そのような研究開発の課題を少しでも解決する方法の一つが、技術移転や特許流通であろう。適切なマッチングができれば、研究開発が十分できな企業であっても新事業への展開が可能になる。
では、その中の特許流通は現実に地方再生に役立っているのだろうか?地域は適切に特許流通を生かしているのだろうか?この問いを考える基礎的な情報を集めてみた。
■地域間の特許流通の現状―特許流通アドバイザーによる特許流通を参考に―
どのような特許流通が行われているか、通常は公表されていないが、国が整備した特許流通アドバイザーを介した取引については、おおよそのデータが公表されている。これを参考とする。
特許流通アドバイザーによる特許流通のライセンサー(特許提供者)の多くは、TLOである(注1)。これは大学、公的研究機関からの特許の移転が盛んに行われていることを意味する。他方、ライセンシーは大半が中小企業である(注2)。
ライセンシーとライセンサーの所在地をもとに、地域間の主要な取引の様子を図に示した。矢印の先がライセンス先を表し、矢印の太さは取引件数を表している(注3)(具体的には平成9年から平成19年11月までの成約件数が累積100件以上のもののみ記した)。詳細は下表の通りである。
関東、近畿に対しては周辺地域から多数の特許が移転されていることがわかる。とくに近畿は積極的に特許の移転を受けている様子がうかがえる。
■考察
大学、公的研究機関からのライセンス=アウトの場合、地域への貢献という観点から拠点を置く地域への移転が多少優先されるかもしれないが、基本的にライセンス先に地域的な偏りが生じるとは考えにくい。そうであるならば、地方であっても多数の特許の移転を受ける可能性はある。
しかしながら、現実は大都市を抱える地域に特許が移転する形となっている。これはなぜであろうか。2つの可能性がある(この可能性は併存しうる)。
1つは、地方に研究開発型企業が多く、これらが全国規模で特許流通を行っている可能性、2つめは、地方の企業が全国的な特許流通を生かしきれていない可能性である。
上記のデータだけでは即断はできないが、興味深い点ではある。
後者の場合、都市部、特に近畿での特許流通の効果を参考にして(要は効果が乏しいのであれば奨励の必要はない)、地域として流通促進の要否を検討する必要があるように思われる。
(注1)独立行政法人工業所有権情報・研修館ウェブサイト「特許流通促進事業の成果について」
http://www.ryutu.inpit.go.jp/about/seika_top_b.html
(注2)この点で、特許流通アドバイザーの取り組みは地域の再生に積極的に関与していると言えよう。
(注3)前掲注1サイト http://www.ryutu.inpit.go.jp/about/10000seika_cc.html

