2007年07月18日

[特許]特許権の新たな通常実施権登録制度

平成19年5月11日に、産業活力再生特別措置法改正法案が公布された。
特許権の通常実施権を保護する新たな登録制度を盛り込んだものであり、知的財産権制度に与える影響は小さくない。1年6ヶ月以内に施行とのことであるから(注1)、遅くとも平成20年11月11日までに施行されることになる。
制度の概要と、審議過程から伺える課題を覚え書きとしてまとめてみた。

制度の概要
●特許番号以外の何らかの特定方法(典型的には、製品)により外縁が定められた複数の特許権を対象にしている(典型的には、包括クロスライセンスの対象となる特許権)
●特許庁に登録すると、対抗力が発生する
●登録内容の開示は3段階の構造。
 ○誰でも請求できる「一般開示」はライセンサーの名称、登録対象外特許程度の情報に限られる。
 ○ライセンサーの特許権を取得した者・特許権の差し押さえ債権者・破産管財人が請求できる「登録事項概要証明書」は「一般開示」に加え、ライセンシーの名前も明らかになる。
 ○これらの者は条件付きで「登録事項証明書」を請求でき、登録された特許の範囲が明らかになる。

審議過程から伺える課題
長らく議論となっていた、知的財産権ライセンス契約の保護について一歩踏み出した法律であり、長らく何らかの制度設計を求めていた産業界のうち情報関連機器メーカーの委員は、本改正法の成立を歓迎しているようであった。

もっとも議論それ自体の拙速感は否めず、わずか3回の審議会での検討で終わってしまっている(しかも、最初の1回は、登録制度とは異なる法定実施権制度(注2)を提言しており、実質的に2回の信義であった)。知的財産法学者の委員から、拙速感へ批判と、知的財産法体系への影響への懸念が出されたことはうなずける。

審議からは、特定方法にも問題があると指摘がなされている。特許流通の阻害要素になりかねない点は存在するかもしれない。

知的財産政策室によると、これでライセンス契約の保護についての検討が終わった訳ではないと考えているようなので、運用から問題点を洗っていくことになるものと思われる。

また、原告適格については議論が深められていないようなので、運用上は問題となることが想定される。

参考となる資料
参考となるのは現在のところ次の2つである。

波多野晴朗=石川仙太郎(経済産業省知的財産政策室)「産業活力特別措置法等の一部を改正する法律における特定通常実施権の登録制度について―ライセンシーの事業活動を保護する新たな登録制度の概要」NBL860号(2007年)18頁〜29頁
経済産業省 産業構造審議会 知的財産政策部会 流通・流動化小委員会(第6回〜第8回)議事録

私見
開示の構造はうまい。制度的にはややこしくなるが、段階的開示はライセンスの秘密を守りたい側と、取引相手の安心とのバランスをとるものとして評価したい。ただ、条文上からは3段階目がいまいちわかりにくいという印象であった。

(注1)平成19年法律第36号附則。
(注2)知的財産研究所の報告書に沿った制度と考えられる。
posted by かんぞう at 01:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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