2008年05月23日

[商標]歴史上の著名人の氏名の顧客吸引力の独占の可否(その2)

本ブログ2008年2月18日記事「[時事]歴史上の著名人の氏名の顧客吸引力の独占の可否」で触れた、「吉田松陰」の商標登録について自治体が反発した事案について解説した記事が面白かった。

渡邉知子「歴史上の著名な人物の名前を商標登録できるか」日経デザイン2008/04号(2008年)90頁〜91頁は、歴史上の著名人の氏名は現行制度上早い者勝ちであることを説明した上で、「聖徳太子」「伊達政宗」「坂本竜馬」などの氏名がすでに登録されていることをまとめている(注1)。

しかも、制度上、現存する著名な名所についても自由に商標登録ができることを指摘されている。これも面白い。ジャンク商標をオススメしている趣旨とも読み取れかねないが、おそらく、地方自治体に注意喚起をされているのだろう。自治体にとって重要な指摘であろう。

ただし、気になる点が2点あった。

1点目は、上記の事態が生じることが使用主義が貫徹されていない弊害であると読めるかのような記述をなさっていることである(注2)。使用主義を貫徹すると、事業の準備段階で冒用されることもある。名称には意外に投資が必要なことを考えれば、使用主義の貫徹は望ましくないのではないか。また、前掲の記事で指摘したように、先使用権で不都合の解消は図られているように私は思う。

2点目は、故人とは関係の無い第3者が独占権を得ることがないよう、故人の継承者に登録を認める制度設計についての言及である。渡邉弁理士は、仮に譲渡やライセンスが可能であるような制度にすると、「人物の名声に便乗した利益取得が目的とはならないのか、との疑問が残る」と述べられている。しかし、故人の継承者に登録を認める制度としている段階で、名声から得られる財産的利益が誰かに帰属することを認めているように思う(注3)。疑問はあたらないのではないか。もし、遺族の人格的利益を尊重し、人物の名声に便乗した利益取得を否定するのであれば、遺族に固有の故人の氏名の使用の排除権を与え、故人の氏名の使用は不登録事由とすればよい。

なお、故人の継承者に商標登録を認める制度設計は面白い。著作権保護期間延長の議論を参照するならば、「遺族の利益のために」故人が自らのパブリシティを高めようと努力し、結果として各人が「頑張る」可能性が生じ、社会として望ましいと考えられるからである(注4)。

(注1)私が探せなかったものであり、これだけでも十分面白い。
(注2)アメリカの制度を引き合いに出されていた。
(注3)このような制度設計を肯定するためには、端的にはパブリシティ権を認める方法がある。
(注4)皮肉である。
posted by かんぞう at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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