2009年05月28日

[特許]大学からの特許出願の現状・今後(その2)

特許庁「大学知財研究推進事業研究成果報告会」(2009年5月21日開催)聴講メモ

■瀬川友史(株式会社三菱総合研究所)「大学における研究成果と特許の質の関係に関する研究」
□報告概要
(1)調査対象
・本調査は特許の質を「技術の質」「法律的な質」「経済的な質」に分節し、「法律的な質」に限って分析を加えている。
(2)大学の知的財産活動と提言
・審査経過情報の集計によると、特許出願の目的、技術分野、代理人とのネットワーク、権利化方針は大学により異なっている。例えば、大学の独立行政法人化後は、依頼する代理人がそれまでは特定の代理人に偏りがちであったが、現在は多様化している。また、早期審査を徹底的に活用する大学が存在する。
・このような多様性を踏まえ、出願の目的を明確化し、戦略を検討するべき。
(3)明細書記載の現状と提言
・限られたデータではあるが、これを分析すると、「単純な記載ミス」「請求項に対応する記載が明細書に見られない」「発明の課題解決手段の整理が不十分」など、明細書作成上の更なる質の向上を図る余地がある。
・記載の充実のため、研究者の協力を得つつ丁寧な明細書作成を行うべき。そのために国内優先権の活用を行うことも一手段である。
(4)権利範囲の現状と提言
・データを分析すると、大学発特許は、拒絶査定を受けることなく特許査定を受けるものが多い、拒絶査定に対して請求項を削除しがちである、など、権利範囲を縮小する方向に向かいがちであることがうかがえ、インタビュー調査からも事業化が明確でないため死守すべき権利範囲が無いことが指摘されている。
・技術移転を意識し、研究者、知的財産部門、弁理士の連携が望まれる。

□私見
大学の知的財産活動の多様性や、大学発特許の審査経過の特徴をしっかりとデータで押さえ、視覚的にも非常にわかりやすいグラフで示しており、優れている。大学全体の質の把握にはもちろん、個別の大学のデータを示している点は、他の大学としのぎを削る知的財産活動を行う大学には、ある種の成績票のようなもので、気になるものだろう。
ただし、大きなテーマの足元を固めるために、研究の範囲を限定している結果、「大学の特許の質は高いのか?」との問いの答えを期待したときには、物足りない点はある。しかし、もし答えが出るならばとてつもない成果となるだろうし、まずは基礎から固めることが適切であろうから、本報告のアプローチの意義は小さくない。

とはいえ、試論として踏み込んだ結論を言う余地もあるように思う。報告で示された提言が、かなり実務的に踏み込んだものであったことを考えると、大枠として質に問題は無いと言ってよいのではないか。
いずれにせよ、大学関連施策の根拠となる有益なデータ分析であると思われる。
posted by かんぞう at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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