2007年06月19日

[知財一般][時事]日本工業所有権法学会を聴きに行ってみた(その3)

工所法学会報告の3回目。これで完結である。

(3)松村信夫「商標の類似」
概要
不正競争防止法2条1項1号の「混同」と商標法4条1項にいう「類似」と同37条にいう「類似」の概念の違いを裁判例から汲み取られていた。松村先生の検討結果のポイントの1つは(注1)、商標法37条(つまり侵害の場面)では、他方に周知性がある場合に、外観・称呼の範囲が若干緩やかに判断をしており、混同について直接判断している訳ではないようだ、という点であった。しかしこれには類似概念は中立的であるべきという批判があることを紹介され、その上で松村先生としては、混同が無いような類似の範囲については違法性阻却のような形で侵害の責任を否定するべきと述べられていた。

感想
もっとも難関のテーマに挑まれていただけあって、興味深い報告だった。惜しむらくはプレゼンの方法で、判例分析をするならば、概要は表などにまとめた上で、分析箇所を丁寧に説明されるべきでは…と感じた。
内容に関しては、私自身の考えがまとまっておらず、これからの勉強課題のため留保。
(注1)このように書いたのは他のポイントを聞き逃したからである…。


(4)宮脇正晴「著名商標の保護」
概要
混同概念と稀釈化概念を整理された上で、稀釈化はイメージの保護であり信用保護とは一線を画すものとの説明をされていた。そして、裁判例分析から不正競争防止法2条1項1号は「混同」概念を拡張してでも用いられているのに対し、2号が用いられることが消極であることを指摘し、その理由として稀釈化を構成する「不鮮明化」を禁止することへのためらいがあるのではないかと指摘された。本題の著名商標の保護については、商標法の現在の原則に反してしよう主義的となること、また、保護する手法としては稀釈化からの保護と考えられるが、これは商標法の行う信用保護と性質が異なることを理由に、消極的な立場であると述べられていた。

感想
個人的には一番面白かった報告であった。丁寧な裁判例分析と、商標/標識の機能の概念整理は根源的で、かつ、意欲的なものであると思う。商標分野では宮脇先生は注目すべき存在だ、と思われた方もいるかもしれない。
一点だけ疑問を述べれば(ただし私の聞き漏らしが原因かもしれないのだが)著名商標の保護に消極的な理由は、「現行の」商標制度の概念的な点との不整合を理由にされていた(と思う)が、はたしてそれが決定的な理由になるのか、という点である。既に江口先生が述べられていたように、不正競争法との統合という方向もある訳で、そうすると、競争秩序維持に死する限りで「商標」制度を使ってイメージを保護しても良いのではないだろうか。
posted by かんぞう at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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