2007年12月31日

[特許]通常実施権等の登録制度の改正の方向性

産構審知的財産政策部会特許制度小委員会通常実施権等登録制度ワーキンググループ報告書《経済産業省へリンク。PDF》が公表されている。以前から議論のあった(注1)、通常実施権の登録制度についての見直しについて具体的な法案の方向性が示されたものと言えよう。

今後の備忘として報告書の内容をまとめた(注2)。

■報告書要旨の整理
法改正の提案項目としては、
●出願段階における登録制度の創設
・出願段階における通常実施権・専用実施権のライセンスについて登録する制度を創設。
(特許を受ける権利者が破産した場合でもライセンシーを保護する制度とする。補正・分割があった場合においても引き続き効力を有する。出願の放棄・取り下げに当たっては登録されたライセンサーの承諾を要件とする。)
・特許を受ける権利の登録制度を創設。

●通常実施権等登録制度の見直し
・通常実施権・専用実施権の登録記載事項から、対価に関する事項を除外する(任意的記載事項としても扱わない)。
・通常実施権の登録記載事項の開示に当たっては、通常実施権者の氏名および権利の範囲については一定の利害関係人にのみ開示する。
(専用実施権の登録記載事項については全て開示する現行制度を維持。特許を受ける権利の登録についても同様に、通常実施権者の氏名・権利範囲は一定の利害関係人のみ開示し、専用実施権については全部開示。)
●サブライセンスの保護
・特許権者からのサブライセンスの授権に基づき、サブライセンシー=サブライセンサー間で成立した通常実施権(サブライセンス)の登録に当たって、特許権者=サブライセンサー間の許諾契約証書の提示を不要に。
(ただし、共同申請の原則は変わらない)
●登録の効力発生時の見直し
・登録申請受理時から効力が発生(現在は登録時)。
(ただし運用上、申請受付時に申請があった旨の登記、または、受付から登録までの期間中特許原簿の閲覧を禁止する、などを求めている)


今後の検討項目として残されたものとして、
●通常実施権登録制度の見直し
・独占的通常実施権である旨を任意的記載事項とする点。
・通常実施権の登録の単独申請を許容する点。
●サブライセンスの保護
・サブライセンシーを特定しない場合の、不特定のサブライセンシーの通常実施権の登録を許容する点。
・サブライセンスのかかる授権の特約の登録を任意的記載事項として許容する点。

■改正の方向性の影響として考えられるもの
(1)特許を受ける権利の登録制度の創設について

特許を受ける権利の登録制度が創設されることにより、権利が移転された場合には、譲渡人・譲受人の共同申請が必要なこととなる。手間が増えるわけであり、利用者にとってはつらい点であろう。報告書6頁が述べているように、特許を受ける権利の移転は年間20000件程度存在し、特許権の移転の約2倍であることに鑑みると、その影響は小さくない。とくにTLOには特許を受ける権利の移転を頻繁に活用しているとも聞く。影響が大きいのではないだろうか。反発も想定される。

他方、無権限の者が虚偽の譲渡証明書を偽造することで、特許を受ける権利を移転することはかなりの程度防ぐことができるようになる。これに伴って、冒認出願に基づく特許権の移転登録請求として重要な判決である〔生ゴミ処理装置事件最高裁判決〕(注3)はその意味を大きく失うことになるだろう(真の権利者出願後の無権限者による特許を受ける権利の移転が考えにくくなるためである)。

(2)ライセンス条件の内、対価を記載事項から外す点について
報告書33頁の脚注23で述べられているように、商標権のライセンスの対価の記録に関しては、商標法に関するシンガポール条約(注4)が対価の記録を禁止しているところである。従来、ライセンス対価の登録が必要であったことが、日本の同条約の批准の障害の一つとなっていたと考えられる(注5)が、本提案に沿った改正がなされると、批准に向けて前進するものと思われる(注6)。

■検討項目のうち今後も注目すべき点
(1)通常実施権の登録の単独申請の許容について

報告書33頁が指摘するように、特許法条約批准のためには、単独申請を導入する必要性が生じる。(特許法条約に基づく規則16(1)、17(1)、17(9)が単独登録を求めているためである)。特許制度の国際的ハーモナイゼーションへのニーズが高いならば、この点は近々に議論の俎上に再度上るのであろう。


(注1)本ブログ「[つぶやき][特許]速い!」(2007年11月4日記事)、「[特許]特許権の通常実施権登録制度見直し議論が期待できそう」(2007年9月22日記事)参照。
(注2)なんら考察が加えられておらず、単なるまとめ資料的価値しかなく恐縮だが…。
(注3)最判平成13年6月12日民集55巻4号793頁。
(注4)出願手続きの共通化に資する条約である。2006年3月27日採択。なお、日本は未批准。詳細は、特許庁総務部国際課「商標法に関するシンガポール条約の採択について」《特許庁へリンク》参照。
(注5)『知的財産推進計画2007』において、同条約批准に当たっての課題の検討が要対応事項として挙げられている。
(注6)なお、上記報告書は特許権に関するものであり、直接的には特許権の通常実施権の登録制度の変更に留まる。しかしながら、特許登録令45条の改正につながることが予想され、商標登録令10条が同条を準用していることから商標の通常実施権登録制度の変更にもつながるだろう。
posted by かんぞう at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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