2007年05月06日

[特許]審決取消訴訟は固有必要的共同訴訟か、共有者の一人に原告適格を認めるか?――経済的合理性からのアプローチの練習として――

問題の所在

特許法、商標法上の著名な論点として、審決取消訴訟において共有に係る特許権の共有者の一人に原告適格を認めるか、否かというものがある。民事訴訟法理論と関わるものであり、難しく、私にはきちんと考えることもできないというのが正直なところである。
ところで、この論点については立法的解決が必要、との指摘がある。そこで、法理論的なことはさておき、立法論としての合理性を検討してみる。具体的には、共有者の一人に原告適格を認めることが合理的がどうか、というアプローチで、へたくそながら若干の分析を試みる(注1)。

分析の方法

分析の便宜上、今回のモデルの対象とするのは、無効審判を請求され、これが認められた場合とする。(表記の上で楽だ、という理由で、無効理由審判請求者をR(Requester)、特許権者のうち審決取消訴訟を提起したい=権利を維持したい者をPc(Committed Patentee)、権利維持について態度を決めかねている者をPs(Swing Patentee)とする。)。

では、その上で共有者の一人に原告適格を認める制度を採るか採らないかで分けて考える。

分析

(1)共有者の一人に原告適格を認めない場合(固有必要的共同訴訟と解する場合)
まず、審決取消訴訟への対応について事前に契約が無かったと仮定する。
その場合、Rの合理的行動としては、権利侵害となった場合に払わなくてはならない額(主にライセンス料相当額)に至らない額を用いて、Psのうち誰か1人を翻意(要は買収)させればよいこととなる。
他方、Pcにとっては、Ps全員に対して、Pcが特許権から受ける利益に至らない額を分配してでも、Psの参加を促すこととなる。
Pcが特許権から受ける利益額/Psの人数 < Rが権利侵害のなった場合に払わなくてはならない額/1人

となった場合、常に審決取消訴訟に至ることができず、Pcはその利益を失うこととなる。
例えば権利者が多い場合などが典型であろう。

そこで、Pcにとっては事前に審決取消訴訟に参加することを契約で結んでおく必要が生じる(注2)。
問題はその契約に係る取引費用である。少なくとも取り消し訴訟への参加は名を連ねるだけでよいから訴訟参加を強制されることによって負担するコストは無い。また、共有権者が不明と言うことも事前段階ではまず無い。よって、事前契約を結ぶことを誘導することは、不合理であるとはいえないように思う。

ただし、共有権者の行方が知れないなど、事前の契約が無意味に帰する場合には、Pcの利益損失は回避できない。
この場合には、(1)の考えを貫徹することは特許権を共有する負のインセンティブとなってしまう。

(2)共有者の一人に原告適格を認める場合
この場合、Psが仮に特許権を消滅させても良いと考えている場合でも、たった1人のPcの存在のために意に反して特許権を存続させざるを得ないと言う、「抽象的な」コストが発生する。また、特許登録料や審決取消訴訟定期に係る費用負担の分配(注3)の仕方次第であるが、Psは特許登録料、審決取消訴訟費用という負担を負う可能性も出てくる。これは場合によってはPsに損失が生じさせる可能性も示唆する。
現実的にはそれほど大きい額ではなく数百万程度であろうが、事前に予測不可能な額であり、特許権を共有する負のインセンティブとなろう。

結論

以上を見る限り、原則、事前契約を誘引する固有必要的共同訴訟の考え方を採りつつ、例外的に保存行為を認めることが合理性があるように思われる。
共有に係る特許権が、企業間共同研究や産学連携の場面で活用されていることにかんがみて、政策的判断として、共有にすることを極力阻害させない、という価値判断を行うのであれば、この考え方は支持されるのではないだろうか。
(注1)ただし、このアプローチはまだ勉強途中。練習としてやってみているだけなので、間違っていたら教えていただきたい…。思い切り間違っている気がしてならないが。
(注2)このような契約が公序良俗に反し無効、というならば別であるが、おそらくそのようなことはなかろう。仮に機会主義的にPsが訴訟に参加しない場合は、形成訴訟を提起することになる。(…ふと気が付いたのだが、形成訴訟を起こしている間に審決取消訴訟の出訴期間が過ぎてしまう?対応策ってないのだろうか。仮に無いならば、Pcに生じる不利益を防ぐ手がないこととなり、(2)と解する方に合理性があると言えるように思う。)
(注3)保存行為と解釈されると、審決取消訴訟の費用は持分に応じて負担することとなろう。

posted by かんぞう at 15:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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