2008年02月10日

[時事]中国商標法10条10号って面白い

模倣品や、ブランドネームの冒用が目立っている中国で、農水産物のブランドの冒用も深刻である。その中で面白い事案があった。

(毎日.jp)
 中国の企業が「青森」の文字を中国で商標登録申請した問題で、異議を申し立てていた青森県は5日、中国商標局から果物など一部農水産物についての異議を認め「申請を却下する裁定をした」との連絡があったと発表した。
…(中略)…

 裁定は昨年12月29日付。現地法は著名な外国地名の登録を禁じており、商標局は「青森は公衆に知られた地名」と判断した。

 「青森」は中国広州市のデザイン会社「シンテン包装設計有限公司」が5分野で登録申請した。03年4〜6月に中国で公示されたのを知った県が03年7月、異議を申し立てていた。今回、異議が認められたのは▽果物・野菜▽水産物・肉の2分野。残る(1)茶や米など(2)野菜ジュース(3)防水服――の3分野は審議中という。

■中国商標法10条10号は日本から見ると興味深い
「公衆に知られた地名」であれば登録を認めない点は面白い。
日本では対応する規定は、4条1項19号(および、ぶどう酒等に関しては、同17号)であろうが、図利加害目的が求められる。(それゆえ、日本では「北京」(登録0775949)などの登録例がある)
他方、中国商標法10条10号では目的を問題としていない。

10条10号
県又はそれ以上のクラスの行政区画の地名及び一般に知られた外国地名は,商標とすることができない。ただし,その地名が別の意味を有する場合…(中略)…はこの限りでない。
(日本語訳は特許庁の翻訳に拠った)

なお、細かいことであるが今回の裁定で気になる点は、一部の分野のみ異議が先に認められた点である。

10号が登録の目的を問わない以上、公衆に知られていると認定されれば、全ての分野で無効になるはずである。一部の分野のみ異議が先に認められる理由がわからないが、あるいは但し書きに言う「別の意味」は分野ごととの関係で判断されるという解釈を中国の当局は取っているのだろうか。

■外国著名地名を無効とすることの難点
ただ、同号のような規定には問題点も感じる。

中国国家工商行政管理総局商標局のデータベースを見てみると、「青森」なる商標は他に6分野についても設定されている。
中には1990年に登録されたものもある(No.570919)。このことを考えると、中国において「青森」なる標章は不自然なものではなく、これについて商標登録をした行為には悪意がなかった可能性も考えられる。(今回の事案も単なる冒用事案ではないのかもしれない。)「公衆に知られた」の運用次第であるが、10号は出願人には酷になる可能性がある。

標章というのは出所識別機能を持たせるために、多少の独自性を持たせることが多いと考えられる。言い換えれば「普通名称」なり「普通の単語」ばかりを使うとは限らない。良いイメージを想起させるような造語もありうる。そうであるならば、同号但し書きの「別の意味」のみを対象外とするだけでは、例外として不十分な気もする。

また、県レベル以上に限定しているとはいえ、少なくとも漢字文化圏の国と交流が増えることで、公衆に知られた地名は増えてしまうのであり、その分、潜在的な商標権者にとっては商標選択の余地が狭められてしまう。

例を考えてみると、日本の「高雄」(京都のもみじの名所)にちなんで中国で商標登録をしようとすると、台湾の「高雄県」の存在を理由に拒絶されてしまう、ということがありうるのではないだろうか。その他にも、「江原」「大田」という行政区分が韓国に存在するため、「江原」「大田」を日本から商標登録する際には注意が必要となるだろう(大田区や大田市の事業者には迷惑な話のようにも思う。)。
posted by かんぞう at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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