2007年02月07日

[特許]台湾特許法事情その1:対応課題の日本との違い

先日、台湾に遊びに行く機会があった。ついでながら台湾の特許制度について話を聞く機会があったので、何回かに分けてまとめることとする。

日本では、特許庁での審査の迅速化が、対応すべき課題の第一に挙げられているが、台湾ではそのようなニーズは乏しい、ということが窺えた。その理由の一つは、審査が現実に迅速であるところにあるようである。2006年度では、ファーストアクションまでの期間が17ヶ月だったようであり、日本に比べると9ヶ月程度(独立行政法人工業所有権情報・研修館調べによる)早い。

課題となっているのは、裁判での審理の質とのことであり、日本でいう知財高裁の設立や、仮処分における判断ガイドライン作成に努めているとのことであった。
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2006年06月06日

[特許]米国の先使用権

知財Awarenessの記事
米国特許法における「先使用権」と権利強化の方向性(上)〜(下)」
は、米国の先使用権をめぐる改正点が詳細にまとめられており、わかりやすい。

同記事によれば、今までの米国では(日本に比べて)先使用権が極めて限定的な
場面でしか使えず、ようやく改正されるに至ったらしい。個人発明家の抵抗があ
ったからというのが理由として指摘されており、いかにも米国らしい。

企業戦略として営業秘密として守ることを選択することが多くなってきた今、先
使用権の活用は重要との指摘があるが、その通りであると思う。ただ、近時の技
術の先端化を考えれば、自社で営業秘密としていた技術が他社により特許出願さ
れた場合は、営業秘密の漏洩の恐れもあるし、その特許発明は進歩性を欠く可能
性もある。個人的には余り活用される場面はないのではないかと思っている。

(※特に進歩性を欠くタイプの特許発明についてであるが、かつては、侵害訴訟
で無効事由を抗弁とすることができなかったため、先使用権の重要性があったと
思われるのである。)
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2006年05月16日

[特許]冒認出願に対する移転登録請求―準事務管理理論の再検討

○潮見佳男「著作権侵害を理由とする損害賠償・利得返還と民法法理」『法学論叢』156巻5・6号(2004年)に着想を得た研究メモ

1.問題提起
真の権利者の出願を加害の意図をもつ者により簒奪された場合で、その後、いわゆる冒認者が補正により当該出願を権利化した場合には、平成13年の生ゴミ処理装置事件で最高裁が述べた「連続性」を満たすと評価されるのだろうか?
論者によっては連続性を肯定し、真の権利者に生じた利益のうち冒認者の寄与分を不当利得として返還させるべきとする。
他方、これを否定的に解する見解もある。
前者の見解を実質的に妥当と見るが、これをどのように理論上のサポートをするか検討した。

2.考察
「連続性」という概念では法理論としてあいまいであり、より精緻にすべきと思われる。この点、出願で求めた権利範囲を設定登録された権利範囲が越えることは無いのだから、これをもって連続性と解すべきという見解が考えられる。しかし、これでは若干理論的裏づけが弱いように思う。
ここで、準事務管理理論を再考することとする。
そもそも、事務の他人性が無いことがこの理論の難点であったが、ここでは、法定の関係を形成して、冒認者が獲得した権利を返還させる、公平法を根拠とするルールとの位置付けを行ってみたい。(そのためには立法が必要であることは付言する。)
不法行為の救済制度としてはこのような位置付けが理論上不可能でないことを潮見教授が検討されいる。私は、1発明に1回しか権利が生じ得ない特許制度においてもかかる制度を検討することは法秩序に反しないと考える。
すなわち、故意の侵害者に対して準事務管理を認める構成も可能といえよう。ただし、通常簒奪者は故意が認められようから、上記の場合にはすべて当てはまることとなる。
これにより「連続性」がより明確になるものと思われる。

3.発展可能性
なお、準事務管理理論を、故意の冒認出願者(真の権利者が出願していない場合)に対しても応用できないかということも検討可能であろう。ただし、真の権利者が発明公開をする意思が無かったのに特許を与えることは特許制度に反するという有力な見解(いわゆるインセンティブ論)には明確な反論ができていない。
私はインセンティブ論を否定するものではないが、しかし真の権利者が営業秘密としての保持を企図していたような場合において、不正な手段で発明を入手し出願したような場合においては、真の権利者は冒認出願により営業秘密という知的財産を失い、回復手段も無いのである。価値判断にもよるが、救済を認めるべきとする余地もあるかもしれない。
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2006年05月10日

[特許]冒認出願と第三者の出願の関係

「冒認出願、および、それに基づく特許権と、第三者、および第三者のした出願との関係」(ミニ研究ノート)

1.学説の状況
(1)冒認出願の後願排除効
冒認出願については、第三者の後願であっても先願としての地位を持たないと解されている(光石四郎先生、織田季明/石川義雄先生の見解)。これは39条の条文の定めとは合致する。

(2)冒認出願に基づく特許権の無効審判請求権者
冒認出願が権利化されたときに、無効審判を請求できる者は条文上は第三者も可能と読むことができるが、中山信弘先生はそうは捉えない。冒認出願による無効というのは公益的事由でないから、あくまで真の権利者に限るべきと考えている。なお、この考えには田村先生、茶園先生も同調されているようだ。

(3)冒認出願に基づく特許権の行使に対する無効事由の抗弁
冒認出願が権利化され、それを侵害するとされた相手方が、冒認出願であることを主張できるか?という問題点について、田村先生は(2)の中山先生の考え方に立ち、第三者がこれを主張することはできない、とされる。

2.疑問点
(a)1−(1)は真の権利者が出願したが冒認者に奪われた場合にも当てはまるか?
(b)論理一貫していないのでは?
1−(2)、1−(3)において通説は冒認出願の無効の効果はあくまで真の権利者に対するものだけであるとしているのに対し、1−(1)は対世効を持ち一貫していないのではないか?

3.検討
(1)(a)について
仮にそのように解すると、2点問題が生じる。
1点目は、冒認が無ければ本来権利を得ることができなかった後願者が権利を得る機会を得て、理不尽であるという点。これを認めてしまうと、後願者は故意に他人の出願の名義変更を狙ってくる可能性も出てくる(もちろん、実際そんなものが通用することはまず無いが。ただし、実例として偽造書類で名義変更をした例がいわゆる生ごみ処理装置事件)。
2点目は、裁判例・多数説ともに、奪われた権利の回復がありうる。当該出願が権利化する前であれば、特許を受ける権利を真の権利者の特許を受ける権利の確認で名義変更がなされる。権利化後であれば、真の権利者の特許を受ける権利との連続性があれば、移転登録請求が可能と解されている。
回復された場合、冒認とされた出願と第三者の後願が並存することとなってしまい、問題である。
ゆえに、あくまで冒認者による出願が39条の対象であると解するべきである。

(2)(b)について
仮に、1−(1)において第三者に対しては先願としての効力を持つとする。冒認出願後、第三者の出願があり、さらにその後、真の権利者が出願した場合において、問題点が生じるのである。すなわち、冒認出願が無くても、第三者出願により排除されていた真の権利者の出願が、冒認出願のおかげで排除されずに済んでしまうのである。あたかも冒認出願に対して出された真の権利者の出願日が遡及するかのようであり、問題である。
翻ってみれば、そもそも後願排除効はすでに公開が予定され社会にメリットが無い技術を排除するものであるが、冒認出願については発明者主義の名残なのであろうか。この点については疑問点として残る。
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2006年05月03日

[特許]吉田広志「判批:キャノンインクカートリッジ事件」

●吉田広志「判例批評」判例時報 1909号・10号(2006年)185〜192頁(吉田先生のサイト掲載の原文へのリンク
なお、これは2006年02月05日[特許][時事]キャノンインクカートリッジ事件で取り上げた事件の判例批評である。

1.この論文の意義
判例批評として、従来の裁判例、学説状況を整理し、田村説からの検討を若干行うものである。

2.この論文の要約
学説上は、いわゆる消尽アプローチ(横山説)とこれを修正する田村説が主流であり、いずれも流通保護とのバランスを主眼に社会通念上の消尽範囲を定めるものである。裁判例は、少々ニュアンスを異にし、主要部の効用終了に着目してきた。本判決は、従来の裁判例に沿ったものであるが、主要部が消耗していないということについての当てはめである点は新しい。

3.私見
我が師匠は従来のアプローチにプラスアルファをした判断基準と述べているので、見解の差があるかもしれない。今後、きちんと研究したい。
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[特許]冒認出願に対する真の権利者からの設定登録移転請求の当否

松田竜「冒認出願と真の権利者保護」『知的財産法政策学研究』3号(2004)195頁〜(原文を掲載している北大へのリンクを貼っています)

1.この論文の意義
松田氏は弁護士であるが、特に実務の視点からの検討を加えたのでなく、理論的な検討を行った論文である。平成13年の生ゴミ処理装置事件(最高裁平成13年6月12日判決)、平成14年のブラジャー事件(東京地裁平成14年7月17日判決)を中心に裁判所の理論の流れと学説について整理を行っている。

2.この論文の要約
平成13年以前においては、真の権利者が出願した後、無権利者が出願人名義を変更した場合、権利登録前であれば真の権利者が特許等を受ける権利の確認が出来ることは承認されていた。しかし、真の権利者が出願した後、無権利者が出願人名義を変更した場合でも、設定登録後は権利移転登録請求は認められないとする立場が多数であった。
その中で登場したのが平成13年判決であり、同判決は、移転登録請求を認めたが、その射程が学説上の問題となり、高林、田倉、盛岡、川口の各氏からそれぞれ見解が出てきた。松田氏は、特許制度は発明者が公開を行う代わりに独占権を付与するものであり、出願する意思が明らかでない場合の保護性は低いとする(いわゆるインセンティブ論)。それゆえ同判決は、真の権利者の有していた特許を受ける権利と査定登録が為された特許権とが連続性を有する場合のみであるとする。
この視点からは、平成14年判決は当然の帰結となる。
また、右視点からは、無権利者による補正により権利が成立した場合には連続性を欠き、移転登録が認められない場合が多いということになる。
加えて、松田氏は、移転請求が認められた場合でも、冒認出願であることは承継され、それゆえ無効審判請求可能であることを問題点とし、審判請求権者は制約されるべきと主張する。

3.私見
若干不明な点は気になるものの、丁寧な整理であると感じた。
なお、同じく知的財産法政策学研究の10号には吉田助教授が冒認出願に関して論文を寄せている。
本こちら(北大へのリンク)
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2006年04月26日

[特許]欧州特許条約における発明要件(翻訳)

European Patent Convention
Article 52


(1) European patents shall be granted for any inventions which are susceptible of industrial application, which are new and which involve an inventive step.
1項 欧州特許は、産業上利用可能で、新規、かつ、進歩的なステップを含む発明に与えられる

(2) The following in particular shall not be regarded as inventions within the meaning of paragraph 1:
(a) discoveries, scientific theories and mathematical methods;
(b) aesthetic creations;
(c) schemes, rules and methods for performing mental acts, playing games or doing business, and programs for computers;
(d) presentations of information.
2項 1項の意味するところにより、特に以下のものを発明とみなさない。
(a)発見、科学的理論、および、数学的手段
(b)美的創作物
(c)精神的活動や、ゲーム、ビジネス、コンピュータプログラムのための、枠組、ルール、方法
exclamation&questionここでいうコンピュータプログラムのための枠組み・ルール・方法っとは何?:言語?プロトコル??>要調査
(d)情報の提示
exclamation&question具体的に何を意味する?

(3) The provisions of paragraph 2 shall exclude patentability of the subject-matter or activities referred to in that provision only to the extent to which a European patent application or European patent relates to such subject-matter or activities as such.
3項 2項に定めるものおよび行為は、欧州特許出願および欧州特許が当該のものおよび行為に関わる限りにおいて、特許性を否定される。
→加盟各国内では知らないよということか。

(4) Methods for treatment of the human or animal body by surgery or therapy and diagnostic methods practised on the human or animal body shall not be regarded as inventions which are susceptible of industrial application within the meaning of paragraph 1. This provision shall not apply to products, in particular substances or compositions, for use in any of these methods.
4項 ヒトまたは動物の体を手術または治療する方法、ならびに、ヒトまたは動物の体に対して施される診療方法は、1項に意味する産業上利用可能性を満たす発明とみなされない。この項に定める事項は、とくに薬物や合成物といった、当該方法に用いられる物には適用されない。

日本との違いで特記すべきは、2項に定める数学的手段の特許性否定を明示している点であろう。日本では「自然法則を利用していない」として否定するが、議論すべき余地は多い。
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2006年02月05日

[特許][時事]キャノンインクカートリッジ事件

知財高裁平成18年1月31日判決(平成17(ネ)10021号)

1.事実の概要
C社が特許を有するインクカートリッジ(液漏れを起こし難いインクカートリッジおよびその製造方法、以下本件特許権)の使用後のものに対しインクを再充填する行為が本件特許権の侵害に当たるかが争われた。
被告は販売により特許権が消尽していると主張した。原審は、物の権利については消尽するとする一方、生産する権利は消尽がありえないので、新たな生産か修理に当たるかで検討するべきであり、本件においては修理であるとして原告の主張を退けた。

2.判旨概要
まず、権利は販売さえされれば消尽されるものではなく、特許発明公開の対価として想定される部分を越えたものには特許権が及ぶとした。そして具体的類型として、(1)耐用期間を経過し効用を終えた後の再使用・再生利用、(2)特許発明の本質的部分を構成する部材の全部または一部につき加工または交換がされた場合、の2類型を挙げた。本件においては、(2)に該当するとして特許権侵害を認容。

3.解説
特許権の消尽について具体的な判断枠組みを示したものである。
従来は生産・修理の両区分によっていたが、効用を終えたあとの再利用という基準が加わった。
なお、リサイクル品の販売を否定するものではないと強調している点にも注目しなければならないが、特許権と地球環境保護を衡量したわけではないので誤解をしないように。

4.私見
キャノンが有する特許をめぐるものであるので、プリンタ用インクすべてが対象となるものでなく、実質的にも妥当である。法律論からしても異論はない。
柔然からリサイクル品を巡っては、商標、形態模倣等の訴訟が起こされていたが、それらとの位置づけも注目されよう。≫続きを読む
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2005年12月17日

[特許法]弁理士試験メモ:審判における職権探知主義

※要チェック

特許法§153V(商標法§56T、意匠法§52も準用)は請求の趣旨を越えた審理はできないと定めている。これは、拒絶査定不服審判請求なのに新たな無効事由を審理すること(すなわち無効審判と同じ審理をするということ)を禁じている。一方、特許法§153T(上記各法の各条文で準用)は、当事者が申し立てない理由について審理できるとしている。これは、無効審判で新たな無効事由を審理することは可ということだ。

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2005年12月14日

[特許権]一太郎事件に見るソフトウエア特許権の間接侵害における問題点

(これは疑問点がまだはっきりしていない段階でのメモです。こうだ!という法律解釈じゃないですよー。)

一太郎事件知財高裁判決は、方法の発明として成立しているプログラムに関する特許の間接侵害(特許法101条4項)に関し、当該プログラムを「インストールしたコンピュータ」を販売することは間接侵害だが、プログラム自体の販売は、使用することで侵害となるそのもの自体ではない、として間接侵害に当たらないとした。
なるほど、間接侵害を幅広く認めてはいけない、という懸念の表れであろうが疑問も生じる。となると、方法の特許として成立している特許を侵害することになるソフトウエアであってもパッケージソフトとして販売されてしまえば、間接侵害に基づき販売差し止めを食らうことはないのである。
じゃぁ「物」の発明とすればよいのだが、プログラムが物の発明として認められたのは2001年(特許庁が運用基準を変えた)からである。方法の特許としてとるか、装置としてとるかしかなかった時代の特許がまだまだ生きている。
なんとなく釈然としない。もっと調べてみないと。
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2005年10月30日

[特許]知的財産を語る(レクシスネクシス・ジャパン、2005年)  第3章

キルビー特許事件の相手方TI社の知財担当の方との対談録。

●気になった点要旨:特許侵害訴訟が裁判上決着することが少ない日本では、損害賠償額や技術比較方法等の実例がアメリカに比べると集積されておらず、予測可能性が低くビジネスがやりにくい。ビジネスのやりにくさということを特にTI社は問題視しており、戦略として「技術者がどのような技術も使えるように」することを目指し、クロスライセンスなどを用いて不安要素除去に勤めている。
アメリカではdiscoveryという制度が訴訟上あり、弁護士など限られた特権を持つもの以外は裁判に関する証拠を開示しなければならない。つまり他部門や外部機関に特許の鑑定を依頼していると、それも証拠として開示が求められてしまい不利な結果を招くことになる。

●おもいのたけ:discovery制度ってめんどー!
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2005年10月23日

[特許]特許異議制度

平成14年改正で特許異議制度は廃止。施行は平成16年。
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2005年10月16日

[特許][自論]設定登録をしていない特許権の通常実施権者の保護について

目新しいこと書いてないけど、6月に書いたものを保管!覚書程度やね〜。

−−−−−−−
設定登録をしていない特許権の通常実施権者の保護について

T 概要
 1.現在の問題点
通常実施権の登録は、第三者への対抗要件であるが、現在その登録請求権は判例上認められていない。しかし、契約で設定者に登録義務を課さなかった場合で登録がなされなかったとき、特許権(あるいは専用実施権)の移転が発生したら通常実施権者がその権利を特許権等の承継人に対抗できず、結果特許権侵害として実施差止めを求められる場合がありうる。これは、通常実施権者に酷であり、ひいては実施許諾契約による特許の活用を妨げないか?

 2.これに対する考え方
・現行制度上はやむをえない(不安であれば契約内容に登録義務を附するべき)。
・しかし、契約内容に明示的に登録義務が含まれていなくても、当事者の意思を合理的に解釈して登録請求が契約に含まれていると解される場合には、通常実施権者からの登録請求が認められうる、とする考え方もある〔中山信弘『注解特許法(上)』(青林書院,2000年) 819頁〜〕。
・現状として通常実施権の登録制度はほとんど活用されていない。それゆえ、対抗制度によるのでなく、「ライセンス対象知的財産権の譲渡時には、新権利者からもともとのライセンシーに対する権利行使を禁止する制度を採用することが望ましい」〔産業構造審議会知的財産政策部会流通・流動化小委員会(第5回)〕とする意見も上がっている。

U 現在の問題点
1.特許法99条

「効力」とは「対抗力」を指すと解されている
この条文によると、特許権などが第三者に移転した場合には、登録を受けていない通常実施権者は対抗できないことが明らかである 。

2.最高裁昭和48年4月20日第二小法廷判決
そこで、通常実施権者側から登録請求をなすことができるかが問題となった。これに対し最高裁は、
「特許権者から許諾による通常実施権の設定を受けても、その設定登録をする旨の約定が存しない限り、実施権者は、特許権者に対し、右権利の設定登録手続を請求することはできないものと解するのが相当である。その理由は、つぎのとおりである。
 すなわち、特許権の許諾による通常実施権は、専用実施権と異なり実施契約の締結のみによつて成立するものであり、その成立に当つて設定登録を必要とするものではなく、ただ、設定登録を経た通常実施権は、「その特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる」(特許法九九条一項参照)ものとして、一種の排他的性格を有することとなるにすぎない。そして、通常実施権は、実施契約で定められた範囲内で成立するものであつて、許諾者は、通常実施権を設定するに当りこれに内容的、場所的、時間的制約を付することができることはもとより、同時に同内容の通常実施権を複数人に与えることもでき、また、実施契約に特段の定めが存しないかぎり、実施権を設定した後も自ら当該特許発明を実施することができるのである。これを実施権者側からみれば、許諾による通常実施権の設定を受けた者は、実施契約によつて定められた範囲内で当該特許発明を実施することができるが、その実施権を専有する訳ではなく、単に特許権者に対し右の実施を容認すべきことを請求する権利を有するにすぎないということができる。許諾による通常実施権がこのような権利である以上、当然には前記のような排他的性格を有するということはできず、また右性格を具有しないとその目的を達しえないものではないから、実施契約に際し通常実施権に右性格を与え、所定の登録をするか否かは、関係当事者間において自由に定めうるところと解するのが相当であり、したがつて、実施権者は当然には特許権者に対し通常実施権につき設定登録手続をとるべきことを求めることはできないというべく、これを求めることができるのはその旨の特約がある場合に限られるというべきである。」
として通常実施権者からの登録請求を認めなかった。

3.解釈
通常実施権は、特許権(あるいは専用実施権)者が通常実施権者の実施権の対象となっている特許の実施を妨げないことを債務とする債権的な権利である。要は通常実施権者からすれば、権利者から邪魔さえされなければいいのである。
登録などの公示制度は、公示をされることによって第三者が権利関係を把握できるところに利点がある。第三者にとって把握したい権利関係は、それが排他的権利である場合が第一だと考えられる。その場合、第三者の保護のためにも、また、排他的権利を保有する者のためにも、公示が徹底されなければならない。それゆえ、登記(登録)請求権が認められると考える。
そうであれば、排他性の乏しい通常実施権においては公示の徹底は要請されず、登録請求権までを認める必要はない、と解することができる。
そして、仮に特許権等の移転があり、登録がなかったために通常実施権者の実施が妨げられた場合でも、通常実施契約により生じた「実施を妨げない義務」の不履行であるとして、債務不履行責任を追及できるため、利害の調整は図られていると考えるのである。

4.問題点
しかし、そのような理解をすると、登録をされていない通常実施権者に不利益が生じる場合が考えられる。たとえば、以下のような場合である。

このとき、B社はC社に対抗できず、サービス停止を免れない。しかも、債務不履行であるとしてA社に損害賠償を求めても資金繰りの悪化した同社からの回収は期待できない。このような場合、B社は多大なリスクを負担するが、登録請求権がないと解されている今、事前に回避する手段は、A社の合意を得て登録をする方法しかないのである。
しかし、実施許諾を受ける者の規模や交渉力によっては、そのような合意を得ることは困難である場合が考えられる。特にベンチャー企業が許諾を受ける者である場合には顕著であろう。現状では、特許権を活用した経済活動が阻害される恐れが生じるのではないだろうか。

V 解決策
1.登録の徹底
(1)契約
契約時に登録義務を設定者側に定めておけばよいのであるから、その周知徹底を図りさえすればよい、という考えは成り立つ。しかし、先に述べたように契約当事者の関係によってはそのような義務を定めることが困難である場合が考えられ十分とはいえないのではないか。

(2)契約解釈
そこで、明示の登録義務を約定していなくても、契約の解釈により、当事者の意思を合理的に解釈して登録請求が契約に含まれていると解される場合には、通常実施権者からの登録請求が認められうる、とする考え方もある 。

2.登録制度の問題点
(1)登録制度の現状
2003年度には、相続・合併を原因とする特許権の移転が27917件、それ以外の原因の移転が9270件が存在する。そして、専用実施件登録は200件、通常実施権の登録は204件である 。特許の移転が多く行われているのに対し、通常実施権登録は極めて少ない、すなわち登録制度が活用されていないのが事実である。
その理由としては 、
@登録に際しては原則として対価の登録も要求されているが、このような情報は公開したくない企業が多い。
A企業戦略上、ライセンス契約の存在自体を明らかにしたくない場合がある。すると登録すること自体を避けてしまう。
B業界によっては、ライセンス契約において、特許番号ではなく技術分野によって包括的に対象知的財産が特定されている事例が多くあり、そのような場合には登録制度が利用できない。
上記3点が挙げられる。

(2)ライセンシーに対する権利行使禁止制度
そこで、対抗制度によるのでなく、ライセンシーに対して権利承継人がその権利行使を禁止すべきという考え方もあがっている 。有効な手段であると考えるが、一方で知的財産権が譲渡されたとき譲受人が不測のライセンシーを抱えることにも繋がりかねない。「独占性」が譲り受け時の評価の要素となっていた場合はいかに対処すべきだろうか。しかしながら、通常はそのような信頼を損ねるようなことはしないであろうし、するならば破産に近い状況であろう。破産においてはライセンシーは保護されるのであるから、この制度によるべきではないかと考える。
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2005年10月12日

[特許]うろ覚えだったこと

わかる?

○アメリカでは先発明主義がとられているか?

○実用新案の保護期間は何年?

○欧州特許をとったらどの国の特許が取得できる?




●アメリカの先願主義移行
先発明主義だとコストが掛かるという理由で、アメリカ科学アカデミー、連邦取引委員会が中心となって、改正案を提出。2005年6月段階ではまだ法案審議中。

●実用新案
もう保護期間が10年になったんだよな〜、忘れてた(>_<)

●出願時に指定した締約国で取得可。締約国はEUの範囲とはややずれる。イギリスは入っていないが、トルコは入っている。
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[判例]キルビー特許事件高裁判決

kilby_pat_overview.gif
有名なキルビー特許事件。最高裁で「明白な無効事由を有する特許権行使は権利の濫用だと裁判所が判断できる」ことを示した事案。
・主に特許侵害の有無が争われている
・改正前の法律だから起こった事案である
とのことで読みにくいものになっている。
ともかくも、まず前提事実のキルビー特許の出願状況を示したので参照されたし。
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