2007年03月16日

[著作権]著作権法がプログラムにおいて保護する範囲

2年ほど前になるが、ある実務家(といっても、弁護士ではなく、企業法務に少し関わっていた人)から、「著作権法で保護されるプログラムの範囲は、SSO(Structure-Sequence-Organization)だ!」と教えられたことがある。その方は、アメリカの判例(Whelan Associates, Inc. v. Jaslow Dental Lab. 230*1)を紹介されていた。
*1 USPQ 481 (3rd Cir. 1986). 日本語訳は、井上雅夫さんがなさったもの《http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/cr_860804Whelan.htm》がある。なお、事案は医院経営に用いるソフトをEDL言語からBASIC言語へ変換した、というものだった。ただし、その際、原告の会社から大量の引抜を行ったうえ、営業上の秘密を不正に利用したことが伺われるという事情が存在した。

個々のモジュールの組み合わせに創作性を認め、編集著作物として保護されるというイメージなのだろう、という程度に認識し、疑わなかったのだが、どうやらその方の認識は古すぎるようだと、最近文献を読んで気がついた。

アメリカでの裁判例について言えば、その後、Computer Associates International, Inc. v. Altai, Inc.*2で濾過テスト(抽象化して、濾過し、比較する)*3が定式化され、Whelan v. Jaslowは極端な例としての位置づけのようだ。実際、事案が特殊であったがためのもので、一般化できないとの評するものもある*4。もっとも、濾過テスト自体にも批判があるところで、中でも強く主張されている点は、裁判官の判断になじみにくいことが挙げられる。それゆえ、その後の下級審であまり用いられていない、と指摘する声が1994年の段階で既にある*5*6。ともあれ、SSOが保護されている、とは言うことが出来ないようだ。
*2 982 F.2d 693 (2d Cir. 1992). 原文は例えば
http://www.bitlaw.com/source/cases/copyright/altai.html
で読むことができる。
*3 濾過テストについては、内藤篤先生がまとめていらっしゃる
http://www.venture.nict.go.jp/copyright/copy000190.html》。
*4 中山信弘『ソフトウエアの法的保護 新版』(有斐閣、1988年)135頁
*5 P Samuelson, R Davis, M Kapor & JH Reichman "A Manifesto Concerning the Legal Protection of Computer Programs" (1994) 94 Col L Rev 2333-65(未見)に指摘があるようだ。
*6 この点については、小泉直樹『アメリカ著作権制度―原理と政策―』(弘文堂、1996年)67頁が詳しい。

次に、日本での議論を言えば、SSOを保護すれば、プログラムにおいてはアイディア保護になるとして、中山教授が批判的な見解を述べられている*7。裁判例においてもSSOには保護が及ばないことを前提にしていることが伺えるものがある。〔システムサイエンス抗告審決定〕(東京高判平成元年6月20日判時1322号138頁)がその一例である(もっとも、原告の主張に左右された可能性があり、この点は今後検証したい)。その後も、管見の限りSSOへの保護を認めた裁判例はない。
*7 前掲*4・中山120頁。

それにしても10年前の議論をきちんと勉強できていなかった自分の無学さを痛感した次第だった。
posted by かんぞう at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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