2008年06月02日

[著作権]著作権法学会2008年研究大会を通じての示唆1:フェアユース規定の導入か、制限規定の解釈での解決か?

筆者の怠惰が原因で大変遅いペースでの著作権法学会参加報告となっている。お恥ずかしい限りである。
残りの個別報告については、各報告のまとめではなく、その場で得た知見とそれに基づく考察をまとめていきたい。
そのようにする理由は単純である。
○実は午前の部は駒田先生以降しか聞けなかった(注1)
○島並先生の報告の時間は、不覚にも寝てしまった(注2)
…ごめんなさい…。

なお、今週末の工業所有権法学会も、午前の部が聞けない。どなたか聞きに行かれる方、レポートしていただけないだろうか…。

ともかくも、以下、社会の変化によって著作権法を適用すると「社会通念上」妥当でない結論が出る場合にどのように対処すれば良いか、という問題を出発点に、フェアユース規定の是非を考えていく。

■権利制限規定の類推解釈は可能か?
まず、現在の権利制限規定の解釈論で解決可能かが問題となる。しかし、これまで、制限規定のような例外規定は厳格に解釈されるべきとされてきている(注3)。

□研究会で得られた示唆
研究会の大勢は、制限規定であるから類推解釈が不可能との理解ではないように窺えた。また、制限規定自体の性質は権利者と利用者の利益調整にあるとの理解が多数を占めているようである。このような考えは、日本に留まらず、ドイツでも同じようである(注4)。
ただし、規定ごとに類推解釈の可否が検討されるべきとの考えが示されていた。具体的には、立法趣旨として例外を認めない趣旨であれば類推適用は認めるべきでないとの指摘があった(注5)。
なお、裁判実務上、地裁レベルで類推解釈を行うことは、上級審で覆された場合、以後の当該条文の類推解釈を困難にする可能性があるため、難しいとの発言があったことは興味深い(注6)(注7)。
他方、権利制限規定をより厳格に解釈する方向での類推解釈自体は許されるべきでないと指摘されていた。著作権侵害には刑事罰が存在するため、厳格に解釈すると侵害罪の範囲が拡張し、罪刑法定主義に抵触するというのがその趣旨である(注8)(注9)。

□考察
制限規定の厳格な解釈を示唆するような判決は依然としてあるものの(注10)、学説として制限規定の類推解釈に態度が緩やか(=類推解釈を許容する方向)であることが窺えた点は一つの収穫である。類推解釈の事例ではないが、飯村敏明判事の報告も示唆的である。
各権利制限規定の性質について吟味した上で、解釈により妥当な解決を導くことができる余地がないか、理論的な検討のポイントがまだまだあるのではないだろうか(注11)。

とはいえ、類推解釈で対処できないものもある。それに対して、フェアユース規定の導入を行うべきであろうか。次回では、「フェアユース規定の導入の可否」を考察し、その後、「一般条項を導入した場合における条約との関係と課題」をささやかではあるが考察する。

(注1)病院行ってました。
(注2)お昼食べ過ぎました。
(注3)駒田先生の報告によると、ドイツには「例外は厳格に解釈すべし」との法格言があったらしい。もっとも、〔そんなのおかしい」という考えもドイツにはあるようだ。いずれにせよ、日本における制限規定の厳格解釈の態度の根底にはドイツの法格言が影響していたようにも思う。
(注4)駒田泰士〔著作権法学会2008年研究大会おける発言〕。
(注5)島並良〔著作権法学会2008年研究大会おける発言〕。
(注6)事例に応じた適用の可否を論じたにもかかわらず、一般的解釈論として受け取られるから、という趣旨と理解した。
(注7)飯村敏明〔著作権法学会2008年研究大会おける発言〕。だから、知財高裁はがんばっているのかもしれない…。
(注8)島並良〔著作権法学会2008年研究大会おける発言〕。
(注9)今後述べていくところであるが、現在の刑事罰規定のあり方が、罪刑法定主義との関係や、サンクションの過大さとの比較衡量に基づく萎縮的な著作権規定の適用を生んでいるようにも思う。実は著作権の保護強化は、かえって著作権を弱めるインセンティブに作用しているのではないか。
(注10)本ブログ「[著作権]行政目的の複製に対する複製権の制限(著作権法42条1項)に公衆送信権は含まれると解するべきか?」(2008年3月3日記事)参照。
(注11)修士論文のタネですよ。
posted by かんぞう at 00:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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