2006年11月24日

[著作権]潮海先生の著作権制度観をさらってみた

●潮海久雄『職務著作制度の基礎理論』(東京大学出版会、2005年)斜め読みメモ

今回は読書メモと言えない、かなりいい加減な読みに基づいている。潮海先生には申し訳ないほど誤解があるものだろうが、覚え書きとして残す。どんなもんなんだろう?と思った方は是非原典に当たっていただきたい。

この本は、潮海先生の博士論文に加筆したもの。創作者主義の検討にとどまらず、不正競争法としての著作権法制度を提言するものであり、著作権法の大胆な再構成を提言するものとなっている。

1.この本の概要
(1)問題意識
創作者主義は貫徹すると弊害がある。そこで、職務の範囲内で捜索されるものについて、その著作物の性質、利用の態様から類型化して、権利帰属制度の立法論を述べる。
(2)創作者主義の弊害
流通面での弊害は次の3点。
・多数人が創作に寄与すると創作者の確定が困難。ひいては利用を阻害(74頁)。
・創作者に帰属し法人に権利譲渡と構成した場合は、権限移転の限度が必ずしも明確でない(75頁)。新しい利用態様等について法的安定性を欠いてしまう。
・著作者人格権が権利の譲受人にリスクとなり、著作権移転に当たって十分な対価が還元されない。創作者に弊害。(このような点を問題視し、経済的利益の最大化を求める議論として、Schricker G.の議論参照。)(77頁)
時代変化の面では、
・著作物の更新、部品化といった問題に契約で対処しきれるか疑問(81頁、82頁)
・創作性に対する理解も変化している
(3)創作性の理解の変容と著作権制度の変容
近時の裁判例では創作性の高さを著作物の性質に応じて求めることがある(82頁)。しかし、裁判所が判断できるのか、また、創作性が低いものであっても模倣からは保護されるべきとの価値判断に立てば、創作性は低く捉え、「選択の蓋然性」という規範的判断によるべき(これは<中山信弘>教授と同じ立場)(85頁脚注266)。
この背景には、著作権法に対する理解の変容、すなわち不正競争法を補完するものとの理解がある。民法規律では差止請求ができないことにかんがみれば、創作性が低い場合は、著作者人格権を制約してでも、著作権で保護されるべき。
(4)著作者人格権の性質
職務著作から見ると、著作者人格権の位置づけは次の3説に分かれる。
 i)一般的人格権と同等<斉藤説>
  →職務著作は例外。著作者人格権を政策的配慮に基づき解釈することは不可。
 ii)創作者と著作物の結びつきを保護するもの<半田説>
  →職務著作は創作者の権利の代理行使となる。ただ、現行法との整合性を欠く。
 iii)法人の人格との結びつきを保護
  →職務著作制度とは整合的
これらと著作権制度の理解の変容をあわせ考慮すると、現在の著作者人格権は民法の一般的人格権と性格を異にすると理解すべきと思われる。少なくとも、法人に帰属した著者九社人格権は制限的に解釈すべき(205頁)。また、立法論としては、著作者人格権を付与しない類型を設けても良いと考える(232頁)。
(5)類型化
・創作者が複数いる場合は職務発明方の処理をすべき。
・創作性が低いものは、法人に財産権を帰属させ、人格権は制限的に。これは投下資本の保護のため。

2.私見
まず、前提として立たれている、著作権制度の不正競争規律としての変化という点には賛同したい。創作性判断についても私見と同じ立場(正確には、一学生である私が創作性判断って何!?と迷い迷った挙句いきついたのが中山先生のお考えだったわけだが・・・)であり、そこから演繹されることを示すものであり興味深い。
著作者人格権の扱いについても刺激的である。一般人格権としての性格を持つ部分があるとし、こと、同一性保持権について肯定的であると思われる松田政之先生の近著との関係が気になるところである。
ただ、一点疑問なのは、投下資本回収制度としての著作権制度の理解を前提としていながら、創作性が低い場合の著作権保護を肯定するならば、翻案の範囲で類型的表現しか取れない場合も独占でき、結果として競争制限が起こらないだろうか?むしろ、差止のない、不法行為として理解し、競争条件を整えるほうが良いのではないか。(この点については、私の課題。)
posted by かんぞう at 19:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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