2005年10月16日

[特許][自論]設定登録をしていない特許権の通常実施権者の保護について

目新しいこと書いてないけど、6月に書いたものを保管!覚書程度やね〜。

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設定登録をしていない特許権の通常実施権者の保護について

T 概要
 1.現在の問題点
通常実施権の登録は、第三者への対抗要件であるが、現在その登録請求権は判例上認められていない。しかし、契約で設定者に登録義務を課さなかった場合で登録がなされなかったとき、特許権(あるいは専用実施権)の移転が発生したら通常実施権者がその権利を特許権等の承継人に対抗できず、結果特許権侵害として実施差止めを求められる場合がありうる。これは、通常実施権者に酷であり、ひいては実施許諾契約による特許の活用を妨げないか?

 2.これに対する考え方
・現行制度上はやむをえない(不安であれば契約内容に登録義務を附するべき)。
・しかし、契約内容に明示的に登録義務が含まれていなくても、当事者の意思を合理的に解釈して登録請求が契約に含まれていると解される場合には、通常実施権者からの登録請求が認められうる、とする考え方もある〔中山信弘『注解特許法(上)』(青林書院,2000年) 819頁〜〕。
・現状として通常実施権の登録制度はほとんど活用されていない。それゆえ、対抗制度によるのでなく、「ライセンス対象知的財産権の譲渡時には、新権利者からもともとのライセンシーに対する権利行使を禁止する制度を採用することが望ましい」〔産業構造審議会知的財産政策部会流通・流動化小委員会(第5回)〕とする意見も上がっている。

U 現在の問題点
1.特許法99条

「効力」とは「対抗力」を指すと解されている
この条文によると、特許権などが第三者に移転した場合には、登録を受けていない通常実施権者は対抗できないことが明らかである 。

2.最高裁昭和48年4月20日第二小法廷判決
そこで、通常実施権者側から登録請求をなすことができるかが問題となった。これに対し最高裁は、
「特許権者から許諾による通常実施権の設定を受けても、その設定登録をする旨の約定が存しない限り、実施権者は、特許権者に対し、右権利の設定登録手続を請求することはできないものと解するのが相当である。その理由は、つぎのとおりである。
 すなわち、特許権の許諾による通常実施権は、専用実施権と異なり実施契約の締結のみによつて成立するものであり、その成立に当つて設定登録を必要とするものではなく、ただ、設定登録を経た通常実施権は、「その特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる」(特許法九九条一項参照)ものとして、一種の排他的性格を有することとなるにすぎない。そして、通常実施権は、実施契約で定められた範囲内で成立するものであつて、許諾者は、通常実施権を設定するに当りこれに内容的、場所的、時間的制約を付することができることはもとより、同時に同内容の通常実施権を複数人に与えることもでき、また、実施契約に特段の定めが存しないかぎり、実施権を設定した後も自ら当該特許発明を実施することができるのである。これを実施権者側からみれば、許諾による通常実施権の設定を受けた者は、実施契約によつて定められた範囲内で当該特許発明を実施することができるが、その実施権を専有する訳ではなく、単に特許権者に対し右の実施を容認すべきことを請求する権利を有するにすぎないということができる。許諾による通常実施権がこのような権利である以上、当然には前記のような排他的性格を有するということはできず、また右性格を具有しないとその目的を達しえないものではないから、実施契約に際し通常実施権に右性格を与え、所定の登録をするか否かは、関係当事者間において自由に定めうるところと解するのが相当であり、したがつて、実施権者は当然には特許権者に対し通常実施権につき設定登録手続をとるべきことを求めることはできないというべく、これを求めることができるのはその旨の特約がある場合に限られるというべきである。」
として通常実施権者からの登録請求を認めなかった。

3.解釈
通常実施権は、特許権(あるいは専用実施権)者が通常実施権者の実施権の対象となっている特許の実施を妨げないことを債務とする債権的な権利である。要は通常実施権者からすれば、権利者から邪魔さえされなければいいのである。
登録などの公示制度は、公示をされることによって第三者が権利関係を把握できるところに利点がある。第三者にとって把握したい権利関係は、それが排他的権利である場合が第一だと考えられる。その場合、第三者の保護のためにも、また、排他的権利を保有する者のためにも、公示が徹底されなければならない。それゆえ、登記(登録)請求権が認められると考える。
そうであれば、排他性の乏しい通常実施権においては公示の徹底は要請されず、登録請求権までを認める必要はない、と解することができる。
そして、仮に特許権等の移転があり、登録がなかったために通常実施権者の実施が妨げられた場合でも、通常実施契約により生じた「実施を妨げない義務」の不履行であるとして、債務不履行責任を追及できるため、利害の調整は図られていると考えるのである。

4.問題点
しかし、そのような理解をすると、登録をされていない通常実施権者に不利益が生じる場合が考えられる。たとえば、以下のような場合である。

このとき、B社はC社に対抗できず、サービス停止を免れない。しかも、債務不履行であるとしてA社に損害賠償を求めても資金繰りの悪化した同社からの回収は期待できない。このような場合、B社は多大なリスクを負担するが、登録請求権がないと解されている今、事前に回避する手段は、A社の合意を得て登録をする方法しかないのである。
しかし、実施許諾を受ける者の規模や交渉力によっては、そのような合意を得ることは困難である場合が考えられる。特にベンチャー企業が許諾を受ける者である場合には顕著であろう。現状では、特許権を活用した経済活動が阻害される恐れが生じるのではないだろうか。

V 解決策
1.登録の徹底
(1)契約
契約時に登録義務を設定者側に定めておけばよいのであるから、その周知徹底を図りさえすればよい、という考えは成り立つ。しかし、先に述べたように契約当事者の関係によってはそのような義務を定めることが困難である場合が考えられ十分とはいえないのではないか。

(2)契約解釈
そこで、明示の登録義務を約定していなくても、契約の解釈により、当事者の意思を合理的に解釈して登録請求が契約に含まれていると解される場合には、通常実施権者からの登録請求が認められうる、とする考え方もある 。

2.登録制度の問題点
(1)登録制度の現状
2003年度には、相続・合併を原因とする特許権の移転が27917件、それ以外の原因の移転が9270件が存在する。そして、専用実施件登録は200件、通常実施権の登録は204件である 。特許の移転が多く行われているのに対し、通常実施権登録は極めて少ない、すなわち登録制度が活用されていないのが事実である。
その理由としては 、
@登録に際しては原則として対価の登録も要求されているが、このような情報は公開したくない企業が多い。
A企業戦略上、ライセンス契約の存在自体を明らかにしたくない場合がある。すると登録すること自体を避けてしまう。
B業界によっては、ライセンス契約において、特許番号ではなく技術分野によって包括的に対象知的財産が特定されている事例が多くあり、そのような場合には登録制度が利用できない。
上記3点が挙げられる。

(2)ライセンシーに対する権利行使禁止制度
そこで、対抗制度によるのでなく、ライセンシーに対して権利承継人がその権利行使を禁止すべきという考え方もあがっている 。有効な手段であると考えるが、一方で知的財産権が譲渡されたとき譲受人が不測のライセンシーを抱えることにも繋がりかねない。「独占性」が譲り受け時の評価の要素となっていた場合はいかに対処すべきだろうか。しかしながら、通常はそのような信頼を損ねるようなことはしないであろうし、するならば破産に近い状況であろう。破産においてはライセンシーは保護されるのであるから、この制度によるべきではないかと考える。
posted by かんぞう at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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