2010年03月21日

[著作権]チャップリン事件知財高裁判決の国際私法の観点からの意義

道垣内正人「チャップリンの映画の著作権侵害についての準拠法」ジュリスト1395号(2010年)172頁-174頁読書メモ

■要旨
〔チャップリン映画DVD事件〕知的財産高等裁判所判決(注1)は、著作権侵害の準拠法決定ルールがベルヌ条約5条2項にあると位置づけていると理解した上で、裁判所のこれまでの判決が同条に基づき、著作権侵害の準拠法を保護国法としてきたことを紹介している。その上で、ベルヌ条約5条2項が準拠法決定ルールではない(法廷地法によることを定めているだけである)との理解を紹介し、そのような(=法廷地法によるとの)解釈は、あえて不統一な法の適用を求めているものであると批判している(道垣内正人(2010年)174頁)。
他方、知的財産高等裁判所判決の中で損害賠償請求権の性質決定において不法行為であると位置づけたことについては、ベルヌ条約5条2項を準拠法決定ルールと見るのであれば、「ベルヌ条約が殿範囲の問題を保護国宝によると定めているかと見極めるべき」と指摘されている。その上で、5条(2)でいう「保護の範囲及び著作権の権利を保全するため著作者に補償される救済の方法」の中に(法文として稚拙な点はあるにしても)損害賠償は含まれないと解釈することは適切でないとし、知的財産高等裁判所はベルヌ条約上損害賠償請求権も著作権の救済の方法として位置づけられると解釈した上でベルヌ条約5条2項により準拠法が日本法になるとの理解を示唆している。

■私見
知的財産高等裁判所の判断は、ベルヌ条約5条2項を準拠法決定ルールと見ていると理解することは、判決文の該当箇所の文言を読む限りでは適切であるように思われる(注2)。その上で、そう見ているのであれば著作権侵害に基づく損害賠償の性質決定にあたってはベルヌ条約が参照されなければならないとの主張も正しいと思う。

ただ、1点気になる点は、ベルヌ条約5条2項にいう「保護の範囲及び著作権の権利を保全するため著作者に補償される救済の方法」("the extent of protections, as well as a the means of redress afforded to the author to protect his rights")に損害賠償が本当に想定されていたか(直感的に含まれていそうであるが…)、という点である。この辺りは条約の制定史や当時の国際的な法制をふまえる必要があるので私には論及できないが、引っかかるところである(注3)。

(注1)〔チャップリン映画DVD事件〕知財高判平成20年2月28日判時2021号96頁
(注2)ただし、判決文全体を見た中で整合的に解釈するためには、素直に読んではいけない、という指摘がありうるかもしれない、ということは留保しておきたい。
(注3)我が国では立法技術上、損害賠償請求権は一般不法行為と同じであるために、形式的には両者が含まれる法典は分けられていたが、実質的に著作権侵害の救済手段として損害賠償が予定されていた、ということはおそらくできるだろう。
posted by かんぞう at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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