2010年04月09日

[その他]プライバシー侵害と個人識別性:インターネット広告の発展で変わるもの

■インターネット広告の強み:ターゲティングの容易さ・明確さ
最新の(株)電通の発表によると、日本でのインターネット広告への広告費の2009年の総額は、新聞を抜きテレビ、インターネット、新聞、雑誌、ラジオ、衛星メディア、プロモーションメディアの中で第2位を占めたようだ(注1)。

インターネット広告の利点の一つは、特定の属性をターゲットとした広告を打ちやすいということにあるだろう。

雑誌では大規模な読者アンケートをしなければ属性自体が明らかでなく、テレビでは視聴率の集計で属性ごとの視聴状況を大まかに図れていたものが録画機器の進歩と視聴のユビキタス化(どこでもテレビが見られる状況の進展)によって測定が難しくなった結果、受け手の属性が明らかで無くなってきた。

他方、インターネットでは、直接利用者が提供した情報以外を用いなくても、閲覧履歴などの過去の行動履歴に基づいて属性を推定することが出来る。

■行動ターゲティング広告で問題になりうるプライバシーとの関係
しかしこのような行動履歴に基づいた広告(「行動ターゲティング広告」)はプライバシーとの関係で問題があるのではないか、との不安感が生じることもやむを得ないと思われる。もっとも個人情報との関係で問題となる場面もあるが、これらは個人情報保護法で既に対処されている問題である。残された問題は個人情報でない情報(個人識別情報を伴わない行動履歴情報など)によるプライバシー侵害の可能性である。

新潟地裁の裁判例(〔防衛庁リスト事件〕新潟地方裁判所平成18年5月11日判決・判例時報1955号88頁)が以下のように指摘するように、個人識別性が無い限りプライバシー侵害を具体的に肯定することは難しい。少なくとも個人識別性が無い情報を収集されることがプライバシー侵害になるというような法的規範は形成されているとはいいにくと思われる。
プライバシー等が侵害されたというためには、そのリストに記載された原告に関する個人情報が個人識別性を有することが必要である。

そうであるならば、行動ターゲティング広告とプライバシーの関係について、現状では問題は発見できない。

しかし、米国連邦取引委員会ではそのスタッフレポート(注2)で「技術が急速に変化している現在の状況下では、個人識別の可否の境界線はますます不透明になっており、個人識別性の持つ意味は低下している」とのポジションを取っていることが指摘されている(注3)。

先日発表された、総務省のレポート「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会 第2次提言」でも、個人識別性が無い情報であっても直ちにプライバシー侵害の該当性から除くべきでないとの意見があがっている。

だからといって行動ターゲティング広告を規制せよ、という話には結びつかないし、おそらくプライバシーの懸念が生じるものは相当に限定的な領域に限られるだろう。

だが、インターネット広告が発展することで、個人識別性の境界線を巡る事例が蓄積され、プライバシーを巡る法解釈については新しい刺激を与える動きであるように思う。

(注1)株式会社電通「2009年日本の広告費ハイライト」電通Website, available at here.
(注2)Federal Trade Commission,"FTC Staff Report: Self-Regulatory Principles For Online Behavioral Advertising" (2009)
(注3)二関辰郎「ライフログ・行動ターゲティング広告とプライバシー」『骨董通り法律事務所』Webサイト available at here.
posted by かんぞう at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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