2007年09月18日

[その他][書評]格差社会の根をちょっとだけ考える

■橘木俊詔『格差社会―何が問題なのか』 (岩波書店、2006年) 読書メモ

「格差社会」の中身を統計的分析によって示していく入門書。格差の切り口を、世代、職業の固定化、地域と言った点から整理している。それぞれの方が、それぞれに抱いている「格差」像が、かなり多様なものであるんだ、というのを認識し、議論を整理するのに適した本であるように思う。

また、かなり冷静な視点で記述されている点には好感が持てた。

興味深かった分析は次の3点。

・若者世代の「就業形態」「収入」格差が深刻であり、改善の必要がある。
・職業階層の固定化も進んでおり、これが格差を感じさせる要因になっている可能性がある。
・税を通じた富の再分配が、G8+北欧諸国の中で上手に行えていない。

もっとも、その主張部分については、
・なんで北欧とやたら比べるの?
という疑問が湧いた。

北欧は理想的なシステムを導入しているかもしれないが、若い頃は海外で過ごして、老後北欧に戻ってくる、という福祉へのフリーライダーが少なからず存在するという問題点もはらんでいる。

最後に、読んでいて抱いた私のぼんやりとした思いを羅列しておく。

・格差社会といわせる主観的な要素は「高齢化」かもね。
・若者の格差は将来を考えたら手を打たないとやばいよね。
・都市圏と地域の格差があるっていうけれど、統計的に見ると、都市圏のはずの関西圏が良い数字出してないなぁ。
・お医者さんって階層固定の度合いが高い気がするなぁ…。
posted by かんぞう at 19:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ☆その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も6月くらいに読んだおぼえが。この手の本を10冊くらいまとめて読んだのですが。

で、基本的にはきちんとした手法を使って現状を示しているところは共感。特に、33-34頁にあるようにもっと正確なデータを公表しろというところなどはそのとおりだと思います。

ただ、いくつか疑問があるのは、まず、本文でも触れられている北欧との比較ではあまり北欧のデータはあまり示されているように思いません。経済が成功しているというのであれば有名企業の名前だけではなくデータもほしいところ。

第二に、(限界)税率と勤労インセンティブの間に負の相関がないのではという指摘(157-160頁)。そうだとすれば面白い話だけれども、そうであるということと、だから高い税率を高額所得者にかけてよいのだということは直接つながらないですね。「アイツはよく働くなぁ。自分の取り分少ないのに。その残りは色々つかっちまおう」というのがどのように正当化されるかという問題は残りそうです。

第三に、職能給+ワークシェアなんてやったら、結局これまで給料プラスアルファでもらっていた社会保障の類はどうなるのでしょう。それはさておいても、これが達成すると「みんなフリーター」に近い状態に収束するのではないかとも思います。かつての「正社員」での雇用維持を念頭にしているのだとすれば、びっくりな結果ですが。

さらにいえば、ワークシェアが成り立ちにくい産業・職種と成り立ちやすいがあるはずで、シェアのためにかかるコスト(引き継ぎ・人の組み合わせなど)がすぎるとムリでしょう。研究者などその例で、すごく優秀なある先生がお忙しいので私が仕事をシェアするといっても、私が論文を書いたり講演したりというのでは意味がないわけで。ホワイトカラーの場合は、ここまででなくても似たような要素はあるのではと思ってます。
Posted by MM at 2007年09月20日 03:23
mmさんも読まれてましたか。

>第二に、(限界)税率と勤労インセンティブの間に負の相関がないのでは
>という指摘(157-160頁)。そうだとすれば面白い話だけれども、そうで
>あるということと、だから高い税率を高額所得者にかけてよいのだという
>ことは直接つながらないですね。

なるほど、確か似そうですね。
なぜ「そこまで」再配分しなくてはいけないかの説明が抜けていますね。

>さらにいえば、ワークシェアが成り立ちにくい産業・職種と成り立ちやすい
>があるはず

これもご指摘の通り。
自分でやりだしてわかったんですが、特殊なルーティーン業務でない限り、業務設計がメンドクサイんですよね…。
シェアしたために仕事量が増え、マネジメント側の負担が増え…という可能性は十分あります。
Posted by かんぞう at 2007年09月22日 21:59
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