2009年06月30日

[不正競争]不正競争防止法2条1項3項の摸倣の意味

大阪地判平成21年6月4日(判例集未搭載)平成20年(ワ)第15970号

■事案の概要
Xは2007年9月からステンレス製真空マグボトル(P)を日本で販売していた。2008年1月ころから、YがPに酷似したステンレス製真空マグボトル(Q)の販売を開始したことから、不正競争防止法2条1項3項に違反するとして、Qの販売差止と損害賠償を求めたものである。
これに対しYは、Qは2003年以前から中国で製造されていた物品を輸入したものであるとして摸倣の要件を満たさないとして反論している。この主張に対し、Xは2003年以前から中国で製造されていた物品との同一性を否定しつつも、仮に同一であったとしても、(1)不正競争防止法は我が国の主権内においてのみその効力を有するのであるから、Xは我が国に置ける市場の先行者として保護されるべきこと、(2)「摸倣」行為の定義(不正競争防止法2条5項)の解釈について、「作り出す」は市場に置くことであると解釈するべきこと、の(1)、(2)を主張し、Yの行為は不正競争防止法2条1項3項にあたると述べた。
(不正競争防止法2条5項)
「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう


■判決の概要
判決は、PとQは同一と言えるとした一方、Qは2003年以前から中国で製造されていた物品を輸入したものであると認定し、QはPに依拠して作り出されたものでないと判断した。Xの「摸倣」行為の定義の解釈に対しては、以下のように述べ、否定した。
市場に置く行為を同項の「同一の形態の商品を作り出すこと」に含めることは,「作り出す」の語義から乖離する上,そもそも同条1項3号が「他人の商品の形態(中略)を模倣した商品を譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しのために展示し,輸出し,又は輸入する行為」を「不正競争」と定義し,模倣行為と輸入等の行為とを分けて規定した上で,後者のみを「不正競争」として規制対象としていることに照らし,輸入等の市場に置く行為を「模倣」に含めることは,同号の規定の構造からしても採用することのできない解釈である。


■私見
不正競争防止法2条5項にいう摸倣は、法案作成行政機関(注1)も、学説も、一致して製造を前提とした理解をしている。その上、不正競争防止法2条1項3項の趣旨が裁判例、法案作成行政機関、学説が共通して、
「他人が資金・労力を投下して開発・商品化した成果に対して、その模倣が行われた場合には、模倣者が商品化のためのコストやリスクを大幅に軽減することができる一方で、先行者の市場先行のメリットは著しく減少することとなるから、模倣者と先行者との間に、競争上著しい不公正が生じるとともに、個性的な商品開発や市場開拓への意欲が阻害されることになる。そこで、不正競争防止法2条1項3号は、他人が資金・労力を投下して開発・商品化した商品の形態につき、他に選択肢があるにもかかわらずことさらにこれを模倣し、自らの商品として市場に置くことを、競争上不正な行為として位置付け、先行者の開発利益を模倣者から保護することとしたものである」(注2)

と理解しており、開発・商品化につながる資金・労力投下へのフリーライドを問題としている。これに対して、原告の主張は苦しいものがあり、判決は妥当である。判決は、不正競争防止法2条1項3号が日本国内の市場での先行利益のみを問題とするものではないことを確認した点で新しい。

それにしても、一見するとこの原告の主張は疑問符がつくが、おそらく、訴訟を遂行していたところ、予想に反して原告の物品(P)の製造以前に被告の物品が製造していたことが立証されたために、無理筋の主張をして最後の抵抗を試みたものなのだろう。
なお、本件は知的財産の大家の弁護士さん対本人訴訟の事案で、本人訴訟が勝ったというあたりが少しだけ面白い。

(注1)経済産業省知的財産政策室編『逐条解説不正競争防止法平成13年改正版』(2002年、有斐閣)38頁。
(注2)東京地判平成18年4月26日判例時報1964号134頁、〔ヌーブラ事件〕大阪地判平成18年3月30日(判例集未搭載)平成16年(ワ)第1671号など。
posted by かんぞう at 01:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆不正競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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