2006年05月15日

[著作権]アラウンド・ザ・ワールドイラスト事件

東京地裁平成15年11月12日判決(平成14(ワ)第23479号、判タ1160号229頁)

1.事実の概要
被告は原告のイラストに依拠したイラストを製作し(依拠したことに争いは無い)、広告に使用した。著作権侵害(複製権・本案件/同一性保持権侵害)に基づき損害賠償を請求した。原告は損害賠償額として原告の定める通常の使用料に利用回数を乗じたものと主張したが、他方、被告は継続的な使用の場合包括的な使用料を定めるのが通常であり、原告の主張は失当であると主張した。

2.判決の概要
著作権侵害を肯定し、原告の定める使用料を基準にして損害額を算出した。そして、被告の主張に対しては
(1)包括的な使用許諾方式にするかは著作権者の自由
(2)包括的使用許諾方式は適正な使用のインセンティブ
(3)原告は被告の業種には許諾を与えない旨明示していた
ことを考慮すれば、容れられないとした。

3.考察
通常不法行為の損害額は、得べかりし利益状態と現状の差を基に算定すべきと解されている(いわゆる差額説)が、知的財産権についてはそのような観念が困難であることが指摘されてきた。
そこで使用料相当額を損害額とする規定が設けられたが、それが何をさすかについては争いのあるところである。この点、適正に使用権を得た者が支払う使用料と同額にすることは、「侵害し得」を生むとして問題視する見解が存在する。
本件では、被告の主張は差額説によったものと思われる。一方、原告は後者の見解にたっていると評価できよう。
どちらに立つべきかは、見解が分かれるところではあるが、使用料相当額を支払っても以後の使用許諾がなされたとは評価できないとする見解が有力であることを考えれば、たとえ使用料相当額であっても侵害し得とはならないであろう。すなわち、侵害者は、差止をされることにより侵害の継続は不可能であり、これを除去するには新たに使用料相当額を支払う必要があるからである。
posted by かんぞう at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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