2009年05月24日

[特許]RCLIP国際知財戦略セミナー「日本企業と特許訴訟:フォーラムショッピングによる攻撃的特許戦略」聴講メモ

2009年5月9日に開催された上記のセミナーは、特許訴訟の裁判所ごとの特許権者勝率を国により具体的に比較ができる、大変興味深い内容となっていた。詳細はRCLIPの機関誌に掲載されるはずなので省く。勉強となったポイントを以下に雑多に挙げる。

■勉強になった点
□国内でのフォーラムショッピングに関して

・英国、日本では侵害裁判所がほぼ限られておりフォーラムショッピングは重要でない。他方、米国、ドイツ、中国ではフォーラムショッピングの余地があり、とりわけ、米・中では重要。
・米国でフォーラムショッピングが有効となっている理由の一つが、(上記のように)陪審員の存在(たとえば、フロリダでは高齢者が多いために、製薬企業の特許権に対して否定的な意見をとりがちとのことである)。同じ法体系をとる英国では特許訴訟で陪審員制をとっていないことには留意。この他の理由として、裁判所の独自ルールの存在も挙げられる。
・米国の中で人気No.1であるテキサス東部地裁は陪審員がUSPTOの判断に親和的であることが、特許権者勝訴率の向上の一要因(注1)。
・中国での侵害訴訟は、北京、上海よりも、江蘇省で行った方が特許権者の勝訴率が高く、統計上は、中国人よりも外国人の特許権者の勝訴率が高い。
□特許侵害訴訟について
・米国、英国ともディスクロージャーの存在により、審理や訴訟費用が高額化しがち。(英国では原・被告双方の費用負担のもと、中立な専門家が裁判官の補助人として加わるため、さらに高額)
・ドイツでは和解率が低い(50%程度)。

■私見:中国でのフォーラムショッピング
このセミナーに参加して興味深かったことの1つが中国でフォーラムショッピングが有効であることが統計によって示されたことだった。
これに加えて、中国人に比べ外国人の特許権者の敗訴率が高くないことが示されたことも有益であった。中国の民事訴訟には独自の訴訟手続が存在し、外国企業にはハードルが高いことは指摘されているが、それを乗り越えさえすれば、先行きは明るいのだろう(もちろん、ハードルが高い故に、外国企業からの特許侵害訴訟では確実に勝てる案件のみが法廷に持ち込まれている可能性は捨てきれないが)(注2)。

■私見:日本のフォーラムショッピング

日本の現状を報告された村田真一弁護士は、東京(東京地裁、知財高裁)と大阪(大阪地裁、大阪高裁)の比較をし、近年、やや東京が有利になっていることを指摘されていたが、本当は裁判官ごとに見た方が良いのだろう。もちろん、村田弁護士はそのお立場上そんなことは口がさけても言えないのだろうけれど…。

なお、朝日新聞の記事では次のように指摘されている。これは日本の特許侵害訴訟での特許権勝率が低くないことを指摘するものだが、「ある一人の裁判長の場合」というくだりがついつい気になってしまう(笑)。
東京地裁に四つある知的財産権専門部のうち、ある一人の裁判長の場合、08年の統計では原告勝訴率は14%。ところが和解する場合に、「仮に判決を出すとするとどちらが勝ちか」という裁判長の胸の内を双方に示すケースも含めると、原告に有利な解決の率は46%に跳ね上がる。ある特許弁護士は「最初から当然負けを覚悟しているような訴訟を除けば実質勝訴率は7〜8割ではないか」という。この裁判長の平均審理期間は11カ月で、和解する場合は大体7〜8カ月で胸の内を示すという。結論がわかるのも早いから、米国まで行く必要もない。


(注1)このほかに、主張に時間制限が設けられていることが、朝日新聞の記事で指摘されていた(朝日新聞グローブ15号(2009年5月11日)「特許バトルロイヤル」)。
(注2)恥ずかしいことだが、最近、知的財産制度をよくご存じない方が中国・韓国たたきに知的財産関係の紛争を叩き道具として用いていることが散見される。例えば、特許侵害訴訟についても、日本企業が不当に差別されている、などといって煽っている情報があった。個別の事案ではそういうこともあるのかもしれない。しかし、それは当事者でなければわからないことだ。ここで挙げたような情報を押さえたうえで批判されているならともかく、直観的な(あるいは根拠も無く)批判をされていると、恥ずかしくて仕方ない。他国を批判するならば、国によって実体的な制度も訴訟法も違うこと、当事者の戦略が影響していることなど、十分に加味して行わうべきだ。そうでなければ、自身の無知をさらし、ひいては我が国を貶めることになる。私は日本を大切にしているが故に、そのような煽りは嫌悪している。
posted by かんぞう at 17:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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