2007年07月12日

[不正競争][著作権]高部判事が指摘した今後の課題を読む(その2)

■高部眞規子「知的財産権訴訟 今後の課題(下)」NBL860号(2007年)41頁〜50頁読書メモ

□この論文の意義
営業秘密の保護が知的財産侵害訴訟に与えた影響をまとめ、それを具現化した制度の運用状況と課題に触れている。他方、著作権については、みなし侵害を巡る裁判例にも触れ、立法的解決の必要性を説くとともに、著作権事案に携わってきた判事としての本音を垣間見せている。
(ただし、(上)に比べると、議論の力の入れ方が若干穏やかなように感じる。私としては(上)が特に興味深かった。)

□この論文の概要

(1)営業秘密にかかる証拠の提出を巡る制度の創設と運用の実態
営業秘密にかかる証拠については、特許法等において、秘密保持命令および裁判の公開停止が可能となっている。これにより、文書提出命令と組み合わせても、秘密が損なわれることが防がれることとなる。
このような制度の組み合わせは評価しつつも、裁判の公開停止については憲法上の論点がないではないとし、検討点であることを示唆している。他方、現状では秘密保持命令および裁判の公開停止がほぼ活用されていないことを指摘し、当事者の利益にかなう場合にはこれらの制度を活用していく訴訟運営が必要であると述べられている(注1)。

(2)著作権訴訟の現状、とくに、みなし侵害(間接侵害)について
伝統的な著作物についての訴訟の一部で多大な手間がかかる訴訟があることに触れ(注2)、これらは原告の訴訟戦略に問題がある、と指摘している。
著作権のみなし侵害については、間接正犯型や著作権侵害を専らの目的とする機器・サービスについては立法的解決の必要性を説き、他方で、それ以外の関与者の責任については裁判規範による柔軟な解決をすべきと説かれている。

□この論文についての私見

(1)営業秘密の証拠利用について
営業秘密保持のための裁判の公開停止と、憲法上の問題については、面白い。憲法は全く専門外であるが考えたくなる。
(以下、素人考え。まともな法学をやっている人ごめんなさい)素人が(勢いで)思うに、裁判の公開は、民事訴訟においては当事者の公正性の担保制度としての性格が主ではないだろうか。ならば、当事者の合意がある(公正性について当事者が納得している)上に、営業秘密のとの利益衡量をすれば、憲法上の問題はないように思う。もっとも裁判の公開規定の性格を松井茂記先生のように国民の権利のような性格で構成するならば、別論となる。
(素人考え終わり)

(2)著作権のみなし侵害について
利用者と権利者のバランスに言及されているあたりが、深く知財訴訟に関わってこられ、理論的にきちんと探求された判決を書いてこられてた判事の心意気が現れている。一部の批判のように高部判事は偏った方ではない。
なお、みなし侵害訴訟で、当事者が過去の裁判例をきわめて深く研究していたことが「面白い」と評価されている。裁判官にとってもわくわくするような問題なのだろう。

(注1)もっとも、秘密保持命令については人証尋問が少ないことに鑑みると使われないのはやむを得ず、裁判の公開停止が適用されるような秘密へのアクセスは停止を求める側にも不都合があることを指摘されている。
(注2)たとえば〔法律書籍事件〕〔国語教科書準拠教材事件〕を判事は挙げている。
posted by かんぞう at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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