上の弊害を懸念している。ここから今回の判断は、前例に無い判断ではないとわかる。若干、考慮材料は異なるものの、外交上の弊害を懸念したという意味では、〔『Anne of Green Gables』商標事件〕知財高判平成18年9月20日平成17年(行ケ)第10349号の判断とも共通性があるように思われる(もっとも、同判決は正面からは国際商道徳という観点からの拒絶を正当化している。しかし、それだけでは説明できない面もある)。

ただ、問題は何をもって「外交上の懸念」とするかの基準である。今回の判断に対する批判があるように、多分に恣意的な要素は免れ得ない。極力謙抑的であるべきである。では、どのような場合に「外交上の懸念」を理由とした登録拒絶が許されると解するべきか。

そもそも外交上の懸念が生じる理由は、商標登録を許すということは国家が権力によりその標章(名称など)の利用において排他性を肯定するということである。ある種のお墨付きを与えることであり、他国を刺激することは十分に想定される。つまり、政府当局が進めている外交に、特許庁が横槍を入れる事態を起こしかねないのである。また、そのような名称の独占使用を許可することで、第三国からその「品格」を疑われることも懸念される(「品格」を疑われるか否かの判断基準は、その当時の国際的な社会通念や国際外交儀礼に求められよう)。端的に言えば、第三国の関係においても自国の国益を損ない得るのである。

もちろん、そのようなことは懸念に過ぎない。どう捉えるかは、態度決定の問題である。

この態度決定に関して、「特許庁が外交に横槍を入れる」という点を問題視すべきという立場ならば――すなわち、主権者たる国民が正当に選挙により選出した国会議員による主権行使の過程を、選挙による審査を受けていない一行政庁が妨害しうるという点を考慮するならば――、「外交上の懸念」が生じるものは極力登録すべきでないと言えるのではないだろうか。そうすると、恣意性という弊害との調整が必要となる。これを考察すると、政府が外交問題として検討しているか否かが一つの基準となろう。

第三国との関係、つまり国際外交儀礼を重視するのであれば、これに加えて当該行為が国際外交儀礼上、許容されているかが判断基準となろう。今回の場合で言えば、領土問題となっている地名にちなんだ商標登録がどれほど他国で許容されているか、である。今回、そこまでのリサーチはしていないが、そのような国際儀礼があるかは注目したい。

この問題は、結局のところ、公共の利益――つまり国益――をどこまで考慮するかに最終的には帰着するように思われる。商標登録を許すことで守られるのは私益である。国益と私益、どちらにより重点を置くかの立場は分かれるところであろうが、国益を守るという立場からすれば、この判断はあながちおかしなものでないように感じられるのである。

なお、このような理由で商標登録を許さなかった標章が周知となった時、不正競争防止法上の保護を受けられるかについては、検討の余地があろう。仮に受けられるとすれば、商標登録を受けられない不都合は軽減されることとなる。

※先輩とこの話題をしていたら、「竹島」が挑発的でダメなら、じゃぁ「独島」だったら登録が許されたのか、というウィットのきいたチャチャを入れていた。実はまじめに考えると面白い点かもしれない。どうなんだろう…。

※※産経新聞は、『竹島問題に詳しい拓殖大学の下條正男教授(56)は「竹島が韓国領なら分かるが、どうしてだめなのか。問題が起こらなければ、よしとする役人的な発想だ」と話している。』と記事に書いてあったが、歴史の専門家に聞いても…と思う。問題はあくまで「商標法」なのだから、知財法の専門家に聞いてほしかった。法律家からすれば、政治的責任をとらない役人が問題を起こしてはまずいのである。たとえば、日本と友好的な国であるアメリカとの外交問題を揶揄するような商標をあっさり登録されることの弊害を考えてほしい。それを考慮すれば、現状の法律からは、今回の恣意性はやむを得ないのではないか。今後、基準について立法論として政治家が議論を進めるべきであるように思う。
posted by かんぞう at 01:29| Comment(5) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月31日

[商標]ひよこ立体商標事件控訴審ざっとメモ

新聞にも載った〔ひよこ立体商標事件控訴審〕知財高判平成18年11月29日(判例集未登載)平成17年(行ケ)第10673号をざっと読んでみた。

争点は、銘菓「ひよこ」のあの形態を立体商標登録していたところ(「通常有する形態」だからと、最初は拒絶されたのだが、後に周知なものと認められた経緯がある)、需要者は「ひよこ」の形態から商標権者は想起しないとして無効が求められたもの。

結局、歴史的(江戸時代まで遡った!)に鳥型の菓子がありふれていること、類似の菓子が多数あることから、出所識別性が乏しい、と判断して、周知性はあくまで「ひよこ」の名称が有しており、「ひよこの形態」は商標権者の営業標章として周知でない、と述べている。

最後に、素人的に面白いところを2点。
まず、「ひよこ」の歴史がささっとわかって面白い。
東京駅のひよこと福岡のひよこは姉妹会社だということ。
江戸時代に「虎屋」(あの虎屋!)が鳥形のお菓子をつくっていたこと。
次に、この判決文、途中に争点となった立体商標の画像や、類似する菓子の画像が埋め込まれているのである。しかも、カラー。
裁判所もなかなか凝ってきた。
posted by かんぞう at 01:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月02日

[商標]商標機能論についての与太話

並行輸入と商標権の問題について、同輩の報告があった。FRED PERRY事件最高裁判決が出て以来、だいぶ議論が進んできた感じだが、部分部分で整理されていない箇所(理論がというより、それぞれの論者の表現やいいまわしについてである)もある感じを受けた。

まず、「品質保証機能」という用語について、下手をすると混乱する。

私は、
(1)「需要者」が一定の出所の物であることを期待し、一定の(これには上限も下限もある)品質を期待している事実状態、
または、
(2)その事実状態が損なわれないならば、≪少なくとも並行輸入について≫商標権侵害でないとする違法性阻却事由、
と整理している。
しかし、事案によっては、ライセンス中の「品質保証」条項との関係が持ち出されるため、「品質保証」義務との関係を勘違いする場合がある。私見としては、ライセンスで問題となるのは「品質管理義務」と表現する方が良いと考えている。

そうでなくても、論者によって捉え方が違うようだ、というのを工業所有権法学会で宮脇先生がおっしゃってた。

次に、国内でのライセンス違反との関係も気になる。

「品質保証機能」や「出所表示機能」を害さない限り、ライセンス違反は債務不履行に留まるといえるのか否か。
もちろん、FRED PERRYの射程は並行輸入に限るが、ロジックとしては国内でもあたるだろう。
私見は、商標権の場合、流通にも効力が及ぶことを考えれば、同様に商標機能論による違法性阻却をするべきであると考えている。ライセンス違反の有無を流通に関与した者が関知することは難しいからである。もっとも、何をもって「品質保証機能」を害していないかはライセンス違反の類型により検討されるべき問題である。

思いっきり恥ずかしい余談だが、一時期「FRED PERRY」というのは、ソースの会社だと思っていた…。ウスターソースの創始「Lea and Perrins」社と混同(!?)してたっていうありえないボケっぷり。
もちろん、FRED PERRY社はアパレルブランドってことは今は認識!買ったことはないけど…。
posted by かんぞう at 18:07| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月23日

[商標][時事]赤毛のアン事件

新聞で話題になったのだが、『赤毛のアン』を無断で商標登録しようとすることは、「公序良俗」に反すると裁判所が判断した(知財高判平成18年9月20日)ようだ。

事実の概要は次のとおり。
『赤毛のアン』(正確には、原題の『Anne of Green Gables』を商標登録出願したところ、国際信義に反するものであり公序良俗違反であるとして特許庁から拒絶された。これについて出願人が不服を申し立てたが、この判断(審決)を知財高裁が正当と示した。

判断の理由は、
「本件著作物のように世界的に著名で,大きな経済的な価値を有し,かつ,著作物としての評価や名声等を保護,維持することが国際信義上特に要請される場合には,当該著作物と何ら関係のない者が行った当該著作物の題号からなる商標の登録は,『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』に該当すると解することが相当」
としており、膨大な顧客吸引力を持つ標章を特定人に独占させることは不当との規範に立っているようにも思われるが、カナダ国において特に『Anne of Green Gables』が公的な保護を受けてきたことにも言及しており、後者の考慮も相当程度含まれているだろう。(とくに、本件はカナダ国の州が被告側に訴訟参加している事案である。そもそもそのような訴訟参加はユニークだ。)

国際信義と、標章の不正な利用が問題になった前例としてはDUCERAM事件(東京高判平成11年12月22日 判時1710号147頁)がある。
同事件は、日本国内で無名の会社名であり、ドイツ国内で出願中の商標を、輸入業者が無断で商標登録した事案である。この時にも「取引秩序に反する」「国際信義に反する」として、公序良俗に反する登録として無効(※本件と異なる点は、一度は登録されている点である。念のため。)とした。
(なお、同事件については、平尾正樹『商標法』(学陽書房、2002年)146頁が、「公序良俗」の字義を超えるものと批判していたが、氏はその後当該箇所を削っている〔平尾正樹『商標法 第2版』(2006年、学陽書房)154頁〕。)

いずれも、著名な標章へのフリーライドを問題としているが、かつてならいざしらず現在は4条1項19号が存在し、客観的要件(「著名」な「商品等表示」)と主観的要件(不正目的)(※著名性の要求については批判もある〔田村善之『商標法概説 第2版』(弘文堂、2000年)106頁〕)を求めているのである。これを超えるものを安易に公序良俗の範囲で掬い取ることは同号の制約を無意味にするものであり、注意が必要であろう。少なくともDUCERAM事件については、無効とされるべきでなかったのではないか。
ただ本件は、著作物の題号という本来商品等表示と扱われないもの〔茶園成樹「アニメーション映画の題号と不正競争防止法」コピライト542号(2006年)?頁〕が問題となっている。この点では更なる考慮が必要であろう。
場合によっては、題号につき特別な立法による保護を行い、商標法に影響を及ぼすことも考えられるのではなかろうか。
posted by かんぞう at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月29日

[商標][時事]ドイツ連邦通常裁判所、ドイツ語の「ワールドカップ2006」の商標登録を取り消す

ドイツの事案であり、ドイツ語が読めないかんぞうには検証できない話題であるが、各所のニュースをかき集めると、
「ドイツ語の『ワールドカップ2006』との商標登録は、通常名称であり無効」
との判断を下したようだ。

何が普通名称といえるかについては、言語体系や各国の社会的状況にもよるものである。日本で日本語の「ワールドカップ2006」との商標が同じように無効といえるかどうかについては、おそらくそういうことはないだろう。個人的には、日本語の「ワールドカップ2006」は普通名称ではなく、商標として成り立つと考えている。
では日本語なら何が普通名称かというと、ありえるとすれば「2006年度サッカー世界選手権」ではないだろうか。ドイツ語の商標権もこのようなものだったのではないか。

もちろん、英語圏で、英語の「WorldCup 2006」は普通名称なのではないかという批判も出てくるのは理解できる。しかし、この名称はFIFAが使い出し、この名称の周知に相当な投資を行っている。その投資にフリーライドさせることもまた、批判されるべきだろう。
(4/29掲載、5/1書き換え)
posted by かんぞう at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月02日

[商標]不正使用取り消しの疑問点

平尾466頁は、
不正使用→譲渡→審判請求
の場合、譲受人は譲渡人の不正使用を理由に取り消しを受けないと解釈している。これには問題ないが、反対に読めば
審判請求→譲渡の場合、譲渡が詐害的にせよそうでないにせよ、前主の不正使用の影響を受けることになる。その根拠はどこにあるのだろう?なお取り消しの効果は審決時からである。
posted by かんぞう at 19:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。