2008年01月02日

[意匠]意匠制度のハーモナイズに向けた課題:関連意匠制度をどうするか

■知的財産推進計画において意匠制度についてだけ触れられていない国際的ハーモナイズ
知的財産制度の国際的ハーモナイゼーションに対しては、産業界を中心にニーズがあるところである。
『知的財産推進計画2007』(2006にしてもそうだが)には、特許、商標の手続面での国際的ハーモナイズのみならず、実体面(権利内容面)でのハーモナイズについての議論への参加が明示されている。しかし、意匠制度の国際的ハーモナイズについては触れられていない。


■意匠制度におけるハーモナイゼーションの動き

意匠制度についてもハーモナイゼーションの動きはある。1999年に採択されたヘーグ協定ジュネーブアクトである(注1)。
2006年12月に米国が同協定批准の動きを見せているようであり(注2)、その後、米国内での議論は低調になっている感もある(注3)とはいえ、注目に値する。
同協定の内容は、大まかに言えば各国特許庁に国際出願を行うと、指定国特許庁がそれに対するリアクションを返すこととなり、リアクションがなされない場合は各国の登録意匠として登録される、というものである。

■意匠の保護に関するヘーグ協定ジュネーブアクト批准のための課題
この協定に日本は批准していない。批准にはいくつかの課題が挙げられている。最大の課題は、審査国への配慮が依然として足りていないところにあろう。実体上の制度的な差に対応する必要がある(注4)。中でも関連意匠制度の取り扱いは、ネックの一つとなっている。
この中で関連意匠制度に対する考慮が、ヘーグ協定ジュネーブアクトの中でなされなかった場合(つまり、協定の一部改正に至らなかった場合)、日本が批准するに当たっては青木弁理士が指摘(注5)するように、(a)関連意匠制度の廃止、(b)ヘーグ協定ルートでの出願を利用した場合の関連意匠制度の利用禁止、のいずれかで対処する必要がある。
しかし、現在、関連意匠制度の利用は全意匠出願の20%に至っており(注6)、この数字を見る限りでは(a)の選択肢を採ることは難しいかもしれない。

■課題のうち関連意匠制度に関する課題克服の可能性
もっとも、関連意匠制度がどのように用いられているか、その理由の分析いかんによっては、(a)の選択肢もありうるのではないか。
本来関連意匠はバリエーションを持たせた製品に対応するためである。この点のメリットは大きいが、実際、その理由でなされた出願はどの程度あるのだろうか。「とりあえず権利範囲が分からないから関連意匠として出願している」可能性もある。
また、仮にバリエーションをもたせた製品への対応を理由としていても、「要部となる点を共通としてバリエーションを持たせている場合」が多いのか、「要部となる点にバリエーションを持たせている場合」が多いのか、は興味深い点である。もし前者が圧倒的であれば、本来的には本意匠の類似の範囲となるはずであり、廃止をしてもそれほど不都合は無いのかもしれない(もっともバリエーションの類似部分は本意匠の権利範囲に含まれていないので、ユーザーにとってはつらいが)。
いずれにせよ、関連意匠制度がどのような理由で使われているかは知りたいところである。現在のところ、そのような研究は管見の限りなされていないようである。

(注1)なお、1960年に採択されたヘーグ協定ヘーグアクトも存在するが、これは実体審査国には受け入れにくい内容となっている。
(注2)澤井智毅「米国がヘーグ協定ジュネーブアクト批准手続を開始」(知財ニュース2006年11月15日)《JETROへのリンク》。
(注3)澤井智毅「上院外交委員会、知的財産関連三条約について公聴会開催」(知財ニュース2007年7月17日)《JETROへのリンク》。
(注4)「意匠に関するヘーグ新協定外交会議における日本政府の一般演説」《特許庁へのリンク》。
(注5)青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)437頁。
(注6)特許庁編『特許行政年次報告書2007年版』(2007年)12頁。

(2008年1月5日誤字修正)
posted by かんぞう at 23:05| Comment(4) | TrackBack(0) | ☆意匠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
関連意匠の2類型、おもしろいですね。その視点で今度登録例をみてみます。

ヘーグ協定ジュネーブアクト、欧州共同体商標意匠庁の指定も2008年1月1日より可能となったようです。

http://www.wipo.int/treaties/en/documents/pdf/hague.pdf

欧州の代理人には、欧州共同体意匠規則の成立により、27カ国間の代理人戦争があり、本を書いた英国のある代理人が生き残りましたが、日本がヘーグに加盟すると、この代理人も仕事がなくなりそうです。それと、外内、内外をやっている日本の代理人も意匠の仕事を失うことになります。中国、米国が加盟したら、致命的。
Posted by サイバー at 2008年01月04日 19:07
サイバーさん、あけましておめでとうございます。コメントありがとうございます。

ジュネーブアクトでOHIMの指定が可能になった点、勉強になりました。
なるほど、手続き的統一がなされると困ってしまう弁理士さんは登場してしまうわけですね。実態面での違いは残るわけですから、権利行使の場面では多少は仕事は残るのでしょうけどね…。
Posted by かんぞう at 2008年01月04日 22:55
外国企業がマドリッドプロトコルを利用して日本へ出願した件数の推移です。
外国企業の日本への出願は、年間24,000件ですので、約半分がマドリッドプロトコルです。代理人としては、2006年に11,794件の出願を喪失したことになります。外国企業は大手の7事務所ほどがやっていますので、1事務所1000件以上。ヘーグに加盟すれば、意匠もこんな感じになるでしょうな。

Number of International Application designating Japan
Years Number of Applications
2002 5,269
2003 5,334
2004 7,160
2005 9,969
2006 11,794
Posted by サイバー at 2008年01月09日 12:32
データを教えていただきありがとうございます。これはすごく大きなインパクトがありますね。外国出願は1件おおよそ20万円前後と聞いたことがありますが、そうすると、1事務所2億の売り上げダウンですかね。厳しいですね…。
Posted by かんぞう at 2008年01月12日 02:46
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