2007年10月24日

[商標]商標的使用とメタタグを巡る判例・学説の整理に関する覚え書き

メタタグ(中でもdescriptionタグ)で、他人の商標を使用することが商標権侵害になるか、という点についての学説・裁判例の整理にあたっては、「メタタグの視認性に対する認識」という前提条件の差の視点に留意しなくてはいけないように感じた。

例えば、結論としてメタタグにおける商標の使用を商標的使用にあたらないと述べる、青江秀史=茶園成樹「インターネットと知的財産法」高橋和之=松井茂記編『インターネットと法 第3版』(有斐閣、2004年)285頁は、メタタグが画面上に表示されないことを前提としている。

他方、結論としてメタタグにおける商標の使用を商標法上の使用と判断した〔クルマの110番事件〕大阪地判平成17年12月8日は、MSNサーチ上で検索結果としてdescriptionタグの内容が表示されることをもって視認性有りと認定し、その上で商標的使用と述べ(下線部2007/10/25追記)ているように読める。

私の判例の読み方が正しいのであれば、両者の結論の差の要因は、単に特定のサーチエンジンがメタタグ無いの記述を表示させる機能を有しているか、そうでないかを知っていたか知らなかったかの差に留まる。

これに比べ、結論としてメタタグにおける商標の使用を商標法上の使用と述べる、土肥一史「ネットワーク社会と商標」ジュリスト1227号(2002年)26頁は、視認性の捉え方が少々独自であるように読める。土肥教授によると、メタタグの場合「ソースを読めば視認できる」(keywordタグを想定されていると思うが)「検索者が入力したキーワードとの一致という形で視認できる」と述べている。いずれも商標の冒用者の積極的な行為により視認性が生じたものとは言いにくいところではないだろうか。言い換えれば、識別性が有るというにはグレーな領域では無いだろうか。

その意味で、土肥教授の2002年段階での見解は、時代を先取りした点ですばらしい功績ではあるが、商標的使用論に関するこれまでの考え方からは異質であるように思われる。

(注)なお、学説の整理にあたっては、青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣、2007年)174頁を参照した。
posted by かんぞう at 01:18| Comment(11) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
(自己レスになってしまいますが…)
上記記事に、頭の整理が足りていなかったところがありました。
上記記事では商標的使用と認定されてるための要素の一つである「出所識別性」が発揮されているかについて判断するに当たって、「視認性」が必要だ(それも標章を使用した者が積極的に視認性を作りだすことが必要)、との前提に立った記述になっています。しかし、よく考えると、本当にそうなのかはきちんと勉強しなくてはいけないところだったように思います。
この記事については、少々留保させてください。
Posted by かんぞう at 2007年10月24日 10:57
道具をつかえば見えるからいいということでしょうか。音、匂い、触覚味、の商標を認めていない日本では、5感のうちの視覚にならざるを得ない?
意匠でも、拡大したものがカタログに表示されているのであれば、実際に見えなくともよいとした判決があったようです(知財高判平成18年3月31日)。

まだ、この業界ではひよっこです。非機能系なので、渋谷教授、田村教授、小泉教授、茶園教授、井上教授あたりの論文は、かならず読むようにしております。「青木博」「通」かと思います。ブログは、企業法務戦士さん、駒沢の大塚先生、そして、知的ユウレイ屋敷の3点を押えるようにしております。これからもオリジナリティーをもってご活躍ください。
Posted by サイバー at 2007年10月24日 11:33
[くるまの110番]については@検索結果表示は広告にあたるか、A仮に広告だとしても、広告中で【表示】されることが【使用】にあたるか、の2点が迷いどころかなぁ、という印象です。Aの使用該当性判断に当たっては、出所識別機能を発する態様で表示されているか否かがミソになるように思います。正直なところ、視認性はそれほどクリティカルな問題ではないように思いました。というのは、現に検索結果中で【表示】はされているので、あとは当該表示を商標法中で【使用】と評価するか否かの問題だと考えていましたので。

・・・ちなみにこの判決は業務命令で読まされ(笑)、「レポートしてね」とか言われましたが、レポートは無視しました。ダメリーマンですね…orz
Posted by lxngdh at 2007年10月25日 01:37
Descriptionに記載されないメタタグの場合は、視認性が問題となってきますが、このようなメタタグは、日本ではどうなるのでしょうか。土肥先生の説ではOKだと思いますが。
Posted by サイバー at 2007年10月25日 17:52
>サイバーさん
非常に有益なコメントありがとうございます。
おっしゃるとおりで、本邦商標法上は視覚に頼らざるを得ないので視認性は決定的なのかなぁと私は直感的に思った次第です。(すいません、勉強できてないので、まだ思います、ベースですが)
ただ、ご紹介いただいた意匠権の判例もあるようですし、また、lxngdhさんがご指摘いただいたように、商標的「使用」が問題のコアなようにも思います。

多くの骨のある論文をお読みになっているとのこと、今後とも本ブログに示唆を与えてください。

青木先生のお名前の誤りの指摘ありがとうございます。お恥ずかしい限りです。人格権に関わりそうなので(笑)ささっと直してしまいました。激励のことばも感謝します。励みになります。

Description以外のメタタグは、クルマの110番を基準にすれば、keywordタグの言葉を表示するような検索サイトがあれば別論、現在のところ厳しいのではないのでしょうか?土肥説に立った場合についてはご指摘の通り、商標的使用となると私も思います。


>lxngdhさん
商標については、lxngdhさんに出てきていただけると大変ありがたいです。
なるほど、ご指摘いただいて読み返してみましたが、確かにクルマの110番では視認性がクリティカルというのは苦しいですね。ミソの部分を教えていただいて感謝です。
1点、ちょっと教えていただきたいのですが、商標的「使用」の基準って何なのよ、っていう疑問があります。
おそらく、出所識別機能を果たしている、というところだと思うのですが、これの意味ってどうなんでしょうね?見えること+(使用者の主観的意図or結果としての出所認識)なんですかね…。(すいません、これもきちんと勉強できていないので、思いつきベースでしゃべってしまっています。)

無駄な仕事はしない、これはサラリーマンとしてありだと思いますよ〜。
Posted by かんぞう at 2007年10月25日 22:48
満田先生、松尾和子先生、土肥教授といった大御所も必ず読んでおります。
商標的使用態様は、混同を導き出す道具概念ですから、音、匂い、味、触覚などが導入されたり、技術の進歩により社会構図が変化してくると、変化してくるのではないでしょうか。リンクがあればよいとか。誰でも出所を想起すれば、それは、「商標的使用態様」、その類型が増えてくるし、変化してくる。

私は上からやれといわれれば、やるようにしています。新たな世界が広がる可能性が30%ほどあります。
Posted by サイバー at 2007年10月26日 12:18
におい等新たな要素が入った場合に商標的使用の概念が変化する、というのは、うなずけます。
そういえば、一時期欧州で「香りの商標」が導入されて、日本でも…なんていう話もありましたが、最近下火ですね…。
Posted by かんぞう at 2007年10月28日 23:13
知的財産研究所で、音、色彩、動作商標、匂い等の新しい商標についての検討が始まったようです。欧米は導入済み、韓国は、色彩、動作商標は導入済みで来年FTAとの関係で音、匂いも導入するそうです。中国もそのような改正案。となると日本も2009年国会に法案提出ということは十分あるかと思います。
今年の工業所有権学会(同志社大学にて)で、名古屋大学の鈴木教授(元経済産業省知的財産政策室長)が新商標について発表したのも、その流れかと。学会の理事長は土肥教授、審議会の小委員長でもある。となると。
音、色彩、動作商標、位置商標まではいくとしても、匂いをどうするか、特定が難しいようです。
Posted by サイバー at 2007年10月29日 00:21
中国もそういう動きが有るんですね。土肥先生・鈴木先生の組み合わせからも臭いところがある!というのはちょっと興味深く思いました。
知財研の取り組みは、ウォッチする必要が有りますね。ただ、知財研についてよくわかってないのですが、METIとかJPOからの委託やその影響も大きいと思いますけど、独自の取り組みと言う可能性はないのでしょうか?
いずれにせよ、おっしゃるとおり2、3年で改正の動きが有るかもしれませんね。依然、高部裁判官が「商標法の大改正」を示唆されていましたし。
ただ、改正前に審査に用いるシステムの設計、IPDLの更新等、課題も有るように思います。

においの特定、これは難しいですね。素人考えですが、化学物質の製法特許のクレームのような記載による特定、とかどうなのかなぁって思いますが、商標っぽくないですね。「類似」なんてどうするんでしょうね。
Posted by かんぞう at 2007年10月29日 23:53
審査云々よりも、匂いでは登録公報も発行できないと思います。

成分で特定しても識別機能は無いと思います。というか、そんな公報を見ても普通の人にはどのような匂いが登録されているのか分からないでしょう。

嗅覚の感性は万人に共通とは言い難く、個人の感覚器の特性の違い以外にも、経験や所属する民族・地域等の文化にも依存します。そのため、同じ成分の匂いでも人によって異なる刺激となります。例えば、松茸の匂いが日本人の多くにはいい匂いでも、欧米人にとっては?となったりとか。香水の香りの違い等も分かる人にはわかりますが、分からない人には区別がつきません。

そういう普遍性のないものを保護対象とするのは、個人的にはかなり疑問です。

そもそも、匂いの商標に関する訴訟が起きたとして、裁判官が判別できるんでしょうか? 成分が登録要件なら切り訳こそできますが、他の匂いとの識別性の有無等はどうやって判断するんでしょうか?
Posted by とおる at 2007年10月30日 05:58
とおるさん、コメントありがとうございます。レスポンス遅れてすいません。

匂いでは区別がつかないことが疑問とのご指摘ですが、私はむしろ、類似の範囲が決められないことが問題ではないかと思います。
感覚的なことで恐縮ですが、視覚的な商標については誤認混同を基準とする類比判断ですが、匂いについて同じ基準でやってしまうと、非常に広くなってしまう(権利が広範になってしまう)のではないかと感じています。
(裁判官も結局のところ、社会的に混同が生じるかで決める訳ですから、判別は事実上公衆の感覚に依存しても許されるのではないでしょうか)

もっとも、品質等の記述商標は権利の対象外ですので、普通に備わっている匂いはこれでカバーできて不都合はそこまで大きくないのかもしれません。26条を緩めにとれば、「突飛な匂い」(不自然な匂い)だけが商標登録の対象とすることもできるかもしれません。

「人間が峻別できる匂いに限界がある」ということがある程度検証できたら、の場合ですけれど、次なる手として、類比の基準を匂いについて極めて狭くとることで、事実上「同じ匂い」(それも化学的に)のみを対象とすることがあり得るように思います。

登録公報についてはおっしゃるとおりです。どうするんでしょうね。アメリカの例では「フレッシュなグレープの香り」と言う風な登録が通っているそうですが(工業所有権法学会 鈴木教授報告)、これではあんまりだと思います。

きちんと考えるならば、数年前に話題になった「匂いが再現できる機械」の普及などテクノロジーのバックグラウンドがいるように思います。
Posted by かんぞう at 2007年11月02日 00:43
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