2005年11月15日

[不正競争][民法]競争行為と不法行為の関係

熊倉禎男『企業の競争行為と不法行為――相関関係説の影響と民法学への期待』(「法律時報65巻9号」、1993年)読書メモ

1.この論文の意義
(1)1993年の論文であることの留保
不正競争防止法改正前に書かれたものであり、細部において留意はいるが(たとえば形態模倣において不可避な形態が含まれるか否かが問題になるとの指摘があるなど現在では立法で解決されたものが含まれている)、本質的な点においては現在にも示唆はある。
(2)意義
熊倉先生は弁護士であり、不公正な競争行為に対してどのような法的アクションをとるべきかにつき実務経験を豊富に持っていらっしゃる。この論文では、不法行為としてしか請求できない場合において、違法性を相関関係で捉える説(吾妻説)の効用をご自身の経験をもとに説き、一方で不法行為での差止請求について認めるべきとの言及をされている。ただ、不法行為として請求するときの基準が細かに分析されているわけでなく、この点については研究対象になろう。

2.前提
不公正な競争行為に対しては不正競争防止法(平成6年までは不正競業法)が規制しているが、これに漏れたものであってもなお不法行為としての民事上の責任追及が可能である。では、いかなる場合に不法行為となるのであろうか?本論文は係る点が中心である。

3.論文要旨
(1)顔眞卿事件の経験
筆者が同事件の原告として理論構成をしたときの経験が語られている。博物館作品を撮影し出版することに対しては、博物館の許諾を得ることが慣行になっていたこと、欧州ではこれが「博物館の権利」として議論されている前提があった。そこで、欧州の「博物館の権利」として考えられているものを所有権の一部として構成できないか挑戦したのが当該事件である。この理論構成は裁判所の受け入れるところではなかったが、不法行為としては認められうるという見解を匂わせていた。しかし、不法行為では差止が認められないことから、原告はあくまで前記主張にこだわったとのことである。
(2)相関関係理論との関係
筆者は相関関係理論の効用として、第1に不法行為成立において「権利」のみがその対象でないとした末川理論を受け継ぐ点を評価している。(これは実際に民法改正において条文が改められたことから当たっているだろう)。第2に、予測可能性を保つための基準として被侵害利益と侵害行為様態の相関関係に定めた我妻の考え方は社会変化に柔軟に対応しつつ、高度の予測可能性を保つものができるものと評価している。ことに、競争行為が不法行為と評価されうるかにおいては基準の根幹となろう。
(3)差止請求権について
我妻の唱える本質は、被侵害利益ないし行為様態が極端な場合には差止が認められるべきものであると筆者は主張する。これによると、人格権を侵害する不法行為にのみ差止を認める現状の理解は改善されるべきということになる。
(4)不正競争独自の不法行為理論
違法性は様々な視点がありうるとし、不正競争分野での違法性判断基準が育てることを学説に期待して締めくくりとされている。

4.私見
理論的な参考とはならなかったが、方向付けにおいて大いに示唆を受けた。何らかの知的資産を法律上保護する場合、行為様態との関係において不法行為での保護がありうる場合がある。そしてその違法性基準を模索するのであれば、競争法理独自の基準も許されるのではないか、という思いを得たのである。もちろん、「独自の」とはいえそれはより細かく検証するからこそ独自性が出てくるという意味であって原則にはずれではいけない。自戒をこめておく。
posted by かんぞう at 12:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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