2008年03月24日

[著作権]インド著作権法に関する覚え書き

必要があってインド著作権法を調べていると日本法と異なるところが少なからずある。
おもしろかったので、覚え書き程度に書き留めてみた(注1)。

■立法上の相違点
□貸与権の対象がプログラムの著作物に限定

インド著作権法は著作物の類型ごとに著作権の権利内容(支分権)を規定している。その中で貸与権に該当する権利はプログラムの著作物にしか与えられていない(14条(b)(ii))。
日本において貸与権は貸レコード対策として立法され、その後著作物一般を対象とする支分権とされたものと説明されるが、インドでも同様にレンタルソフト対策として規定されたのであろうか。その立法過程が知りたいところである。
なお、同号但し書きはプログラムを貸与の本質的目的としない貸与には及ばない旨を規定している。

□著作権譲渡は原則時限譲渡
インド著作権法は著作権譲渡にあたって書面での契約を要求しているが、その中で譲渡の期間を定めないと5年の譲渡であるとみなされる(19条5項)。
このような立法例は管見の限り主要国で見られない。
利用許諾でなく譲渡契約の期間を限る理由はどこにあるのであろうか。

■余談:私の誤解

インド著作権法を調べている中で、恥ずかしながら、大きな発見が2つあった。

□英米法だって著作者人格権の規定がある
「英米法は著作者人格権の規定が無く、一般人格権で処理している」と妄信していたのだが、インド著作権法第4章にはばっちり著作者人格権の規定がある。インドはイギリス法を継受している点が多いので、イギリス著作権法を調べてみると、これまたばっちり規定があった。
これは、ベルヌ条約に批准した影響であるようだ(注2)。
歴史的な経緯としては正しいのだろうが、現状もそうだと理解していた自分が恥ずかしい。

□著作権の譲渡には書面性が要求される立法が多い
上にも挙げたようにインド著作権法は著作権の譲渡に書面性を要求している。
特異な例かと思いきや、アメリカ、イギリス、フランスも同様の規定があった。
著作権の譲渡契約が支分権ごとや、地域的範囲などを限定した契約がなされること(つまり細分化されること)がしばしばあるという実務状況を反映し、紛争の防止のためこのような規定が設けられていると考えられる。
日本においても平成17年に書面性の要求について検討がなされていたが、
 ○我が国では主要な契約は諾成契約であり、著作権譲渡契約のみ要式契約とする合理的理由が見いだせない
 ○自由心証主義のもとに契約締結の事実についての認定が行われた方が妥当な解決を図ることができる
 ○些細な著作権譲渡に要式性を求めるのは煩雑
 ○弱者保護の観点は下請法で達成している
との理由で否定的な結論が下されている(注3)。

■参考
インド著作権庁(人的資源開発省中等・高等教育局)
http://copyright.gov.in/

社団法人著作権情報センター>外国著作権法>インド編(山本隆司・岡雅子共訳)
http://www.cric.or.jp/gaikoku/india/india.html


(注1)なお、私は2月段階にこれを調べたのだが、わずか1ヶ月後、日本語訳がCRICから公表された…。なんとムナシイ。
(注2)神繁司「ギリス新著作権法寸描」カレントアウェアネスNo.128(1990年) http://current.ndl.go.jp/ca658
(注3)文化審議会著作権分科会法制問題小委員会契約・利用ワーキングチーム「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会契約・利用ワーキングチーム検討結果報告」 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05072901/003.htm
posted by かんぞう at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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