ここ数年、弁護士業界でも弁理士業界でも、「数が多すぎて『過当競争』になっている」という声や、質の低い資格保有者が目につくようになってきている」という声が聞こえる。
この中で、「数が多すぎて『過当競争』になっている」から「合格者をしぼるべきだ」との主張もあるが、これは不思議だ。次の二点の疑問がわく。
・これから合格者を絞ったとしても現在「過当競争」があるならば現状の改善にはならない。
・近年の合格者の「質が低い」ならば、競争において淘汰されるのは近年の合格者であり、既存の資格保有者にはダメージを与えない(雇用側の弁護士・弁理士にはダメージかもしれないが、法人格をとらず、個人事業主の集合体として運営すればダメージは少ないだろう)。
成り立つのは、「数が多すぎると『過当競争』になる恐れがある」から「合格者を絞るべきだ」という主張だろう。しかし、そうであるならば、どのような状態が「過当競争」であるかきちんとエビデンスを示すべきだ。
もちろん、「質の低い資格保有者が」増えており、「しかも通常資格取得だけでは不足で実務経験も欠かせないところ、近年、実務経験の機会が十分でなくなっている」ので「合格者を絞るべきだ」という主張は通ると思うが、既に発生している『過当競争』には対応出来ない。
そうだとすると、弁護士業界にせよ弁理士業界にせよ、取り組むべきは2つだ。「市場の拡大」と「ライバルの排除」だ。このとき、いずれの業界にも、「既存の資格保有者でベテランの人を卒業させて他業界で活躍させ、あわよくば、新たな市場獲得に貢献していたく」という取組を勧めたい。
弁護士はアメリカを筆頭に政治家として活躍する者が多い。日本でも官房長官や野党の党首などが弁護士資格を有している。政治家として立法活動が盛んになると、それに対応するための業務が求められるようになり、必然的に弁護士業界は(一時的に)潤う。
弁理士でも政治家となる者(首相)はいるが、市場を増やす観点では企業家としての活動が業界としては望ましいだろう。弁理士が事業創出をした例としては、XeroxのChester Carlsonが挙げられる。Carlsonは特許事務所での勤務の中で特許明細書の複写をしたいという思いを持ち、乾式複写技術を15年かけて開発し、その後、Haloid Photographic社(現Xerox)により商業化されている。しかもXerox社は多数の特許出願を行っている。おそらく、多くの特許代理人が潤ったことだろう。




ちなみに、この業界は「悪貨が良貨を駆逐する」がやり易い点を見落としてないでしょうか?
とりあえず、特許について言えば、
明細書作成→権利取得→権利行使
の各段階に数年〜十数年のタイムラグがあるので、「質」の良しあしがクライアントに分かるのが遅く、安さ等の評価軸の方が優先され、質が良いから勝ち残ると言うことが難しい業態な訳です。
もっとも、現実に、最近の資格者がダメなことが多くて、昔の資格者の方が優秀なことが多かったかどうかは、疑問は残りますが。母数が増えたおかげで、問題のある人の割合は変わらなくても絶対数の問題で目立つということもあるので。
リタイア者、直感的に少ない(ピラミッドの頂点側は少ない)との前提で考えていたのですが、気になって調べてみたら、弁理士では年間100人ぐらい登録抹消をされているのですね(それも私が想定していた死亡抹消よりも申請抹消が圧倒的に多かった!)。この点、認識不足でした。そうすると、入り口制限は十分中長期的な解決策になりますね。
ご指摘の「質の善し悪しがクライアントに分かるのが遅い」ということに対して、私は「だからこそクライアントは評判のある代理人を選別する(=若手には最初から頼まない)」と捉えていました。
弁護士はともかく、弁理士については国内出願の7割が知財協会員企業から行われていることを考えると、多くのクライアントに依頼人を見抜く力があるように思えます。
ただ、だからといって、中小企業や個人のクライアントが犠牲になってはいけませんね…。弁理士の評価情報が得やすいといいのですが。
>母数が増えたおかげで、問題のある人の割合は変わらなくても絶対数の問題で
>目立つということもあるので
これは見落としてはいけませんね。実際ところ、どうなのか気になります。