2007年11月23日

[知財一般]インドネシアの知的財産制度の現状

BRICsの躍進が経済的に与える影響は大きいが、BRICsの経済力の下支えをしている国も気になるところである。インドネシアはそのような国のひとつであるが、なかなかなじみがない。RCLIPが、各国の知的財産権の現状についてのセミナーの中で、インドネシアの判事を招いていた。なかなか珍しい機会であるので聞いてきた。

1.報告概要
(1)知的財産権制度の整備状況

・1995年TRIPsに加盟。知的財産権制度を整備。企業秘密、意匠、IC、特許、商標、著作権の6法に分かれている。
・企業秘密侵害以外の民事訴訟案件は、地方裁判所に存在する商事裁判所(全国に5箇所)で審理される。上訴は最高裁判所に対して可能(二審制か?)。審理期間は法定されており迅速な判断が下される。
・刑事訴訟は地方裁判所、高等裁判所(ただし、第1審で全面無罪判決が出た場合は最高裁)、最高裁判所の3審制であり、審理期間の定めがなく、判断が下るまで時間がかかるケースが多い。

(2)損害賠償請求の現状
・権利者は侵害により蒙った損害を立証を行う必要があるが、きわめて立証が困難。事実上、差止請求が中心となっている。
・弁護士費用については損害賠償に含まれない。

(3)刑事罰の現状
・商標権侵害においては、同一物品・役務における同一標章の使用の場合と、それ以外の場合(法律上は、類似物品・役務における類似標章使用の場合のみ規定(注1))

2.私見
損害賠償額の算定規定が無い。これは衝撃的であった。他国の制度を参考にしたらいいのに…というのが正直な感想である。
同国の訴訟制度は審級関係が複雑であるが、知的財産権侵害に係る民事訴訟が二審制となっていること、さらに迅速な判断が法律上も止められている点は特筆される。(もっとも、同国の司法制度は不備が多いとの指摘もあることに鑑みると、迅速な判断が運用として出来ているのは、現在、知的財産権制度が活用されていないからに過ぎない可能性も存在する)。
私は別件でインドネシアの法制度について触れたことがあり、そこでの印象がよくなかったため、ついついネガティブに捉えてしまうが、不備なり、大きな制度的な違いなりがある場合は、それだけ、正確に制度を把握する必要があるということだろう。
なお、インドネシアにおける知的財産権制度の現状に触れた文献で、私がざっと調べた限りでは以下のとおりである。

制度関連
ジェトロ−インドネシア
http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/idn/ip/
中川博司『東アジアの商標制度』(経済産業調査会、2007年)
新地真之「インドネシアにおける知的財産権エンフォースメント問題の歴史的考察(1)(完)」法学論叢157巻6号、8号(2005年)
山本芳栄「インドネシアにおける知的財産分野の損害賠償請求訴訟」知財管理54巻13号(2004年)
「インドネシア共和国における特許権行使上の留意点」知財管理53巻13号(2003年)

運用関連
富田徹男「インドネシアにおける内国民特許・意匠出願の分析」知財マネジメント3号(2005年)
http://www.me.titech.ac.jp/ip/Vol3/vol3p1.pdf

(注1)同一物品・役務における類似標章の使用、類似物品・役務における同一標章の使用についての規定が欠如している。報告者の誤記や誤訳の可能性もあるが、インドネシアの法律については、立法の過誤がしばしば見られるようだ(私は、JETROの報告書でそのような事実に触れた)。
posted by かんぞう at 22:00| Comment(0) | TrackBack(1) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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