2007年05月30日

[著作権][時事]「ドラえもんの最終話」とキャンディキャンディの関係

ドラえもんの最終話と名付けた漫画を元プロ漫画家が描いて出版していたのだが、小学館と藤子プロの警告を受けて、出版の中止と利益の一部支払うことで和解契約をしたらしい。13000部も売れていたというのだから、なかなかのものだ。

さて、これは「著作権侵害」ということだが、この手の二次創作は厳密には著作権侵害の判定が難しいように思う。

例えば極端な例を考えていただきたい。

「緑色の大樹のような見た目の、森の妖精で、森のことは何でも知っている長老のような雰囲気のキャラクター」の一枚絵(注1)があったとして、世間にはこれだけしか公開されていないところ、これを漫画化したら著作権侵害なのだろうか?一枚絵と同じ絵ならば侵害に間違いは無いが、一枚絵と似てなかったら??それぞれの絵が「翻案」にあたるか、という微妙な問題となってしまう。

翻案の判定に当たっては、「緑色の大樹のような見た目」「長老のような雰囲気」というところを重視すると、抽象的なキャラクター、つまり、アイディアに近いところを保護してしまう(注2)。しかし、表現の表面的なところのみを問題にしようとすると、「翻案」というのが一体なんなのかわからないくなる。その基準をどこに置くかは悩ましい(注3)。

では、なぜこの手の二次的創作がアウトになるのか?

推測にすぎないが、多くの場合、たくさんあるコマ絵の中で、原作のコマ絵に似ているもの、同じものが登場していると考えられる。これが複製権侵害あるいは翻案権侵害となってしまう。(これは全ての絵がというのではなく、たくさんあるうちのいくつかが、ということである。なお絵がうまく、似ていれば似ているほど複製権侵害と言われる可能性があがるだろう。)

もちろん、二次的創作の作者としては、特定の絵をモチーフにしていない!と反論することもできるだろう。二次的創作として作っている場合は、明示的に元画を見ていなくても、頭の中に残った絵のイメージが強く作用した結果、似てしまったということもありうる。

しかし、著作権法上は「描くときに見たか」は問題でない。「表現上の特徴」が問題になるのだから、頭の中にあるものを真似たら翻案といわれても仕方の無い面がある。また、キャラクターを利用している以上、原作品へのアクセスがあったことは間違いない。独自創作と抗弁するのは厳しい。

キャラクターの保護は、悩ましい問題としてまだまだ議論に上っている。翻案の議論もしかり。「ドラえもんの最終話」は、終わらない問題を提示してくれたのである。

(注1)モリゾー(のつもり)である。
(注2)抽象的キャラクターを保護しないと明示したものは、〔ポパイネクタイ事件最高裁判決〕最判平成9年7月17日民集51巻6号2714頁。
(注3)今年の著作権法学会のテーマが翻案だったことを鑑みれば、古くて新しいホットトピックだと言えよう。
posted by かんぞう at 23:53| Comment(2) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
テレビで見たんですけど、確かによく似たコマがあったらしいです。比較されてました。
今日、ちょっと翻案について調べてみたんですけど、いわゆる今回のドラえもん最終回は「パロディ」に当たるんですかね?パロディは日本では完全に翻案権の侵害に当たるらしいです。サザエボンとかもそんな感じ?
アメリカなら、フェアユースである限り認められるみたいですね。「プリティウーマン」事件など。
でも、漫画に関してはちょっと疑問があるんですけど、漫画って言語の著作物であるのと同時に、美術の著作物でもあるわけですよね。
で、言語の著作物に関しては、たとえば今回みたいに勝手に続編を作ったとしても侵害にならない場合がある。設定というかアイディアを利用したことになるため。
でも、漫画の場合だと「絵」という表現を少なからず利用してしまうことになるから、侵害になる可能性が高い。
オリジナルにある程度フリーライドしている、という点ではどちらもそんなに差がないように感じるんですが、どうなんでしょう。
ちなみに、絵のタッチとか世界観を拝借するだけなら、侵害にならないんですよね。
どうにか、今回の事件を侵害なしとは考えられないでしょうかー。
Posted by マルティー at 2007年06月01日 03:18
「パロディ」に当たるか?いう疑問については、「パロディ」で何を意味するか、という言葉の定義がまず大きく関わると思う。感覚的なもので申し訳ないけれど、人によって若干ずれがあるように感じる。

たとえば、辞書には「広く知られている既成の作品を、その特徴を巧みにとらえて、滑稽(こっけい)化・風刺化の目的で作り変えたもの」(大辞林)と書いてあるけれど、ここで言う「特徴」が表現上の具体的な特徴か、設定などの抽象的な特徴にとどまるのか、という点で2つに分かれうるよね。

本件の場合、絵の特徴を捉えてどうこうした、というより、設定に重きが置かれていたようなので、パロディと言えるかは微妙なところかも。(だから「二次的創作」という言葉をつかってみた)

さて、漫画の二次的創作なりパロディの問題点の整理は、言語の著作物と絵画の著作物に分けて行うと、わかりやすいね。ここに書いた記事にくらべて親切な解説だと思う。

オリジナルへのフリーライドという点では同じではないか、という問題提起だけど、パブリシティへのフリーライドを問題にするなら別論、なんらかのアイディアにフリーライドしているというのを問題にするのは望ましいことではないと思う。表現とアイディアが簡単に二分できるか、と言われれば難しい問題だけど、表現上の具体化されたアイディアは著作権でカバーしちゃいましょうっていう態度決定を採っている以上、漫画と言語の著作物の間で線引きがあるのはやむを得ないことだと思う…。

侵害なしと考えるのは難しいなぁ。引用だとも言えないし…。マルティーさんがアメリカでの判例を紹介してくれている通り、日本でフェアユース規定を導入していれば考慮余地はあるのだろうけれど。
Posted by かんぞう at 2007年06月02日 15:35
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