2007年10月23日

[時事][知財一般]アイディアにも著作権が及ぶと主張してビジネスを止めさせた事例…これって本当?

(2007年11月4日追記)

■センセーショナルな記事:アイディアも著作権侵害?
IT Mediaが「アイデアに著作権なし……それでも「いいめもダイエット」サービス停止」(2007年10月16日)《リンク》という記事を配信した。内容は、リンク先をご参照いただきたい。

記事がなかなかセンセーショナルなものであるため、いろいろと話題となったようだ。問題となった警告(仮に記事が伝えるところが正確であるなら、そのように評価できる)を行った岡田さんのブログには、非難のコメントが多数寄せられていた。しかし、ご本人の書き込みによれば、記事に事実と異なる点があった可能性も窺える(注1)。

■問題の本質について推し量る
本件の事態について、ある程度合理的な説明をしようとすると、次の3つが考えられるのではないだろうか。

(1)パブリシティ権を巡る紛争が本質である可能性
記事によると、岡田さんの許可無く、岡田さんの名前や著書を挙げていた、ということなので、パブリシティ権を巡る争い、という可能性が考えられる。
紛争の理由としては本件においては合理的であると私は思う。
これまで、顧客吸引力をもった著名人の氏名の冒用が不法行為にあたると判断される事例は積み重なっている(注2)。
もっとも、裁判例から見るに、「顧客吸引力を専ら著名人の氏名・肖像に依存している」かがターニングポイントとなっているようであり、本件の用いられ方がパブリシティ権侵害と評価できるかは微妙な判断となるだろう。

「微妙」と思われるポイントは次の2つである。
・岡田さんの名前の持つ顧客吸引力を専ら利用しているか?(これは程度問題なので、事実関係がわからないとなんともいえない)
・岡田さんの名前以上に、本の題名の持つ顧客吸引力が作用しているのではないか。そうすると、「物のパブリシティ」の問題となるが、これは厳しそうである(注3)。

(2)挨拶がない!とか、「道義的問題」という可能性
次の可能性は、自己の書籍のアイディアを用いている上、無断で名前を使っているのに「挨拶が無いのはケシカラン」という可能性である。法的な根拠は乏しいと考えるが、それを補うのに、著作権紛争の形を通じて法的紛争となったなされた可能性がある(注4)。
個人的な感触で恐縮ではあるが、「挨拶が無くてケシカラン」といったことが、何らかの実体法の枠組みで表れることが少なからず有るように思う。

なお、著作物とは次元の異なる話であるが、似たような構図が特許の世界にあるように感じる。研究活動において、他人の開発したマテリアルを用いて完成した成果に対し、提供元への何らかの情報のフィードバックの要求なり出所表示の要求があると聞く。マテリアルがどの程度研究に貢献したかは分野によって大きく異なるが、多くの場合、マテリアルの提供元の表示や、研究成果のフィードバックを求める法的根拠を見つけることは難しいように思う(注5)。これもある種の「挨拶」系のお話ではないだろうか。

(3)著作権に対する勘違い
最後の可能性として、著作権制度について(特に本件では翻案について)誤解されていた、と言うことが考えられる。岡田さんは著作権法の専門家でないので、そのような誤解をなさっていても、非難することは私にはできないし、やむを得ないことであると思う。
ただ、このような誤解により競争環境に萎縮効果が生じることの弊害は否めない。国の施策としては「より良い著作権教育」を今後していかないといけないね、という話になるだけだろうなぁと思う。単に権利を守ろう、ではなく、正しく権利を守ろう・正しく権利を主張しようという形の教育をする必要が有ると感じるのである。

(注1)もっとも、書き込みを削除されているし、それ以上の反応をなさっていないので何とも言えない。私としては、事実が分からないから何とも言えないね、という態度でこの記事を書いている。
(注2)〔おニャン子クラブ事件控訴審〕東京高判平成3年9月26日判時1400号3頁。
(注3)〔ギャロップレーサー事件最高裁判決〕最判平成16年2月13日民集58巻2号311頁参照。
(注4)私はこの類型の紛争を「挨拶が無くてケシカラン」系紛争と勝手に分類している。この類型に属すると考えられるものとして、漫画家の松本零士さんが歌手の槇原敬之さんと紛争になった事例(本ブログ「[時事][著作権]松本零士「銀河鉄道」騒動雑感」(2006年11月13日)参照)。
(注5)もちろん、マテリアルの譲渡契約で単に決まっただけ、と考えることが自然である。しかし、このような契約を定型としている研究機関が少なくない、とも聞いていることにかんがみれば、「挨拶が基本」と考える慣習があるのではないか、と思うのである。

posted by かんぞう at 00:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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