2007年12月08日

[時事][特許]職務発明補償金請求訴訟はまだまだ続く

■著名発明を巡る補償金請求訴訟
大き目のニュースとなっているが、日本を代表する(そして、残念ながら日本のみですごい)発明の1つである、日本語ワープロに関する発明を巡って、訴訟が起こったようだ。報道によると、発明者の1人が特許を受ける権利の承継に係る補償金が不十分であるとして2億6千万円を請求しているとのことである。
(なお、東京新聞の以下の記事が一番詳しい。)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007120702070338.html

日本語ワープロの変換技術の発明はNHKの『Project X』にも取り上げられていたほど、著名なものである。その点でインパクトがある。

■請求額の満額回答は難しそう…
ただし、報道されるところによる請求額算定の仕方には、これまでの裁判例傾向から見るに難しい点があるようだ。発明者の寄与率を10%に設定しているが、本発明は複数のプロジェクトメンバーの寄与によることがうかがえること、多くの裁判例で発明により生じた利益に対する会社の貢献度は95%超と認定されること、を考えれば、多くて1%ほどなのではないのかなぁ、と思える。

■発明後30年経ってなお訴訟となる
この報道で最も興味深い点は、発明の時期と訴訟の時期の離れ具合である。

発明は1977年なされているのだから、30年経っての紛争となっている。もちろん、時効への配慮はなされていて、96年と97年に関して支払われた補償金の不足分を請求しているに留まっている。
おそらく、毎年、特許権の寄与した利益額×発明者の寄与分を報奨金としていると思われる。すると、時効の起算点はその支払い時期となる(注1)ので、時効は完成していないこととなる(とはいえ、かなり滑り込みであるが…)。

平成16年に、相当対価算定方法を巡る特許法改正を行い、補償金請求訴訟の沈静化を目指したが、改正法が効力を持つのは同改正法が施行されてから特許を受ける権利が承継された発明に限る為、補償金支払い規定の定め方によっては、本件のように発明後30年経っても訴訟を起こされる可能性がある。本件は、そのことを実感を持って知らしめるものであった。

追記
私が取り上げる前に、FJneo1994さんが取り上げられていた。
(タイトルが似ているので、私が盗用した!と言われるとどうしようもないかも!!(笑)これが著名な著作物の強み、というか、難点という評価があり得る。余談ではあるが…。)
FJneo1994さんは、「能力にふさわしい報酬と自由を与えるべき」と主張されており、現在やこれからの研究者にはぜひそうしてあげていただきたいと思うのだが、このような訴訟が続かないよう、過去の研究者の成果に多大な報酬を与えるインセンティブは企業側には少ないのではないだろうか。すでに退職者になっていたり、あるいは、経験を生かしてマネージメントになっている場合、なんら研究のインセンティブにならないからである。

(注1)最判平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照。
posted by かんぞう at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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