2006年09月23日

[商標][時事]赤毛のアン事件

新聞で話題になったのだが、『赤毛のアン』を無断で商標登録しようとすることは、「公序良俗」に反すると裁判所が判断した(知財高判平成18年9月20日)ようだ。

事実の概要は次のとおり。
『赤毛のアン』(正確には、原題の『Anne of Green Gables』を商標登録出願したところ、国際信義に反するものであり公序良俗違反であるとして特許庁から拒絶された。これについて出願人が不服を申し立てたが、この判断(審決)を知財高裁が正当と示した。

判断の理由は、
「本件著作物のように世界的に著名で,大きな経済的な価値を有し,かつ,著作物としての評価や名声等を保護,維持することが国際信義上特に要請される場合には,当該著作物と何ら関係のない者が行った当該著作物の題号からなる商標の登録は,『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』に該当すると解することが相当」
としており、膨大な顧客吸引力を持つ標章を特定人に独占させることは不当との規範に立っているようにも思われるが、カナダ国において特に『Anne of Green Gables』が公的な保護を受けてきたことにも言及しており、後者の考慮も相当程度含まれているだろう。(とくに、本件はカナダ国の州が被告側に訴訟参加している事案である。そもそもそのような訴訟参加はユニークだ。)

国際信義と、標章の不正な利用が問題になった前例としてはDUCERAM事件(東京高判平成11年12月22日 判時1710号147頁)がある。
同事件は、日本国内で無名の会社名であり、ドイツ国内で出願中の商標を、輸入業者が無断で商標登録した事案である。この時にも「取引秩序に反する」「国際信義に反する」として、公序良俗に反する登録として無効(※本件と異なる点は、一度は登録されている点である。念のため。)とした。
(なお、同事件については、平尾正樹『商標法』(学陽書房、2002年)146頁が、「公序良俗」の字義を超えるものと批判していたが、氏はその後当該箇所を削っている〔平尾正樹『商標法 第2版』(2006年、学陽書房)154頁〕。)

いずれも、著名な標章へのフリーライドを問題としているが、かつてならいざしらず現在は4条1項19号が存在し、客観的要件(「著名」な「商品等表示」)と主観的要件(不正目的)(※著名性の要求については批判もある〔田村善之『商標法概説 第2版』(弘文堂、2000年)106頁〕)を求めているのである。これを超えるものを安易に公序良俗の範囲で掬い取ることは同号の制約を無意味にするものであり、注意が必要であろう。少なくともDUCERAM事件については、無効とされるべきでなかったのではないか。
ただ本件は、著作物の題号という本来商品等表示と扱われないもの〔茶園成樹「アニメーション映画の題号と不正競争防止法」コピライト542号(2006年)?頁〕が問題となっている。この点では更なる考慮が必要であろう。
場合によっては、題号につき特別な立法による保護を行い、商標法に影響を及ぼすことも考えられるのではなかろうか。
posted by かんぞう at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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