2007年07月31日

[つぶやき]持続可能な権利保護

法と経済学関係の本を読んでいると、『「権利を守る」といっても、社会的厚生が増えるような形で保護がなされないと、いずれ権利者を守ることができなくなってしまう』、という趣旨の指摘があった(注1)。

文脈としては解雇規制の話の中にあった。あまりに解雇を制約すると新しい雇用への負のインセンティブになって、将来の雇用者にとっては勤労の権利が守られないかもよ、という話だ。

権利を与えられた者の機会主義的な行動はあり得る訳で、それをいかに防ぐか、言い換えると、潜在的な権利者の潜在的な権利を守れるか、という視点は大事なように思う。

さて、翻って考えると、近時の著作権を巡る議論の一部は、以上のような持続可能性を考えているのだろうか、という疑問がもたげてしまう。著作権保護期間延長論がその一つだと思う。今は著作権が何十年も及ぶことの弊害は少ないが、単純に思いつくものを並べても次の要因があるから弊害が少なかっただけではないか。

1)(自然人に帰属する著作権については)かつては知的財産権が意識されていた訳ではないので、相続にあたってなおざりにされていて、結果的に権利行使が難しくなっている。
2)デジタル化・ネットワーク化が進む前であったから、侵害(と権利者が考える)物の探索コストが高かった。

昔に公開された著作物も、新たに公開された著作物もどちらもデジタル化されるようになれば、2)を巡る状況は著しく変わる。自動で『似ているもの』を発見することができる。ダメモトで権利行使も可能になってしまう。そのようなリスクを負うことになる表現活動が、将来萎縮されないか、ひいては将来の文化発展を妨げないか、気になるところである。

(注1)樋口美雄・山川隆一「労働法」矢野誠編『法と経済学 市場の質と日本経済』(東京大学出版、2007年)
posted by かんぞう at 01:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ●つぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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