ざっとその要点をまとめると、
”知的創造サイクル専門調査会で「著作権の非親告罪化」が議論されている。これが仮に通ってしまうと、同人誌など二次的著作物は壊滅的な打撃を受け、模倣に基づく著作物創作に萎縮効果を生じさせる。”
というのがたけくまさんの趣旨である。
火急の問題か、何が問題か、どうすればいいか、についてちょっと考えてみた。
(軽くまとめた後で、ざっと審議会記録を見ていたら、同じことを言っている人がいた。
なので、まぁ、審議会の中の一意見の紹介と思って読んでいただいた方がいいかもしれない。)
すぐに改正されそうか?
確かめてみると、たしかに著作権侵害罪の非親告罪化は検討対象になっている。もっとも、調査会自体は非親告罪化の方向に議論がまとまっているという印象は無い。この中で著作権法学者は中山信弘先生だけなのだが、さすがに、非親告罪化には否定的な発言をなさっていた。
また、著作権を審議する本筋ルートは文化審議会著作権分科会だが、こちらではまだ議論が始まったばかりであり、小委員会レベルで論点整理が行われている段階なので、これから議論が尽くされるところである。拙速な改正は無いように思う。私は、この問題についてそう騒ぐ必要も無い、と思っている。
もっとも、[時事][知財一般]日米首脳会談の合意事項を読み取る(2007/4/30)で触れたが、首相の政治決断もあり得るわけで、もしそうなってしまうと、私の予言はオオカミ少年に終わってしまう。
非親告罪化すると何が問題か?
仮に著作権侵害罪をすべて非親告罪化したとする。
今回の話はすべてここがミソだと思う。
問題は大きく3つではないかと思う。
1)権利行使しないという選択肢を著作者が採っている場合やライセンス契約を結んでいる場合にも、利用者が刑事裁判にもちこまれうるという点にある。告訴されてから許諾の存在を弁解する、という構図をとらなくてはならなくなる。常識的にはそのような運用をしないだろうが(注1)、理論的にはリスクとなる。
2)第3者からの濫訴が起きる。
3)軽微な改変や、翻案の範疇にあるのか非侵害なのか判然としないときにも、刑事裁判に持ち込まれうる。
それぞれについて検討してみる。
1)については、すでに触れたが、運用次第である。
2)については、その通りであるが、これも運用次第である。逆に司法警察の立場から見たときに、しょうもない告訴にも取り合わなくてはいけなくなることが問題かもしれない。
3)ひとたび著作権者をキレさせたら、身柄拘束までされうる、というのが懸念される。また、民事では勝てない無理な事案でも、とりあえず告訴…ということも懸念される。この場合は2)と同じこととなろう。
以上に挙げた問題については、非親告罪化によりめちゃくちゃヤバい問題が起こる、というものではない。また、本題の海賊版被害においては、6ヶ月の親告期間内に告訴に必要な証拠が集められないための不都合もある、らしいので、検討の意味はあながち無いとはいえない。
ではどうすれば良いのか?
そもそも、著作権侵害罪をすべて非親告罪化する必要があるのか?たけくまさんが懸念されるように、翻案なども非親告罪化するのは、大量の「被疑者」を生み出しうる。
であるならば、海賊版対策であるところを貫徹させ複製権侵害に限るのが一案である。
著作権侵害といっても、どの支分権侵害かで分けるのがいいのじゃないか、というのが、私の意見。
(注1)無駄な公権力発動をする訳で、警察/検察には赤点となってしまう。彼らもそんな危ない橋はわたりたくないだろう。




傍聴されて得た情報とは貴重ですね。ありがとうございます。捜査当局までそんな風に考えているとは…。