2008年06月05日

[特許]特許に対する研究者の意識―グレースピリオドは望ましいか?―

山形敏男*「知的財産権と研究の自由にかかわる問題―研究者の意識調査より―」技術と経済496号(2008年)42頁〜45頁は、研究者へのアンケート調査を行い、リサーチツール特許が研究の阻害になった例は極めて少ない、特許出願にあたって公表が制限されることが学問的自由を制約すると考える大学・公的機関の研究者は過半数を超えていることを示している。研究者の認識を示す資料として有益である。

■論文の概要
日本の大学・公的機関・企業に所属する研究者(それぞれサンプル数は585、467、23)に対しアンケート調査を実施し(なお、分野別には生命科学が653、化学/物理/天文が147、工学/数学/計算が275)、研究者の意識を調査した。
第三者の特許権のライセンスを受けた研究者は約12%であり、そのうち80%以上がリサーチツールである。ただし、ライセンス拒絶を受けたとの回答は0.2%にとどまった。
次に、特許出願のために研究成果の公表が妨げられることが学問的自由を阻害すると答えた研究者は、大学で50%強(なお、阻害しないとの意見は10%程度)、公的機関では50%弱(阻害しないとの意見は10%程度)、企業では30%程度であった。

■考察
リサーチツール特許の問題については、それほど大きな問題となっていないのかも知れない。その理由は詳しく検証する必要があるだろうが、研究社会のアウトサイダーからの特許権行使がそれほど多くないからなのかもしれない。(一時問題となっていたが、これは、短期的な視点で特許権行使をする者がいた、あるいは、単に適切な知的財産権行使ポリシーを持っていなかったことに起因するのかもしれない。そうであるならば、レピュテーション効果により抑制されたのであろう。)
特許出願のために公表が阻害されることが研究の阻害と考える研究者が少なくないことは面白い。しかも、企業内研究者との意識の差が注目される(ただし、企業内研究者は統計上有意なサンプル数でない)。山形さんが指摘するように、研究者評価指標として論文が用いられていることとの兼ね合いなのだろう。
このような意識の下では、グレースピリオドの導入に対して、研究者は前向きになるものと考えられる。

*(財)未来工学研究所 主任研究員
posted by かんぞう at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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