2007年01月25日

[その他][パブリシティ]パブリシティについての内藤説

●内藤篤「標識法としてのパブリシティ権の限界:ブブカアイドル訴訟判決を読む」判例タイムズ1214号(2006年)19頁以下 読書メモ

パブリシティに関する問題に造詣が深い内藤先生の、パブリシティ権への切り口についての考え方がわかりやすい言葉で時に面白く書かれている論稿である。ちょっとした遊び心が含まれているあたりが個人的に好み。

1.この論文の概要
(1)ブブカアイドル訴訟判決への評価
〔ブブカ2002事件地裁判決〕(東京地判平成16年7月14日判タ1180号232頁)は、顧客吸引力に着目しながら、その利用行為態様を総合判断するアプローチを取っている。、同様の手法は、〔ブブカ2002事件高裁判決〕(東京高判平成18年4月26日判タ1214号91頁)にも用いられていると考えられる。この方法は、主観的・恣意的なものにとどまる。現に、両判決の認定の違いがその問題を浮き彫りにしている(25頁)。
他方、〔ブブカ2003事件〕(東京地裁平成17年8月31日判タ1208号247頁)は、情報の事由流通を確保する見地から、著名人の顧客吸引力を根拠に著名人に関する情報をコントロールできないとした。この一般論については、看過できないパブリシティ権侵害に対処できないことから問題であると考える(25頁)。
では、いかなる判断基準を取るべきか。その前提として、パブリシティ権の位置づけを次のように捉える。

(2)パブリシティ権の位置づけに対する考え方
パブリシティ権の発端は著名人の宣伝推奨機能にあったが、現在は、商品化事業にも用いられている(例えば、タレントグッズ)。同様に商標も多量の宣伝等によりそれ自体が財産的価値を持ち、商品化事業のコアとして機能している。社会通念として、両者の機能は変わらない。ここから、標識法としてパブリシティ権を考えることが出来るのではないかと考えられる(27頁)(方向性を同じくするものとして、井上由里子「『パブリシティ権』と標識法体系」日本工業所有権法学会報25号(2001年)37頁)。(なお、パブシティ権については、人格権を基礎とするものという考えが有力であるが、少なくとも〔ギャロップレーサー事件最高裁判決〕最判平成16年2月13日民集58巻2号311頁では、人格権を基礎とする旨の言及は無い。(19頁脚注(2)))
標識法と考えた場合、標識性の冒用が規制対象となるが、具体的には顧客吸引力の利用という実質があるか否かが判断基準となる。

(3)パブリシティ権侵害の判断基準
パブリシティ権が問題となる場面が多様であるため、判断基準は相関的・総合的なアプローチにならざるを得ない(29頁)。この点について具体化すると、「広告・宣伝における使用の態様」(広告で特定の顧客吸引力をイチオシか)(この点に関して、内藤篤=田代貞之『パブリシティ権概説 第2版』(木鐸社、2005年)338頁の記述が若干改められることとなる)、「商品それ自体における使用の態様」(商品として特定の顧客吸引力をイチオシか)であると考えられる(30頁)。この考えからは、多数の顧客吸引力を満遍なく使う場合にはパブリシティ権侵害と構成できないが、これは標識性を出発点とする以上やむをえないことである(31頁)。

2.感想
この論文のミソは、顧客吸引力の持つ標識性を基礎としたパブリシティ理論のひとつである内藤説の、最新の修正説であるという点にある。もっとも、この論文や内藤先生の本の読み込みが足りないせいか、なぜ(3)のような判断基準に至るのかが分からなかった。ともかくも、この見解はパブリシティ権を考えていく上で重要な軸の一つと思われるため、今後もこの見解には注目したい。
ところでこの論文で示したロジックに立つと、いわゆる物のパブリシティもありうることとなるように思われた(人格を基礎にしていないからであり、かつ、人格の制約について触れていないからである)。この点については、今後さらに見解が示されることを期待したい。
なお、瑣末な点であるが、〔ブブカ2002事件地裁判決〕〔ブブカ2002事件高裁判決〕のアプローチへの批判として、総合判断アプローチの端緒である〔キングクリムゾン事件控訴審〕(東京高判平成11年2月24日(判例集未登載)(LEX/DB未登載))との事案の違いを一つの論拠にされている点(23頁)はおかしいと思う。いずれの事件も判断基準についてキングクリムゾン事件を引用しているわけでない。異なる事案においてキングクリムゾン事件での判断基準と同様の判断基準を「初めて」用いただけとも思えるのである。

なお、この論文では、従来の裁判例を検討したとき、パブリシティ権の主体の「セクシーさ」が結果に重大な影響を与えているのではないか、と軽妙な冗談がなされている。この仕掛けが素敵である。
posted by かんぞう at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/32115696
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。