2009年05月30日

[時事][著作権]駒込大観音仏頭改変事件(その1)

著作者の死後の人格権侵害にあたる行為についてのそうめったにない判決が下された。
まだ判決文を入手できていないが報道発表の限りで論点となりうるところを抽出したい。

■事実関係
毎日新聞2009年5月29日の記事は次のように報道している。
東京都文京区の光源寺にある仏像「駒込大観音」の頭部を無断で取り換えたのは、制作した仏師の著作権侵害として、遺族が寺を相手取り、頭部を元に戻すよう求めた訴訟で、東京地裁は28日、訴えを認める判決を言い渡した。大鷹一郎裁判長は「頭部は仏像の重要部分。改変は制作者の意図に反している」と指摘した。

 判決によると、駒込大観音は江戸時代の1697年につくられたが、1945年の東京大空襲で焼失。寺は87年、仏師に新たな仏像の制作を依頼し、93年に完成した。99年に仏師が死亡した後、寺は別の仏師に新しい頭部の制作を依頼して取り換えた。原告側は「遺族への報告もなく、制作者の創作意図を無視した形で改造され、一般の目に触れている」と主張した。


読売新聞2009年5月29日の記事は、
現住職は訴訟で「元の像はにらみつけるような表情で評判が悪く、すげ替えはやむを得なかった」と主張したが、判決は「信者がすげ替えを望んでいたとまでは認められない」と指摘。

としている。

このほか、知財情報局では
東京都文京区の光源寺にある仏像「駒込大観音」の頭部が無断で取り換えられ、制作した仏師の著作権が侵害されたとして、亡くなった仏師の弟の男性が寺などに対して、頭部の復元などを求めた訴訟で、東京地裁は5月28日、訴えを認め、寺側に頭部を制作当時の状態に戻すことを命じる判決を下した。
(中略)
なお、仏師の弟の男性は、仏像の共同制作者であり著作権者であると主張していたが、これについては、裁判長は「仏像の制作に関する作業内容や経緯の具体的な供述がなく、共同制作者とまではいえない」として否定。しかし、遺族として復元を求めることは可能として、その請求の一部を認めた。
URL:http://news.braina.com/2009/0529/judge_20090529_001____.html

とある。これらを総合すると、
1993年 著作物が完成
1999年 著作者死亡
200?年 著作物改変
200?年 著作者の弟が、主位的請求として共同著作者の同一性保持権侵害に基づく復元請求、予備的請求として遺族の立場として著作者死亡後の著作者人格権に相当する行為の救済を求めた
という事実関係があることが推測される。

■考えられる論点
報道を見る限り次のような疑問がわく。報道は必ずしも法的な論点を把握して記述しているわけでないので、判決文を読まない限りわからないが…。

□本当に主位的請求と予備的請求があったのか?訴訟指揮なのか?
知財情報局の報道によると、原告は著作者の地位に立って訴訟を起こしている。周到な弁護士でない限り、遺族固有の立場での請求は起こさないようにも思う。あるいは、裁判所が訴訟指揮を行ったのかもしれないが、もしそうだとすると民事訴訟法上の問題はないのだろうか?

□事実認定に関する論点:著作者が信者の合理的な意思を尊重する旨を宣言していた?
興味深い点として、読売新聞報道は「信者がすげ替えを望んでいたとまでは認められない」ことに判決が言及していたことに触れている。これは「信者がすげ替えを望んでいた」のであれば著作者の意を害しないとの判断があったことを示唆する。
著作者がそのような意思を明示していた可能性もあるし、「その意」を傍論ながら合理的に解釈したのかもしれない。仮に後者であるのならば、遺族の言ったもの勝ちになるのではないか、とすら認識されることもある著作権60条但し書きに言う「著作者の意」に踏み込んだ判決として、おもしろい先例となる。

■余談:有名な仏像であるため、私的領域の改変ではなかったことは明白
著作権法60条(著作者の死後の人格権侵害にあたる行為)の規定は、私的領域で行われた改変等には適用されない。
しかし、ウェブで調べる限り駒込大観音は著名な仏像のようで、これを見るために参拝する人も少なくないようである。そうすると、私的領域で行われた改変と評価することは出来ず、被告とされた寺院が著作権法60条にいう「著作物を公衆に(中略)提示する者」にあたることした認定は適切である。
posted by かんぞう at 15:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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