2007年08月31日

[時事]特許による「待ち伏せ」行為に対して欧州委員会が動いた

ITpro(2007/8/24日記事)(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070824/280233/?L=top5)によると、欧州委員会がRambus社に対し、EC条約87条違反に関する異議声明を送ったようだ。

形式的には純粋な特許権の行使であるが、競争法上の違法性が認められている点で、興味深い事例である。

Rambusに対しては、米国FTCが処分を下している。米国では「自己の特許権が技術標準に含まれる過程に参加していた」かつ「意図的に情報開示をしなかった」上で行った点などが、競争法上の違法性の根拠とされていた。
おそらく、欧州でも同様の判断が下されるだろうが、仮に根拠に違いがあれば、おもしろくなる。

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2007年08月15日

[時事]裁判員に選ばれる可能性の地域差と、裁判員として扱う可能性のある事件の地域差

最高裁判所が、地域ごと(地方裁判所の管轄ごと)の裁判員に選ばれる確率を試算し、公表した(注1)。
それによると、大阪、千葉、三重が上位3府県で、およそ0.2%〜0.4%の確率で裁判員に選ばれるようだ。対して、石川、島根、大分は下位3県で、0.05%〜0.15%の確率とのことだ。

最下位と最上位の差は若干多いように思うが、中位はおおよそ分布がまとまっている。上位数府県に住む人は「ひょっとしたら裁判員になるのかもな」という覚悟は強く持つ必要があるかもしれないが、それ以外の都道府県の住民にとっては、大きな差でないように思われる。

さて、裁判員制度は、大まかに言うと凶悪犯罪(殺人や、致傷結果をもたらした強盗など)および危険運転致死、傷害致死ならびに覚せい剤・大麻に取締法違反および通貨偽造を対象にしている。気の弱い人には、前者の物騒な系統の事件の裁判員になる確率が高いのか否かは気になるところかもしれない。

ただ、残念なことに、都道府県ごとの裁判員対象罪状の起訴件数の統計は、管見の限り見つからなかった。また、最高裁判所の資料(注2)によると、覚せい剤・大麻に取締法違反および通貨偽造の件数はそれほど多くない。おそらく、裁判員として扱う事件は物騒なものが中心となるだろう。

では、物騒なら物騒なりに、どういう系統の事案を扱う可能性が多いのだろうか。扱いうる事件の傾向にも地域差はあるのだろうか。この点を調べてみた。

ただ、先ほども触れたとおり、都道府県ごとの裁判員対象罪状の起訴件数の統計がなかったので、警察庁から公表されている犯罪統計(平成18年度)と国政調査結果に基づく人口推計(平成18年度)を用い、確率を導くよりは、他府県との比較を中心に推計できるよう、データをいじってみた。裁判員対象事件の中で中心的な「殺人」「強盗」「放火」「強姦」について抜き出してみた。

なお、この推計の前提は次のとおりである。
・「強盗」「放火」「強姦」について、致死傷結果を発生させた事件の割合は全国一律と仮定している
・検挙された事件が起訴される率は全国一律と仮定している
・20歳以上人口に含まれる外国人登録者は無視できるほど小さいと仮定している
かなりいい加減な前提に立っているので注意していただきたい。あくまで、この推計は、「こんなもんかなー」程度のお遊びである。

さて、有権者人口1000人当たりで、「殺人」「強盗」「放火」「強姦」の検挙件数を比較したのが以下のグラフである。(作った後で気がついたのだが、殺人は全件裁判員対象事件となるが、残り3つは違う。単純に積み上げて見ることはミスリードであるので、注意してほしい。)

saibanin.PNG
(出典:警察庁統計より筆者作成。ただし、かなり粗々の算定結果なので注意)

この結果を見ると、地域差は少なからずあると言えそうだ。大都市部が高めである傾向があるが、地方だから凶悪な事件が少ないということは無いようだ。

個別に見ていくと大阪の突出度合いが気になる。上位3府県の中ではダントツに物騒事件度が高い可能性がある。実は私は大阪に住んでいたことがあるのだが、正直言って物騒さを体感していた。それゆえ、ああやっぱりな、とついつい思ってしまう。

これに比べて、三重、千葉はこのグラフ上は上位ではない。千葉に関しては、「強盗」「放火」などにおいて致死傷事件の割合が多いことも考えられるが、あるいは、危険運転や傷害致死などが目立っているのかもしれない。少なくとも三重は人口1000人あたりの交通事故件数が多いことから、危険運転関連の裁判員事案が多い可能性がある。

また、殺人事件数に注目すると、沖縄の突出具合が目を引く。四国も総じて多い。これは裁判員対象事件となるので、興味深い点である。

(注1)地方裁判所別に想定される裁判員候補者数とその選挙人名簿登録者数に占める割合の試算表(平成18年)≪最高裁判所へのリンク≫
(注2)罪名別に見た対象事件数(平成17年度)≪最高裁判所へのリンク≫
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2007年07月26日

[時事]個人の楽曲演奏シーンを含む動画を巡る新しい動き

最近、知的財産関係で、法律家以外にとってもホットな話題が乏しいように感じていたが、久しぶりに面白い報道があった。
ヤフーは自社の動画共有サイトへの投稿映像で使われる音楽について、著作権使用料を日本音楽著作権協会(JASRAC)に支払うことで合意した。ヤフーが支払いを肩代わりすることで、利用者は個人の楽曲演奏シーンがある動画を合法的に投稿できるようになる。(NIKKEI NET(2007年7月24日記事))

早とちり注意!対象は「個人」の「楽曲演奏シーン」だけでは?

この報道を受けて、著作権に詳しくない方ですべての楽曲が合法的にアップロードできると誤解されていた方がいたので、注意喚起をしたいのだが、この報道のポイントは、「個人の楽曲演奏シーンがある動画」という箇所にあるように思う。報道からは、あくまで「個人」が「演奏」(なお、著作権法上はここに「歌唱」も含む(著作権法2条1項16号括弧書き))している場合のみが対象だと読める。

そうであるならば、許容されるのは、
「著作権の対象となっている楽曲を個人が演奏した音声を含む動画」
(たとえば、コピーバンドの練習風景)
「著作権の対象となっている楽曲を個人が歌った音声を含む動画」
(たとえば、カラオケ)
だけであって、エアボーカルや、著作物の対象となってる楽曲を動画に乗せたものは対象外となる。

この点については、Yahoo!Japanから詳細が公開されることを待ちたい。
読売新聞報道によると、この理解で間違いが無いようだ。

気になる著作者人格権

『企業法務戦士の雑感』のFJneo1994さんの2007年7月24日の記事は、JASRACは著作者人格権を対象としていないことを指摘している。指摘の通りであり、何でも許される訳でないことには注意しなくてはいけない。

コピーバンドの練習風景でも、独自のアレンジを加えたら、著作権侵害となる動画と評価されることには留意が必要なように思う。

…ところで…ヘタクソが歌ったら、もはや「著作物の再生」ではなく「意に反する改変」だと言われてしまうのだろうか?仮にそうだとすれば、ヘタクソさんが歌って投稿するときは要注意である(笑)

気になるYahoo!JapanとJASRACの間の利用料

上述のFJneo1994さんは、利用料の額についての合意形成にはなお困難な点があるのでは、と指摘されている。
この点について、JASRACの利用料規定(下記)を見ると、およそ広告料収入の3.5%あたりになりそうである。何曲使おうとこの額に固定されるので、高いと見るか、安いと見るかは微妙なところである。

参考:利用料規程
http://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/royalty/royalty.pdf


追記(2007年7月26日)
詳細がわからないね、と書いたら、24日の段階で読売新聞に載っていた。私の読みはあっていたが、情報収集能力の低さを露呈してしまって恥ずかしい限りである。
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2007年07月20日

[時事]マニュフェストから知的財産に対する各政党の意識を読む、そして、ケチをつけてみる(笑)

選挙の夏が近づいている。このブログでは基本的に政治ネタは扱わない方針でいる(というより、私が単に政治に対してニュートラルなだけだが)、が、今回は「選挙に関心を持って投票に行こう」というノリで、知的財産の視点から選挙を眺めてみた。

眺める対象はマニュフェスト・公約とする。この点については、2005年のマニュフェストが興味深かった。海賊版拡散防止条約締結と特許審査迅速化を掲げる自民党に対し、フェアユース規定導入、デジタルアーカイブ政策などを民主党が打ち出すなど、興味深い政策提言が2大政党から行われていた。
(その内容はIT Mediaが的確にまとめている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0508/30/news112.html

さて、今年はどうだろうか?知的財産に言及したマニュフェストの該当箇所を抜き出してみた。

1.マニュフェスト・公約で知的財産に言及した主な政党

現在、国会に議席を有する政党のマニュフェストを検討してみた。

(1)自由民主党
知的財産戦略の展開
民間活力の活用、外国特許庁との協力推進等により、2013年までに世界最高水準の迅速かつ効率的な特許審査を実現する。また、ひとつの発明が世界中で円滑に特許保護される「世界特許」の実現に向けて、「特許審査ハイウェイ」の拡大、特許制度の国際的な調和を目的とした「実体特許法条約」の実現に取り組むとともに、模倣品・海賊版の拡散を防止するため、「模倣品・海賊版拡散防止条約」の早期実現を目指す。
(155の約束)

(2)日本共産党
著作権制度の発展をはかります
 著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。デジタル化・ネットワーク化にともない芸術・文化の新たな利用形態が発展することは、国民の享受の条件が広がる点から歓迎すべきことで、それが適切な形で芸術・文化の担い手に還元されることが文化の発展にとって重要です。一般ユーザーだけの負担ではなく、著作物を利用することで利益を得るメーカーに応分の負担を求め、権利者の利益を守る方向で著作権制度の発展をはかります。
 映画スタッフや実演家の場合、著作権上の権利が十分に確立しておらず、そのうえ大企業や政府の都合で権利の縮小さえ狙われています。企業にすべて権利が移転してしまう現状を改め、映画監督・スタッフ・実演家の権利確立をめざします。
(2007年参議院選挙にのぞむ日本共産党宣言(12の重点政策))

(3)国民新党
特許庁の機能強化を図り、わが国のすぐれた技術の保護を図る。
(第21回参議院議員選挙 わが党の選挙公約)

(4)新党日本
原産地呼称管理制度創設
(マニュフェスト)
※ただし、食の安全についての提言箇所に記載


2.マニュフェストを読んでの私見

民主党、社民党は知的財産についての言及が無かった。知財の人間としては残念には思う。が、それぞれの政党の焦点は別のところにあるので、総花的なマニュフェストの中でなおざりに触れられるよりは良いのかもしれない。

自民党の提言内容は、知的財産に関する主な議論点についてバランスよく盛り込まれている。ただ、いずれも既に取り組みを始めているものであり、特に「迅速な特許審査」「特許ハイウェイ」「模倣品・海賊版拡散防止条約」は「知財推進計画2007」にも盛り込まれているので、目新しさが無い。この点は面白くない。

共産党の提言は、「権利者の利益を守る方向で」「メーカーに応分の負担」という点が気になる。「私的録音録画保証金」の大拡大でもしようというのだろうか、と思ってしまった。メーカーに負担を与えれば、かえって著作物の利用の機会が縮小する可能性があるし、その負担分は結局消費者(一般市民)が負うことになる。権利者の保護のためにはやむを得ない、ということなのだろうか。しかし、「企業にすべて権利が移転してしまう現状」であるならば、このような政策は、メーカー&消費者からコンテンツ事業者への利益移転が行われるだけに留まる気がするのだが…。
もう1点気になるのは、「映画スタッフや実演家の場合、著作権上の権利が十分に確立しておらず、そのうえ大企業や政府の都合で権利の縮小さえ狙われている」という点である。本当に権利の縮小が狙われているのだろうか?そのような改正の動きは聞いたことがないが…。仮に実演家等の権利が管理団体によって集中管理をされたり、あるいは、契約によって譲渡されたりした結果、主体的に行使できないことが多い点を問題視しているのであれば、それは、円滑な流通に必要なことであって、ひいては実演家等に資することではないだろうか。下手に権利強化をすると権利関係を複雑にし、著作物の利用を阻害し、結果として実演家等の利益を損なう可能性もあると思う。
とはいえ、刺激的な提言をしている点は評価したい。

国民新党の主張は、特許庁の何の機能をどう強化して、「技術の保護」をはかるのか、そのロジックがわからない。詳細が欲しいところである。ただ、素朴に考えるならば、既に技術は保護されているのだから、別に特許庁の機能を強化してもどうしようもないのではと思う。

新党日本の主張は原産地呼称の保護に言及したものと読み取った。面白い主張である。もっとも、不正競争防止法、地域団体商標制度で既にある程度保護されているところであり、これらとの関係はどうなるのだろうか。


以下、※余談※
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2007年07月01日

[時事][特許]特許維持手数料が安くなる

特許・商標の維持年金・登録更新手数料を最大4割引き下げる、という報道があった。

手数料等を下げても良いと思う、特許庁サイドの気持ちも分からないでもない。特許行政年報2007を読むと、特許料等収入の繰越分だけで各年度の歳出が賄えている状況であり、なかなかの「金余り」の状況のようである(1000億円を越える余剰金が発生している)。

年報では商標の登録にかかる収入と、特許の登録にかかる収入の内訳が分からないが、登録件数などから考えると、商標の登録手数料収入もかなり多いものと推測される。ならばディスカウントしてやっても良いゼという太っ腹なお話なのかもしれない。

ただし、問題もあろう。
『企業法務戦士の雑感』のFJneo1994さんが触れられている所(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20070628)はまさにその通りで、商標についても同じように下げてよいのか?という疑問が湧く。(FJneo1994さんはこの点を明快に説明されている)

私としてはもう一点、法的な問題ではないが、国が推進する知的財産経営の視点からの懸念に触れておきたい。

知的財産経営においては、効果的に知的財産を使うことが望まれる。その要素として定期的に知的財産の価値をレビューし、活用用途を探し、活用できない場合には技術提携のネタにするなどして生かす、というものが挙げられると思うのだが、その原動力の制度的な要素は知的財産の維持コストの高さだと思う。

あまり安くすると、「とりあえず権利にして安心してしまう」という状況に戻りかねないのでは…などと、思ってしまった次第である。
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2007年06月24日

[時事]知的財産推進計画、その他の法制度関連ポイント

昨日は重点ポイントを指摘したが、それ以外の法制度関連の話題は次のものがあった。これは、今日述べたように研究テーマを選ぶ際のネタに使えるかもしれない

デジタル著作物の特別な保護?

デジタル化・ネットワーク化の特質に応じて、著作権等の保護や利用の在り方に関する新たな法制度や契約ルール、国際的枠組みについて2007年度中に検討し、最先端のデジタルコンテンツの流通を促進する法制度等を2年以内に整備することにより、クリエーターへの還元をる進め、創作活動の活性化を図る。

なにやら懐かしいテーマである。総務省、外務省、文部科学省、経済産業省の取り組むべきテーマとなっている。中身が気になるのでざっと調べた見ると、次のような感じであった。

総務省では「情報通信審議会 情報通信政策部会 デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」で、(a)「コピーワンス」か「コピーネバー」か、(b)コンテンツに関する著作権処理の窓口、(c)権利行使範囲を明示した登録制度(GPLライセンスのようなものをイメージしていただくとわかりやすいかもしれない)、について議論が進んでいた。
文化庁では、「文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会」で、(a)デジタルコンテンツを保護する特別法、(b)権利行使範囲を明示した登録制度、(c)デジタルコンテンツに関するフェアユース制度が検討されていた。
経済産業省と外務省の取り組みは簡単に調べた限りでは分からなかった。

文化庁での議論は、10年前に盛り上がった「デジタル著作物の特別の保護」に関する話でおもしろそうである。ただし、あの時の議論が収束したことを思えばいまさら…という気もしないでもない。

海賊版ダウンロードの違法化

合法的な新しいビジネスの動きを支援するため、インターネット上の違法送信からの複製や海賊版CD・DVDからの複製を私的複製の許容範囲から除外することについて、個人の著作物の利用を過度に萎縮させることのないよう留意しながら検討を進め、2007年度中に結論を得る。

ターゲットとしているのは「ファイル共有ソフト」からのダウンロードであろう。気持ちは分かるが、程度問題もある。注視したい。

権利者不明の場合の不都合解消制度

我が国が蓄積してきた豊かなコンテンツを有効に活用するため、諸外国の動向も踏まえ、権利者の不明その他の理由により利用者が相当の努力を払っても権利者と連絡が取れない場合に、利用の円滑化を進める新たな方策について検討を進め、2007年度中に一定の結論を得る。

権利者不明、というのはありがちな話で、著作者の死後50年も経っていると、著作者が自然人の場合3世代先になっており、長子相続が原則でない今となっては誰に帰属しているか分からないことが多いものと思われる。それどころか、一般の相続に関する解説書では相続財産に著作権を挙げているものがまず見られない。あるいは著作権についてきちんと遺産分割協議をしていない場合も少なくないのではないかとも思う。こういう状況では、このような制度の検討は歓迎されるべきと思う。

もちろん、そんな不都合を生むのは無駄に保護期間が長いからだよ、というつっこみはありえるだろうが…。

著作物のデジタルアーカイブ収集とクリエイターへの補償

公共的なデジタルアーカイブにおける著作物の収集・保存や絶版等に至った著作物で一般ユーザーが入手困難なものの提供など非営利目的や商業的利用と競合しない利用について、クリエーターへの補償措置も考慮しながら、コンテンツの保存・収集・利用を円滑に進められる方策を検討し、2007年度中に一定の結論を得る。

意地悪をして著作権保護期間延長の反対の立場からの批判を考えると、こうなる。
『入手困難になる制度的原因は2つ考えられる。一つは、上記に挙げたように権利者が複数居て増刷が難しくなっていると言う可能性。もう一つは、著作権の保護があるからこそ、公共の利用が過少になっているという可能性である。この点は、アメリカでの実証研究(注1)が示唆するところでもある。このような不都合は保護機関が長すぎるから起こるのだ。』
保護機関については政策的考慮もあるからしかたないとして、ユーザーへの補償措置については気になる。権利者側が敢えて利益を得ていないのに、利用が過小化してるからといって政府が保証してあげるというのは、クリエーターの「遺族」に都合が良すぎないだろうか?

非重点項目で気になること

推進計画は重点項目と、非重点項目を分けていた。非重点項目について気になったのは次の2つ。
タイプフェイスに関する保護の在り方について検討し、必要に応じ適切な措置を講ずる。

またまた懐かしい議論である。

私的録音録画補償金制度の見直しについて結論を得る

これがなぜ非重点項目なのだろうか?こそっと通したい意図が…などと勘ぐる人も出てくるだろう。

(注1)Heald, Paul J. "Property Rights and the Efficient Exploitation of Copyrighted Works: An Empirical Analysis of Public Domain and Copyrighted Fiction Best Sellers", UGA Legal Studies Research Paper No. 07-003(2007)
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2007年06月23日

[時事][知財一般]知的財産推進計画2007から拾うポイント

(ちょっと前の話になってしまったが)「知的財産推進計画2007」が発表された。
法制度の検討ポイントについては、すでに審議会で議論が始まっているものが並べられているだけである。当初は「行動計画」として始まったはずだが5年経った今は、各省庁の取り組みをまとめて一覧できるようになっているもの、という性質が強いように思われる(注1)。

知的財産推進計画2007のポイント

今年度の特徴を私なりに把握すると、「IPDL(特許庁電子図書館)の充実」と「海賊版・模倣品取り締まり強化の継続」は柱のようだ(注2)。

前者のIPDLの充実は歓迎したい。民間のデータベース屋さんのの圧迫と言う面もあるだろうが、ユーザーとしては利便性(そしてコスト)の前に目をつぶってしまう(理屈ではなく、単なる感想(笑))。

もっとも、特許出願データについて、
企業の出願戦略策定に役立つ情報の提供を拡充する2007年度も引き続き、企業における特許出願戦略を策定するに当たって参考となる情報として、主要企業の海外出願比率や特許率等の情報を公表するとともに、2007年度中に、各企業が自社の出願件数や審査実績等のより詳細な情報を加工、抽出、経年比較できる「特許戦略ポータルサイト(仮称)」の試行を開始する。

らしいが、これはさすがにおせっかいなのでは、という気もする(これも理屈でなく、感想であるが)。

後者の海賊版取り締まり強化については、話題となった著作権の非親告罪化や水際での取り締まり強化のための人材育成のほか、目についたのは2点である。

海賊版取り締まり強化策としての個人輸入・個人所持の禁止について検討

まず
必要に応じ、模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持の禁止について更に検討を
行い、新法の制定等法制度を整備する。

、とある。
これはかなり大きなインパクトがあるものではないだろうか。どの範囲を禁止するかがきわめて重要であるように思う。また、現状の法の中で違和感のある部分もある。
以下、浅い検討ではあるが、特許、商標、意匠、不正競争、著作権に分けて考察を行ってみた。

特許権や、商標権、意匠権では従来、個人の一回的行為は規制対象外である(注3)。
ここに法の手が及ぶことになる。
まず、「わかっていて偽物を買うこと」が禁止されることになる。特許については難しい者があるが、商標権については本来的には「商標に化体した信用」が保護されているのであり、「わかっている」ならばその点を保護する必要は無い。商標権侵害の共同正犯的あるいは幇助的行為だとして取り締まりたい、というならわかるが、仕出国において当該商標権が無いような場合には不当性を感じる。

また、「海賊版」の意味次第では危うさもある。「著名な技術的製品」や「著名なブランド」の「模倣品」の限りにおいては、理解できるものではあろう。
だが、「海賊版」が「侵害物品」の意味でとらえられると、一気に納得しがたいものとなる。特許権の場合のように、後から評価すると侵害がわかったもの、商標では著名でないロゴがたまたま使われていたもの、が考えられる。ここが禁止されると、何か息詰る感じもする。例えば海外旅行で物を買うときに、「個人の旅行者が」侵害抵触調査をしなくてはいけないのである。もちろん、そんな検討をしているとは思えないが、明確な定義をしてほしいものである。

不正競争については「競争秩序」を概しているとは言い切りにくいと思われる。これが取り締まられることになるのは、これまた不思議な感じがする。

著作権については現状の法制度との整合に乏しい。譲渡を行った者のみが取り締まられる法体系の中で、突然私的領域の受領が禁止されるのである(注4)。まして「所持」が禁止されることにも違和感がある。従来、妨害排除請求の実現として認められてきた「廃棄請求」により所持を排除してきたが、これが、一足飛びに違法行為となるのはどうなのだろうか。

以上のところは輸入についてであったが、まして、「所持」の禁止には行き過ぎの感も受ける。従来、所持行為は知的財産法の感知するところではない。妨害排除請求の実現として認められてきた「廃棄請求」により所持を排除してきたが、これでは不足なのだろうか?

以上のところをまとめると、政策論としてはわからないでもない面があるのだが、「行き過ぎではないか」とも思う。いたるところに「侵害犯罪者」をつくるのが、望ましいのだろうか。現状の出口規制だけでは足りないのだろうか。どこか疑問が残ってしまう。この点は、本ブログで今後考えていきたい。

海賊版取り締まり強化策としての著作権侵害「海賊版」の広告行為規制

著作権法において、インターネットオークションへの出品など海賊版の
広告行為自体を権利侵害とすることについて、2007年度中に検討し、
必要に応じ法制度を整備する。

ことを挙げている。

広告行為規制は商標権では存在することを挙げて、本件についても説明する新聞報道もあったのだが、需要者の信用を保護する商標と同列には論ずることが出来ないものと思われる。あくまで、譲渡権侵害の予備的行為規制である。おそらく、この改正の本論はそのような出品を削除する義務をオークション管理者に負わせたいのだろう。(微妙な解釈問題ではあろうが、侵害物品自体の売買申し込み行為は侵害行為でなく、プロバイダーの責任ではない、という点が懸念だと思われる。)

最後に:知的財産推進計画で学生さんに役立つもの

最後に余談となるが、学生さんに役立つ資料があったので挙げておく。
知的財産推進計画の参考資料「知的財産戦略の進捗状況」(首相官邸へのリンク)
である。

2003年以降の知的財産法改正が、果たした機能ごとにまとまっている。
勉強の際や、ゼミでのレポート課題に使えそうである。これが筆者の学生時代にあれば、とふと思った次第である。
(注1)各省庁の取り組みを「ホッチキスで留めたもの」(日経新聞社説、NIKKEI NETへのリンク)には変わりないが、骨太の方針と違って、省庁ごとの枠を超えて取り組みが一覧でき、政府の取り組みがわかりやすくなる点では良いのではないか。また、「方針」(ある程度政治のリーダーシップが求められるであろうもの)と「計画」(行政側が具体的な行動をしめすもの)との違いもあるし、ここではとやかく言わない。
(注2)前者の視点には、依然として「知的財産権の保護強化」の色彩を感じる。もちろん社会の変化に応じて考えていくべき問題ではあるが、そこに将来つくりあげたい社会像を見据えた議論を行っていて欲しい。中山先生がかつて指摘したように、現在の利益擁護という片方の側の議論では困る。この点、各省庁を超えた知的財産戦略本部には、高所に立った検討を行う昨日を期待したいのだが…。
(注3)海賊版を製造した者につき当該行為が禁止されることは言うまでもない。
(注4)もちろん譲渡権等の侵害者の幇助者として責任追及をする手はあるが、現状では苦しいように思われる(この点は調査が必要である)。
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2007年06月20日

[時事]弁理士法改正―かんぞう、千載一遇のチャンス!?―

弁理士法改正案が国会で成立した。その中に、
知的財産に関する大学院の修了者及び弁理士試験の一部科目の既合格者に対する、弁理士試験の試験科目の一部免除制度を導入

というのがあり、大学院で知的財産を学んだ人間としては飛びついてしまった。

もしや、弁理士資格ゲットのチャンス!?(注1)

という訳で詳細を調べてみた。
『特許行政年次報告書2007年版』(注1)
によると、
大学院修了者であって、省令で定める科目の単位を修得した者について、大学院の課程 を修了してから2年以内に行う短答式試験のうち「工業所有権に関する法令及び条約」の 試験を免除することとした。

とのことである(注3)。

「2年以内」というのがネックだが、本改正法のこの規定に関する施行日は、特許庁ウェブサイト(注4)によると平成20年1月で、来年にはギリギリ間に合う。

次の問題は、「省令で定める科目の単位」だが、これはまだ省令が出ていないからわからない。しかし、「工業所有権に関する法令及び条約」の短答式試験を免除することから推測はできそうだ。
短答式試験は現在、「特許法」「意匠法」「商標法」「工業所有権に関する条約」「著作権/不正競争防止法」である。
ここから「工業所有権に関する法令」と「条約」を引くと「著作権/不正競争防止法」だけしか残らない。

これはいかに言っても免除範囲が広すぎるのではないか。

すると可能性は2つ。
・年次報告書の誤り。
・各法律の単位を要求することが予定されている。

後者であるとしよう。現在、多くの大学院で「特許法」くらいの授業は展開しているところもあるが(注5)、「商標法」などはおそらく知的財産大学院くらいでしか展開していないのではないか?だが、知的財産大学院は全国2つしかなく、この法改正のインパクトはそれほど大きくない。
問題は研究系の大学院である。管見の限り少なからず「知的財産法」という包括的な科目のみである。これが対象外ならば、研究系大学院卒の私には限りなくつまらないこととなる。

あまり大きくない期待を持て眺めたい。

最後になるが最初にこれを見たとき、ロー生の就職先確保か!?と思ってしまった。そう、かれらも見方と場合によっては対象になりうるのである。真相はわからない。密かな期待のうちに入れておこうと思う。

(注1)運用より政策に興味があるので、個人的にはなりたい!と熱望はしていないが、もらえるものならもらいたい(笑)もちろん、その先はそんなに甘くないことくらいは知っている。
(注2)http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2007/honpen/3-6.pdf
(注3)法案からはわからないので、年次報告書を参照するしか無い。
(注4)http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/kaisei/kaisei2/benrishi_kaisei_h190620.htm
(注5)MOT大学院やロースクールで展開している。
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2007年06月02日

[時事][知財一般]インド政府が伝統的知識の帰属に関してアメリカにたいしてアクションを起こした?

知的財産に関する世界的な議論のホットイシューの1つ、「伝統的知識(Traditional Knowledge)」に関して面白い記事が時事通信から配信された。
(6月2日7時0分配信 時事通信)
ヨガの知識やポーズ、関連商品などが米国で特許・商標登録されているのはインド数千年の知的財産を侵すものだとして、同国政府は2日までに登録の取り消しを求めて米国に抗議する方針を決めた。

しかし、これだけは、詳細がわからない。「商標」「特許」に分けていたので、それぞれについて検討する。

商標について

「知的財産を侵す」というからには、ヨガに関する「名称」による利益はインドに帰属する、という議論なのだろうか?仮にそうであれば、これまでの伝統的知識の議論とは少し違うものとなる。

従来の伝統的知識の議論は、技術的思想や著作物について、その利益の一部は伝統的知識を有する集団に帰属させるべきである、という議論が主であるように思う。それに比べ、「名称」が伝統的知識の発祥集団の独占によるべきである、という議論は聴かなかったように思う。こちらの主張であれば、なぜそれが正当化されるのかについて、国際的に議論が行われるべきであろう(注1)。

他方、伝統的知識の発祥集団以外の者が商標権を取得するべきでない、という議論は少なからずあった。仮にこちらの主張であれば、議論としては新しくない。もっとも、伝統的知識名の冒用を登録拒絶事由とするか否かの政策的な議論が展開される契機になりうる(注2)。興味深い。

残念ながら管見の限り、いずれの主張かわからなかった。今後の報道等を待ちたい。

特許について

特許については商標に比べ議論状況が異なるように思う。技術的思想から得られる利益が伝統的知識を創出した集団に帰属させるべきであるという議論はすでに存在する。

本件もそのような主張の一環か、と思いきや、オーストラリアのNew.com 2007/6/1の記事を読む限り、ヨガに関する特許については、新規性が無いなど特許要件を欠く、という主張をしているように読める。そうであるならば、きわめて真っ当な主張であって、目新しさは少ない。

補足

ところで、インドではTraditional Knowledgeの保護が注目されているようである。
参照:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/544861.stm

新興経済大国がこの問題を取り上げ出すと、少なからず議論は盛り上がることになるだろう。
(注1)現状の議論は少なからず南北問題解決の政治的ツールのように感じている。あるいは人格権的な発想からスタートして、当然に創出者に帰属するのだ、という主張もあるだろうが、ではなぜ「集団」に帰属するのか、なぜ世代を超えて「継承」されるのか、について説明が難しいように思う。
(注2)伝統的知識の問題ではないが、他国の文化資源の冒用を公序良俗の問題で処理した興味深い日本の判決として、〔Anne of Green Gables事件〕。
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2007年05月23日

[時事][知財イベント]研究会を阻むもの

早稲田大学COE 企業法制と法創造総合研究所 知的財産法制研究センター(RCLIP)が主催する研究会が、はしか流行の影響で延期になった。茶園先生が商標権の機能という視点から、判例上登場している事実上の商標権制限を分析される、ということであったので興味深く思っていただけに延期は残念である。

翌日は著作権法学会で「翻案」について議論が展開されるようで、アカデミックな視点からは興味深いこと、間違いない。ここで一つの基礎理論が形成され、実務の場に応用されることが望まれる。

ところで、RCLIPの次の回の研究会も申し込みが始まっていて、21回は著作権延長についてのアメリカの議論の紹介を行うようだ。アメリカでは経済学的モデルによる計量研究も含めた議論が行われてる。それだけに興味深い。どなたでも参加できるようなので、興味ある方はぜひ。

↓こちらを参照
http://www.21coe-win-cls.org/project/activity.php?gid=10052
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2007年05月21日

[時事][著作権]著作権法がヤバイ方向にうごいているかどうか

【著作権】とんでもない法案が審議されている(たけくまメモ)が話題になっているようだ。

ざっとその要点をまとめると、

”知的創造サイクル専門調査会で「著作権の非親告罪化」が議論されている。これが仮に通ってしまうと、同人誌など二次的著作物は壊滅的な打撃を受け、模倣に基づく著作物創作に萎縮効果を生じさせる。”

というのがたけくまさんの趣旨である。

火急の問題か、何が問題か、どうすればいいか、についてちょっと考えてみた。
(軽くまとめた後で、ざっと審議会記録を見ていたら、同じことを言っている人がいた。
なので、まぁ、審議会の中の一意見の紹介と思って読んでいただいた方がいいかもしれない。)

すぐに改正されそうか?

確かめてみると、たしかに著作権侵害罪の非親告罪化は検討対象になっている。もっとも、調査会自体は非親告罪化の方向に議論がまとまっているという印象は無い。この中で著作権法学者は中山信弘先生だけなのだが、さすがに、非親告罪化には否定的な発言をなさっていた。

また、著作権を審議する本筋ルートは文化審議会著作権分科会だが、こちらではまだ議論が始まったばかりであり、小委員会レベルで論点整理が行われている段階なので、これから議論が尽くされるところである。拙速な改正は無いように思う。私は、この問題についてそう騒ぐ必要も無い、と思っている。

もっとも、[時事][知財一般]日米首脳会談の合意事項を読み取る(2007/4/30)で触れたが、首相の政治決断もあり得るわけで、もしそうなってしまうと、私の予言はオオカミ少年に終わってしまう。

非親告罪化すると何が問題か?

仮に著作権侵害罪をすべて非親告罪化したとする。
今回の話はすべてここがミソだと思う。

問題は大きく3つではないかと思う。

1)権利行使しないという選択肢を著作者が採っている場合やライセンス契約を結んでいる場合にも、利用者が刑事裁判にもちこまれうるという点にある。告訴されてから許諾の存在を弁解する、という構図をとらなくてはならなくなる。常識的にはそのような運用をしないだろうが(注1)、理論的にはリスクとなる。

2)第3者からの濫訴が起きる。

3)軽微な改変や、翻案の範疇にあるのか非侵害なのか判然としないときにも、刑事裁判に持ち込まれうる。

それぞれについて検討してみる。

1)については、すでに触れたが、運用次第である。

2)については、その通りであるが、これも運用次第である。逆に司法警察の立場から見たときに、しょうもない告訴にも取り合わなくてはいけなくなることが問題かもしれない。

3)ひとたび著作権者をキレさせたら、身柄拘束までされうる、というのが懸念される。また、民事では勝てない無理な事案でも、とりあえず告訴…ということも懸念される。この場合は2)と同じこととなろう。

以上に挙げた問題については、非親告罪化によりめちゃくちゃヤバい問題が起こる、というものではない。また、本題の海賊版被害においては、6ヶ月の親告期間内に告訴に必要な証拠が集められないための不都合もある、らしいので、検討の意味はあながち無いとはいえない。

ではどうすれば良いのか?

そもそも、著作権侵害罪をすべて非親告罪化する必要があるのか?たけくまさんが懸念されるように、翻案なども非親告罪化するのは、大量の「被疑者」を生み出しうる。
であるならば、海賊版対策であるところを貫徹させ複製権侵害に限るのが一案である。

著作権侵害といっても、どの支分権侵害かで分けるのがいいのじゃないか、というのが、私の意見。

(注1)無駄な公権力発動をする訳で、警察/検察には赤点となってしまう。彼らもそんな危ない橋はわたりたくないだろう。
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2007年05月19日

[時事]手品の種を明かされた!…何の侵害?

5月最初に、ニュース報道で手品の種を不必要に明かされたとしてマジシャンがテレビ局を訴えたという事案があった。

知財に関わる方々のブログでも取り上げられていたが、著作物とはいえないよね、とか、特許にもできないよね、という反応が多いように思う。

もちろん、その法的な解釈には異論は無いし、私も著作権や特許での保護は厳しいなぁと思うのだが、その書き方をみていると、原告が著作権等を理由に訴訟提起したかのような印象を抱いた。

事実関係がよくわからないのだが、本件の面白いところを見逃しているように思える。

念のため述べると、仮に著作物だとしても、権利の帰属はタネを作った方であり、マジシャンではなかろう。本件はタネ製造業者が作ったタネが問題となっていたはずである。特許権・実用新案権にしても同様である。

新聞報道をみていると、「自らが所有してる手品のタネがしこんだコインの価値が損なわれた」ことを理由に訴えているように読めた。
もしかすると、顔眞卿、長尾鶏、気球写真、ギャロップレーサーと同じく、原告サイドは有体物の無体的利用の利益を所有権のなかに読み込む理論構成をとっているのではないか。だとすれば、なかなか面白くないだろうか?

もっとも、直感的にはそんな請求は認められないだろうなぁというのが本音である。
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2007年04月30日

[時事][知財一般]日米首脳会談の合意事項を読み取る

安倍首相の訪米と、その機に行われた日米首脳会談で「海賊版の規制強化」について合意がされた、との報道があった。これを「知的財産保護の強化」とのみ伝えているメディアもあり、詳細はわからないのだが(注1)、おそらく、海賊版の話が中心だったのだろう(注2)。
(注1)アメリカのメディアのウェブサイトでは、「慰安婦問題についての歴史認識」のみがニュースとなっており、内容がまったく把握できなかった。正直に言って安倍首相の影はアメリカで薄いのだろう…。歴史認識が問題となってしまうところに、中央教育審議会の山崎正和会長が行った「我が国の歴史はこうだったと国家が決めるのは間違い」との発言が正鵠を射ていることを痛感させる。
(注2)仮に著作権延長の話まで合意していたのであれば、『地獄の業火に焼かれて死ぬべきである』(笑)。というのも『著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム』《同フォーラムへのリンク》で議論されているように、現状の日本の国益を考える限り延長のメリットは乏しい可能性がある。むしろ、コンテンツ創造の疎外要素ともなりうる。少なくとも日本国内で、日本の国益を考えた議論を積み重ねるべきだろう。安倍首相には、経済問題についてこのような漠然とした不安を持ってしまう。


さて、件の海賊版対策だが、模倣品一般の取り締まり強化を促進する条約「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」の実現を目指しているらしい。この条約、文化庁の平成18年度『著作権分科会報告書』《文化庁へのリンク》が述べるところによると、日本が提言しているものらしい。その内容は、情報提供制度や、問題となっている国の制度・人材整備支援などのようだ。

翻って、今回の首脳会談での合意事項は、新聞報道によると「侵害物品の輸出禁止義務づけ」「不正製造に関する情報開示制度の整備」である。後者は日本が言っていることであるが、前者は異なる。とはいえ、特許法、商標法においては侵害物品の「輸出」行為を侵害行為とする法改正を昨年行ったばかりであるので、違和感のあるものではない。

気になるのは、「著作権侵害物品販売行為の非親告罪化」まで合意していないか、という点である。

平成19年度文化審議会 著作権文科会法制問題の第1回議事録《文化庁へのリンク、PDF》を読むと、今年度の検討テーマとして、「著作権侵害物品販売行為罪の非親告罪化」「著作権侵害物品の広告行為の禁止」が挙げられている。そして、前者については、国際著作権課の千代さんという方が、アメリカからの要請であると述べられている。

確かに実効性の確保という意味では、非親告罪化は良いのかもしれない。しかし、理屈の上ではライセンス関係があるかもしれず、また、頒布権を有する客体かどうかも、外形から判別できないかもしれない。つまり、あくまで理屈の上では、正当な販売行為が刑事罰の手続きに乗ってしまう可能性が生じてしまう。デュープロセスの観点からも問題があるように思う。軽々に合意されるべきものではない。

どのような合意が日米首脳会談でなされたか、その後の情報開示を待ちたい。
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2007年04月23日

[時事][知財一般]中国の知財事情に対するWTOへの提訴と留意点

2007年4月10日、アメリカ政府が知的財産権侵害を理由に中国政府を相手取り、WTOに提訴した。EUもこれに同調する可能性があるとの報道もなされた。

すでに報道でも触れられていることだが、中国の国内法として知的財産法の整備が遅れている訳ではない。問題は、エンフォースにある。

一度、中国の知識産権局を訪問したことがあるが、少なくとも中央官僚たちの知財に対する意識は高い。推測にすぎないが、問題の核心は自治体レベルでのエンフォースができていないところにあるのではないか。言い換えれば、中央のコントロールが、知財に関しては末端まで及んでいない、と思えてならない。

もしこの推測が正しいなら、単に知財の問題にとどまらず、中国の政治的課題の現れといえよう。

さて、話は変わるが、この紛争に関連して、読売新聞社説は「水際規制の強化を中国政府等に働きかけるべき」と主張していた。うなずける意見ではあるのだが、留意すべき点もある。

特に特許侵害の場合に顕著なのだが、水際の担当官は通常知的財産権に明るくない。運用いかんでは、保護主義的に働くこともある。いかに、専門的で、中立公正な水際制度を作るよう働きかけるか、が大事なように思う。
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2007年03月28日

[時事][著作権]映画の盗み撮りは刑事罰を受けるようになるらしい

3月28日のヨミウリオンラインの配信によると、
自民、公明両党は28日の与党政策責任者会議で、映画館で上映中の映画の撮影や録音を禁じる「映画盗撮防止法案」(仮称)を了承した。

具体的な中身については(これもヨミウリオンラインから)
 映画の海賊版DVDの横行を防ぐのが狙い。法案は、許可なく映画を撮影することに対し、罰則として、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金を設けている。
 ただ、国内で最初の上映から8か月経過すると適用されない。

著作権法の視点から見れば、私的複製に該当するが、著作権侵害(頒布権侵害)の準備行為にあたる行為のうち、(おそらく)「映画館内」での「映画の著作物」の複製行為を禁じることとなる。

詳細が分からないが、これを著作権法で対処せず、個別立法にしたのは、なぜ「映画」なのか?コンサートなど「音楽」「実演」は対象ではないのか?という点に合理的説明が困難だからではないだろうか。

それにしても手厚い保護である。量刑面では、窃盗を超え、詐欺よりも重い罪を科すことに、量刑の均衡が図れているのか疑問が無いではない。
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2007年01月06日

[時事][著作権]あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。
今年もまた良き年でありますように。

さて、早々に著作権関係のニュースが。
新聞報道(6日朝日新聞など)によると、経済産業省がネットワーク上の検索サービスが行うキャッシュについて複製権の制限規定の中に織り込む改正を今年中に行うと決めたようだ。

瑣末なフェアユースの明文化だが、これらの報道によれば現在のところ、検索サービスはサーバーをわざわざ米国においていたというのであるから、なるほどビジネスでのインパクトはあるのだろう。

昨年末に提出された著作権法改正案でも、修理等のための一時的な複製は同じく権利の例外として追加されている。広く射程(これは実際にその利益を享受するという意味での)を持ったフェアユースの個別な明文化が立て続けに起こっていることは面白い。身近にそういう種は無いか探してみたくなる。

ところで、このニュース、「経済産業省が」というところが面白い。著作権法を所管する文化庁ではないのだ。知的財産政策室がんばってるなぁ、といったところである。

追記(07/01/21):
検索サービスのキャッシュの著作権法上の問題については、昨年12月6日に知的財産戦略本部で中山先生が指摘されて《知財戦略本部「議事録」へのリンク》いた。あるいはここが端緒なのかもしれない。それにしても、ベテランでありながら新しい問題を追いかけてらっしゃる中山先生は凄い。
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2006年12月31日

[時事]2006年を振り返って

2006年も終わりを迎える。
知財の世界でも、なかなか面白い動きがあったように思う。

法改正では、物品性を伴う画面デザインは意匠法で保護されることになった。
知財の侵害罪がそれぞれ引き上げられたのもインパクトがある。
もっとも、こちらは政治先行の決定で、果たして良いのか、という疑問はあろう(最新号のジュリストで中山教授が述べられたところであるが)。私自身は、刑を重くするならば、少なくとも著作権に関しては要件に絞りをかけるべきではないかと感じている。海賊版販売行為は、最高10年の懲役でもかまわないだろう。窃盗との対比ができるからである。しかしそれ以外の行為はどうか?幇助は?
知財の世界と刑法との対話、というのも今後重要になるのではないか。

裁判例でも興味深いものが続いた。
特許権の侵害に当たる行為としての修理・再生産をめぐる基準を示した〔インクカートリッジ事件知財高裁判決〕(1月31日)、知財高裁になって2つ目の知的財産権非侵害の場合の不法行為の成立を認めた〔通勤大学事件知財高裁判決〕(3月15日)、人のパブリシティについての〔ブブカスペシャル事件東京高裁判決〕(4月27日)、著作権延長の改正が適用開始期が争われた〔ローマの休日事件〕(東京地裁仮処分7月11日)、著作権間接侵害型のサービスについて非侵害とされた〔まねきTV事件〕(東京地裁仮処分8月4日、知財高裁12月22日)、著作物の道の利用についての譲渡が争われた〔キャロルDVD事件知財高裁判決〕(9月13日)、なかなかユニークな非登録事由を持ち出した〔赤毛のアン事件〕(9月20日)、営業誹謗が争われた〔キシリトールガム事件〕(10月16日)……挙げればキリが無いが、ここらへんは特に目を引かれるものであった。

来年の議論のテーマの一つは、リサーチツール特許などの川上特許について、差止請求権の濫用論であろうと思う。著作権については未知の利用が話題となろう。不正競争がらみではパブリシティの扱いだろうか。

知財の周辺の動きもあった。
経済産業省が進める『知的資産経営』もだいぶ広められてきたようだ。知的財産を生み出せる人材の力、というのを今一度経営側は見直して欲しい。簡単にクビに出来る人材だけを集めていて、果たして知識経済の中で競っていけるのか?じっくり人材を育てる、という古めかしいことが実は強みではなかったのか。

来年も面白いことを出来るだけ追って行く所存である。ごらん頂いてる方の情報収集のインデックスの一つや、自分のお考えを練るきっかけにしてもらえれば、と願っている。
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2006年11月13日

[時事][著作権]松本零士「銀河鉄道」騒動雑感

世間で話題になっている、松本零士が槇原敬之の歌詞の一部に対して盗作と公言したことについて。
松本先生は、マッキーの「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」という歌詞のフレーズが、自身の『銀河鉄道999』に登場する「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」の「盗作」だと言っている。
「盗作」で意味するところは実は違うのかもしれないが、一応著作権法上の主張だと読み取った上で話を進める。

正直なところ、なるほど、アイディアは同じだねー、とは思う。
奇抜なアイディアだし、松本零士も素敵な着想をしたものだ。
しかし、これを著作権で保護すべきかどうか?
この「独創的な」アイディアを表す表現が、これだけの短いフレーズで言う場合、表現を選択する幅が限られているのである。これを気楽に著作権で保護してしまうと、「時間と夢は相互に裏切らない」というアイディアはおそらく今後1世紀近く事実上独占されてしまう。

これは不都合だ、と考えるのが多数の感覚ではないだろうか。
創作性を肯定するべきか、悩ましいと思われる。仮に創作性を肯定しても、複製ないし、翻案の範囲はほぼデッドコピーに限らせるべきだ、という近時の有力な見解があるが、まさにその射程にすべきではないか。
(私見はさらに進んで、市場競合の程度も見るべきでは・・・と直感的に思っている。まだ、思っているだけであるが。)

あるいは松本先生は、着想を借用する場合には、出所元を示せ、というのだろうか?それはそれで、うなづける場面もあるが、当の松本先生はそれでよいのか?
漫画のいたるところに、
「天然パーマはいいやつなんだよぉ! 41)」なんて脚注がつけられて、下に
「41)空知英秋『銀魂 第1巻』(集英社ジャンプコミックス、2004年)4頁に着想を得た。」
なんて書かれている事態は、正直、イヤ、である。

感覚的なところを書いてきたが、著作権は市場のシステムにも影響する。どういうものを作っていくか(どういう結果を招くか)意識しながら、知的財産権のあり方を考えていくのも、うちらの仕事だなー、と思ったしだいである。
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2006年11月10日

[時事][特許]世界特許?

読売新聞・日経新聞が報道するところによると、日本の特許庁が米国特許庁・欧州特許庁と、審査結果の相互活用、ひいては、相互承認に向けて検討しているようだ。
この報道を読む限り、日本で特許を出願し、登録されたら、直ちに米・欧で特許権も発生する、というものではないようだ。記事によっては「世界特許へ」なんて書いてあったが、これはちょっと言いすぎだ。
世界特許化するには、言葉の壁が大きい。

あくまで読む限り、であるが、日本に出願しPCTに則って米・欧を指定国とした場合で、いずれかの国で審査が行われた場合、他の特許庁での審査が事実上スキップされるというものと思われる。
相互承認自体は発展途上国では取られている手法であるし、導入への抵抗はさほどないだろう。
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2006年11月07日

[時事][その他]失業率と犯罪発生率、再犯率

時事通信によると、今年度の犯罪白書公表にあたり、法務大臣が、「一般刑法犯の認知件数と完全失業率の推移がともに下がっている。つまり、失業率下がると刑法犯も減少していると言える。出所者を雇用することが抑止効果になっている。」との旨を述べたらしい(あくまで伝聞。もしかするとメディア側のミスかもしれないし)。

これは厳密にはおかしい。単に、「一般刑法犯の認知件数」が「失業率が下がった」ら減った、だけで、「出所者の雇用」とは100%リンクしない。再犯者による刑法犯の認知件数が下がったのであれば良いが、少なくとも15年度、16年度を見る限り相関があるとは言い切れない。
posted by かんぞう at 13:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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