2010年07月19日

[知財一般]中国で特許出願が増えた理由(2001年までの分析)

Alber Guangzhou Hu & Gary H. Jefferson, "A great wall of patents: What is behind China's recent patent explosion?", Journal of Development Economics 90 (2009): 57-68読書メモ

最近、中国での知的財産権の利用状況が気になっている。中でも中国企業による利用状況が知りたいところである。本研究は約10年前の動向を主な企業の計量的に分析している。古い動向であるので、現在の状況を理解する直接の情報にはならないが、基礎を理解する上で参考になると思う。

■概要
中国国家統計局が公表している1995年から2001年の大企業・中規模企業の約20,000社の企業毎のデータを用いて、特許出願件数(実用新案、意匠も含む)を説明する変数を計量的に分析している。このとき、特許出願を行っている企業がサンプルの中では少ないため、特許出願件数はポアソン分布または0過剰ポアソンモデル(Zero Inflated Poisson)に従うと仮定されている。R&D額、労働者数(企業規模の代理変数)、産業別海外直接投資、企業形態(共同所有、国営・民営、国内企業・国外企業)、年次(特に2000年)を説明変数として用いた結果、以下の結果が見られた。
1)R&D額は特許出願件数の増加にあまり寄与していない。少なくともOECDの平均(注)と比べると小さい(p.64)。国内企業と国外企業を比べると、国外企業はR&D額は特許出願件数の増加にほとんど寄与していない(国内企業の方がやや寄与している)。
2)産業別海外直接投資額は特許出願件数の増加に大きく寄与している( p.64)。
3)国営企業より民営企業の方がより特許出願件数の増加に寄与している。2000年前後の国営企業の民営化が特許出願件数の増加に貢献したものと考えられる(p.65)。
4)2000年の第二次特許法改正(PCT加盟)の影響は国外企業に見られるが、国内企業は1999年頃から特許出願件数を増加させている(p.65)。
以上のように中国の特許出願の増加は複数の要因によって生じていることが示唆された。

■私見
2001年までの特許(この場合は、特許、実用新案、意匠を含む)の増加はR&Dの増加とはそれほど関係がないとの点は納得しやすい。ここ数年、独自の技術力を有する企業が登場している(例えばBYD自動車)が、かつてはそのようなものではなかった。高い科学技術緑が見られたとしても、それは中国科学院や、清華大学、北京大学、上海交通大学などの国立大学によるものであったように思う。

特許出願の増加に対して、Huらの研究ではFDIの影響が明らかとなっていたが、それはおそらく、次のような要因があったのではないだろうか。
1)先進国企業から技術指導を受け、当該先進国では特許取得に値しないような古い技術、あるいは、品質に劣る成果しか出来ないがコスト面で優位な技術に関して、中国で合弁企業を通じて特許出願された(ただし、これは第三次専利法改正前の、世界公知基準採用前にのみ妥当する可能性があるものである)。
2)当該産業に海外直接投資が増えてきたことで、自社も海外と提携したいと考え、特許等を出願することによってアピールすることを考え、何でもかんでも特許出願をした。とくに実用新案、意匠については、無審査であることを利用してその傾向が顕著であった。

現在は、1)はあたっていないだろうが、2)はまだ妥当している可能性があるように思う。

なお、2000年から2007年の中国について、特許出願の要因を分析したものではないが、特許出願の増加に海外からの直接投資のスピルオーバー効果が目立って寄与していることを明らかにした伊藤萬里 専修大講師らによる研究が公表されている(注1)。

これを踏まえると、Huらの研究で明らかにされた傾向の一部は少なくとも2007年までは変わっていない可能性がある、と言えるのではないだろうか。
(注1)Banri Ito, Naomitsu Yashiro, Zhaoyuan Xu, Xiaohong Chen & Ryuhei Wakasugi, "How Do Chinese Industries Benefit from FDI Spillovers?", RIETI Discussion Paper 10-E-026 (2010) available at RIETI Web site
posted by かんぞう at 00:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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