2010年01月24日

[時事]日本新聞協会の著作権の包括的フェアユース規定への反対意見に思う

■文芸協、日本新聞協会のフェアユース規定への反対声明の読み方
(社)日本新聞協会を含む6団体から権利制限の一般規定に反対する声明「「権利制限の一般規定」導入に関する意見書」が出されたことは、報道や知財系ブログで多々触れられているところである。
これを読むと、この声明は大きく2つで構成されていることを読み取ることができる。(一連の流れのようにも読めるが、論理的に考えると2部構成とみた方がよいように思う。)

前段は、包括的なフェアユース規定への反対の意思表明である。

後段は、具体的な「フェア」の基準について議論が尽くされていないことの例として、知的財産戦略本部デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会『デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について』に
形式的に違法となる例として「ネット上の写真への写り込みやウェブページ印刷などの行為」
と記載されていることへの反論の提起である。

後段については、知的財産戦略本部での議論であるから、文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員に文句を言っているのであれば筋違いである。ここは前向きに解釈し、「ウェブページ印刷などの行為について議論してほしい」との著作権分科会 法制問題小委員への要望とみるべきだろう。

■新聞業界のビジネスモデルの試練を著作権問題にすり替えていないことを願う
この声明には、小倉弁護士からは「これからは新聞記者は資料としてウェブをプリントアウトしたりなどしない」(注1)という厳しい皮肉が寄せられていたり、『企業法務戦士の雑感』のFJneo1994さんからは新聞記事見出しの著作権による保護を否定した事例を持ち出して補強に用いようとしてしまったことのお茶目さ(笑)(注2)の指摘が寄せられている。

私はこのほかに、この声明の着眼点が、新聞というビジネスモデルがいま世界的に直面している状況から目をそらすものになってはならないことを注意喚起したい。

すでに言い尽くされている感はあるが、米国を中心に新聞業界は試練の場面にある(注3)。インターネットの登場により、新聞は購読数を減らしている(このほかに、高齢化(複数誌を購読しない)、グローバルな価格競争のなかでのコストカット(企業は無駄な新聞を買わない)、専門情報事業者からのメール配信へのシフトなども要因だろう)。

その中で、Webのプリントアウトはビジネスモデル全体に与える影響は微小ではないだろうか。
声明で指摘しているように、
日本複写権センター、 学術著作権協会、出版者著作権管理機構という主要3団体だけでも、「企業内での著作物の 複製利用」の年間使用料収入は10億円
という。そうならば各新聞社・出版社が受けている分配金は1社あたりよくて年間1億円ほどだろう。地方支局1つないし2つ賄えるか否か…という額である。

そうならば、Webを媒体を買ってもらう呼び水と位置づけ、積極的に利用してもらった方が、新聞社には利益につながるのではないか。新聞のWeb版を印刷して誰かに資料として見せることは、前向きに解釈すれば、Webページの閲覧者が新聞社の営業マンとして働いてくれている、ということを意味する。

広告モデルに固執するのではなく、他の戦略を検討することも重要である(無料を戦略的に活用するビジネスを整理した注3記載の書籍は大いに参考になるだろう)。おそらく新聞業界の方はすでにいろいろと検討されているのであろうが、上記の声明ではそのような将来の新聞業のあり方の検討に目をつぶるような後ろ向きな視点が感じられなくもない。その点が残念であった。

(注1)小倉秀夫『benli』(2010年1月22日記事)「これからは新聞記者は資料としてウェブをプリントアウトしたりなどしない」。
(注2)FJneo1994『企業法務戦士の雑感』(2010年1月21日記事)「[企業法務][知財]「日本版フェアユース」の叩き台公開。
(注3)クリス・アンダーソン (著)・小林弘人 (監修)・高橋則明(訳)『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会、2009年)
posted by かんぞう at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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