2010年05月19日

[特許]発明者に「技術で勝ってビジネスで負けないようにさせるインセンティブ」を与えるためには

ここ1ヶ月、なかなか知識の充電が進んでいなかった。反省…。

日本の職務発明制度(特許を受ける権利をあらかじめ定めた規定等によって使用者に承継させる代わりに、「相当な」対価を求めること)は経営側にも知的財産部門にも評判が良くないように感じられる。
経営者からすると、「ビジネス上のリスクをとって利益を上げたのに…」という思いが、
知的財産部門からすると、「特許を権利化するにあたって自分たちの貢献は小さくないのに…」という思いが、それぞれあるのは自然なことだと思う。

後者については、いわゆる特許の法的な質を上げることが特許権による収益にどの程度貢献したかが定量的に明らかでないことが要因であるし、それが明らかになると「相当な」対価の算定も納得性の高いものに近づくように思われる。

ただ、前者についてはいかんともしがたい。対価算定の在り方をめぐってはまだまだ議論のあるところとなるように思う。

では、そもそも「相当」の対価算定にあたって、現行法の下ではどのような枠組みが良いのか考えてみた。

裁判例を俯瞰すると多くの場合、当該特許権を用いた事業により生じた、または、生じるであろう利益に基づいて対価の算定がなされている。この算定方法を違う角度から眺めると、発明者にとって、当該特許権を用いた事業がうまくいくようにさせるインセンティブを与えているものと評価することもできる。特に、製薬・化学産業を除けば、一つの製品に複数の発明が関わってくることが当然となっている。事業により生じた利益を分配するようにしておけば、周辺技術やより改良した発明を発明者に促すことになる。ひいては産業発展にもつながり、特許法1条に定める適合するように思われる。

他方、事業により生じた利益を分配する手法であると、特許化に失敗した場合や事業に失敗した場合に発明者に対価が分配されないことが公平に反すると評価する意見もあるとは思う。そのような評価に基づいて、同等の技術であればいくらであったか、という仮想的な特許権の価値に基づき算定を行う方法もあるかもしれない。しかし、これだと追加的な発明を促進しない。

ここから、裁判所がポリシーレバーを握るならば、仮想的な特許権の価値に基づき算定を行う方法を裁判所は採らない方がよいということができ、企業も労使の間で対価の約定をするときはそのような方法をとるべきでないと言える。

…とまぁ、結論としては当たり前なのであるが、そんな議論を目にしたことがないので、つぶやいてみた。
posted by かんぞう at 20:15| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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