2008年01月15日

[つぶやき]音楽CDの不況に対する印象論

所用で中国に来ている。都市部であるとだいぶ物価が上がった印象を受ける。好景気の影響であろうか。食品であれば日本の1/2〜1/10とまちまちであるが、嗜好品である衣料(安物ではなくある程度おしゃれなものであるが)であると日本と変わらないか、3/4程度の値段である。家電にいたっては、日本のほうが安いものすらある。

■中国のCDの相対的な安さに思うこと
その中で、CDも例外ではないが、やはり日本に比べると安い。J-POPのアルバム(なお、正規品であり、中国頒布用であることが明示されているものである)であれば50元(およそ850円)で買うことができる(注1)。少なくとも日本の1/3であり、他の娯楽品・嗜好品に比べると格段に安いように思う。

中国国内に著作物再販制度があるのかはわからないし、日本と中国の文化の差もあるのだが、中国での相対的な音楽CDの安さを考えると、日本国内で現在の値段を維持することが適切かどうか、CDでの販売を行う音楽企業は考えた方がよいのではないか、とよけいなおせっかいすら考えてしまった。

少なくとも現在の音楽CDは、著作物再販制度によりレコード製作者が価格決定を行うことが出来(注2)、しかも、海外で安く生産・販売している同製品が流入することをある程度ふせいでいる。これらの保護が、というより、これらの保護があるという象徴的な意味が、音楽CD流通を巡る当事者の交渉力に影響し、価格を市場の均衡点に落ち着かせることを阻んでいるのではないか、とすら思えてしまう。(印象論ばかりで恐縮ではあるが…)

音楽CD業界も不況ということが指摘されている。これが、果たして違法ダウンロードによるものか、あるいは、私のいらぬ憶測によるところか、その複合的なところかは、調査が必要なところではないだろうか。(もちろん、著作物のダウンロード行為が0円で出来る以上、市場の自由に任せると際限なく価格を落とすことにつながり、音楽産業が破綻するのだ、という主張はわかる。わかるが、現在の価格が音楽離れ自体を起こしているのでは、と疑っているのである。)

■音楽CD産業と出版産業の不況の真の理由?
もっとも、より魅力的な娯楽の登場、というのも要因なのかもしれない。
人間が娯楽に使えるトータルの時間は決まっているわけであるから、1つの娯楽産業が伸びれば、他の娯楽関連産業は下火になろう。

たとえば、個人が家庭内で趣味として使う時間に注目してみる。
インターネットの利用時間は飛躍的に伸びているし、ゲーム産業は空前の規模になった。
他方、出版業界は不況である(注3)。音楽CDも出版産業と同じくこの影響を受けただけなのかもしれない。

(注1)なお、貧乏学生改め貧乏サラリーマンである私は3000円もするアルバムになかなか手が出せなかった。そうすると、こういうところで買ってしまう。もちろん、頒布目的でないので著作権113条5項にはひっかからない(笑)。
(注2)もちろん、レコード販売店が入荷数を決めることである程度の価格圧力が働くのかもしれないが。
(注3)商業統計によると、書籍・文具業の商品販売額(年額)は平成14年から16年で4兆8千億円から2兆9千億円に低下している。
posted by かんぞう at 00:17| Comment(2) | TrackBack(0) | ●つぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
権利者団体はファイル共有などを目の敵にしてますが、実証研究ではファイル共有がCDなどの販売に大きな影響を与えるというのは支持されない結果がだされてますね。この間でたアメリカの研究として有名なのが、
Felix Oberholzer‐Gee & Koleman Strumpf, The Effect of File Sharing on Record Sales, 115 Journal of Political Economy 1 (2007) [http://www.journals.uchicago.edu/toc/jpe/2007/115/1]です。WPはタダで読めます(http://www.unc.edu/~cigar/papers/FileSharing_June2005_final.pdf)。

このWPを参照している日本の研究としては、Tatsuo Tanaka, Does file sharing reduce music CD sales?: A case of Japan, http://www.iir.hit-u.ac.jp/file/WP05-08tanaka.pdf (2004)があります。前者ほど本格的なものではないようですが、やはり否定的な結論で。

権利者団体はまあアレなのでよいのですが、法律屋(自分もですが)こそ立法論をやる場合は実証研究やるなり読むなりしなければいけないですね^^;;単に直感でやるのではなく(ましてや脊椎反射ではなく)。


Posted by MM at 2008年01月16日 02:45
貴重な論文の情報提供ありがとうございます。ぜひ読んでみます。
田中辰男准教授の論文も有名ですよね。

おっしゃるとおり、少なくとも実証研究の力を借りる必要があると思います。が…なぜか政府の少なからぬ部門は立法時は「審議会」のオーソライズで満足してます。もちろん、「審議会」に実証研究の知恵を持ってくる人は少ないわけで、ひどい場合は「脊髄反射」の方が多かったり…。これではシンクタンクはやること少ないですよ。
Posted by かんぞう at 2008年01月16日 22:30
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