2006年06月06日

[著作権]引用時の出所明示義務の性質

●茶園成樹「著作権の制限における出所明示義務」半田正男先生古稀記念論集『著作権法と民法の現代的課題』333頁〜(法学書院、2003年)読書メモ

1.この論文の意義
著作権の制限として「公正な慣行」に適う引用が定められているが、では、引用時に出所明示をしなかった場合は著作権侵害に当たるのか?この点について論考を加え、以って出所明示義務の性質を解釈したものである。テーマが地味ではあるが、理論的に興味深い点であり、実務にもインパクトが少なからずあるものだと思われる。

2.この論文の概要
まず出所明示義務の保護法益を考察し、少なくとも条文の定め(著作権制限は人格権にかかわらないとの規定、また、実演家の人格権が有線放送等に及ばないにもかかわらず出所明示義務が認められている点)を考慮すれば人格権を基礎とするものであると理解すべきでないとする。
そして、出所明示義務の保護法益は「利用される著作物の宣伝効果」「利用適正のチェック機能」にあるとする。すなわち、財産的利益を基礎とするものであると説明するのである。
その上で、著作権侵害の該当性について、制定時の過程や、刑事罰規定において著作権侵害罪と出所明示義務違反罪が別に規定されていることを根拠に、出所明示義務違反は著作権侵害と評価されていないことを指摘する。
この点、絶対音感事件(東京高判平成14年4月11日)は、明示義務違反は公正な慣行に反すると判決したが、上記のロジックから行くとこれはおかしい、といえる。
では、明示義務違反にはいかにすべきか?茶園先生は、明示請求ができると解するべきといっている。

3.私見
06年度の著作権法学会が人格権を扱うものであったことから、これも人格権にかかわるのかな?と興味津々で読んだ論文であった。丁寧な論稿との印象を受けた。
とくに、出所明示義務の出発点は財産権であるとした分析は優れていると思われる。公共の福祉との衡量の場面では、人格権に比して要保護性が低いという前提のもとに、瑣末な明示義務違反は侵害に問われない可能性が出てくるからである。
ただ、2点疑問点を挙げるとすれば、広告機能に保護法益を定めるのであれば、これを損なうような明示義務違反は損害賠償責任を負わなくては成らないのではないか(営業上の信用を保護溶液とする信用毀損の不法行為と捉える)、また、明示請求ができるとして、それ以前に作り出された著作物はどうなるのか?(事実上、差し止めができるのではないか)と思われるのである。
posted by かんぞう at 17:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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