2009年08月16日

[特許]特許制度がなかったら

石井正『歴史のなかの特許 発明への報奨・所有権・賠償請求権』(晃洋書房、2009年)読書メモ(その2)

■同書から学んだところのポイント
1850年代から欧州では特許による独占の弊害を問題視する声が登場し、特許制度を廃止することを提言するものが少なからず見られるようになっていた。その中で、無審査であり、かつ、出願公開制度のない制度を有しており、制度に対する批判の高かったオランダは、1867年に特許付与を停止し、以後、1910年に特許制度が復活するまで、特許制度がない状況にあった。

この間、国民1人・時間当たりの生産額の増加率は欧州主要国で下位に位置することとなってしまった。
また、特許制度がない間、外国における出願も低調になってしまった(これについて、石井教授は自国の制度がオランダ人・企業の特許取得に対する意欲に影響したと分析する(石井[2009]175頁))(注1)。

結局のところ、特許制度を廃止してしまったことはオランダにとってプラスの結果を生まなかった。

■私見
歴史的なものとなってしまってはいるが、特許制度の効果を測る壮大な社会実験であったことが興味深い。

なお、自国の制度がオランダ人・企業の特許取得に対する意欲に影響したとする見方については、異なる可能性も指摘しておきたい。

出願にあたっては、企業内での体制整備や、代理人が必要となることが少なくない(少なくとも当時の外国出願先の一部は、パリ条約によって、現在とほぼ同様な詳細な明細書作成が必要であった)。自国に特許制度がないことによって、そのような体制や代理人が存在しないために、結果として出願に至らなかったのではないだろうか。

■参考記事
本ブログ「[特許]特許制度の歴史をポンチ絵にしてみる(その1)」(2009年7月7日記事)

(注1)制度復活後は外国出願数が急増しており、特許制度の不存在が出願行動に影響を与えた可能性は極めて高い。なお、この点はSchiff, E. Industrialization without National Patents: the Netherlands 1869-1912: Switzerland 1850-1907, Princeton University Press, 1971, p.46-48の分析による。
posted by かんぞう at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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