2007年06月23日

[時事][知財一般]知的財産推進計画2007から拾うポイント

(ちょっと前の話になってしまったが)「知的財産推進計画2007」が発表された。
法制度の検討ポイントについては、すでに審議会で議論が始まっているものが並べられているだけである。当初は「行動計画」として始まったはずだが5年経った今は、各省庁の取り組みをまとめて一覧できるようになっているもの、という性質が強いように思われる(注1)。

知的財産推進計画2007のポイント

今年度の特徴を私なりに把握すると、「IPDL(特許庁電子図書館)の充実」と「海賊版・模倣品取り締まり強化の継続」は柱のようだ(注2)。

前者のIPDLの充実は歓迎したい。民間のデータベース屋さんのの圧迫と言う面もあるだろうが、ユーザーとしては利便性(そしてコスト)の前に目をつぶってしまう(理屈ではなく、単なる感想(笑))。

もっとも、特許出願データについて、
企業の出願戦略策定に役立つ情報の提供を拡充する2007年度も引き続き、企業における特許出願戦略を策定するに当たって参考となる情報として、主要企業の海外出願比率や特許率等の情報を公表するとともに、2007年度中に、各企業が自社の出願件数や審査実績等のより詳細な情報を加工、抽出、経年比較できる「特許戦略ポータルサイト(仮称)」の試行を開始する。

らしいが、これはさすがにおせっかいなのでは、という気もする(これも理屈でなく、感想であるが)。

後者の海賊版取り締まり強化については、話題となった著作権の非親告罪化や水際での取り締まり強化のための人材育成のほか、目についたのは2点である。

海賊版取り締まり強化策としての個人輸入・個人所持の禁止について検討

まず
必要に応じ、模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持の禁止について更に検討を
行い、新法の制定等法制度を整備する。

、とある。
これはかなり大きなインパクトがあるものではないだろうか。どの範囲を禁止するかがきわめて重要であるように思う。また、現状の法の中で違和感のある部分もある。
以下、浅い検討ではあるが、特許、商標、意匠、不正競争、著作権に分けて考察を行ってみた。

特許権や、商標権、意匠権では従来、個人の一回的行為は規制対象外である(注3)。
ここに法の手が及ぶことになる。
まず、「わかっていて偽物を買うこと」が禁止されることになる。特許については難しい者があるが、商標権については本来的には「商標に化体した信用」が保護されているのであり、「わかっている」ならばその点を保護する必要は無い。商標権侵害の共同正犯的あるいは幇助的行為だとして取り締まりたい、というならわかるが、仕出国において当該商標権が無いような場合には不当性を感じる。

また、「海賊版」の意味次第では危うさもある。「著名な技術的製品」や「著名なブランド」の「模倣品」の限りにおいては、理解できるものではあろう。
だが、「海賊版」が「侵害物品」の意味でとらえられると、一気に納得しがたいものとなる。特許権の場合のように、後から評価すると侵害がわかったもの、商標では著名でないロゴがたまたま使われていたもの、が考えられる。ここが禁止されると、何か息詰る感じもする。例えば海外旅行で物を買うときに、「個人の旅行者が」侵害抵触調査をしなくてはいけないのである。もちろん、そんな検討をしているとは思えないが、明確な定義をしてほしいものである。

不正競争については「競争秩序」を概しているとは言い切りにくいと思われる。これが取り締まられることになるのは、これまた不思議な感じがする。

著作権については現状の法制度との整合に乏しい。譲渡を行った者のみが取り締まられる法体系の中で、突然私的領域の受領が禁止されるのである(注4)。まして「所持」が禁止されることにも違和感がある。従来、妨害排除請求の実現として認められてきた「廃棄請求」により所持を排除してきたが、これが、一足飛びに違法行為となるのはどうなのだろうか。

以上のところは輸入についてであったが、まして、「所持」の禁止には行き過ぎの感も受ける。従来、所持行為は知的財産法の感知するところではない。妨害排除請求の実現として認められてきた「廃棄請求」により所持を排除してきたが、これでは不足なのだろうか?

以上のところをまとめると、政策論としてはわからないでもない面があるのだが、「行き過ぎではないか」とも思う。いたるところに「侵害犯罪者」をつくるのが、望ましいのだろうか。現状の出口規制だけでは足りないのだろうか。どこか疑問が残ってしまう。この点は、本ブログで今後考えていきたい。

海賊版取り締まり強化策としての著作権侵害「海賊版」の広告行為規制

著作権法において、インターネットオークションへの出品など海賊版の
広告行為自体を権利侵害とすることについて、2007年度中に検討し、
必要に応じ法制度を整備する。

ことを挙げている。

広告行為規制は商標権では存在することを挙げて、本件についても説明する新聞報道もあったのだが、需要者の信用を保護する商標と同列には論ずることが出来ないものと思われる。あくまで、譲渡権侵害の予備的行為規制である。おそらく、この改正の本論はそのような出品を削除する義務をオークション管理者に負わせたいのだろう。(微妙な解釈問題ではあろうが、侵害物品自体の売買申し込み行為は侵害行為でなく、プロバイダーの責任ではない、という点が懸念だと思われる。)

最後に:知的財産推進計画で学生さんに役立つもの

最後に余談となるが、学生さんに役立つ資料があったので挙げておく。
知的財産推進計画の参考資料「知的財産戦略の進捗状況」(首相官邸へのリンク)
である。

2003年以降の知的財産法改正が、果たした機能ごとにまとまっている。
勉強の際や、ゼミでのレポート課題に使えそうである。これが筆者の学生時代にあれば、とふと思った次第である。
(注1)各省庁の取り組みを「ホッチキスで留めたもの」(日経新聞社説、NIKKEI NETへのリンク)には変わりないが、骨太の方針と違って、省庁ごとの枠を超えて取り組みが一覧でき、政府の取り組みがわかりやすくなる点では良いのではないか。また、「方針」(ある程度政治のリーダーシップが求められるであろうもの)と「計画」(行政側が具体的な行動をしめすもの)との違いもあるし、ここではとやかく言わない。
(注2)前者の視点には、依然として「知的財産権の保護強化」の色彩を感じる。もちろん社会の変化に応じて考えていくべき問題ではあるが、そこに将来つくりあげたい社会像を見据えた議論を行っていて欲しい。中山先生がかつて指摘したように、現在の利益擁護という片方の側の議論では困る。この点、各省庁を超えた知的財産戦略本部には、高所に立った検討を行う昨日を期待したいのだが…。
(注3)海賊版を製造した者につき当該行為が禁止されることは言うまでもない。
(注4)もちろん譲渡権等の侵害者の幇助者として責任追及をする手はあるが、現状では苦しいように思われる(この点は調査が必要である)。
posted by かんぞう at 16:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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