2007年12月23日

[時事][著作権]違法サイトの認定機関をめぐる強烈なジョークと留意点

(2007年12月26日改訂)ブラウザでの「閲覧」行為についての著作権法上の評価について誤解がありましたので、訂正いたしました。お読みくださった皆様、私がご著書の内容を読み違ってしまった中山先生、申し訳ありませんでした。ご指摘くださったmさん、ありがとうございました。


既に報道された(ITmedia 2007年12月18日記事《ITmediaへのリンク》参照)通り、音楽、映像の著作物を違法に公衆送信可能化したサイトからのダウンロード行為が私的複製の範囲外とされる法改正の方向が固まったようだ。

上記ITmediaの記事でも触れられている通り、パブリックコメントには非常に多くの反対意見があったようだ(注1)。

■偉大な皮肉?「日本違法サイト協会」
さて、そんな動向を受けてか、日本違法サイト協会なるものが、違法サイトを認定して掲示するということをはじめた。(これは小委員会で一部団体が示唆した、ユーザー保護の方法である。)
同サイトは真っ先に文化庁が「違法サイト」である、という皮肉を展開しており、ジョークとしては面白い。

■でもミスリーディングであるので注意!
ただし、ここでの表現についてはミスリーディングである点がある。

まず、少なくとも現状の中間整理では、録音録画物、すなわち「音楽」または「映像」の著作物を対象としている(注2)のであり、その他の表現形態の著作物(たとえば、文字、静止画)については、対象外である。文化庁は静止画を利用したのであり、「違法サイト」と皮肉るには、ちょっと飛躍があるのではないだろうか。

次に、同サイトでは「閲覧が違法」と書いてある。これは今の解釈ではむずかしいところである。ブラウザー上での閲覧を行う場合、(a)RAM上にデータが複製され、これが参照される、(b)ブラウザーキャッシュとしてハードディスクに蓄積される、こととなる。
(a)については複製行為を伴っていないと解釈される(過渡的な複製であり、著作権法上の複製と解釈できないというのが通説である(注3))。(b)については、もはや複製行為と解さざるを得ないのではないか、という意見もあり、立法論的対処の必要性も説かれているところであるが(注4)、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 デジタル対応ワーキングチーム検討結果報告」(2005年)では、複製と解釈しないことも含めた複数の方向性が示されているところであり、かならずしもコンセンサスがある状況とは言えないのではないか。

■ささやかな思い
ともかくも、私としても、ダウンロード違法化については懸念している。(本ブログひとつまえの記事参照)
もちろん、「変な方向に動くことへの懸念」があるにすぎず、正当なチェックが行われれば良いのかもしれない。その点については、民主主義制度の中できちんと監視すべきだろうし、その懸念が嫌ならば、きちんと政治の場への意見発信をすべきと言う意見(注5)には納得できる。
といっても、実際には、ささやかなことしかしないのであるが…(注6)。

(注1)もちろん、先進的インターネットユーザーの会(MIAU)が勧めたパブコメ案に沿ったものも多数あったことが最大の要因と思われるが、そう出なくても反対意見はあったものと思われる。なお、小倉秀夫弁護士のブログ記事《小倉秀夫弁護士のブログ「benli」へリンク》も参照。ただし、違法化に反対のコメントが1800というのは、少なくとも元の記事からは読み取れないと考えられる。(元の記事は「意見全体の8割がダウンロード違法化に関わる意見で、そのさらに7割がインターネット上のテンプレートを使っている」と書いてあるにすぎない。意見全体の8割の中の残り3割は賛成か反対かわからないはずである。)
(注2)文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会『中間報告(案)』第7章第2節
(注3)中山信弘『著作権法』(有斐閣、2007年)214頁。もっとも、この結論が得られた元となった議論が行われた状況と現在では、「過渡的」と評価できるかは意見が分かれるところかもしれない。
(注4)前掲注(3)215頁。また、川瀬著作権課長は、複製概念についての知識が無いとの断りを入れた上で、ブラウザキャッシュが違法とされるべきでない旨の発言がなされたと報道されている。
(注5)小倉秀夫弁護士のブログ『benli』2007年12月18日記事「嗤っている暇などない」《小倉秀夫弁護士のブログ「benli」へリンク》は正鵠を射ていると思う。
(注6)なお、政治家にとって著作権の問題を取り上げることへのインセンティブの乏しさがあることを指摘するものとして、京俊介「著作権政策形成過程の分析(一) ―利益団体,審議会,官庁の行動による法改正メカニズムの説明―」阪大法学57巻2号(2007年)326頁脚注34。
posted by かんぞう at 01:11| Comment(3) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「同サイトでは「閲覧が違法」と書いてある。これは今の解釈からは難しい。ブラウザー上での閲覧は複製行為を伴っていないと解釈される(キャッシュは一時的な複製であり、著作権法上の複製と解釈できないというのが通説である」とありますが、中山先生の教科書214頁が引かれています。
しかし、中山先生が書かれているのは昔からコンピュータ上でのプログラムの実行行為との関連で議論されてきた「RAMへの蓄積」に関するものであることに注意が必要です。い
「瞬間的かつ過渡的」な「RAMへの蓄積」が複製に当たらないとの解釈は通説です。しかしながら、「瞬間的かつ過渡的」とは言い難い「RAMへの蓄積」や、磁気ディスク等への「蓄積」や、ブラウザキャッシュのような例は、中山先生の教科書でも「今までのように解釈では済まなくなり,何らかの立法が必要になる可能性が高い」と結論されています。(中山『著作権法』215頁。)
読者をミスリードするといけないので、今一度ご確認ください。
Posted by m at 2007年12月25日 10:42
ところどころ文章がおかしくなってしまいました。すみません。
Posted by m at 2007年12月25日 10:44
ご指摘の通りです。極めて雑な読み方をしておりました。ご教示くださりありがとうございました。この点は大きなミスリードになりかねないため、書き改めました。
Posted by かんぞう at 2007年12月26日 01:55
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